「シャル!」
一夏にとって、それはあまりにも信じられない光景であった。
仲間たちの強さは共に戦い、時に師事していた彼にとってよく知るものだった。そしてそのISの戦闘能力もまた、ISではない兵器に対して後れを取ることは無いと確信に近いものを持っていた。であるのに、今目の前では少女たちが、仲間たちが、ISがなすすべもないままに倒されようとしていた。一体あの敵は何者なのか。
「あれって!?」
「仮面ライダー!」
「でも、なんでこの世界に仮面ライダーがいるんですか?」
一夏と楯無は小耳にその言葉を聞いた。仮面ライダー、とは数十年も前にやっていた特撮テレビ番組の名称だ。しかし自分たちの知っている仮面ライダーはあのように機械の身体のようなのじゃなく、もっと生物的なデザインだったはず。仮面ライダーをモチーフとしているというのならまだわかるが。
いや、今はそんなことどうでもいい。士たちがあの侵入者の正体を知っているのか等気になることはあるが、それよりも先に箒たちを助けに行かなければ。
一夏は腕を前に出した。
「来い! 白……」
が、しかし一夏が自らのISを出現させる前に姉が彼の腕を抑えた。
「待て織斑」
「千冬姉ッ!?」
「敵の正体も能力も分からない中で燃費の悪い白式を出しても足手纏いになるだけだ」
「けど!」
確かに姉の言うことも分かる。自分のISの白式の持つ能力は、エネルギーの消耗が早く、このような多人戦には向かない。どちらかというと他のIS操縦者と連携しながら敵が隙を見せたところで放つ能力である。
今のこの混乱した現状で他ISとの連携が上手くいくとは到底思えず、さらに固有能力で消費するエネルギーを考えると一度の使用が限界となる。となれば今一夏が出撃しても少女たちの邪魔になりかねない。敵の能力の何たるかが分からないということも踏まえれば尚更だ。
だが、そんなことが理由で今目の前で戦っている仲間たちを見捨てるなんてこと、できるはずはない。一夏は千冬の制しを振り切ってもなお白式を展開しようとしていた。だが、その時だ。あの男が戦闘を写真のレンズに収めながら言った。
「いや、能力と名前ならわかる」
「なに?」
士である。士は空を指さすと言った。
「今シャルロットが戦っているのが仮面ライダービルド。箒とセシリアが戦っているのが仮面ライダーバース。そしてラウラが戦っている地上にいるライダーが仮面ライダーガタックだ」
「仮面ライダー……」
「士、何故お前がそのことを知っている。返答によっては、ここで拘束させてもらう」
とは言ったが、千冬は士が三人の仮面ライダーの仲間とは思わなかった。今ここで彼が正体を明かすメリットなんて存在しないし、そもそも同じ仮面ライダーなのだから彼が知っているのは当然のことだからと。
士は、千冬の表情を見ながらカメラのシャッターを押すと言った。
「あぁ、俺も仮面ライダーだからな」
「え?」
「だが、あいつらの仲間というわけじゃない。あれは恐らく俺の知り合いが出した奴らだ」
「知り合いだと?」
「士、それってもしかして……」
「あぁ、そういうことだ」
士はビルド達を出現させたのは十中八九あの男であるとあたりを付けていた。しかし問題は何故このようなことをしたのか。それと何故姿を見せないのか。
前者は専用機であるISを狙ったと考えればよいが、姿を見せない理由が思いつかない。というより不自然だ。ISが四機あるため自分もまた出した仮面ライダーたちと共に戦えば四対四となりもっと戦闘が楽になるはずなのだが。
自分たちの姿を見つけて恐れをなして逃げ出したのだろうか。などと彼の性格上少々ありえないであろうことを士が考えている中、一夏が切羽詰まったような顔をして言う。
「とにかく、あんたあの仮面ライダーたちの能力を知ってるのか?」
「あぁ、大体な」
「よし、千冬姉! それなら……」
「だがお前はやめとけ」
「え?」
千冬に対して再度の出撃を申し出る一夏をその言葉で制した士は言う。
「仮面ライダーには同じ仮面ライダーであいつらのことをよく知っている俺とユウスケが相手をする」
「な、なんでだよ!」
「今ここでアレの能力を説明をしている時間も無駄だから……か?」
「その通りだ」
確かに士たちは敵仮面ライダーの能力を知っている。だがその膨大な情報を今ここで一夏に教えていたらその間シャルロットや箒たちの身に危険が及ぶ。
今は絶対防御のおかげで攻撃が直に当たることは無いとはいえ、それもいつ限界が訪れるのかわからない。
だから、そのような無駄な時間を省くために仮面ライダーの能力と強さについてよく身に染みている自分とユウスケの二人で行ったほうがいいと思ったのだ。このことについては千冬も察してくれていた。
「けど!」
「それにだ。一夏、お前は一つ重要なことを忘れている」
「え?」
「お前のクラスメイトは、箒たちだけか?」
「ッ!」
なおも食い下がろうとする一夏に対してそう言った士。
そう、突然の襲撃に忘却していたが、これは元々ISの授業で、ほかにもクラスメイトが大勢その場にはいたのだ。
一夏がクラスメイトの方をみると皆が一応にパニックを起こしていた。無理もない、突然の襲撃に加えてここは競技場の観客席のように身を防ぐものは存在しないのだから、今は攻撃が向かってきていないと言っても、今後どうなるのかわからない。副担任の山田が落ち着くように説得はしている物の、どうにも効果は無い様子だ。
「あいつらを安全な場所に誘導することも大切なことだと思わないか、一夏?」
「……分かった。箒たちを、頼みます」
「よし、おい夏ミカン。お前たちも安全な場所に避難しろ」
「夏海です! というか、何か忘れてませんか士君?」
「ん? そういえば爺さんは何処だ?」
「いえ、そんなことじゃなくて……」
士があまりにも的外れな回答をする中で、千冬はある場所に連絡を取っていた。そしてそれが終わったらしく携帯から耳を話して士に言う。
「学園にも事情を説明した。3年生を中心とした選抜チームがISを取りに行ったらすぐ出る手はずになっている」
どうやら、IS学園からも救援が出るらしい。そんな話を聞いた士だが、今千冬の言葉に気になるものがあった。
「分かりました。それじゃ、私も……」
「ちょっと待て」
士は楯無が言おうとした言葉を遮り止めた。この違和感を残したまま戦闘に移行したら、途中で想定外のアクシデントに出会う可能性もあるからだ。
「どうした?」
「いや、気になることがある」
「なに?」
「『ISを取りに行ったら』ってのはどういうことだ? ISは、さっきの箒やセシリアのような小さいものからでかくなるもんじゃないのか?」
事実、先ほど箒やセシリアが髪飾りなどの装飾品からISを出現させている様子を士は見ていた。それならば、他のISを持っている者もまたそういった小物としてISを持っているのではないか。士はそう疑問に思ったのだ。
「正確に言えばそうだ。だが、篠ノ之たちの使っているISは専用機……つまりあいつらだけが使えるISだから待機状態として、常にあいつらが持っている。それに対し普通の生徒が使っているISは量産型といって学園側が保有している物だ。だから、非常時にはIS学園の生徒がISを保管しているところまで行き」
「もういい。大体分かった……」
「?」
「だが、まだわからん」
「なんだそれは……」
まさか、そういう事なのか。いや、だがどうしてだ。士の知っている彼からすれば量産型なんてもの狙わずにさらにレアな専用機を狙うのではないのか。そう、今目の前で飛んでいる箒のISなんて、他のISよりも世代が進んだ最先端機。普段の彼ならばそれを狙って襲撃するはずだ。本人も一緒に。
「ねぇ」
「ん?」
「もしかして、量産機が危ないの?」
「え!?」
「ほう、よくわかったな」
「どういうことだよ、士さん!」
「まさか、この襲撃は囮で、本命は量産型のISだとでもいうのか?」
「でも待てよ士。量産型っていうのはつまり、大量生産されているってことだろ? この襲撃があいつの仕業なら、一人に一つだけの専用機のほうを狙うんじゃないか?」
「いや、ありえないことじゃない。量産型と言ってもそのコアの数は全世界で合わせて467個。その製造方法は束しか知らない。だからコアは各国どこもかしこも喉から手が出るほどに欲しい物だ。襲撃者が狙わないとも限らない」
なるほど、この世界基準で考えるならば量産型であっても十分お宝に該当する。あの男が狙う可能性がなくはない。のか?
「だが、これは全て憶測。そっちに俺が行ってもいいが、この場をどうするか……」
「なら、俺が行く。士は、一夏君と皆を助けに行ってくれ」
そう言ったのはユウスケだ。一夏と、というのは仲間を助けに行きたいという彼の心情を悟ったユウスケの優しさから出た助け舟なのだろう。
だが確かに、多数の仮面ライダーが入り乱れているこの状況、他の仮面ライダーに変身可能な士なら対応できるため士が残ったほうが良いのは間違いない。しかし、前だったならともかく、奴は今ある世界で新たな能力を持っている。それを使われればいくらユウスケが奴のことを知っていたとしても危険が過ぎる。
「いいのか?」
「あぁ!任せておけって!」
「なら、私が案内するわ。士さん、一夏くん、この場をお願い」
「ッ! はい!」
「ユウスケ気を付けろ。俺の記憶が正しいなら、あいつは新しい力を手に入れている」
「分かった。楯無さん、お願いします」
「えぇ、こっちよ」
いくつか腑に落ちない点はあるが、今はできうるだけの対策をしなければならない。それに、サムズアップしたユウスケの笑顔を無下にはできない。士は二人を見送った後、続いて夏海に言う。
「作戦変更だ。夏海、雪広たちとあそこにいる奴らを安全な場所に連れて行け」
「……分かりました」
夏海は先ほどのように何かを言いたげではあったが、そういう事ならば仕方がない。士もユウスケも、一夏も戦いに出るということは彼女たちを守れるのは力を持つ自分たちだけというのは間違いないのだから。彼女たちもまた一夏のクラスメイトたちのもとに向かった後、士は一夏の横に立つ。
「士さん、あの人たちで大丈夫なのか?」
「あぁ、あれでも夏海も仮面ライダーだ。それに雪広たちは……」
「ん?」
「俺の自慢の生徒だからな」
士は、ネオディケイドライバーを腰に巻き付け、カードを取り出す。一夏もまた腕を振り上げ構えた。
「この中で一番手数が少ないのはビルドだ。他は俺に任せろ」
「分かった!」
そして……。
「変身!」
「来いッ! 白式ィィッ!!!」
≪KAMENRIDE DECADE≫
こうして、この世界にマゼンタ、そして白の戦士が並び立った。
「見せてもらうぜ、『オリムライチカ』……お前の、戦いをな」
その様子を校舎の影から見ている物がいるとは知らずに。
補足しておくと、この世界の士たちはプリキュアの世界を見物していた士たちで間違いありません。
詳しく言えば、プリキュアの世界(新)での未来が、この士たちに統合し、この士は我々が実際に見たプリキュアの世界(新)の記憶と、彼らだけが経験したプリキュアの世界(旧)の記憶を持っています。時系列的に言うなら、元々平成ライダーVS昭和ライダーまでの経験しかなかった士は、さらにその後の仮面ライダージオウ世界の経験も併せ持って本小説ネギまの世界へと入ります。これは、プリキュアの世界(新)の転生神が過去の士たちもまとめて消そうとしてプリキュアの世界(旧)の記憶を持った士たちをプリキュアの世界(新)に無理やり連れてきた余波ということになります。
余談ですが、彼ら以外の仮面ライダー、スーパー戦隊はプリキュアの世界(新)の世界のみの記憶を持っています。