仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 正直言うとISの防御フィールドの信用性的に考えると攻撃は装備している人間には通っていないと考えていいんだけれど、それにしてはアニメで戦闘後に大きな怪我を負っている人間が多い気がするので、劇中の防御フィールドの信用性はともかくとして私の中での設定の信用性が揺らいでいたりします。


IS〈インフィニット・ストラトス〉の世界1-7

「ぐぁっ!!」

 

 地面にたたきつけられた箒は、その衝撃と痛みに顔を歪ませる。しかし本来自身に来るであろう衝撃から考えればその力は百分の一程に軽減されているはずだ。この時ばかりは仲違いしている姉に箒は感謝していた。

 だが、いくら衝撃が軽減されるとはいってもそれは防御フィールドが展開している間だけに過ぎない。もしもこの紅椿のエネルギーが無くなってしまえば、後は蹂躙されるのみ。いや敵の攻撃の威力だ。恐らく自分は肉片と化すか、跡形もなく吹き飛ばされてしまうだろう。その前に、すぐにこの場から逃げなければならない。

 

「!」

 

 が、無情にも敵は一切の油断も躊躇も見せてくれなかった。ロボットのようなその所属不明機改め仮面ライダーバースは、巨大な足を箒の腹の上に乗せた。いくら防御フィールドで守られていると言っても、その重さは感じ取れてしまう。果たしてそのまま押しつぶそうというのか。

 しかし、事実は彼女の想像を最悪な方向に凌駕していた。

 仮面ライダーバースの足には履帯が付いていたのだ。その履帯が箒の腹の上に乗った瞬間にキリキリという音を立てて回転をし始めた。

 

「ぐあぁぁぁ!」

「箒さん!」

 

 箒の耳にはそのセシリアの叫び声に近い声も届かなかった。

 何度もいう事だが、その攻撃自体はほとんど箒自身には通ってはいない。だが、それにも限界がある。

 皮膚をえぐることはさすがになかったが、内臓に届くかのような衝撃が箒を襲う。エネルギーの残りを見ると、急激にその数値を減らしていた。物理的で暴力的であるその攻撃に防御フィールドが追い付いていないのか。この状況は今までにないほどに危険だと箒は感じていた。それこそ、この紅椿を姉からもらって、初めて死を意識するかもしれない。そう思うほどに。

 セシリアは、箒をやらせはしないと、動けない中で先ほど飛ばしていたブルーティアーズ四枚を向かわせる。上からの攻撃だと箒に当たる恐れがある。だから横からならあるいは、とセシリアは何がなんでも箒を助け出すプランを瞬時に頭の中で構成していく。だが、その時間が余計だった。

 

「ッ! きゃぁ!!」

 

 所属不明機は、セシリアを拘束しているワイヤーを素早く巻き取っていく。身動きの取れない彼女はなすすべなくバースの目の前に連れてこられ、左腕のスコップで思いっきり殴られ、セシリアの身体は吹き飛ばされ、何度か転がった後にその動きを止める。

 衝撃で拘束は解除されたものの、それが逆に彼女の動きを止める枷を無くしてしまったために必要以上に飛ばされてしまったのだ。

 

「セ、シリア……」

 

 箒は、殺人的な速さで減り続けるエネルギー残量の向こう側で立ち上がれずにいるセシリアに声をかける。だが、返事はない。防御フィールドを貫通した衝撃による痛みで答える余裕がないのか、それとも……。

 

「ッ……!」

 

 セシリアが動けなくなった今、自分自身でこの状況を打開するしかなくなってしまう。しかし、どう動こうともスラスターを作動させようとも巨大な足からは逃げることが出来ない。エネルギーの残量が低いためにスラスターの出力が思ったよりも上がっていかないのだ。さらに最悪なことに、スラスターを動かそうと余計にエネルギーを消費してしまったために紅椿のエネルギーは雀の涙程度、あと数秒後にはゼロになってしまう。その時が、自分の最期となることだろう。

 

(死ぬのか、私は……こんなわけも分からない敵によって……)

 

 死。それが目の前になった瞬間に箒は見る物全てがスロー映像になってしまったかのような感覚に陥る。あぁ、これが死を前にすると見ることが出来るという映像なのか。などと少々場違いなことを考えてしまったのは、少しでも死という物から意識を遠ざけたかった防衛反応によるものなのかもしれない。

 しかし、所詮そんなものはただの逃避に過ぎない。避けようのない死という運命は、刻一刻と少女に迫っているのだ。

 

(姉さん……一夏……)

 

 箒は、頭の中で姉のことを、そして自身の思い人のことを呼んだ。こんなに早く死ぬことになるとは、分かっていれば姉と仲直りするべきだった。いや、違う。本質的に見れば彼女は自分の事なんて嫌っていないということを知っている。紅椿というISをわざわざ自分に作ってくれて、姉の愛情という物を感じている。一方的に嫌っているのは自分だ。両親と離れ離れにされ、思い人の一夏とも強制的に離されて、それもすべて姉がISなんて物を作ったから。

 けど、結局自分と一夏は再び再開することが出来た。姉が作った、ISによって。

 自分と一夏を別れさせる原因となったのはIS、しかし自分と一夏を再会させてくれるきっかけになったのもISだ。そして、そんなISを作ってくれたのは姉。

 もっと素直になっていれば、姉とも簡単に仲直りできていたかもしれない。そんな後悔、今更しても遅すぎることは分かっている。でも、死の直前にならないとそう気が付かないなんて、なんと自分は嫉妬深い女だっただろうか。

 もしも、向こうで姉と再会出来たら、もしも生まれ変わって奇跡的に姉と再会出来たら。もっと、素直に謝ろう。もっと、妹らしく甘えよう。

 そんな、夢幻のようなことを想わなければならないほど、彼女の心はすり減り、そして逃げ出そうとしていた。

 生という当たり前で、かけがえのないものから。

 

「どけえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 しかし、彼はあきらめていなかった。箒の生を。箒の明日を守るために、彼はその剣を振るい、すれ違いざまにバースの身体を斬る。

 それ自体は、バースの身体に深い傷をつけるものではなかった。しかし彼の突然の奇襲によってバランスを少しではあるが崩したバースの足は、箒から一瞬の間離れる。彼女は、その瞬間を逃さなかった。

 

「ッ!」

 

 箒は、エネルギーの残りなど無視し、スラスターを全開にさせる。バースの足は、箒がいた場所に再び戻るものの、そこにはすでに彼女の姿はなく、ただ小さなクレーターを一つ作るだけだった。

 地面スレスレを這うかのように移動する箒は、しばらくすると体制を立て直して起き上がる。

 箒は、エネルギーの残量を見て安堵した。その残りはあと一歩でも歩くと底を突くくらいしか残っていないが、からくも死という最悪な結果からは逃れることができたのだ。

 

「箒! 大丈夫か!!」

「一夏……」

 

 その時、空を飛ぶ一夏から通信が入った。先ほどバースに突撃しバランスを崩してくれたのは一夏だったようだ。

 箒は、薄く笑みを浮かべて言う。

 

「あぁ、なんともない。一夏と……紅椿のおかげだ」

 

 一夏、そして姉の作ったISが自分のことを守ってくれた。そう感じるだけで箒は笑うことができ、同時に一夏と姉に心から感謝した。

 

≪ATTACKRIDE BLAST≫

 

 そんな箒の後ろからさらに複数の赤い弾丸が所属不明機めがけて放ちながらあの男が現れた。

 

「ふっ、俺はビルドの方に向かえと言ったはずなんだがな……」

「その声は、士さん?」

「あぁ、分かっているな一夏!」

「あぁ! 俺は、シャルのところに! ……箒を、頼んだ!!」

 

 そういうと一夏は空高くに急上昇する。

 見知らぬ人間であるから命令を無視するというのはあり得ることではある。だが、それ以上に、目の前で仲間を無視するわけにはいかなかったあたりに感心した。

 こと戦場において最もやってはならないことがある。それは命令に背いて勝手な行動をとることだ。しかし、もしもその命令が状況を悪化させかねない物だったら。もしも目の前で大事な仲間が傷つき倒れていたら。命令に背く行動は、時に最悪な結末を迎えることになってしまう。しかし、それと同時に大切な仲間を守ることになるかもしれない。彼は、そんなことを考えて行動に移したのだろか。いや、考えてないのだろう。なぜなら、彼の中では命令などよりも仲間の命のほうが大事だったのだから。

 

「箒さん!」

「! セシリア、よかった……」

 

 その時、バースのシャベルによって吹き飛ばされていたセシリアがホバリングしながら箒の横に立つ。だが、その表情からして痛みを感じているらしいことが気にかかる。

 

「無事だったか……」

「えぇ、少し意識が飛びかけてましたけれど……」

『篠ノ之、オルコット! 聞こえるか!?』

「「織斑先生!」」

 

 二人の耳に聞こえてくるのは夏海たちと共に他生徒たちの避難を促している織斑千冬の声だ。

 

『よし通じるな。ISのエネルギーは持つか?』

「私の方はまだ、けど箒さんの紅椿は……」

『篠ノ之、絢爛舞踏は使えるか?』

 

 絢爛舞踏とは専用機にそれぞれ搭載されている単一仕様能力(ワンオブアビリティー)と呼ばれるものの一つで、紅椿のみが使える兵装である。

 その能力とは、エネルギーの増幅。例え紅椿のエネルギーがガス欠を起こしかけていても少ない残量を増幅させることによって一気にエネルギーをフル状態にさせることが出来る。その能力を自由に使用することが出来れば、理論的には箒の集中力や体力が切れるまで永遠に戦い続けることも可能。いや、そもそも高性能の紅椿の力を常に発揮しているためには必須であるともいえる能力であるのだ。

 

「試してみます……」

 

 箒は意識を集中させる。すると、紅椿の装甲が展開し始めて金色の光が周囲に舞う。

 この能力、以前の箒では一夏に対しての強い思いを引き金としなければ使用することが出来ていなかったが、ある時を境としてある程度コントロールすることが可能となった。しかし、それでも時折発動に失敗することもあり、現在のところ成功率は五分五分と言ったところだった。だから、この力にそんなに頼りっきりになってはならないと考えていたのだが、この場合はやむを得ずと言ったところか。

 金色の光が紅椿の全身を囲った瞬間、紅椿のエネルギーはみるみるうちに上昇し、ついにMAXまでエネルギーが溜まった。

 

「いけます!」

『よし、篠ノ之は士と共に引き続き仮面ライダーバースと、オルコットはボーデヴィッヒと合流し、仮面ライダーガタックを撃退しろ』

「「了解!」って、仮面ライダー?」

「カメンライダー? あの、それは一体……」

 

 箒は、千冬の言う仮面ライダーというのが、自分の知っている物の事なのかという疑問、セシリアは日本の娯楽に精通しているわけではなかったため仮面ライダーという単語自体にそもそもの疑問があった。だが、そんなことを考えている余裕などなかった。

 

「説明は後だ。ともかく今は……」

 

 ディケイドは、一枚のカードを取り出すと上空に飛び上がった仮面ライダーバースを見る。どうやら、先ほどの一夏と自分の攻撃はそれほどのダメージを与えられなかったようだ。けん制の攻撃であったため仕方がないことではあるが。ともかく、ここからは正真正銘の戦い。ISとの初めての共同戦線となるのだ。

 

「アレを倒す。変身!」

『KAMENRIDE FOUZE』

 

 ネオディケイドライバーにカードを入れた瞬間、ディケイドの身体が白い煙に覆われる。

 

「フッ!」

 

 そしてディケイドがそれを腕でなぎ払うと、そこに立っていたのはマゼンタカラーのディケイドではなく、真っ白の宇宙飛行士を思わせる外見の戦士の姿。

 

「そ、その姿は……」

「仮面ライダーフォーゼ……まぁ、宇宙飛行士のようなものだ」

「宇宙飛行士……、という事はそのスーツも……」

「なんだ?」

「……いやなんでもない」

 

 箒は心の中で思っていた。同じだと。そして嘆いていた。同じであってしまったのかと。

 不思議なものだ。アレほど嫌悪していた姉と姉の作ったISというものが、自分の死から救ってくれたというただそれだけで簡単に受け入れようとしている。そんな簡単な自分の思考がある意味羨ましく、そして妬ましく、死にたいまでに辛いものだった。

 

「取り敢えずいくぞ、ついてこい」

「……分かった」

 

 士はそういうと右手にロケットモジュールを出現させ、大空へと飛び立った。箒もまたその後を追い飛び立つ。

 

「ッ! このままじゃエネルギーが!」

 

 そして一方の空をかけているシャルロットは膠着状態が続いていた。双方の攻撃ともに決定打となる一撃を与えることができずただただ弾の無駄遣いを続けていたのだ。

 だが膠着状態のなかでも、劣勢に陥っていたのはシャルロットの方である。

 このまま撃ち合いを続けていても勝負はつかない。ということは、大事になるのは弾の残量、ひいては自分のISのエネルギー残量だ。だが、相手はそもそもISであるかどうかも怪しい存在。相手の集中力が続く限り戦い続けることが出来ると仮定すると、エネルギーの残りを気にしながら戦わなければならないシャルロットは比較的不利であると言える。

 ここは一気に突撃して撃墜を狙うか、それとも戦い方を変えてみるか。その選択の時が来ようとしていた。

 その時だ。

 

「シャル!!」

 

 一筋の白い光の軌跡を描き、ビルドに下方から突撃するISがあった。

 

「一夏!」

 

 一夏である。シャルロットは、フレンドリーファイヤーを避けるために攻撃する手を止めた。ビルドもまた自らに突撃する一夏に新しく狙いを定めてそちらのほうへと身体の向きを変えた。

 

「ハァッ!!!」

 

 一夏の攻撃自体は軽やかな動きで回避されたものの、一夏はその様子を見て笑みを浮かべ、シャルに通信を送る。

 

「シャル今だ! 飛び込め!」

「ッ! そうか! ハァッ!!」

 

 その声に一夏の考えを読み取ったシャルロットは一気に加速してビルドの下へと飛びながら六二口径連装ショットガン、レイン・オブ・サタディを二丁両手に出現させ、放つ。

 そう、先ほどまでは懐に飛び込む間もなかった膠着状態が、一夏が参戦したことにより溶解、シャルが容易に突撃できる時間を作ることが出来たのだ。

 一夏の攻撃を避けた後でスピードの落ちたビルドは、攻撃をよけきれずに左足に弾を受け、けん制のためにホークガトリングを撃つので精一杯だった。

 

「いける、これなら!」

 

 仕留めきれなかった。しかし、一夏の参戦により戦況は俄然シャルロット側が優位となった。倒せるチャンスは今ここに到来したのだ。

 

「シャル! もう一度やるぞ!」

「うん、攻撃は任せて!」

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 あわただしさを増していく戦場。それに対して、また別の戦場では静かにその戦いの火ぶたが切られようとしていた。




 突然ですが、七匠に対しての質問大募集中。
 質問はメッセージボックスにお願いします。本小説以外のことでも結構です。感想ではなくメッセージボックスにお願いします。
例:Qどうして仮面ライダーディケイドエクストラ以外の小説投稿が滞ってるの?
Qもしも七匠が異世界転生したらどんな風になるの?
Q今やりたい二次創作とかあるの?
 等々、誹謗中傷以外の質問であれば答えます。
 え、いきなりなんだって?まぁ、時たまでる突発的な病気とでに考えて下さい。
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