たぶん、今後のスタンダートスタイルとなると思います。
「「はぁぁぁ!!」」
夏海と簪は互いに一進一退の攻防を繰り広げる。一度は相性の悪さから大ピンチに陥っていた夏海ではある物の、相手が自分と同じ機動力重視の彼女であれば、実践の経験があまりない夏海でも、互角かそれ以上の戦いを繰り広げることが出来るのだ。
「ッ! 早く鈴を助けに行かないと!」
一方の簪は焦っていた。先ほどの鈴音と夏海が離れるきっかけとなったクウガの攻撃。もしも自分が地上を走っていたあの仮面ライダーのバイクを足止めできていれば、この試合は有利に進められていた。この状況に陥らせてしまったのは自分の落ち度だ。
早くこの場を切り抜けて鈴音を助けなければならない。しかし、相手の仮面ライダーと自分の打鉄弐式の性能差は歴然として離れているわけではない。また、夏海は知らないことであるが、実は夏海と彼女、更識簪には一つ共通点があった。それは、戦闘経験のなさだ。
夏海の戦闘経験は最初に士と戦った時、その後に士やユウスケ、海東と共に戦った時、そして麻帆良学園があったネギまの世界で戦った時と計三回しかない。だが
簪もまた、自らのIS打鉄弐式が完成したときに一夏や箒、そして姉の楯無と共に所属不明のISと戦った時ぐらいしか戦闘経験はなく、後は授業の時に少しだけ動かす事くらいだった。つまり、彼女たちはそれぞれのIS、仮面ライダーの性能は互角、戦闘経験の少なさという物も互角であるのだ。
果たして、この一進一退の攻防をいつまで続けるべきなのか。最初に動いたのは簪であった。
「はぁっ!!」
「ッ!」
打鉄弐式の背部に搭載された二門の砲『春雷』が素早く彼女の腰に移動し、その口から電気の光弾が放たれる。
夏海は、間一髪それから逃れるが、それを見た簪はすぐさまブースターを作動させて距離を取った。
「逃がしません!」
夏海はすぐに態勢を立て直すと、簪の後を追おうとする。しかしそうはさせまいと簪はスピードを緩めることなく反転し、打鉄弐式の左右に搭載されているミサイルポッドの蓋を開いた。
「山嵐!」
8問、左右合わせて16問のポッドからミサイルが白い煙を上げながら発射され、夏海へと向かう。
「ッ!」
夏海がスピードを緩めると、上に下にと縦横無尽に動き、ミサイルはそれを追うためにそれぞれに動いた結果ミサイル同士がぶつかり爆発、その爆発がさらに誘爆を引き起こして次々とミサイルが撃墜されていく。
「今のうちに! ッ!」
彼女がミサイルに気を取られているうちに鈴音の救援に向かわなければ。そう思って彼女から目を離したその隙を狙ったか、はたまた偶然が重なっただけか、夏海が突如方向を転換して簪の方へと向かってきた。その後ろには誘爆を逃れたミサイルもまた5、6個飛来している。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
夏海は、キバーラサーベルを剣道の突きのような構えのままに簪に突撃した。
攻撃自体は、簪がスレスレで回避したことによって本体の身体の部分にまでは届かなかった物の、キバーラサーベル自体は打鉄弐式の左側のミサイルポッドを貫いており、キバーラサーベルを抜いた瞬間に火花が散り、そこに残っていた計16発分のミサイルの爆発が簪を襲った。
「きゃぁ!」
エネルギーシールドが爆風から彼女を守ったためその身体に害を及ぼすということはなかった。しかし、エネルギーを大きく消費してしまった挙句、虎の子の兵器であった48個のミサイルも、半分以下の16個と大きく減らされてしまった。
「クッ! うぅッ!!」
一方の夏海もまた爆風によってダメージを追っていた。至近距離で、またISのようにシールドのように彼女の身体を守る物は何もないために爆風全てをもろに受けてしまったのだ。
それだけではない。爆風で吹き飛ばされたために背後から迫っていたミサイルが気が付けば目と鼻の距離にあった。直撃すればただでは済まないと考えた夏海がミサイルを切ったため直撃は回避できた物の、その際に出た爆風をもろに受けたということは痛かった。
「夏海ちゃん、大丈夫!?」
「えぇッ、まだなんとか……」
腰のベルトと一体化しているキバーラが夏海にそう声をかける。実際、まだ変身が解けるほどのダメージを追ったわけじゃないが、大きなダメージを追ったということは同じだ。夏海は、またあのミサイル攻撃が来ないことを祈って戦闘に戻った。
一方、大空高くで飛び回っている鈴音は夏海と戦っていた時とは一転し、大きなピンチを迎えてきた。
「こんの! いい加減離れなさいよッ!!」
「いや、このままいけば……」
「ッ!」
そういいながら、クウガはしがみついている甲龍の左腕の攻撃を止めなかった。ここまでくると、鈴音にもクウガの本当の狙いが分かってくる。
今現在鈴音はクウガを自分の身体から振りほどくためにブースターをフルで稼働させて飛び続けている。そのため、消費されるエネルギー量も膨大である。それに加えて鈴音本人の身体ではないと言え、左腕の装甲にももちろんシールドバリアは張っている。そのため、クウガが左手の攻撃を続けるほどそこにもエネルギーの消費は発生し、さらにシールドバリアを超えての衝撃によって左腕の動作も徐々におかしくなっていた。
確かに、地上戦主体の仮面ライダーと空中戦主体のISだと相性はかなり悪い。だからクウガは、ユウスケはこの戦い方を選んだのだ。一番効率よく、かつ確実に鈴音を倒すことが出来る方法、持久戦という方法で彼女の甲龍のシールドエネルギーを枯渇させるという方法を。
そのため防御力にたけたタイタンフォームにフォームチェンジし、時折来る双天牙月の攻撃も耐えることが出来ている。このままの戦いを続けていれば甲龍のエネルギー切れでユウスケの勝ちだ。
「ッ! なめんじゃ、ないわよぉぉぉ!!!」
だが、このまま黙ってその時が来るのを待っている鈴音ではない。彼女は、急停止すると地上に向かって超高速で回転しながら落ちて行った。
「ッ!! 遠心力か!」
クウガは、それまでの比じゃないほどの力を身体に受ける。先ほどまでは鈴音が不規則の動きを加えていて、それもそれでかなりのGで吹き飛ばされそうではあった物の耐えることが出来ていた。しかし、遠心力は回転すれば回転するほどに彼を彼女から引き離す力が増し、さらにそれが継続的に彼の身体を襲うため、少しでも気を抜けば吹き飛ばされることだろう。
必死で吹き飛ばされないようにユウスケは耐える。だが。
「ッ! しまッ……」
ついにその腕が耐えきれなくなり甲龍の腕から離れてしまった。ユウスケは地面に自分が身体に受けた力の分だけの速さを保ったまま叩きつけられ、大きな音と共に墜落したユウスケの周りには大きな土煙が舞った。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……どう、引き離せたわよ?」
鈴音が地面スレスレで止まり、体制を立て直した直後会場を包み込む耳が痛くなるほどの歓声が瞬く間に響き渡った。
その中でもなお、実況席の黛は大声で言う。
『おおっと! ISチーム凰鈴音ッ!!! きりもみ回転を加えることによって速度を増した仮面ライダークウガを地面にたたきつけたぁ!! って、これはあの人は大丈夫なのか!?』
「ん? まぁ、大丈夫だろ。多分な」
『いや多分って!?』
まぁ防御力が増大するタイタンフォームであったのだから、多少はダメージを負っているだろうが致命傷になるほどのダメージは負っていないはずだ。とはいえ、いまだに舞い上がった砂の影響で彼の姿がはっきりと見えたわけじゃないのでどうなのかはまだ分からないが。
「それじゃ、ダメ押しいくわよ!!」
と言った瞬間に、甲龍の両肩にある砲が火を噴いた。『龍咆』、甲龍の主要兵装であり、パワー型のこのISに見合うほどの威力を発揮する兵装だ。
二つの光弾は、間違いなく仮面ライダークウガがいたであろう場所に打ち込まれ、巨大な爆風と爆炎が上がった。先ほどのダメージでクウガの変身が解除されていたらどうするつもりだったのかという疑問はさておき、もしもまだクウガの変身が解かれていなかったとしてもこれほどの攻撃を受ければひとたまりもないはずだった。
そう、本当にクウガにその攻撃が当たっていればの話である。
「はぁッ!」
「ッ!」
爆発によって起こった黒煙の中から現れたのはトライチェイサーに乗りマイティフォーム、赤の戦士の姿へと戻ったクウガである。先ほど空中に跳んだ際にそのまま操る人間がいなくなったトライチェイサーは壁ギリギリで停車しており、クウガは偶然にもその近くに墜落していたのだ。歓声のためにバイクのエンジン音がかき消されており、比較的すぐ近くにいた鈴音にも感づかれることなく動くことが出来たのは幸いであった。
「あんたもしつっこいわね!」
「俺にだって、負けられない理由はある! ハァッ!」
「さっきと同じ手は使わせないわよ!!」
このまま低空飛行を続けていれば、先ほどと同じように飛びつかれてしまう。それを避けるために鈴音は、超スピードで再び空高くに返り咲いた。ここまでくれば、先ほどのようなことは無いはずだ。
「この高さまでくれば! ハァッ!!」
後は、地上にいるクウガを龍咆で仕留めればいいだけだ。鈴音は、地面に向かって龍咆を連射する。
地上に次々と当たる光弾は、爆炎と黒煙をいくつも生み出していく。誰がどう見ても鈴音絶対優勢の状況だ。空中への攻撃手段を持たないクウガは、もうただいたぶられるしかない。誰もがそう考える。
♪dadada dudu dadan! dudidan dudadan! 一寸先も見えない闇のむこう♪
「ッ! はぁぁぁ!!」
地面にできる凹凸も、視界を遮る黒煙も関係ない。クウガはなおもその中を躍動していた。止まることはない、倒れることは無い、振り落とされることは無い。クウガは、トライチェイサーを自らの一部であるかのように自由に地上を駆け抜ける。その落ちることのないスピードに、龍咆による攻撃は一切掠りもせずに地面にはクレーターがただ出来上がるだけであった。この試合の後の整備係の苦労の先が思いやられる。
♪dilili dada didan! dililidi dittdiiin! 無限遠の未来を信じて♪
「ッ!」
その時、がれきの破片が突き刺さったかのような凹凸が目の前に出現した。恐らく、龍咆によって舞い上げられた大きな破片が地面に突き刺さったのだろう。通常であれば、それは避けてもよい、いや避けるのが普通なほどに大きな凹凸であった。しかし、クウガはそれを、そしてその先にある観客席を見るとさらにアクセルを吹かせる。
「何する気!?」
♪突き抜けてく TRYCHASER2000(トゥサウザンド)♪
「はぁぁぁぁぁ!!! ハァッ!!!」
クウガの後ろでひときわ大きな爆発が起こった直後、バイクががれきの破片に乗り上げ、そして跳んだ。そう、クウガは跳んだのだ。その綺麗なフォルムは観客も、戦っている鈴音さえも見とれるほどに美しく、まるで絵画の一部であるかのような錯覚に陥った。
そして、そのままクウガは観客席の真上にバイク事降り立つ。観客席の中からは、まるでクウガが空中に浮いているかのように見えるのだが、これには理由がある。
IS競技を行うスタジアムには、観客の安全を守るためにシェルターにも使われるほどに強固なシャッターが使われている。特殊な技術によって中から見ても外から見ても透明になっておりそんなものがあるとはつゆにも思わないが、今回の不可思議現象は、そのシャッターの上にクウガが乗り上げたことによって起こったものだ。
クウガはそのまま観客席の上を走り始める。鈴音も、ちょっとやそっとじゃ壊れることは無いとはいえ観客席にいる同校の仲間たちを眼にしてなお、そこに向けて攻撃を加えることを戸惑っていた。
♪どんなラジエーターにも 冷ませない熱い魂 エンジンの爆音にシンクロしてく♪
『な、なんてバイクテクニックッ!? さすが仮面ライダー!』
「すっごぉーい! 今度乗せてもらおうよお姉ちゃん!」
「はい!」
「フッ……だが、そのままじゃあのISは倒せないぞ。どうする?」
そう。いくらバイクテクニックがあったとしても、空中にいる敵に対しる攻撃手段がなければ手も足も出ない。あるとすれば、彼の持つあるフォームであるが、IS側の二人がある物に値する武器を持っていないのは確認済み。とすればあとは、もう一つ頭に浮かんだフォームであるが、果たしてうまくいくであろうか。
♪too hot to stop!♪
「ッ! せめて武器があれば……」
♪TRY! あきらめない者に 力を!♪
「ユウスケッ! ハァッ!」
「あぁッ!」
その時、事の行方を横目に見ていたキバーラはつばぜり合いを繰り広げていた簪の一瞬のスキをついてその手を攻撃し、長時間の戦いにより疲れていた簪の武器から得物を奪うと、それを地面に向けて投げ、武器は地面に突き刺さった。
♪CHASE! 追いつづける者に 風を! 泥も 砂も 岩山も 油の地平も越えて♪
「ッ! あれは!」
「ユウスケ! それを使ってください!」
「ありがとう夏海ちゃん!」
「あれを使うつもりなの!?」
「いやISの武装は他人が使えないようにロックがかかっている。そんなことをしてもッ!」
「いや違う、だろ士?」
「だな」
「え!?」
♪TRY & CHASE! TRY&CHASE!♪
確かにISの武装は相手に奪われて反撃されないため、犯罪者などに悪用されないためにロックがされており、そのロックを外して使用することが出来るのは本人か、本人により使用権が譲渡された場合のみ。クウガはそれを知っている。だから、その武器をそのまま使うわけではない。
「ハァッ!」
再び地上に降りたクウガは、バイクに乗りながらも突き刺さる夢現を手に取り地面から抜くと、バイクを急停止させて降りる。
♪あの影を つかまえろ!♪
「超変身!」
そして、そのままマイティフォームから青の戦士、ドラゴンフォームへと変身すると、その手に持っていた夢現もまたまた別の武器、ドラゴンロッドへと姿を変えた。
「夢現が!」
「ほう、あれが噂に聞いたモーフィングパワーか」
「あぁ、桜子説明は任せた」
『はい! 仮面ライダークウガは、フォームチェンジすると、そのフォームにあった剣や棒状の物、それから銃をを変化させて自分の武器にすることが出来ます! 今回の場合は棒状の武器を変化させドラゴンロッドという武器にしたんです。ドラゴンフォームはマイティフォームよりもジャンプ力が強化されていて、えっと……30mまで跳ぶことが出来るそうです!』
因みに、30mはビルで言うと7~8階建ての物に相当するぐらいの高さであるらしい。飛ぶというさらに自由度の効く物と比べると多少は行動に制限はあるかもしれないが、それでも空中の敵に攻撃できる手段の一つであることは変わりない。
「そんなことまでできるなんて……」
「さぁ、勝負はここからだ!!」
「ッ! えぇ、望むところよ!!」
双方四人ともが、大きなダメージを負ったまま、試合はさらに熾烈を極めていく。一体どちらが勝つのか、観客席の全員が空中にいる三人を、そして地面にいるクウガをその目で追っていた。だから、である。
「あっ……り、鈴音ちゃん逃げるんだ!!」
「え?」
鈴音のさらに上から、黒色の刃が迫っていたということに彼以外誰も気が付いていなかった。
次回、このインフィニットストラトスの世界の大前提が崩れる。