「て、転生者?」
「転生者……」
一夏の発した言葉。それに対してのIS組、麻帆良組の反応はそれぞれに違っていた。
IS組は知らないについての困惑、麻帆良組は彼の見た物に対する同情。それは、あの世界のことを知っている者知らない者の違いであった。
「なんなの、その転生者っていうのは」
「て、転生者っていうのは……」
「転生者は、人の人生を好き勝手に変えようとする集団のことだ」
転生者。まさか、この言葉をこの世界で聞くことになろうとは士も思わなかった。
転生者とは、死んだ人間を転生神という存在が一般人が普通に生活していたら絶対に手にいれることのできない能力を持たせて異世界に送り込む、いわゆる異世界からの侵略者、テロリストの俗称だ。
元のその世界の人間たちじゃ太刀打ちできな能力、さらに初期装備で洗脳能力を持っているため、元からその世界にいる人間たちは、なすすべがない。だから、普通は転生者によって潜り込まれた世界は、その転生者によって蹂躙されて、弄ばれるしかない。
士は以前転生者に潜り込まれた世界に足を踏み入れたことがある。その世界は転生者によって何百、何千という人間が行方不明扱いで惨殺、そして数十人の女の子と、一人の女性を汚し、弄び、心に絶対に消えることのない深い傷を残した。もしも士たち不確定要素があの世界に足を踏み入れなかったら、どうなっていたかはわからない。
「そうだ。そして、お前たちはみんなその転生者に色目を使っていたな。俺には、発情したメス猫のように見えたよ……」
「……」
そして、彼の回ったこの世界に似た世界。そこは、士たちが足を踏み入れるという奇跡がない世界だった。ただ、それだけだ。
「セシリア・オルコット。クラス代表を決める模擬戦で最初に戦った相手を好きになる!」
「な……」
「シャルロット・デュノア。自分のことを女だと見抜いた男を好きになる」
「え?」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。自分を助けた、または優しくした人間を好きになる」
「……」
「更識簪並びに更識楯無! 姉妹仲の仲裁に入ったらお前たちもコロッと落ちてたな」
「い、一夏……」
『……』
「山田先生……優しいアンタが転生者に親身に寄り添っている姿は最高に滑稽だったぜ」
「一夏君……」
「篠ノ之箒と凰鈴音! ……ッ」
「え?」
「一……夏?」
「あんたたちは割かし俺の近くにいてくれることが多かったな。だけど、その分裏切られた時は腹立たしかったぜ……狂いそうなほどにな!」
「……」
「織斑千冬……転生者の餌食になって一番の下僕になるのは、アンタってことが多かったぜ……」
「……」
「ここにいる奴らだけじゃねぇ! 転生者の共犯者であるIS学園の生徒全員もだ!」
『え?』
「世界で『初めて』の『ただ一人だけの男性操縦者』で、『織斑千冬の弟』っていうのだけでピーチくぱーちく騒いで、『二人目』をないがしろにしていたのに、洗脳されたらすぐに堕ちていく姿を見るのは胸が詰まるほどだった……」
『そ、そんなこと……』
『でも、ないって言いきれる?』
『もしも、一夏君が千冬様の弟じゃなかったら、私たちは一夏君のこと……』
一夏は、それまで見てきたたくさんの転生者によって貪られてきた世界の友達のことを語る。
それは、まるで罪状を読み上げる検事のように、罪人は自分だけじゃない、お前たち全員が同罪だとでも言わんばかりに叫び続けた。
その言葉を受けた少女たちは、彼に対して反論することが出来なかった。それは、もしかして心の隅にあったからなのかもしれない。
自分が織斑一夏を好きになったことを本当に後悔していないのか、それが本当に心の底から好きで、例え誰が現れても揺るがない自信はあったのかと。
けど、彼女たちはその心の声をずっと無視し続けていた。もし、そんなことを想ってしまったら自分はもう織斑一夏にあの笑顔を向けれないと思っていたから。
「そして……そして織斑一夏ァ!!」
「!」
ワームの姿だった織斑一夏は、思わずその言葉で再び織斑一夏に擬態する。まるで、それが本当に自分の姿だと誇示するようだ。
本物の一夏は空を見上げると言った。
「一番許せねぇのはお前だ……お前がいたから……人生を奪われたんだ……。俺は……あんたを絶対に許さねぇ……絶対にだッ!!」
その顔は、怒っているようにも、悲しんでいるかのようにも見えた。
「なるほどな、大体分かった……それで、お前の目的は何なんだ?」
一夏は、この言葉を待っていたかのように、口を三日月のように細くして笑いながら言った。もうそこには優しい好青年の顔はない、ただただまるで狂ったかのような狂人の姿しかなかった。
「目的? 決まってる……破壊だよ、この世界を……そして再生する! 俺の思った通りの世界にな!」
「思った通りの世界? それって……自分の欲望のままに世界を変えるって事か?」
「その通りだ……」
「ふざけるな! それじゃ、転生者と何にも変わらない! お前がやろうとしていることは、ただ欲望のままに人を傷つけ、陥れ、自分だけが避ければそれでいい転生者と全く同じことなんだぞ!」
「それがどうした! 俺には、その権利があるんだ。だったらそれを使わない手はないだろ?」
「ッ!」
危険だ。ユウスケは思った。目の前の一夏は文字通りすべてを失っている。家族も、友達も、自分自身の人生も、帰る場所も、なによりも本当の笑顔を失っている。あとはもう彼に残っているのはただ一つ、憎悪だけ。きっと、自分でも制御できないくらいの憎悪が、彼を動かしているのだろう。
救えるのか、彼を。どうやって。転生者と同じく外道の道に入っている少年を助けることが出来るのだろうか。
「お前の言い分は分かった」
「千冬先生……」
ユウスケの考えがまとまらない中、一人集団から抜け出してきた織斑千冬は、背後に誰もいない場所に立つと一夏に対していう。
「私を殺したいのであれば勝手にしろ」
「先生ッ!」
「だが小娘たちには手を出すな。例え別世界の彼女たちがどうであれ、私の生徒なのは変わりないのだからな」
自分の命を差し出す代わりに生徒を守る。なるほど、先生として最も称賛される行動だ。つまり、この行動もまた自分自身の名声を高めるための行動だ。
一夏にとって、千冬のとる行動は全てが自分の保身のための行動。身内の生死も、自分を慕てくれる者たちの安全も関係ない。ただただ自分の名誉心を向上させるためには自分の命すらも差し出す浅ましい女にしか見えなかった。
「あぁ、そうかよ……なら望み通り殺してやるよ……織斑、千冬!!!」
一夏は叫びながら再びオルフェノクの姿になると、指先を千冬に向けた。その瞬間、オルフェノクの指先が伸び進んだ。
これは、オルフェノクという怪人全般が持っている≪使途再生≫という能力だ。オルフェノクはこれによって人間に眠っているオルフェノクの記号を活性化させることによって普通の人間をオルフェノクとして覚醒させるのだ。ただし、実際にこの攻撃によってオルフェノクになれる人間はごくわずかで、使途再生を受けた人間はそのほとんどがオルフェノクになることなく灰化して消滅してしまう。
果たして、千冬はどちらなのか。オルフェノクに覚醒できる人間か、それとも灰化して、消滅してしまうのか。
答えが出るまで、あと少しだ。
この世界はすでに正常な時から逸脱してしまった。二人の一夏。別世界の自分たちの痴態を知った少女たち。
もう、元に戻ることは決してない。
この世界は破壊されたまま進む。進んだのち、再生するのか、それとも生と死の輪廻に飲み込まれて崩壊の道を選ぶのか。
偽物と知った織斑一夏がどの道を選ぶのか。本物の織斑一夏の選ぶ崩壊の道を突き進むのか、それとも偽物が再び本物を奪い返すのか。
しかし、たとえ答えが何であれその先に見える物は分かり切っている。
例え、どの道を選んだとしても、例え誰が生き残ったとしても、例え誰が本物で偽物であったとしても。
それでも愚か者たちは歩き続ける。
それでも立ち止まることは許されない。
この世界の行く先は、地獄へと続く坂道だ。
次回、仮面ライダーディケイド エクストラ
「俺は化け物なんだよ」「どっちの一夏を殺そうとしてるの?」「何故黙っていた、答えろ!!」「デスマッチだ!」「私にはもう誰かを好きになる資格なんてない」「大切な物を守る。そのために必要な物は何だ」「さようなら織斑一夏」
【一人の守り人の最期(ロンリーガーディアンラスティング)】全てを破壊し、全てを繋げ!