仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 実は今回の世界で本物一夏の言った転生者の問題、プリキュアの世界と同じじゃないかとの意見があると思いますが、実は同じ転生者でも今回の転生者はプリキュアの世界の転生者とはまたべつの種類の転生者の問題について主題にしているのです。分かるかな?


IS〈インフィニット・ストラトス〉の世界2-2

 織斑一夏の襲撃から早数時間、時は真夜中に入っていた。

 いつも通りならば大多数の生徒は眠りにつき、起きているのは勉強熱心な学生ぐらい。だが、今日この日だけはいつもとは全く違っていた。いや、この日、この夜にいつも通りの夜を迎えれる人間の方が珍しいのかもしれない。

 IS学園では、立地の問題もありほぼ全ての生徒が下宿している。その生徒たちが下宿している寮の部屋の多くが明かりがつけられていた。また、暗くなっている部屋の生徒は眠れているのかと聞かれるとそうではなく、ただ部屋を暗くして寝ようとしているが寝られないという生徒が多かった。

 中には、何とかして眠る方法を探るために気分転換も兼ねてIS学園の中にとどまっていた生徒もいる。本来であれば消されているはずのIS学園の各施設の電気がつけられているのはそのためだ。

 通常であれば先生たちが生徒たちに早く帰るように促すのである。しかし、こと今日に関しては生徒たちの気持ちを汲んで先生たちも何も言わなかった。というより、何も言えなかった。生徒たちの感じた衝撃は、それほどまでに大きなものだったからだ。

 

「ハッ! ハッ! ハッ!」

 

 武道場、そこで剣道の竹刀を一心不乱に振っている少女がいた。篠ノ之箒だ。

 彼女の実家である篠ノ之神社は剣道の道場でもあったため幼き頃から剣道をたしなんでいた。中学時代に剣道の全国大会で優勝した実績を持っており、このIS学園でも剣道部に所属している。

 

「ハッ! ハッ! ハッ!」

 

 箒は、闇雲という言葉が適切なほどに竹刀をかれこれ一時間以上も振っている。

 本来であれば午前中の模擬戦、仮面ライダーディエンドの襲撃によって疲れた体を休ませるために眠らなければならない。それは、彼女自身も分かっていることのはずだった。

 だが、眠ることが出来なかった。頭の中で何度も何度も織斑一夏の言葉がリフレインして、彼女の眠ろうとする気を阻害していた。

 だから、こうして無心になろうとして竹刀を振っている。

 何度も、何度も、何度も。

 けど、それは逆効果だったのかもしれない。

 織斑一夏と出会ったのは小学生の頃。一夏が自分の家の剣道場に通い始めた時だ。それからはほぼ毎日のように出会って、姉同士が親友だったこともあってすぐに仲良くなった。

 ある時の放課後に、小学校の男子生徒からいじめにあった時、一夏に助けられた。そう、あの時だ。あの時から自分は惚れやすい性格だったのかもしれない。

 もし、あの時の人物が一夏じゃなかったら、自分にとって一夏とは何だったのだろうか。もしもあの時、一夏以外の人物が自分を助けてくれたとして、自分はその人物に好意を持っていたのだろか。

 恋は盲目、という。自分は一夏という人間を表面的にしか見ていなかったのではないだろうか。だから、一夏が偽物に変わっていたとしても気が付かなかった。だから、自分は……。

 

「ッ! ハァァァ!!」

 

 ダメだ。少しでも気を抜くとすぐにネガティブな発想をする。

 無心だ、何も考えるな。考えたらダメだ。考えたら、もう自分は、誰も、何も好きになれない気がする。

 

「ハッ! はっ! ハッ!!」

 

 考えるな。考えるな。考えるな。

 

「ッ! ハァッ! はぁっ!!」

 

 考えるな。考えるな。考え……。

 

『なぁ、尻軽女ども』

「ッ!」

 

 その時、竹刀が箒の手をすり抜けて飛び、武道場の壁にぶつかって床に転がる。汗で手が滑ったのか、それとも竹刀の振りすぎで竹刀を握る力が無くなっていたのか。だが、どちらにしても箒はその竹刀を拾いに行こうとはしなかった。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 行けなかった。

 箒は、ワナワナと震える自分の手を見る。

 一夏の言った言葉。事実なのかもしれない。自分が簡単に心変わりする人間であることは知っている。

 昼間、自分が死の淵に立たされた時あれほど憎んでいた姉に謝りたいと、あまりにも簡単に、あっさりと心変わりしたときに気が付いていたことだ。

 自分は、ちょっとしたことで簡単に心が入れ替わる人間。今この人生では一夏以外に自分の心を揺さぶるような人間にたまたま出会えていなかっただけで、本当は一夏以外の男性に出会えば、自分は簡単に幼い頃の恋心を捨てて乗り換えていたのかもしれない。

 そんな、自分のあまりにも下世話な性格が、一夏を傷つけた。あんなにやさしかった一夏の性格を歪ませて、あんな狂人に変えてしまった。

 

『あんたたちは割かし俺の近くにいてくれることが多かったな』

「ハァ。ハァ。ハァ。」

 

 取り返しのつかないことをした。

 

『だけど、その分裏切られた時は腹立たしかったぜ……』

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 だけど、そんな後悔を何度してももう遅い。何故ならば。

 

『狂いそうなほどにな!』

「ッ!」

 

 自分が恋心を持った彼の心を、自分で踏みにじってしまったのだから。

 

「あ……あ゛あ゛ああ゛あああ゛ぁぁぁぁ!!!!」

 

 箒は、両手で自らの顔を鷲掴みし、嘆きの叫びをあげる。果たして、それが一夏のことを想っての嘆きだったのか、それとも自分の心を守るための嘆きだったのかわからない。

 けど、きっと後者なのだろう。箒は、確信に近い何かを持っていた。

 箒の心は、揺れていた。

 そして、揺れていること自体が箒は許せなかった。

 自分の存在の何もかもが、許せなかった。

 

 IS学園には生徒が使える大浴場があった。今更の事ではあるが、一つの学校が持っているにしてはあまりにも大きく、街中にある銭湯のような規模を持っており、日本各地からきた少女たちにはとても評判であった。

 しかし、それと同時に寮のそれぞれの部屋にはシャワーが備え付けられていた。というのも、この学園には世界各国のIS適性者が集まっているため当然銭湯、湯船につかるという文化のない国からも人が集まっているからだ。というより、日本のように湯船につかる文化という物は少数派で、海外ではシャワーのみでお風呂を済ますということが大多数であるようだ。これに関しては、水の多い日本とは違い海外では湯船にたまるほどお湯を使うと次に使う人の分がなくなるから、等という理由があるそうだ。

 彼女、セシリア・オルコットの母国イギリスもまた。湯船にはつからずにシャワーのみで済ます文化の国であった。

 元々プライドが高く自信家で、一夏に対しても高圧的な態度を取っていた彼女の心が軟化したのは、その一夏が初めて自分の専用機白式を手にしてから行ったクラス代表を決める戦闘でのことだ。

 その戦いは終始セシリアの優勢でことを運んでいた。しかし、白式の本領が発揮された瞬間に次第に劣勢となり、もしエネルギー切れを起こしていなかったら敗北していたのは自分であっただろう。

 そう、一夏が白式とその武装について理解力がなかったためにかろうじてという形ではある物のセシリアは勝っているのだ。

 しかし、セシリアは本来自分が獲得するはずだったクラス代表の座を一夏に渡しそれ以来高圧的だった態度は一変して好意を抱くことになった。

 それまでの自分の価値観全てが、そのたった一度の勝ちに、敗北に、歪められてしまった。その戦いで見た一夏の姿に、自分が理想としていた男性像を見たから。

 

『セシリア・オルコット。クラス代表を決める模擬戦で最初に戦った相手を好きになる!』

 

 本当にそうだろうか。

 自分は、もし一夏とは別に男性操縦者がいて、その人物に負けていたとしても、その人物に好意を抱いていたのだろうか。もし一夏の前にその男性操縦者と戦っていたら、そっちの方を好きになって、一夏のことなど見ていなかったのだろうか。

 わからない。けど、たった一度の敗北で自分の十数年の価値観の根底を覆させられているのだから、もしかしたらそうなのかもしれない。

 もし、そうだったのなら、自分はなんてチョロイ女なのだろう。

 

「ッ!」

 

 セシリア・オルコットは名門貴族オルコット家の遺児である。両親を列車事故で亡くしており、それ以来オルコット家を守るために努力を惜しまなかった。すべては両親が残した資産、財産を狙う金の亡者たちから遺産を守るために。

 よくもまぁたった一度の戦闘でコロッと人生を覆されるような人間が、両親の残した遺産を金の亡者たちから守り切れたものだと、自分で自分を嘲笑う。

 たった一人で戦って、たった一人で守ってて、たった一人で生きてきて、自分はあまりにも調子に乗っていたのだろう。

 もしかしたら自分はオルコット家という名前に守られていたのだろうか。名門オルコット家の遺児に手を出せば、両親に恩を感じている他の名門貴族から報復される。金の亡者たちはそう考えて手加減していただけで、実は本気を出せば簡単に遺産を根こそぎ盗られる状態だったのだろうか。

 そう、あの戦闘で一夏に心を奪われたように。

 

「グッ……ッ!」

 

 何故気が付かなかったのだろうか。もしも自分が一夏と結婚出来ていたら、オルコット家の遺産は一夏の物になる。あれほど大切に守ってきた全てを、たった一度の戦闘で負けた相手に譲ることになる。それまでの十年足らずの人生全てが無駄になる。それを分かった上で自分は一夏のことを好きになったのだろうか。両親が残したもの全てをふいにしてでも、彼のことが好きだと、心の底から本当に言えるのだろうか。

 たった一度戦った相手に自分のすべてを渡す覚悟が、本当にあっただろうか。

 たった一度。

 たった一度。

 たった……。

 その、たった一度の過ちを積み重ねた結果、彼の心を傷つけたのだ。

 

「ッッッ……!」

 

 立っていることも辛くなってきたセシリアは床にアヒル座りになって、叫んだ。

 その叫び声はシャワーの音にかき消されて大きく響くことは無かった。けど、どれだけ叫んでも過ぎ去った時は帰ってこない。傷ついた彼を助けることなんてできない。

 自分の変わりやすい心を恨むことしかできない。

 シャワーはそれから一時間近く流れ続けた。今の彼女に、外に出られるほどの気力なんて到底なかった。

 夜は更けていく。多くの少女たちの心の傷を広げながら。




と、いうことで今回からしばらく悩む乙女シリーズとなります。
 ところで、本物一夏のセリフ『腹立たしかったぜ、狂いそうなほどにな』には、実は元ネタが存在します。これ、分かる人がいたら結構すごいと思います。

最近、自分としては文字数が少ないとおもうのですが……

  • 最低でも5000文字欲しい
  • 最低でも6000文字欲しい
  • もう少し心理描写を描いて欲しい
  • もう少し会話を増やして欲しい
  • このままの文字数でもいい
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