「こんなところでどうしたの、シャルロットちゃん?」
「会長……それに、皆も……」
寮の廊下、そこで体育座りのまま、寝るということもなくどこかに行くというわけでもなくただただボーッとしているシャルロット・デュノアの姿があった。
あの一件以降、彼女は自分の中で渦巻き始めた不安と向かい合うために寮の自分の部屋へと帰ろうとした。だが、本当にそれでいいのか。どこかほかに行く場所があるんじゃないかとも思っていたるところを歩き回っていたの。
答えが出ない時、人はひたすらあたりをうろつく。それは、歩いているうちに何か答えが出ることを願っての無駄な行動であるともいえる。彼女は、自分が無駄な行動をしているということは重々承知だった。だが無駄だと分かっていても何か行動しないと自分の心が持たなかった。
けど、結局もたらされたのは疲れだけ。心身ともに疲労した彼女はついに立ち止まってしまい、結局廊下で一人座っていた。
そんな彼女に声をかけた更識楯無の後ろにいたのは、シャルや一夏と同じクラスの面々だ。
「こんなところで座ってると、風邪ひくよー」
袖丈が長い制服を身に纏う布仏本音。
「まぁ、ショックだったのは、私たちも同じだけど……」
ヘアピンを髪に付けた少女、鷹月静寐。
「私たちも、織斑君があぁなっちゃった原因の一つって言われるとね……」
ショートカットの少女、相川清香。
「私たちが彼にできる贖罪、それを考えると眠ってなんていられません……」
清楚、大和なでしこという言葉がピッタリと似あいそうな少女、四十院神楽。
他、鏡ナギ、岸原理子、夜竹さやか、国津玲美、そして7月のサマーデビル(谷本癒子)に本名不詳の少女かなりん。
以上IS学園1年1組の少女たち10人である。彼女たちは各々で本物一夏の発した言葉について考えていた。だが、一人一人で悩んでいても答えが出るわけがない。そのため、そんな彼女たちを見ていた楯無が、誰かと話す機会を作ってもらうために集めたのだ。
そんなこんなで、楯無は生徒会長として生徒たちの心を守るために戦っていた。そんな余裕、あるはずがないほどに自分自身も辛いのに。
果たして、それは使命感か。それとも使命感を隠れ蓑として自分の心の平穏を保とうとする防衛本能か、楯無自身にも分からないことだ。自分の後ろにいる少女たちのように、悩んでいることを表現できたら、簡単で楽であるのに。
1年1組の少女たちもまた悔やんでいる。自分たちが本物の織斑一夏を傷つける原因になってしまったということに。
自分たちが、織斑一夏を客寄せパンダの如くに注目し、騒ぎ、特別扱いした結果、第三者の男性操縦者をおざなりにして、嫉妬心を抱かせた。それによって、自分たちのみならず、今眼のまえにいる楯無やシャルロットの人生にまで影響を与えてしまったという罪。その罪の清算の方法が考えつかないでいたのだ。
確かに、自分たちは織斑一夏のことについて騒ぎすぎたのかもしれない。世界で初めての男性操縦者としてIS学園に入学してきた唯一の男子生徒にして、自分たちが尊敬してやまない織斑千冬の実の弟である織斑一夏。
今になって思うと、何故あそこまで自分たちは彼を特別扱いしてしまっていたのだろうか。本当に、ただISが操縦できるからという理由だけだろうか。本当は、彼のことを物珍しい天然記念物か何かと勘違いしていたのではないだろうか。
ISを操縦することが出来る。つまり、自分たちとおなじ土俵の上に立つことが出来た唯一の男子。本質はただそれだけ。ただ、それだけのことのはずなのに、自分たちは彼を持ち上げすぎて、日々日々何かあった時には一夏に相談したり、一夏に話しかけて、からかったりしていた。この女尊男卑の世界において、男がISを動かしたことについて恨めしく思うことはあったとしても、彼のことを物珍しくみる理由なんてどこにもないのではないだろうか。
それとも、織斑千冬の弟と聞いて、もしも結婚なんてことになったら義理の妹として織斑千冬の近くによれるということを期待していたのではないだろうか。
いや、後者は違うかもしれない。何故なら、自分たちは目の前にいるシャルロットが、シャルルとして、男子生徒として転入してきたときも同じように騒ぎ散らしていたのだから。
「そんな、皆は悪くないよ。悪いのは、きっと……」
彼女、シャルロット・デュノアはこのIS学園に世界で二番目の男のIS操縦者、『シャルル・デュノア』という名前で転入してきた。
彼女の実家、デュノア社はISの製造、販売を行っている会社だ。量産機ISのシェアは世界第三位という大企業ではあるが、設立当初から技術・情報力不足によって生産できるISが第2世代で止まっており、主流となっている第3世代の開発に着手することが出来ずに経営危機に陥っていた。
シャルロットは、そんなデュノア社が苦肉の策として世に出した広告塔として男性であると偽り、また同じ男性であり、本当の唯一の男性操縦者である織斑一夏に接触する機会を増やし、その使用機体である白式と、彼の戦闘データを盗む目的でデュノア社から送られてきた。
同じ男性ということで同部屋となった一夏に本当の性別が暴露されるまでそれほど時間はかからなかった。同じ男性だと油断してシャワー浴中のシャルロットにシャンプーを渡そうとした際に彼女が女性であると知ったのである。
当初は、一夏に自分の境遇について話し、学園を去ろうとしたシャルロットであったが、一夏が彼女のと自分の境遇をを重ね合わせ、IS学園特記事項のためにこの学園にいる間はシャルロットを実家に連れ戻すことはできないと説得し、彼女を思いとどまらせた。
一夏は自分に居場所を作ってくれたのだ。だから、自分は彼のことを好きになったのだ。
『シャルロット・デュノア。自分のことを女だと見抜いた男を好きになる』
「私……それに僕だから……」
本物の一夏は言っていた。自分は他の世界では自分のことを女だと見抜いた男のことを好きになっていたと。そうだ、居場所とかそんな難しいことじゃないんだ。自分の性別を暴いた。暴いて、そしてそれを許してくれた。だから好きになった。そんなあまりにも単純で、簡単なことで誰かのことを好きになっていたんじゃないか。そんな単純な思考をしているから、一夏のことを傷つけてしまったんじゃないか。
きっと自分はこれからも単純なことで誰かのことを好きになる。自分を受け入れて、そばにいてくれて、ただそんな理由で好きになる。まるで渡り鳥だ。それも、行く先々で浮気をして何食わぬ顔で帰ってくる最低な渡り鳥。
どうしてそんな単純な性格に育ってしまったのだろう。亡くなった母親の分まで頑張って生きようと決めたはずなのに、そんな自分が嘘みたいに快楽に走ってしまった。そんな事実、受け入れることなんてできない。だが、あの時の一夏の悲しげな表情は、断じて嘘をついているような顔じゃなかった。
自分は、好きになった男の子にあんな顔をさせてしまった。悲しませ、歪ませ、苦しめ、孤独の海に放出してしまった。かつての自分のような一人ボッチで生きる苦行を彼に押し付けてしまった。
そんな自分に、生きる価値はあるのだろうか。そんな自分に、これからもISに乗り続ける資格があるのだろうか。
「辛いのは、分かるわ。でも、だからっていつまでもふさぎ込んでたら埒が明かないわ」
そういうのは楯無である。本人はあくまで取り乱していない感を出しているが、その手に持っているいる何も書いていない扇子が、彼女が心身穏やかではないということをありありと表していた。
「今の私たちにできることは……怪物となった織斑君と、怪物だった織斑君をどうするか……」
「どうするって……」
「……これは、私の一人言だけど……」
「え?」
楯無は、そういうと扇子をたたみ、彼女たちに背中を見せながら言う。
「可愛い後輩のためだったら、手を汚しても構わない」
「ッ!」
「あなたたちが、そう願うんだったら……」
「……」
誰もが考えていたことだ。しかし、考えないようにしていたことだ。
仮に、本物の織斑一夏が自分たちのもとに帰ってきたとしても彼はオルフェノクという怪物。果たして、これまで偽物一夏に接していた時のように気楽に話しかけることが出来るだろうか。簡単に恋だの好きだのに一途になることが出来るだろうか。逆もまた同じく。
しかも、本物一夏は自分たちに復讐しようとしている。そんな被疑者でありながらも被害者である彼と戦うことが出来るのだろうか。例え、殺されることになろうともそれが彼への贖罪になるのなら。楯無が自分が代わりに手を汚すということを話す直前までそう考えていた者もその中にはいた。しかし、もしも本当にその場面が訪れた時、自分はそんな行動をするのだろか。命乞いをするのか、はたまた逃げ出すのか。どちらにしろ絶対に訪れるべきことなのだから、考えないわけにはいかない。例え、自分の脳がそれを拒否していたとしても、いづれ訪れる審判の時どういう判断を下すのか。
だが、この時の彼女たちはまだ気が付いていなかった。自分たちの考えにあからさまにおかしな物が混じっているということに。織斑一夏のことを考えるのであれば当然だが、それであり不自然なことを思い浮かべているという事実に、誰もまだ気が付いていなかった。
最近、自分としては文字数が少ないとおもうのですが……
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最低でも5000文字欲しい
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最低でも6000文字欲しい
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もう少し心理描写を描いて欲しい
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もう少し会話を増やして欲しい
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このままの文字数でもいい