「たく、あいつら夜遅くまでバカ騒ぎしやがって」
「まぁまぁそれぐらいみんな嬉しかったんでしょ」
昼間の激戦から、何時間たったのだろう。時間はすでに深夜に入ろうかとしていた。士たちは今の今まで麻帆良学園全体が主催した祝勝パーティーに参加していた。本当は夜通しやるつもりだったそうだが、さすがに一日で色々なことがあって生徒全員が付かれていたため、この時間でお開きとなった。現在士はユウスケ、夏海とともに光写真館に帰っている最中であった。そして、もう二人。
「士先生は、もう次の世界に行かなければならないんですか?」
「…そうだな、またこの世界に来れるかは分からん」
「なんか残念だな…もう少し夏海さんと話をしたかったのに…」
雪広あやかと椎名桜子の二人。士たちが次の旅に出るということなので、比較的疲れていなかった桜子と、委員長であるあやかが彼らの見送りに来たのだ。
「私もです。でも、いつまでもこの世界にいるわけにもいきませんから」
「存じております…世界を廻る旅……お気をつけて」
「はい!」
旅は続いていく。それはどこまで行くのか、どこで終えるのか分からない。しかし、いつかまたこの世界に来ることがあるだろう。少なくとも夏海はそう思っている。桜子は何となくそんな感じはしなかったのだが。そんなこんなで写真館に到着した。
「じゃあな」
士は情緒も何もないかのように扉を開けて姿を消そうとする。その直前、桜子が一言。
「なんか、嫌な予感がする……」
「へ?」
その瞬間であった。
「ぐぬっ!!」
士の顔にパイが当たったのは。士の顔に当たったパイはゆっくりとずれ落ち、顔から外れて地面に落ちた。
「うわぁ、本当に引っかかっちゃった」
「キバーラのアドバイス通りに仕掛けて正解でした!」
「ふふん、だてに彼と旅はしていないわよ♡」
鳴滝姉妹とキバーラのコンビが扉に仕掛けた装置、それによって鳴滝姉妹にとっては昨日の失敗を取り返したようだ。因みに、どんな仕掛けを用いたかは企業秘密である。
「お前らなぁ…」
士は、顔にべったりと張り付いたクリームを右手でゆっくりと取る。そしてクリームの下から現れたのは、般若のような顔であった。
「許さん!」
「わぁ~士先生が起こった!!」
当たり前だ。鳴滝姉妹、キバーラそして士の追いかけっこが光写真館の中で始まった。
「逃げろ~!!」
「待てこのガキ!!」
「いや、どっちがガキだよ」
「全くです…」
「ほんとあの二人は…申し訳ありません夏海さん」
そう言って残った四人も士を止めるために写真館の中に入っていく。その間にも士はいつもの背景ロールがある部屋に来ていた。
「士く~ん写真出来上がっうぉっと!!」
「うわぁ!!」
「危ない!」
その時、ちょうど隣の部屋から出てきた栄次郎と鳴滝姉妹が激突してしまった。その時栄次郎は手に持った写真をその場にあった机の上に落してしまった。それは士が撮った写真であった。3-Aの仲間達が全員映っている写真、その後ろにはネギによく似た赤髪の男性の顔がうっすらと映っていた。
「おおっとっと!!」
栄次郎は転びそうになったため、近くにあった物に捕まった。しかし掴まった物が悪かった。それは写真を撮影する時、後ろにある背景を入れ替えるための鎖であった。なので…。
「え!?」
「そんな…」
「え、なに?どうしたの?」
背景ロールが別の物に変わってしまった。その意味を知らない鳴滝姉妹、あやかそして桜子は、夏海達の反応をみてどうかしたのだろうか、と思いながら見る。その時、顔にまだパイを付けたままの士が説明する。
「この背景ロールが下りちまったってことは…もうここは麻帆良学園のある世界じゃない」
「はい?」
桜子の嫌な予感の正体がこれであった。
「つまり、僕たちはもう別の世界に来てしまったんだ」
ユウスケが士の説明に補足を入れる。
「えっとつまり…私たちは戻れないと……」
「…はい」
数秒間の沈黙が流れた。それこそ、外から流れてくる音楽がなければシーンとでも聞こえてきそうな。
「えぇ~!!!」
「な、なんということでしょう…」
「まっ、やっちまったもんはしょうがない」
「ウフフ、旅人追加4名様ご案な~い」
「う…嘘ぉ!?」
驚愕に顔をゆがめる一行。そのため、背景ロールを見ることができるほどの余裕を持っているのは士と栄次郎ぐらいであった。背景ロールに書かれた絵。それは、城に見えるが、後ろが空であるため空中都市といった方がいいのかもしれない。傍目から見ると、まるでドリルのようにも見える。次の旅は、いったいどうなるか、考えただけでもゾクゾクする。
次回、仮面ライダーディケイド エクストラ「ソードアート・オンライン?」「ゲームが現実になったってことだろ?」「ディケイド…それが新しいクエストか?」「お兄ちゃん…会いたかった」「これが私の望んだ世界だ」
【破壊の使者】全てを破壊し、全てを繋げ