仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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IS〈インフィニット・ストラトス〉の世界2-23

 新たな仲間を迎えたIS学園の面々。それを後方から見守っていたのは夏海と麻帆良ガールズ、そしてユウスケ&士である。

 

「よかった、これで一件落着ですね」

「はい!」

 

 麻帆良ガールズの面々は特に嬉しそうだ。怪物となった友を殺す、そんな悲劇を彼女達に味わってもらいたくなかったから。

 この選択を、のちに後悔することだってあるだろう。だが、少なくとも今この時ある幸せは幻想でも何者でもない。もし、この先後悔することが起ころうとも、きっとこの時のことを思い出して乗り越えてくれることだろう。あやかは、そう感じていた。

 一方士は、そんなIS学園の人間たちを首にぶら下げたトイカメラで撮影すると、なにやら面倒くさそうな物を見たという風にある方向を見る。

 

「いや、まだ問題は残っている」

「え?」

 

 彼が見つめている方向を夏海達も見る。すると、そこには灰色のオーロラ。士やある人物が移動時に使用しているもやはお馴染みとなった物がそこに現れていた。

 

「あ、あのオーロラって!?」

「あぁ……大ショッカーが使っている奴だ!」

「ってことは……」

「敵が、来るってこと!?」

 

 一夏たちはそれぞれに別の反応をした。

 一夏にとってそのオーロラは自分が一度死んだときに目の前に現れたトラウマ級の代物。

 そしてワームにとっては、この世界に来るきっかっけなったある意味では恩人のような物。

 だがそのオーロラに対しての共通認識として、それが大ショッカーが異世界を移動する際に使用している物であるということには変わりはない。

 考えてみれば、ワームの二人は大ショッカーからの離反者である。裏切り者の粛清に来たとするのならば考えられないこともない。

 

「篠ノ之! 絢爛舞踏だ!」

「はい!」

 

 専用機を含めた先ほどまでの戦闘に参戦していたすべてのISのエネルギーは、もう枯渇しており残っていたとしても雀の涙程度だった。その状態で大ショッカーの怪人と戦うのはかなりまずい。

 織斑千冬の指示に従った箒は、紅椿の単一仕様能力である絢爛舞踏を発動する。実弾系に関してはどうしようもないが、これで少なくともエネルギー兵器を使用して戦うことはできる。

 

「いったい何が……」

 

 何が来るのだろうか。つぶやいたユウスケの言葉に、周囲の人間にも緊張が走る。彼は、敵が現れればすぐに戦闘に入れるようにと変身ベルトアークルを出現させ、麻帆良ガールズもまたいつものパクティオーカードを取り出した。

 出てくるのがショッカーの作り出した改造人間であればまだ分かりやすい。しかしもし魔化魍のように巨大な敵であったら、アンデッドのように倒すのに一苦労する敵であれば一波乱二波乱は覚悟しなければならない。

 その中で一人だけ冷静な人間がいた。

 

「そんなに気を張るな。何が出てくるかなんてわかり切っている」

「え?」

 

 門矢士である。

 

「どういうことですか士君?」

「アイツがお宝を残したままにするわけない」

「あッ!?」

「まさか!?」

 

 その士の言葉で光写真館組、そして麻帆良ガールズも気が付いた。

 そうだ。あの男の性格であれば、一度手にいれたお宝をそのままにして別の世界に行くことなんてありえない。それに、あの襲撃以降一切姿を見せなかったことも気になっていた。まさか、このタイミングを狙っていたのか。織斑千冬が暮桜と共に帰還し、誰もが疲弊しきっているこの状況を狙った。と、勘繰ってしまうが、実は単なる偶然であったりする。

 結論から言って、やはりオーロラから出てきたのは士たちが予想した人間であった。

 

「やぁ、士」

「やっぱりな……」

「あ、あなたは!?」

「お前は、確か……海東大樹」

「一日ぶりだね更識楯無、それに織斑千冬」

 

 海東大樹、昨日のIS学園襲撃の際に本物の織斑千冬によって撤退していた彼がはた迷惑なことに戻ってきてしまった。よくあれだけやられておいて帰ってこれるものである。

 

「今度こそ暮桜を貰いにね。それと、僕のお宝も返してもらうよ」

 

 昨日あれほど痛い目を見ていたはずなのに性懲りもない男である。このしぶとさを何か別のことに生かせないものだろうかと、思わないでもない。

 

「これをお前の元に置いたままにしておけばまたよからぬことについかねないからな。これは、まだしばらく預からせてもらう」

「それは困るね……なら、やっぱり力づくで」

 

 海東は、ネオディエンドライバーを取り出し銃口を織斑千冬に向ける。それを見て二人の男子生徒は動き出した。

 

「「千冬姉!」」

「案ずるな、あいつは本気で撃つつもりはない。最も、撃たれたとしてもオルフェノクになれば簡単に防ぐことが出来るがな」

 

 この時IS学園の生徒全員が思った。別に心配しなくてもいいんじゃないだろうかと。考えてみれば、ただでさえ化け物並みに強い織斑千冬に、さらにオルフェノクという人間の進化の先の一つとなる変身能力が備わった。それは、鬼に金棒というのではないだろうか。

 いやこの場合は織斑千冬にオルフェノクの方が正解、というよりそのまんまである。

 むしろ何となく海東大樹の方が心配になってしまうほどだ。もしかしたら逆に海東の方を応援してあげた方がいいのではないだろうか。と思ってしまう。

 

「だが、せっかく連合君の者も大勢いるんだ。この機を逃すのはもったいないな」

「え? なんでそこで連合軍?」

「全員聞け! これより、この未来ノート争奪戦を開始する!」

「はい?」

 

 突然の発表に一夏たちが固まっている中、ワームの千冬はうっすらと笑みをこぼす。やはり、思考能力に関しては同じだから彼女が今から何をやろうとしているのか文字通り手に取る通り分かるのだろう。

 皆の注目は織斑千冬に集まった。そのタイミングで言う。

 

「この未来ノートは、可能性があるのであれば書けばその通りのことが現実に起こる。そう、例えば『織斑一夏が自分のことを好きになる』……とかな」

『!!?』

 

 瞬間、IS学園女生徒たちの目の色が変わった。いや、IS学園の生徒だけではない。

 

「そ、そんな凄いノートの争奪戦……」

「千冬先生! 僕たちも参加していいですか!?」

「勿論だ。戦えるものであればだれでも参加してもいい。もちろん、自衛隊の者もな!」

「……」

「? どうしたの委員長?」

「いえ、この光景なんだか既視感が……」

 

 雪広あやかが頭を抱えたのは、なにも鳴滝姉妹が勝手に参加を表明したからではない。なにかこの光景に見覚えがあるような気がするのだ。

 だが点で思い出すことが出来ない。どこだ、どこで見たのだ。

 なんて、あやかが悩んでいる間にもIS学園の面々は準備を進めていく。

 

「あのノートがあれば、一夏と……」

「これは見過ごせませんわ!」

「整備係の皆! 直に武装の修理をお願い!!」

「クラリッサ、私の支援を頼む。嫁をこの手にいれるために!」

「分かりました! ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長!」

「……」

「か、かんちゃんが鬼の形相でタイピングを……」

 

 一方専用機を持っていない学生たちもまた量産機打鉄を我先にと奪い合っていた。戦いはすでに始まっているのだと実感できる。

 先ほどまでやれ共に学ぼうだとか、やれ純粋な願いだとか、そんな格好の良い言葉を放っていた少女たちとは思えない光景だ。あの少女たちをここまで変えてしまうとは、未来ノート恐るべし。

 

「思い出しましたわ……」

「え?」

「麻帆良祭の最終日。打ち上げの折にあったネギ先生の子孫である超さんの家系図、それを巡って争った時とそっくりですわ」

 

 雪広たちが元いた麻帆良学園では、一年に一度麻帆良祭という名称の学園祭が催されていた。

 その年の麻帆良祭は、ネギ・スプリングフィールドの子孫であり未来人である超鈴音の起こしたある事件によって例年以上にドタバタした物になったが最終的には何事もなく終わりを迎えた。

 そして、超が未来に帰る直前に、ネギ先生たちに悪ふざけで提示した物。それが、超家の家系図であった。そこに乗っているのは何代も前からの超の先祖の家系が描かれており、つまりそこにはネギ・スプリングフィールドが誰と結婚したのかという答えも記されていたのだ。

 結果、その家系図を見るために当時のネギ先生の仲間たちが争奪戦を繰り広げ、最終的には燃やされてしまったのだ。しかし、その学園祭の事件に置いて確かな友情を見せていた麻帆良学園の仲間たちが争う姿は、知っている者からすればかなり滑稽に映った者だろう。

 

「世界が違っても、女子校生のやることは同じって事か」

「ハハハ……」

 

 と、士はトイカメラのシャッターを押しながら言った。

 

「ですが、何故千冬先生はいきなりあんなことを……」

「さぁな……だが……」

「だが?」

「いや、なんでもない」

 

 士は思う。恐らく、千冬は見たいのだろう。箒たち専用機持ちの実力を、そしてISを交換して改めて白式を持つことになった一夏の力を。黒月を持ったワームの彼の実力を。

 考えてみれば、織斑千冬がこの場所に来た時にはすでにほとんどの戦闘が沈静化しており、箒たちの戦闘を見ていなかった。そのため、彼女たちの本当の実力が分からない。この学園にワームの千冬の代わりに先生として教鞭をとることになるのであれば、彼女たちの力を測っておいて損はないと思ったのだろう。と、士は考えた。

 

「す、すごい光景だな……」

「あぁ……」

 

 そんな中で二人の男子生徒は困惑しぱっなしである。あれよあれよという間にまた戦闘をすることになってしまったが、よくよく考えると彼女たちは昨晩あまり寝ていないはずなのでよくそんな元気がある物だと感心もする。

 

「んで、俺たちはどうする?」

「……当然、参戦するに決まっているだろ?」

「そう来なくてはな」

「「え?」」

「あぁ、いい機会だ……私たち自ら稽古をつけてやろう、ひよっこども」

 

 といって二人の千冬が前に出る。と、いうことは。

 

「え、まさか千冬姉たちも!?」

「当然だろう。無論、手加減などせんぞ」

「えぇ~……」

 

 まさかのW千冬も参戦である。これには、大人げないと言わざるを得ない。というか、ただでさえ強い千冬が二人。地獄絵図もいいところだ。

 あと、この状況を作り出した張本人であり、本来であれば一番話に絡まなければならないはずのあの男は、蚊帳の外である状況に嫌気が出したのか口をはさみ始める。

 

「勝手に話を進めないでくれないかな? 第一、それは元々僕の物だ」

「いや、別の世界で盗んだものだろ」

「余計なことは言わないでくれたまえ」

「悪いが……欲しければ力づくで来い」

「なら、そうさせてもらうよ」

 

 そうこうしている間に、IS学園組も自衛隊組も、そして士たち光写真館組も準備ができたらしい。

 

「って、士さんたちも参加するのかよ!?」

「あぁ、あのノートに『光夏海は二度と笑いのツボを押せなくなる』って書いてやる」

「士君!」

「ずいぶん私情がこもっているな……」

「いや、それ全員に言えることじゃないのか?」

 

 これは、すごい大乱戦になる予感がしてくる、果たしてこの戦闘が終わった時にIS学園は存在しているのかすらも不安になってくるほどに。

 ふと、本物の千冬は思った。

 

「そういえば、ワームのお前たちにまだ名前を付けてなかったな」

「え?」

 

 このままナナシのままで通すことはまず不可能。第一IS学園に入学するために戸籍を手にいれることは必須となる。だから、二人には名前が必要なのだ。

 だが、千冬には一つ『コレ』というような物があった。それは、旅の終盤で出会った二人の女の子。ある施設から逃げ出して、紆余曲折あって千冬と一緒にしばらく過ごした少女たち。

 彼女たちにはすでにその名前を使っていいという許可は得ている。

 

「いつか、一緒に会いに行こう……『クロエ』『マドカ』」

「クロエとマドカか……いい名前だな」

「あぁ……」

 

 織斑一夏改め『織斑クロエ』は、織斑千冬改め『織斑マドカ』のその言葉に頷く。少し前まで自分が使っていた名前とはまた別の物になるから、少しの間は違和感はぬぐえないだろうが、しかしいつか慣れていくことであろう。

 

「いくぜ、クロエ!」

「あぁ……一夏!!」

 

 新たな名前に新たな人生、そして新たな仲間たち。

 この仲間たちで守っていく自分たちの小さな世界。

 そんな世界に思いをはせて、少年少女たちは並び立つ。

 

「来い……白式!」

「黒月!」

「紅椿!」

「ブルー・ティアーズ!」

「甲龍!!」

「ラファール・リヴァイヴ・カツタムⅡ!」

「シュヴァルツェア・レーゲン!」

「打鉄弐式!」

「ミステリアス・レイディ!」

「ショウ・マスト・ゴーオン・ヌーヴォー!!」

「九尾ノ魂!」

「暮桜!」

「「来たれ!!」」

「「「「「変身!」」」」」

「チュッ」

≪≪KAMENRIDE≫≫

≪DECADE≫

≪DIEND≫

 

 織斑一夏、織斑クロエ、篠ノ之箒、凰鈴音、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、更識簪、更識楯無、山田真耶、布仏本音、鷹月静寐、相川清香、四十院神楽、鏡ナギ、岸原理子、夜竹さやか、国津玲美、谷本癒子、かなりん、クラリッサ・ハルフォーフ、ネーナ、ファルケ、マリルダ、イヨ、織斑千冬、織斑マドカ。雪広あやか、椎名桜子、鳴滝風香、鳴滝文伽、仮面ライダークウガ、仮面ライダーキバーラ、仮面ライダーディエンド、そして仮面ライダーディケイド。ほかIS学園の生徒たち、そして連合軍のIS部隊全員参加となる戦いが今……。

 

「「いっくぜぇぇぇぇ!!!」」

 

 始まった。

 

♪きっと逢えるよ 笑顔と涙を抱いて 君と一緒に♪

 

 大空高くに飛び上がった各機体。まず、最初に攻撃を仕掛けてくるのは簪である。

 

「山嵐、一斉射……行って!!」

 

♪明日の空は 何色の変わるかな♪

 

 簪は、山嵐をターゲットロックオンせずに斉射する。敵を指定しなかったため発射されたミサイルはそれぞれバラバラな動きを見せる。だが統制が取れていない攻撃は、例にならって動く者よりも予想することが難しく、他の操縦者たちは逃げるのに必死になるばかりである。

 

♪自分の力で 輝かせてゆこう♪

「その程度で、このブルーティアーズは落とせませんわ!!」

「はぁぁぁ!!!」

♪知らないこと だからドキドキするね…☆♪

 

 セシリア、そしてシャルロットはソレに冷静に対処、次々と撃ち落していく。

 無駄に爆発していくミサイルによって作られた爆風と煙の楯は彼女たちの視界を遮り、あたりを見えなくなってしまう。レーダーによって機体の位置が把握できるのは唯一の救いか。

 その時、ブルーティアーズの警報装置が作動する。何かが右方向から迫ってくるという警告だ。

 

「ッ!」

♪試したい、もっと… 限界は決めなくていい♪

「外したか!」

「援護します!」

 

 黒い煙を円形状に切り裂きながら現れたラウラ・ボーデヴィッヒのワイヤーアーマーを避けたセシリアは、すぐさま反撃するためにスターライトmkⅢを構えた。

 だが、黒ウサギ隊が援護に回ったためにソレを発射することなく退避を余儀なくされてしまう。

 

♪気づいて… 風の声が教える 進もう、次の物語へと…♪

「どうやら向こうでも、激しくやり合っているようだな」

「私も、アナタにあこがれてIS乗りになった者として、胸を借らせていただきます」

「ふッ……来い!」

 

 こちらでは織斑千冬と連合軍IS部隊の隊長が刃を合わせていた。

 隊長にとって、織斑千冬はあこがれの存在であり、そして自分にISという道を示してくれた恩人でもある。そんな人間とこんな形で手合わせをすることが出来るとは夢にも思っていなかった。

 この経験はきっと将来の糧となる。そして、他の隊員たちにとっても未来へのよき財産となることだろう。

 隊長は、今自分にできる精いっぱいの技術を、戦略を持って戦おう。そう心に決めて戦いに臨む。

 そして千冬にとっても、相手が自分にあこがれてISに乗り始めたと聞けば手加減などした方が失礼だ。そんな気持ちを持って戦いに臨んでいた。

 自分がISの兵器としての道を作ってしまったのと同じように、別の誰かの道を指し示すことになったこのISという物。千冬は感謝していた。このような物を作り出し、世界を広げるきっかけになってくれたISを開発してくれた親友に対して。そこにはもう彼女に対する謝罪の気持ちなどない。ただただこの時間を大切にしたい人間がそこにはいた。

 

♪羽ばたいて 負けそうでも逃げたりしない♪

「フッ! ハァ!!」

「ハァァ!!」

 

 一方こちらではもう一人の織斑千冬だった織斑マドカが、IS学園教員である山田真耶と戦闘を繰り広げている。

 一進一退の攻防だ。いくらマドカの方が量産機の打鉄であったとしても、千冬の能力を丸々コピーした存在である織斑マドカとここまで互角に戦えるというところが、彼女のポテンシャルの大きさを感じ取れる。

 

♪君と刻む時を♪

「流石ですね、織斑先生」

♪信じてゆこう♪

「山田君、私は織斑千冬では……」

♪光まで… 笑顔と涙を抱いて♪

「でも≪織斑≫マドカなら、貴方も織斑先生には変わり在りませんから」

♪大切な人♪

「……そうだな」

♪守るために、強くなれ…!!♪

「私、騙されたなんて思っていませんよ。私にとって、貴方も……この学園で出会った貴方は私の理想の先生です!」

「そうか……ありがとう」

 

 山田は、ずっと織斑千冬に憧れを抱いてきた。完全無欠で、冷静沈着。いつも凛々しく何事にも動じない彼女を好きだった。だから、この学園で教師をすることになり、彼女が受け持つクラスの副担任になった時、とても嬉しかった。

 そして、山田は知った。織斑千冬も完璧な人間ではなかったことを。お酒には弱かったり、弟に弱かったり、子供たちの扱いに四苦八苦したり。最初に彼女の中で描いていた織斑千冬とは少し違った印象の女性だった。

 けど、それで山田はがっかりしなかった。いや、違う。ただただ当たり前のことだったのだ。何故なら、彼女だって人間なんだから。欠点があって当たり前、弱点があって当たり前、自分にだってそんな-ポイントたくさんあるのだから、織斑千冬にあっても当たりまえだ。

 むしろ、本当に自分の思い描いた織斑千冬まんまの人間が目の前にいたら。きっと、自分は怖かったと思う。劣等感にさいなまれていたと思う。でも、彼女が人間だったから、自分と同じだったから、自分は彼女の一緒に笑いあうことが出来る。

 例え、それが本物の織斑千冬じゃなかったとしても、この学校でであった彼女の生き方が本物の織斑千冬と同じなら。例え、本当は人間じゃなかったとしても、その中にあった人間らしい生き方に自分が惚れたのであったら。

 今、自分には初めて憧れの人物が二人で来た。一人は、織斑千冬。そして、もう一人は織斑マドカ。

 理想の先生が二人もいる。そんな自分はなんて幸運なのだろか。

 幸せを噛みしめながらしかし、その幸せを守りたい。だから自分自身も成長する。このIS学園でIS乗りとして、先生として、そして人間として。

 

「それで、私達はどうしますか?」

「う~ん……」

 

 一方、地上に取り残されたあやか、桜子、そして量産機の数の都合上乗ることができなかったIS学園の生徒たち。

 自分たちの力が戦闘向きではないことから参戦はしなかったあやか達ではあるが、やはりこうしてただ見ているだけと言うのも退屈である。かといって、いつもの杖で途中参戦するのも興醒めだ。

 

「おぉいたいた」

「え?」

 

 と、聴き馴染みのある声に振り返ると、そこにはいつもは光写真館の中にいるはずの光栄次郎の姿があった。

 

「おじさま、どうしてここに?」

 

 確かに気になる。いつの間に栄次郎の事をおじさまなどと呼称するようになったのか。

 いや、そう言うことではない。

 

♪願い事は 叶えるため生まれる 迷って、止まって…また走ってゆこう♪

「何ですか、この炊飯器?」

「この学園の食堂から借りてきたんだよ。身体を動かすと、お腹は空くものだからね」

 

 と言って蓋を開ける。その先には大量の白く光る米粒の山。湯気と一緒に漂ってくる鼻の奥に抜ける匂いが、そのご飯がいかに美味であるのかを表しているかのようだ。

 しかし、どうしてこれだけの量のご飯を炊いたと言うのだろうか。いや、身体を動かせば腹が減ると言う原理自体は単純なものだから分かる。だが、これだけの量を用意するとなるとそれなりに時間が必要になるはずだ。簡単に用意できるわけじゃない。それこそ、今朝から炊いていたと考えなければ。

 いや、そうか、栄次郎は分かっていたのだ。人間とオルフェノクが、人間とワームが、共に共存することを選んでいくことを。そして織斑千冬がこの戦闘を提案すると言う事を。そうでなければここまで用意周到にはならない。

 

♪君が夢に近づくたび 嬉しい 同じ想いを胸に秘め、♪

「けど、ご飯だけじゃちょっと物足りないからね。これからおかずを作ろうと思っているんだ。手伝ってくれるかい?」

「はい!」

「了解!」

 

 あやか、桜子はその栄次郎の提案を飲み食堂へと向かおうとした。

 

♪巡り合えたね…♪

「あ、ちょっと待ってください!」

「ん?」

 

 その言葉に、歩みを止めて振り返る栄次郎たち。その時、彼らの事を呼び止めたのはIS学園の生徒、打鉄の争奪戦に敗北して居残らざるを得なかった少女達だ。

 

♪素直に 自由に表現しよう♪

「私たちにも手伝わせてもらえませんか?」

「え?」

「私たちも乗るISがなくて暇だし」

♪視線は、青い空 こえてゆく♪

「それに、あれだけの人数の食事を作るのも大変ですよね?」

 

 現状彼女達にできることはなく、ただただ上空の戦いを見守っているだけしかない。それはあやか達と同じで非常に退屈であろう。それに、食事を作るのが大変だと言う言葉にも一理ある。

 

♪旅立とう いつだって始まりがある 何も恐くないよ♪

「それじゃ、お願いできるかな?」

『はい!!』

 

 こうして、残ったIS学園の生徒達で昼食を作ることとなり、その場にいた殆どの学生が食堂へ向けて歩いていく。

 子供達の賑わいは、先ほどまでの沈鬱さを吹き飛ばすようにIS学園中を包み込む。

 そんな光景を見たあやかは、ふと足を止めた。

 

♪信じた道へ♪

「どうしたの? あやかちゃん」

 

 すぐ近くにいた黛は、止まっているあやかに声をかける。しかし、なんだかうれしそうだ。

 

♪思い出が♪

「いえ、少し……」

 

 ゆっくりと、あやかは空を見上げた。そして、思ったのだ。

 やっぱり、この学校は似ているなと。麻帆良と、自分が帰りたいあの町と似ているなと。

 それぞれの夢を持って、それぞれに違う思いを持って、考え方も学力も違う。人種も、生まれも、育ちも、出自にもいろいろな種類がある。そんな人たちが、こうして少しの間だけでも一緒の方向に歩こうとする。やはり学校はいいものだ。

 

♪大好きなこと ずっと君に響くから…♪

「なんだか、懐かしそうな顔してるね」

「えぇ、故郷の学校を思い出していました」

「異世界の学校、か……ねぇ、今度は私の方があやかちゃんの学校に行ってもいいのかな?」

「……」

 

 あやかは答えに困った。彼女も言っている通り、麻帆良は異世界にある学校だ。国云々ではなく、そもそもの世界が違う。そんな場所にそうやすやすと行けるわけがない。

 だが、もしも異世界を自由に行き来できるようになった。こうやって来ることもできたのだ。もしも、この世界の篠ノ之束や、自分たちの世界の葉加瀬のような天才がそのような機械を作ってくれれば旅行感覚で世界を行き来でき、学校同士での交流も可能になるかもしれない。

 そんなことが出来るようになるころには、自分はあの学校を卒業しているかもしれない。だが、それでも、後輩たちには色々な経験をしてもらいたい。違う考えを持って、違う人生を生きている人たちとの交流を深めていってもらいたい。

 もしかしたら、それが争いに繋がることもあるかもしれない。仲良くなることなんて無理なのかもしれない。それでも、少しは話を聞いてもらいたい。別の世界に生まれ、別の世界を生きている人たちの話を。

 それに、自分は信じている。例え世界が違っていても、人種が違っても、相手が人間でなくても、互いに歩み寄ろうと思うのであれば、必ず仲良くなることが出来るのだと。

 自分たちが、そして彼女たちがそうであったように。

 

「えぇ、クラスメイトにあなたに似た人がいます。きっと、気があうと思いますわ」

 

 それを期待するのは、愚かなことであろうか。

 

♪呼吸を♪

「「おなじみの! 影分身の術!!」」

「えぇッ!!」

♪繋いで…♪

「あれぐらいで驚いていたら、私たちの世界ではやっていけませんよ」

 

 上空で何十何百と増えた鳴滝姉妹の姿を見てドン引きする黛を見てほほ笑みながらあやかは、いたずら心でそう言って黛の手を取る。

 

♪さぁ♪

「さぁ、皆が待ってます。行きましょう」

「……えぇ!」

 

 二人は他の生徒に続いて学園の中に入っていく。その一方で、空中での戦いはついに佳境に入ろうとしていた。

 

♪掴むよ、♪

「はぁぁぁぁ!!!」

「きゃぁぁぁ!!!」

♪未来♪

 

 空中の織斑一夏は、一人、また一人と一年一組のクラスメイトの操る打鉄を斬り伏せる。彼にとっては白式を操縦するのはこれがはじめてであるはずなのに、何年間もの相棒であるかのように乗り回していた。

 

♪旅立とう いつだって始まりがある♪

「やるな一夏!」

「あぁ、束さんから色々と教えてもらっていたからな」

 

 近くを飛んでいた箒もそう考えたようだ。一夏のように連合軍側のISを捌きながら彼に通信を送る。やはり、この二人のISは篠ノ之束本人が制作に関わっただけあって別格であるようだ。

 そうだ。聞いてみてもいいのかもしれない。束が、自分の事をどう思っているのかを。この一連の事件の中で、自分の中に沸いていた姉への蟠りのようなものはすでになくなってしまっている。今なら、今の自分なら姉とも仲直りすることができるかもしれない。でも、そのためには姉自身がどう思っているのかも大切になってくるのだ。束と四年もの間一緒にいた彼ならば、自分に対してあねがどう思っているのかを知ることができるのかもしれない。

 

♪何も恐くないよ♪

「一夏、一つ聞いていいか?」

「ん?」

 

 箒が口を開こうとしたその時だ。

 

♪信じた道へ♪

《ATTACK RIDE BRAST》

「「ッ!!」」

 

 二人は、その音声と一緒に雨のように落ちてくる青い光弾をそれぞれに避ける。そして、それと同時に現れる影。

 

♪思い出が♪

「余所見してる暇なんてないわよ!」

「ッ!」

 

 箒は自身に向かってくる楯無の姿を捉えた。量産型をのりまわしている人間であるならばいざ知らず、相手が専用機で、それも楯無を相手にするのであれば一夏と話をしながら片手間に相手をすることは叶わない。二振りの刀、空裂と雨月を構える箒。

 結局、姉のことは聞くことができなかった。だが、考えてみると今すぐ聞かなくてもいい話だ。これからはいくらでも時間があるのだから。一夏と、そしてもう一人の幼馴染との時間は、これからも続いていくのだから。だから、ゆっくり話をしていこう。ゆっくりと友情をこれからも育んでいこう。そして、いつの日にか本当に姉と仲直りしよう。

 ぶつかり合う両者、そのとき箒の目にはしっかりとした決意と、遠く未来を見据える凛とした目が存在していた。

 一方、光弾を避けた一夏。今の音声には聞き覚えがある。確か、門矢士がカードをしようする際の音声と同じだ。しかし、弾の色は彼の場合マゼンタだったはず。では、この攻撃は一体。

 いや、もう一人いるではないか。士のベルトと同じ音声、を発するものを持つ者が。

 果たして、彼が見上げた先にいるのは、一夏が想像していた通りの人間であった。

 

♪誓いになって動き出す♪

「やぁ、織斑一夏君」

「ディエンド!」

♪大好きなこと 今日も響くから…♪

 

 仮面ライダーディエンド、海東大樹である。

 ディエンドは、呼び出した仮面ライダーアギトをファイナルフォームライドさせたアギトトルネイダーの上から弾丸を放つ。

 見上げる形で、それも太陽を背にしているために視認しにくいがそれでもISに備え付けられているレーダーを頼りにして避けながら着実に近づく一夏。

 思えば、この男の狙いは千冬姉の持っている未来ノート。つまりこの男を倒さなければ千冬を守ることができない。つまり、この戦いはたんなるエキシビションマッチではない。自分がこの学園に来てはじめてとなる何かを守る戦いでもあるのだ。負けられない、この勝負だけは。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 数々の弾丸を避け、一夏はついにディエンドの間合いに入ることに成功し、零落白夜を振り上げる。

 

♪羽ばたいて 負けそうでも逃げたりしない♪

「これでッ!!」

 

 終わりだ。そう言いながら剣を振り下ろす一夏。その一撃は、ディエンドの足元にいたアギトトルネイダーを切り裂いた。

 決着がついた。一瞬だけそう思った一夏だったがしかし、すぐにおかしなことに気がつく。

 ディエンドがいない。自分が切ったのは彼が乗っていたものだけで、ディエンド自身の姿は消え去っていたのだ。

 

♪君と刻む時を♪

「どこに! ッ!!」

 

 すぐにディエンドの姿を探す一夏。だが、その姿は彼の目線の中には存在しなかった。彼は、すぐ後ろにいたのだ。

 

♪信じてゆこう♪

「少し、遅かったようだね」

 

 一夏の頭に銃口を接着させて。あの一瞬、一夏が剣をまさに振り下ろそうとした時、いやそもそも自分が一夏に見受けて光弾を発射っしている時点で接近戦しか攻撃方法のない一夏であれば接近してくることは想定していた。だから、一夏が零落白夜を振り下ろすときにはすでに上空に身を投げており、事前に出現していた仮面ライダー響鬼のファイナルフォームライドであるヒビキアカネタカの足に掴み、一夏の背後を取ったのである。

 絶体絶命のピンチ、とはまさしくこのことだ。それは、すぐ近くにいた士、そして士を上に乗せているファイナルフォームライドしたユウスケにもわかった。

 

♪光まで…笑顔と涙を抱いて♪

「まずい! あのままじゃ一夏君が!」

「待て」

「え?」

 

 すぐに一夏救助に向かおうとしたユウスケ、しかし士はそれに対してさほど慌てることなく言い放った。

 彼には確信があったのだ。一夏は大丈夫だと。分かるのだ。なぜならば―――。

 

「あいつは……」

 

♪大切な人守るために、♪

「俺は……俺たち(守りびと)は二人いるんだぜ!」

「ッ!」

 

 瞬間、ディエンドの背後に迫る物。手裏剣だ。いや、正確には手裏剣型のミサイルである。ディエンドは、瞬時にネオディエンドライバーでソレらを撃ち落す。

 だが、この一瞬の隙がある。それだけで十分だ。この時、ディエンドにはもう一つの道が存在した。それは、一夏を撃墜してから手裏剣を撃ち落すという道だ。だが、手裏剣とディエンドとの距離はあまりにも近かった。そのため、もし一夏を撃墜してから手裏剣型ミサイルを撃墜しようとしても、間に合わなかっただろう。そう、この連携はどちらを取ったとしても、ディエンドの不利であったのは明白だったのだ。

 一人では無理だ。何故なら、人間なのだから。欠点があるのが人間であるのだから。その欠点を補う人間が他に必要なのだ。

 欠点を知っている人間が必要なのだ。

 そして、彼は知っている。織斑一夏の欠点を、そして白式の弱点を熟知している。

 どう行動するのかも知っている。そして、その結果も予測できる。

 だから、彼はその欠点を補う。少し無茶をする彼のことを補佐する。

 そして、彼もまた彼の欠点を補い、無茶をする彼のことを補佐する。

 これが、これからの彼らの戦い方。白と黒、二つの交差した先にある物、果たしてそこにはどんな未来が待っているのか。

 だが、これだけは言える。彼らはこれからも守り続ける。仲間たちを、悪から、脅威から、転生者から、異世界人から。

 

♪強くなれ♪

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」

 

 今、彼らの未来が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なぁ、一夏?

 

 なんだ?

 

 俺たち、もっともっと強くなろうぜ。千冬姉を、みんなを守れるように。

 

 できるさ、俺と……お前と……そして、箒たちとなら!

 

 だよな、やれるよな!

 

 あぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだよ……なれるよ、二人なら……≪私以外≫を守れる強い人に……。覚悟の上だからね、仕方ないよね……」

 

≪ラストワン≫

 

「バイバイ、私ッ!」

 

 その日、篠ノ之束は身体を残して人間として死んだ。

 それは、ISがエネルギー切れを起こして二人が落下していく。まさにその瞬間の出来事であった。




 ハッピーエンドだと思いました?
 残念ながら、罪には罰なんです。
 盗みをしでかした海東大樹しかり、結果的にとはいえISの宣伝のためにテロに協力した形となってしまった千冬しかり、大ショッカーのトップとして世界に脅威をもたらした門矢士しかり。
 最後に何が起こったかに関してましては地の文の中に一つの答えがあるのでそれをご参照ください。
 さて次回、このインフィニット・ストラトスの世界のエピローグです。そしてそこでアレに登場してもらおうと思っています。何かって? それはエピローグを見てのお楽しみ。
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