仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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魔法少女リリカルなのはの世界1-13

 この戦い。恐らく殆どの人間は士たちの不利を悟ることだろう。その最たる理由は体格差。

 実際の恐竜並のサイズである二種類のドーパントと人間サイズである士たちとではあまりにも体格差がありすぎるのだ。

 少し油断すればその大きな口に食われてしまう。それほどまでに大きな体格差が両者には存在していた。

 だが、結局の所ところ体格差なんて物はなんら問題にはならない。最後に物を言うのは経験、そして思いの力であるから。

 先陣を切った狼の形態のアルフは、マスカレード・ドーパントの集団の真ん中に無数の光球と共に降り立った。

 これは、フェイトが頻繁に使用する魔法、≪フォトンランサー≫のバリエーションの一つ。≪フォトンランサー・マルチショット≫。雷のエネルギーを纏った≪フォトンスフィア≫と言う物を複数個作成して、敵にぶつける魔法だ。

 これにより、集団で固まっていたマスカレード・ドーパントは次々と打ち倒されていく。それだけでない、アルフはマスカレード・ドーパントに一体、また一体と飛びかかり鋭い爪や牙で切り裂き、噛みついていく。ただのエネルギー体であるマスカレード・ドーパントは、その一撃一撃に耐え切ることができずに光となって消滅した。

 この程度の相手なら自分一人でも容易く相手ができる。アルフはそう確信に近い物を感じ取る。問題なのは、今もすぐ近くで自分のことを見下ろしている巨大なドーパントか。

 

《!》

 

 その時、アルフの姿を見たティーレックス・ドーパント、トライセラトップス・ドーパントが咆哮を上げながら彼女の方へと向かう。途中にいるマスカレード・ドーパントなんてお構いなしだ。

 ここまではアルフの、そしてアルフの主の想定内。まだまだ作戦の内だ。

 

《ハッ!》

 

 アルフは飛び上がると、≪フローターフィールド≫という結界魔法の一種にて空中に魔法陣を描きその上に乗ると、その魔法陣からオレンジ色の鎖が二体のドーパントに伸びていく。

 これは、≪チェーンバイド≫という拘束魔法の一つである。攻撃には使用することは難しいが、複数人で戦う際には相手を押さえ込むことができるのでこの場合にはうってつけの魔法なのだ。

 そして、チェーンバイドは二体のドーパンの足を縛った。二体のドーパントは共に二足歩行、特にトライセラトップス・ドーパントは身体バランスからこの状態でまともに歩くことなど不可能に近い。

 結果、二体のドーパントは地面に前むきに倒れ込む。相手に隙ができ、攻撃するには今を逃す手はない。

 

《今だよ! フェイト!!》

「プラズマスマッシャー!!」

 

 アルフの念話を聞いてか聞かずか、フェイトは雷光を纏った攻撃を放つ遠距離砲撃魔法魔法≪プラズマスマッシャー≫をドーパントに向けて放った。

 防御方法も、逃走方法もない二体のドーパント、そして地上にいた何十体ものマスカレード・ドーパントはその攻撃、そして攻撃の余波によって打ち倒されていった。

 アルフが後方でフェイトを待つ立場になってから久しいが、それでも一度戦場に出てフェイトと組めばフェイトの相棒として十分な働きをしてくれる。それは、一使い魔だからという単純なものではあらわせられないほどの信頼関係であった。

 

《Schlangeform!》

「ハァァ!!」

 

 シグナムの武器、レヴァンティンはその姿形の通りに剣型が基本のアームドデバイスである。

 しかし、その武器にはまだいくつかの隠れた形態が存在していた。その一つが、この《シュラングフォーム》。

 剣を鞭状の形態にして振るフォームであり、蛇腹剣とも呼ばれることのある形態だ。

 この形態の特徴は、剣の間合い以上の距離、中距離の相手と戦うことを可能とする物。一気に複数の敵を打ち倒すのに適したフォームであると言えるのだ。

 

「フッ! ハァァァ!!」

 

 シグナムが、レヴァンティンを幾度も振るうことによって巨大なドーパンの周囲のマスカレード・ドーパントは次々と一掃されていき、ついにティーレックス・ドーパントとの一対一の状況に持ち込むことができた。

 

「……」

 

 この時、シグナムはかつての自分達の罪のひとつを思い出していた。

 それは、今の主であるはやてが闇の書の侵食によって死が訪れかけた時、はやてのために彼女達は複数のリンカーコアから魔力を蒐集せざるを得なかった。その時彼女達が襲ったのはなにも人間だけではない。いや、大多数は人間ではなかった。

 それは、地球やミッドチルダとはまた違った管理外世界の魔法生物。それも、巨大な物だった。

 当然異魔法生物も自分の身を守るためにシグナム達と戦う。

 考え動くことのできる人間とは違い、極自然に生きて、そして凶暴である動物達はなのはやフェイトとは違う強さを持ち、さらに連戦に連戦をかさねていたときなど一瞬敗北を悟ったほどであった。

 あの時、当時敵であったフェイトが《うっかり》助けてくれなかったら、自分はあのクリスマスの日よりも先に時空管理局に逮捕されていたか、消滅していただろう。

 もちろん、人間じゃないから心が傷つかないなんてことはなく、魔法生物を倒して、リンカーコアを蒐集する時は罪悪感をいつも感じていた。

 今のこの状況、その時のソレと何処か似ている。今回自分達が生成されてから殺しは一度もしていない。しかし、それ以前に生成された時には多くの人間の死に関わっていたと言う。フェイトの義理の母であるリンディの夫の死もそうだ。

 クライド・ハラオウン。闇の書が暴走した時に、自らを道連れにして闇の書を消滅させ、英雄となった男。闇の書が、自分達が殺したと言っても過言ではない。

 自分達は決して拭うことのできない罪と生きている。その罪はいつも自分達に付き纏い、決して消えることがない。例え、どれだけの時間が経っても、善行を重ねてもその罪が清算されることはない。

 どれだけ忘れていても、記憶になかったとしても、その手に染み付いた見えない鮮血がずっと自分達のことを蝕み続けるのだ。

 だからこそ、自分はあの時から、他の三人はどうかはわからないがシグナムはあの時から、戦う時にはいつも自らの罪が頭をよぎっている。

 

《Schwertform!》

「ハァァァァ!!」

 

 シグナムはレヴァンティンを《シュベルトフォーム》という剣状の姿に戻すと地面からティーレックス・ドーパントへ向けて跳んだ。

 ティーレックス・ドーパントは、一直線に進むシグナムに対し、自らの身体に付着しているコンクリートやアスファルトを飛ばす。

 

「フッ! ハァァァ!!」

 

 シグナムはそれらの瓦礫をレヴァンティンの剣捌きによって破壊、時にはそれらを次々と足場としてティーレックス・ドーパントに近づいていく。

 

「いくぞ、レヴァンティン!」

《Explosion!》

 

 ティーレックス・ドーパントを黙然としてシグナムがレヴァンティンの名前を呼ぶと、レヴァンティンは内部から一つの薬莢を排出。剣に炎の様な魔力を纏う。

 これはカートリッジシステムと呼ばれる物である。魔力を込めた弾丸の形のカートリッジをリロードすることによって瞬時に爆発的な威力をもたらすことができるシステムだ。ただし、その制御は難しく、並の魔道士では使いこなすことができないのだ。

 このカートリッジシステムを扱えるのは、古代ベルカ式のアームドデバイスを用いているヴォルケンリッター、そしてそのヴォルケンリッターに負けたことによってさらなる強さを求めたなのはとフェイトのデバイス、レイジングハートとバルディッシュくらいである。

 

「紫電一閃!!」

 

 ティーレックス・ドーパントは再び瓦礫を飛ばして攻撃を防ごうとしたが、しかしその程度では止まらない。その瓦礫をも砕きながら進む剣の輝きは、ついにティーレックス・ドーパントを捉えた。

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

 シグナムは、上から下に一閃。ティーレックス・ドーパントは爆散した。

 そして、残ったのはティーレックス・ドーパントの変身者であった者のみとなった。

 

「……」

 

 やはり、人間を傷つけるのはどうにもこたえる。例え、相手が犯罪者であったとしても。そう考えながらシグナムはゆっくりとティーレックス・ドーパントの変身者であった人間に近づく。そして、驚愕した。

 

「な……に……」

 

 ティーレックス・ドーパントの変身者である人間。その男の着ている服には見覚えがあった。いや、違う。『自分が先程まで纏っていた制服』と同じ物であったのだ。

 

「何故……まさか!」

 

 この事実に、シグナムの脳裏に二つの最悪なシナリオが浮かび上がる。だが、どちらにしろ最悪であるというのには変わりはない。せめて、良い方の最悪であればいいのだが。そう、シグナムは願いながら主であるはやての下に向かう。

 フェイトや士の援護に向かうという道もあったが、二人であれば自分の援護がなくても大丈夫だろうと判断してのこと。いや、それ以上に高町なのはの事を心配してのこと。

 

「高町……時空管理局は……」

 

 二つの最悪なシナリオの内一つ、良い方であればまだいい。しかし、もしも悪い方であったのならば、あまりにもなのはがあまりにも、あまりにも……。

 

《ATTACK RIDE BLAST》

「グワァァァオッ!!」

 

 ディケイドは、アタックライドブラストによるマゼンタ色の無数の光弾を放った。しかし、トライセラトップス・ドーパントはその攻撃によろめくこともせずに巨大な紫色のエネルギー体を角の間に出現させ、咆哮とともにディケイドめがけて放つ。

 

「フッ! ハッ!」

 

 ディケイドはそれを横に回転して避けると、再びライドブッカーの弾を発射する。だが、やはり効き目はない様だ。

 

「なるほど、どうやら皮は厚そうだ。ハァッ!」

 

 ドーパントは、ディケイドに向けて突撃する。それを後ろに飛び退けることによって避けたディケイドは、ライドブッカーから一枚のカードを取り出した。

 

「竜には龍だな。変身!」

《KAMEN RIDE RYUKI》

 

 士がネオディケイドライバーに装填したのは仮面ライダー龍騎のカードである。

 恐『竜』を相手に『龍』騎とは、何とも安易な選択であるとも言えるが、士は単なる言葉遊びで龍騎になったわけでもない。

 

《ATTACK RIDE ADVENT》

 

 仮面ライダー龍騎は、ミラーモンスターという怪物と契約することによって力を得る仮面ライダー。そして、そのミラーモンスターを使役し呼び出すこともできるのだ。

 龍騎の使役するミラーモンスター、ドラグレッダーがひとつのビルの窓から出現し、トライセラトップス•ドーパントに向けて炎の攻撃を放つ。

 

「ふッ、ハァァ!」

 

 ディケイド・龍騎もまたトライセラトップス・ドーパントの上に乗り、ライドブッカーを突き立てたり切っていく。

 しかしどの攻撃も致命傷には程遠い様子だ。やはり、外側の皮が厚い部分をいくら攻撃したところで、何の効果も得られないのであろう。

 

「なら、こいつだな。ハァッ!」

≪ATTACK RIDE STRIKEVENT≫

 

 ディケイド・龍騎は一度トライセラトップス・ドーパントから飛び降りると、ドラグレッターは士がいた場所に向けて炎の攻撃を放つ。

 だが、当然その攻撃が通らないことは知っている。これは、揺動だ。

 ドラグレッターがトライセラトップス・ドーパントに攻撃したことにより、ドーパントの意識が空に向かい、空中にいる龍めがけて光弾が放たれる。

 この一瞬を待っていた。

 トライセラトップス・ドーパントは、エネルギー体を発射する際に必ず咆哮し、口を開く。それは士も先程の攻撃で確認済みだ。ならば、その一瞬の隙を狙って口の中に攻撃を叩き込めばどうなるか。

 

「ハァァァ!!」

 

 確かに、身体は分厚い皮で覆われているのかもしれない。しかし、体内はそうとも行かない。

 無論純粋な生物ではないドーパントであるからもしかしたら違うという可能性もあった。しかし、外側をいつまでも攻撃していても埒があかないということを知っていたため、多少は効かない可能性というものを考慮しながらも行動に移したのだ。

 果たして、士の読みは的中したようだ。

 トライセラトップス・ドーパントの口内に炎が放射された瞬間、ドーパントは苦しみの咆哮をあげ、さらに炎が体内に送り込まれていく。効果ありだ。自然動物ではないにしろ、その体内の構造は元となった生物のソレと同じなのかもしれない。

 ドーパントは、攻撃に耐え切ることができずに崩れ落ちる。士は、尽かさずそのチャンスを見逃さなかった。

 

「トドメだ」

《FINAL ATTACK RIDE RYU-RYU-RYU-RYUUKI》

 

 そのカードを装填した瞬間、ディケイド・龍騎の周りをドラグレッターが舞う。

 

「フッ!」

 

 そして、ディケイド・龍騎はドラグレッターを一瞥すると飛び上がり、一度錐揉み回転をしてキックを放つ体制を取る。

 そのディケイド・龍騎にめがけて、ドラグレッターは炎の弾を放つ。攻撃のタイミングを誤ったか。いや、違う。その攻撃はいわば推進剤。ディケイド・龍騎のライダーキックの攻撃力をさらに上げるための起爆剤。

 

「ハァァァァ!!!」

 

 炎を纏ったディケイド・龍騎は、トライセラトップス・ドーパントに向けて、《必殺》技たるドラゴンライダーキックを放った。

 その瞬間、周辺にいたマスカレード・ドーパントたちをまきこんだ巨大な爆発が発生する。

 ディケイド・龍騎は、トライセラトップス・ドーパントの背後に降り立つと再び仮面ライダーディケイドの姿に戻ってドーパントがいた場所を振り返る。

 

「あれは……」

 

 そして、ディケイドは見た。爆心地の中心でたおれている一人の人間。

 シグナムたちと同じく《時空管理局の制服》を身に纏った男性の姿を。

 ディケイドは、すぐさまその男性の元に駆け寄った。気を失ってはいる様だが大した傷はない様に見える。仮面ライダーディケイドの攻撃は、ネオディケイドライバーの能力かそうでないかは不明だが、自動的に仮面ライダーWがメモリブレイクをした時と同じ効果をもたらせることができるのだ。

 だからこそ、男のすぐそばには破壊されたガイアメモリが落ちているのだ。つまりこの男が先程のトライセラトップス・ドーパントの変身者であるのは間違いない。

 ふと、ディケイドは制服のポケットを調べた。すると、そこから一枚の名札を見つけた。それが偽造ではない限り、どうやら本当に時空管理局に所属している職員であるようだ。

 つまり、時空管理局の局員が、ドーパントに変身し、味方であるはずの時空管理局員がなのはたちを襲ったと言う事になる。

 考えられる理由は一体なんだ。一体、それは……。

 

「まさかな……いや、だがあり得ないことじゃない」

 

 士の脳裏に浮かんだもの。それは、シグナムと同じ最悪のシナリオだった。

 一つは、時空管理局員が操られているという可能性。これは、ドーパントが現れて早々に暴走体になったことや、戦闘中に会話という会話がなかったことからの仮定。

 こっちならばまだいい。時空管理局内でガイアメモリという一種の麻薬に近い物が蝕んでしまっているという問題はあるが、それは時空管理局の問題であり、彼らが解決するべき問題だ。

 問題はもう一つの方。

 それは……。

 

「なのは……」

 

 時空管理局が、なのはを消すために送り込んできた刺客。

 証拠も何もない、突拍子のかけらも無い憶測である。しかし、あり得ないことではない。

 そもそも高町なのはは魔法文明の一切存在しなかった世界の出身。そこに突如として現れ、そして仲間たちによると時空管理局のエースとなり得る存在。いや、もしかしたらもうなっている可能性すらある人間だそんな人間をうとましく思う、嫉妬する人間がいない訳がない。

 人間は、何かを恨むことで快楽を得る存在だ。そして、その恨みを暴力という禁断の手段で発散することによって優越感に慕っている、そんなどうしようもない動物だ。

 ただの一子供が、自分よりも年下の女の子が自分よりも優れた力を、才能を持っている。それを疎ましく思う人間は必ず存在するだろう。

 いや、下手をすれば将来自分達の障害になりうるかもしれない。自分の地位が危ぶまれるかもしれないという可能性に基づく推論で時空管理局の幹部が手を加えたという可能性もある。

 そもそも、なのはが大怪我を負ったという任務。それ自体がなのはを始末するために上層部が用意した任務である可能性はないか。

 なのはの首に懸賞金をかけたのも、自分達の手を汚さずになのはを始末するために考えた手段ではないか。

 憶測である。すべてが、何の証拠もない士の推論だ。時空管理局に対して不信感を持つ士による勝手な考察。しかし、あり得ないと立証することもできない悪魔の証明。

 歪んでいるな。この世界も、そして自分自身でさえも。士は、そうやって考察を終わらせてなのはたちの元に向かった。

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