仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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今回、もしかしたら口調やらなんやらが原作と間違っているキャラがいると思われるかたもいらっしゃるかもしれません。あまり出番がないキャラはどうしても…。


SAOの世界1-4

士&リーファと別れたユウスケは、森の中を歩いていた。彼はあまりゲームをやっていたわけではないのだが、ここまで精巧に作られたフィールドを見て、別世界の技術は恐ろしいと感じていた。それはともかく彼は、情報を集めるために人を探していた。士はバイクで開けた場所を、ユウスケは森の狭いところを歩いて人を探すことになった。とは言うものの…

 

「だれかが歩いてくる感じには見えないんだけどな…というか」

 

さっきのリーファの発言からすると、ここはアルヴヘイム・オンラインの中。移動はほぼ空中というのだから森の中を歩いている人間など稀少なのではないだろうか。

 

「まぁ、リーファちゃんみたいに不具合で跳べないプレイヤーがいる可能性もあるけど…」

 

と、独り言を言っているその時であった。目の前から鎧を付けた集団が現れる。剣を持つ者、槍を持つ者等それぞれが武器を持っていることから好意的でないことは確かだ。

 

「貴様…破壊者の仲間だな」

 

リーファ以外の第一プレイヤー発見、と喜んでいる場合ではない。彼の言っている破壊者とは、十中八九士の事だろう。

 

「お前たち…いったい何者だ!」

「我らは『聖龍連合』」

「聖龍…連合…」

 

ざっと見て10人ぐらいだろうか。中世の騎士のような集団である。これぐらいの数なら何とかなるだろうが…。

 

「ちょっと待てぃこらぁ!!」

「ん?」

 

その声に振り向くと、そこにはまたもや鎧姿の人間。しかし、目の前の人間たちは聖龍連合が銀色の鎧を身に纏っているのに対し、黒っぽい鎧を身に纏っており、先頭の人間以外は顔も隠していた。その先頭の人間はオレンジ色のまるでウニのような頭を持っている人間であり、口調からして関西地方の人間なのではないだろうか。

 

「そいつはわてらが見つけてつけとったんや、横取りすんのは許さへんでぇ!!」

「つけられていたのか…」

 

…なんだか前回の世界からやたらとミスが目立つユウスケである。

 

「キバオウ、貴様は確か軍から除名されたはずだが?」

「除名やない!わてらが『新生アインクラッド解放軍』や!!」

「アインクラッド?」

 

キバオウと言われた人間の言葉。その中には先ほどリーファに聞いた名称が混じっていた。アインクラッド、確かそれはソードアート・オンラインの世界の名前のはずだ。と、いうことは。

 

「ふ、負け惜しみを言う…奴らは殺してもかまわん!総員…突撃!!!」

「クエストのクリア報酬はわてらが取るんや!邪魔はさせへん!!」

「三つ巴か。くっ…!」

 

考えている暇などなかった。聖龍連合VS軍(仮)VSユウスケの不毛な戦いが始まった。

 

 

所変わって、バイクで池の周辺を走っていた士たちはというと、一人の釣り客に話しかけていた。ニシダというらしい。見た目だけでも高齢に見える彼が、このような若者向けのゲームをしていることについてリーファは驚いていた。釣った魚を入れるバケツは見当たらないが、釣った魚はメニューのアイテム画面に入れられると言いながらメニュー画面を出して今日の釣果を見せてきた。今日は大量だったらしく、メニュー画面はそのほとんどが魚で埋められていた。その時、リーファがあることに気が付いた。

 

「あ、あのニシダさん!」

「ん?何かね?」

「今…右手でメニューを出していましたよね…」

 

言われてみれば、とつかさは考えた。確かに今ニシダはメニュー画面を出すときに右手を上から下にスライドさせていた。リーファの思っている通りこの世界がアルヴヘイム・オンラインであるとすれば、左手でスライドしなければメニュー画面は出てこないはずだ。

 

「えぇ…それが何か?」

「はい、実は…」

 

ニシダはそれを不思議そうに聞き返す。それにリーファは実演してニシダに説明する。ニシダは非常に驚いており、このゲームで違うやり方でメニューを操作するプレイヤーは初めて見たと言う。その時、士はある考えに至った。

 

「そうか…おい、このゲームの名前を教えろ」

 

目上の者にする言い方ではない。もう少し人生経験的にも上なのだから敬うという気持ちはないのだろうか。

 

「士さん何を聞いているんですか?」

「そうだよ、ここは『SAO』である以外にないじゃないか」

「え?」

 

リーファはその言葉に胸の鼓動が鳴り響いた。自分はここがALOの中だと思っていたが、実際にはSAOであるというのだ。

 

「ニシダさん!そ、それって本当ですか!?」

 

突然めいいっぱい近づき、肩を掴んだリーファにニシダは戸惑いながらも。

 

「あ、あぁ確かだよ。なんせ私はここにちょうど2年間もいるんだからねぇ」

「そ、そんな…SAOだなんて…」

 

リーファはニシダの肩から手を放し、少しだけ離れて、池の奥に映る空を見る。ニシダはそんなリーファの様子を不思議に思ったのか、士に聞く。

 

「い、一体彼女はどうしたっていうんだね?」

「大体で説明すると…」

 

ということで、大雑把であるが手短にニシダに現在のリーファの状況について説明する。すると、ニシダは顎に手を置いて考え事を始める。

 

「うむ…もしかすると、ALOというゲームとSAOがログインの際に混線してしまったために迷い込んでしまったのかもしれない」

「混線?」

「あぁ、おそらくね…だが、どうして2年もたってから起こったのか…」

 

どうやらニシダはSAOのサーバー群に繋がる経路を手掛けていた会社の保安部長であるらしく、その辺の若者よりもネット回線について詳しかった。

 

「詳しくは分からないのか?」

「外からだったら何とかなるだろうけれど…中からじゃどうにも…」

 

だが、本人もSAOに閉じ込められている身であるため、物理的に何かできることという物がないらしい。

 

「じゃあ…もしかしたらこのゲームがクリアされるまで私もずっと…」

 

リーファの心は不安でいっぱいだった。現在、自分の身体は自宅の部屋のベッドの上だ。父も母も仕事で明日の午後にならないと帰らないため、リーファ自身がこのようなことになっていることはたぶん知らない。しかし、もし自分以外にもSAOに来ている人間が大勢いたら第二のSAO事件ということになって、日本中が大騒ぎになるだろう。その他にも大久の問題がある。例えば食事の問題である。実はSAO被害者における現実的な問題として栄養が取れなくなるという物がある。当然だ。眠っているも同然の人間に食べ物を食べさせることなどできるはずがない。そのため、SAO被害者は全員が病院に入院し、チューブで栄養を補給している。しかし、自分は前述のとおり家で、さらに両親も家にいないために発見されることが遅れることだろう。幸か不幸か自分が使用しているアミュスフィアは強制的に外したとしてもマイクロ派は出ないだろうが、何が起こるのか分からない。極論してマイナス面だけいってしまえば精神だけがゲームに取り残されしまう、なんてことが起こり得る可能性だってあるのだ。リーファの頭の中で様々なBADENDが渦巻いていく。

 

「リーファさん」

「え?」

 

その彼女を引き戻したのはニシダである。彼は再び釣り竿を池に向けて水面に糸を垂らしており、糸の先には小さなウキが付いていた。

 

「人生というのはこのウキと同じだ」

「ウキと同じ?」

「そう…何もないときはこうやってプカプカと浮かんでいる。しかし、波が来ると飲まれて沈んでしまうこともある…まぁここは波がないからそんなことはないがね」

 

茅場もそういったリアリティを求めてくれないものかねと髪をかきながらハハハと笑うニシダ。ある意味高度なブラックジョークのようにも聞こえる。そもそも海はともかく、池に波などあっただろうか。

 

「しかし、浮き沈みのない人生なんてない。みんな辛いことやうれしいことの繰り返しで生きているんだよ」

「…」

「おおっと…」

 

その時、ニシダのウキが沈んでいった。どうやら魚がかかったらしい。ニシダは慌てて立ち上がって釣り竿を操作し始める。腕を右往左往させながら話を続ける。

 

「ずっと沈んだ人生なんて存在しない。自分はダメな人間だとか、自分は不幸な人間だとか言っているのはいつまでたっても幸せになれない」

 

その時、水面から魚が飛び出した。どうやらかなりの大物らしく、その大きさにニシダも微笑んでいた。

 

「いつかはきっと浮かび上がるもの…それが人生なのだから。そんな顔していてはだめだよ」

「ニシダさん…」

 

ニシダにも現実に残してきた家族がいたであろう。あと何年か働いたら定年で、後は悠遊自適な人生が待っていたはずだろう。それなのにゲームの中に閉じ込められて、人生を狂わされた。なのに、彼はそのゲームの中にこうして楽しみを見つけている。リーファは素直にそのことがすごいと思っていた。士はというと、やはり年配の人間が持つ、人生経験の豊富さに珍しく感心していた。

 

「さてと、私はもうそろそろ戻ることとします」

「はい、ニシダさん…ありがとうございます」

 

リーファはニシダに話を聞いてもらって、すっきりとしたようだ。ニシダはそんなリーファに変わらぬ笑顔を与えながら言う。

 

「そうだ、実は午後からこの池の主をあるプレイヤーと一緒に釣ろうと思っているんだ。よかったら来るといい」

 

士は気が向いたら、リーファはぜひと返答する。ニシダはその言葉を聞くと、遠くの方へと歩いていった。その場に残った士とリーファは一度写真館に戻ろうと話をし始めたその時、ニシダが歩いていった方向とは別の方向から赤い鎧を着た集団がやってきた。

 

「何者だ?」

「お初にお目にかかる…私は血盟騎士団団長『ヒースクリフ』だ」

 

ヒースクリフと名乗った男性は、手に大きな十字の盾と剣を持ち、年齢はニシダまで年上とはいかないまでもその顔に刻まれているシワから30を超えていると思われる。その顔つきはそれこそ歴戦の戦士のようなものであった。先ほどのニシダの話が本当であるとするならば彼らはSAOのプレイヤーということになる。2年という月日はこれほどまでに人を変えるのだろうか。

 

「その血盟騎士団が一体俺に何の用だ?」

「そうだね…君には直接的な恨みはない…が、クリア報酬のために君を倒さなければならない」

「クリア報酬?」

 

士は今まで襲われてきた原因は自分が破壊者だからという理由がほとんどだった。しかし、クリア報酬という物のために殺しに来るものなど初めてであった。いや、もしかしたら金輪際現れないかもしれない。

 

「そうだ…君たちは下がっていたまえ」

「ハッ!」

 

ヒースクリフは後ろに控える部下であろう者たちにそういった。どうやら一対一での戦いを望んでいるらしい。古臭い武士道のようにも思えるが、こちらとしては好都合だった。

 

「タイマンか…それでいい、そっちの方がやりやすい」

「ふっ…言ってくれるね…そういう自信満々な男は嫌われるよ」

 

リーファを守りながら10人を相手にするのははっきり言って厳しい。確かにいつもの調子で戦えば、怪物でもなんでもないただの人である血盟騎士団なんて勝つのはそう難しくない。しかじ、相手はSAOのプレイヤーである。ということは実質被害者だ。いくら士でも、完全なる被害者であるプレイヤーを無差別に殺すような非人道的なことはしたくなかった。しかし、一対一でありしかもリーダー格であるヒースクリフを戦闘不能に追い込めば他の者と戦わずに済むであろう。ともかく、士が望んでいたことを相手が先に言ってくれたことは、士にとって好都合であった。

 

「お互い様だ…そっちが何年この世界で戦ってきたかは知らないが…」

 

士はバックルを取り出し、腰に装着する。そしてバックルを開き、カードを一枚右手に持つ。

 

「修羅場なら俺も数え切れないほどくぐってきた…変身!」

[KAMENRIDE DECADE]

 

カードをバックルに入れ、閉じる。仮面ライダーディケイドに変身し終えた士はライドブッカーを取り出し、ソードモードに変化させる。その様子を見ていた周りのヒースクリフの部下たちはその一連の行動に驚き、少し騒ぎ始めた。だが、その中でも冷静だったヒースクリフはさすがであると言えるか。

 

「装備を整えるのにメニュー画面も使わないか…」

「何に感心しているのかは知らんが…手加減はしないぜ」

「フフフ…それは望むところだ」

 

士は一度ライドブッカ―の切れない場所を一撫でして戦闘が開始される。世界の破壊者ディケイドVSSAO最強のプレイヤーヒースクリフのタイマンが始まった。




ちょっと現在リアルの方で問題がありすぎて上手く筆が回らない状況となっています。 もしかするといつか倒れるのでは?と思っています。

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