「ここが麻帆良学園です」
「なるほど…意外にでかいな」
一方麻帆良学園に到着した士はネギの案内のもと、とりあえず学園長室へ向かっていた。士は、以前の世界で高校生になり学校に通っていたことがある。その学校も大きい部類には入るのだが、この麻帆良学園もなかなか大きい。麻帆良学園は総生徒数が2000人を超える、それも女子中等部のみでだ。そのため校舎がでかいのは当たり前だと言える。そんな校舎の写真を首に下げたカメラで撮る士に、ふとネギが質問を投げかける。
「士さんは写真を撮るのが好きなんですか?」
「…まあな。写真は世界をありのままに映してくれる。ゆがんだ世界もな…」
…ゆがんだ世界もなというより士はほぼほぼゆがんだ世界しか取れないのである。士の取る写真はなぜかピントが合わなかったり、手振れがかかったかのような写真になる。まるで士をその世界が拒否しているかのように。しかし彼が訪れた世界は最期には受け入れてくれたかのように最後に撮った写真はいつもきれいな写真になるのだ。時たま写していないものが入っていたりするのだが、これにはその世界を象徴するものが入っている。
「あっ着きました。ここが学園長室です」
上に学園長室と書かれたプレートがあるドアの前にネギは止まりノックする。すると中から老人の声が聞こえてくる。おそらくそれが学園長なのだろう。
「なんじゃ?」
「学園長、ネギです。新しく来た先生を連れてきました」
「…うむ。入りたまえ」
「失礼します」
入るように促されまずネギがドアを開け、中に入る。そして後に士が入るが…
「邪魔す…」
「?どうしたんじゃ」
「いやなんでもない(何だあの頭は、いったいどういう骨格してんだ)」
そう、士が言葉に詰まるほど頭がおかしいのだ(外見的な意味で)。士は今まで様々な化け物に出会ってきた。自分に擬態した怪物と対面したこともある。どの怪物もヒト型とはいえ、人間としての原型はない怪物であった。しかし今回の場合、どこからどう見ても人間であるのに頭だけが異様に長いというものは珍しい部類のものだ。しかし小学生が先生をやっている世界なのだからまぁそんな人物がいてもおかしくはないと士は驚きの言葉を飲み込んだ。
「それならいいんじゃが。…お、ネギ君もう下がってよいぞ」
「はい」
「それとじゃなそこの青年は3-Aで副担任をしてもらうことになっておるからの」
「えっそうなんですか!?わかりました。じゃあまたあとで士さん」
学園長に士が自分のクラスの副担任になると聞いたネギは、少し嬉しそうに士に向き合ってから学園長室を出ていった。その場には士と近衛門だけが残された。
「…さて、わしが学園長の近衛近衛門じゃ」
「門矢士だ」
「ふむ、新しい先生が来るとは聞いていないんじゃがのう。しかし確かに今日先生が来ることになっておる」
まぁ今までも同じようにいつの間にかちゃんとその職業につくようになっているという状況が多々あった。無論士は教員免許を持っていない。普通教員免許といえば大学を卒業して、それ相応の試験を受けなければならないがもちろん士はそれを受けていない。教師になるために頑張っている人が世の中にいる中でなんという裏口就職、いやエリートコースであろうか。
「まあいつも道理だがな、3-Aは神楽坂や近衛のクラスだな…近衛ってまさか」
「おや、明日菜君やわしの孫のことももう知っておるか」
「ああ…。ひとつ教えてもらいたいことがある」
やはりそうかと士は思った。近衛という名前はおそらくそんな多くないであろうから、親戚であろうとは思った。だが孫とまでは思わなかった。…主に頭のせいだが。そんな士は近衛門にネギに関して疑問に思っていたことをぶつける。
「なんじゃ?」
「どうしてネギが先生をやっている。普通なら小学校に通っている年だろ」
「…詳しくは教えてやれんが、一つだけ言っておこう。それは彼が特別じゃからじゃ」
「…大体わかった」
何か裏があるなと思った士ではあったが、これ以上は情報が取れないと考え話を打ち切り3-Aの教室に向かっていった。一人残された近衛門は誰もいなくなった学園長室で虚空に向かいつぶやく。
「…どうして、のう。普通じゃったらそんな考えも持たないはずじゃが。いや当たり前の反応かのう。フォッフォッフォッ」
そう誰にも聞かれることのない言葉を吐き、どこかへ連絡を取った後、元の仕事に戻っていく。
「大体わかった」って僕は本当にわかっていると思っているのですが、あれって面倒くさいから話を切っているだけって風のうわさで聞いたけどどうなんでしょう?