ユウスケが光写真館に帰ろうとしていた頃、士とヒースクリフの戦いに転換期が訪れようとしていた。
「ふっ!はぁ!」
「くっ!…やるな」
「SAO最強のプレイヤーは伊達ではないからね」
二人の戦いは一進一退、五分と五分であった。ヒースクリフは盾を上手く使い士の攻撃を受けつつ、士のスキを狙って攻撃を放っていた。しかし士と負けず劣らず、その攻撃を受け流すと、また攻撃する。そして、それをヒースクリフが受け流すということが続いていた。それは、両者が共に強者であるということの証である。しかし、実はヒースクリフの方がいつもの戦いができていないでいた。彼の戦闘スタイルは盾と剣によって敵のソードスキルを防御し、硬直した間を斬るという物だった。しかし、もちろん士はソードスキルは使わないため、硬直時間がない。しかし、それを差し引いても士の攻撃の合間をぬって攻撃を当てるのは、やはりこの世界でのトッププレイヤーならではであろう。
「じゃぁこっちも剣の専門家だ」
そう言うと士はカードを取り出した。ディエンドとは違い剣には剣を、すなわちその名前ズバリの仮面ライダー。
「変身!」
≪KAMENRIDE BLADE≫
すると士の目の前に青色のスクリーンが表れる。スクリーンに描かれているのはカブトムシであろうか、ディケイドはそれに向かって歩き、そして通過する。そのスクリーンはオリハルコンエレメントというもので、そこを通ることによってアーマーが使用の体を包み変身することが可能となるのだ。そしてオリハルコンエレメントを通過して現れたのは現れたのは今までのマゼンダ色の仮面ライダーではなく、青を基調とした騎士のような仮面ライダー。仮面ライダーブレイドである。
「装備を変えたのか!?」
「メニュー画面も出していないのにか?」
回りの野次馬は騒ぎだす。いったいあれはなんなのだろうかと。しかし、ヒースクリフは一人冷静だった。
「私も見た事のない装備ではあるが、果たしてそれでどう変わったのかな?」
「戦ってみてからのお楽しみってやつだ」
士は、そう言うと一度ライドブッカーの剣の切れない部分を一なでしてから斬りかかる。途中まではほぼ同じ、ヒースクリフが盾で防ぎ、それに反撃するを繰り返す。しかし、そのなかで士はヒースクリフとつばぜり合いに持ってくることに成功した。士はそのタイミングでドライバーにカードを装填する。
≪ATTACKRIDE MACH≫
そして、一度距離をとると、青色の光が士の体に入っていく。次の瞬間、今までの倍以上の速さでの攻撃がヒースクリフに襲いかかる。目にもとまらないそれを捉えられたものはヒースクリフも含めて誰もおらず、その士の動きを遂に捉えることはできず、攻撃を始めて受けた。
「くっ!」
「団長が攻撃を通した!?」
「そんな馬鹿な、なんなんだあいつは!」
それに、ヒースクリフの部下は驚愕する。今まで彼の防御を掻い潜り攻撃を与えたものなど、黒の剣士キリトを含めて極僅か、しかもクリーンヒットさせたものなどキリト以外にいなかったはず。その鉄壁の防御を崩したのはブレイドの力、スペードの9の力であるジャガーマッハである。
「変わった攻撃をするものだな…」
「その余裕はいつまで続くかな?」
先程の攻撃によって、ヒースクリフの体力は4分の1削られている。それでも彼の表情は崩れない。士はさらにカードを取り出す。
≪ATTACKRIDE MAGNET≫
音声共に、士はライドブッカーを持っていない方の腕をヒースクリフに向け、士の手から光線らしきものが放たれる。すると、その光線らしきものは盾に当たる。
「な、なに…」
ヒースクリフは、まるで盾を引っ張られたような感覚に陥り、始めて動揺する。ディケイドの使用したカードは、スペードの8、マグネットバッファローであり、任意の対象を引き付けることができるバッファローマグネットを使用することができるのだ。余談だが、先程のマッハもそうであるが、原典の世界でブレイドは使用したことがなかったため、使用するのは士が始めてである。
「くっ!」
ヒースクリフは思わず盾を手放してしまう。
「裸の王様…だな」
「…」
周囲がざわつき始める。しかし、それに対しての反応は双方ともにない。集中しているために声が入ってこないのだ。しかし、ココにおいて士の有利は確かなものとなった。士の言う通り裸の王様、と言うわけではない。何故ならヒースクリフは依然剣を保持しているため、反撃しようとするならばできるのだから。だが、盾を失ったことはヒースクリフの戦闘スタイルからすると大きな痛手となってしまう。
「行くぜ…はぁ!」
士は、盾を投げ捨ててヒースクリフに斬りかかる。流石に殺すようなことはしないが、一連の攻撃で彼の体力ゲージは一気に減らすことができるであろう。
「…」
そう思っていた。
「なに!」
「フッ!」
「ぐあッ!」
「士さん!?」
その時、リーファの声が聞こえた。一瞬だった。自身の剣先を避けたヒースクリフは、ソードスキルを発現させたのだろう、怒濤の10連撃で士は思わず後ろに倒れた。士は知らなかったが、それはノヴァ・アセンションという片手剣最高のソードスキルと言われることがある技であった。そして、その攻撃によって士の姿はブレイドから元のディケイドへと戻ってしまう。
「やりました団長!」
「すげぇあんな動きができるだなんて!!」
(すごいだと…あいつ、今一瞬…)
間違いなんてない、彼は…。
(分身しなかったか…?)
「はぁ、はぁ、はぁ…」
士にはそう見えた。士の剣が降り下ろされる瞬間、彼の姿が二重になったような、そんな感覚があった。それに何故だろう疲れていないか?そう感じた。
「形勢逆転…だね」
「くっ…」
先ほどまでの好機とは一転、一気にその場の流れは変わってしまった。
「士さん!」
その時、たまらずリーファが乱入する。しかし、彼女はもともとALOのプレイヤー、剣よりも魔法中心といっていいほどだった。そのため、SAO最強のプレイヤーであるヒースクリフには足元にも及ばないだろう。リーファもそれは感じていた。しかし、それでも出ずにはいれなかった。優しすぎるがゆえに。
「何者だね君は?」
「私はリーファ…つ、士さんの仲間です!」
声が震えている。自身でわかっているからだ、敵わないということに。それでも、彼女は剣を向ける。子供である故に…。
「リーファ…そのようなプレイヤー、それにそのような装備は…」
その時、ヒースクリフは考え込むように左手を口元に当てる。ヒースクリフの気が逸れた、チャンスは今しかない。そう思った士は行動に移す。
≪KAMENRIDE RYUKI≫
「来いッ!リーファ!」
「え、士さん?」
士はリーファの腕をとり、駆け出す。無論それを周りが制止しないわけがない。血盟騎士団の団員は二人の逃げ道を塞ぐように立ち並ぶ。それに対して士はあるカードをドライバーに入れる。
≪ATTACKRIDE ADVENT≫
それと同時に、湖からモンスターが咆哮と共に表れる。赤いメカメカしい龍、ドラグレッターである。突然現れたその龍の姿に誰もが目を奪われる。しかし、その場にいる全ての人間の目が奪われたわけではない。士とリーファはそれに目もくれずドラグレッターとは逆の方向へと走った。ヒースクリフは、その二人の存在に気付き、止めるように指示をするが時既に遅し。
「しっかり捕まれよ!」
「へっ?わぁ!?」
士はリーファをお姫様だっこにし、飛び上がる。彼が飛び上がった場所に向けてドラグレッターが飛ぶ。瞬間、士とドラグレッターの体が重なった。士は、一瞬のうちにドラグレッターの背中に乗り、そしてそのまま空高く舞い上がり、遠くへと離れていく。
「し、しまった…」
「追いますか!」
「いや、追っても無駄だろう…」
騎士団の面々は士たちを追おうとしたが、ヒースクリフはそれを制止する。見たところ龍は素早く、今からであればどう走っても追い付けそうにはないだろう。だったら次のチャンスを待てばいいだけである。ヒースクリフは地面に落ちている盾を手に取ると、部下たちと共に、本拠地としている55層グランザムへと戻っていった。
「おい、大丈夫か?」
「は、はい…飛ぶことはALOで慣れてますから…」
お姫様だっこから解放されたリーファは、ドラグレッターにしがみついていた。確かにかなり速いものの、飛ぶこと事態はALOで慣れていたため、それほど苦痛というわけではなかった。とはいえ、自分で飛んでいたときは違い他人、否他龍任せであるため、、少しばかりは不安であるのだが、それも数分程度であった。それからすぐに、光写真が見えてきた。
「ん?あれって…」
同時刻、ちょうどユウスケもまた光写真館に戻ってきたところであった。上を見ると、赤い龍がこちらに向かって飛んでいた。その龍にユウスケは見覚えがあった。仮面ライダー龍騎の相棒、ドラグレッダーである。だが、この世界におそらく龍騎はいない。ということは考えられるのは…。
「ドラグレッダー…士か!」
その時、ドラグレッダーの背中から飛び降りる影が二つ。ディケイドとリーファだ。ディケイドはそのまま飛び降りたのだが、リーファは背中の翼を広げてゆっくりと降りてきた。そして、地面に到達後、士は変身を解いた。ユウスケは二人のもとに向かう。
「士!」
「あぁユウスケ、どうだ、何かわかったか?」
「…ここがSAOだってこと…それから、俺たちは指名手配されているってことだな…」
「…大体俺たちと同じだな」
情報を交換したところ、どうやら双方とも持っているのは同じであるようだ。状況もかなり似ていた。自分たちを狙っている物が多いということは、いつまでも外にいるのはまずい。そう考え、後の詳しい話は写真館の中に入ってからにすることとなった。
「おい、今帰ったぞ」
「あぁ、士君おかえりなさい」
出迎えたのは光栄次郎。そして…。
「あんたが、門矢士か?」
「お前は?」
「俺は…」
上から下まで黒い服に身を包んだ少年。彼もまたプレイヤーなのだろう。先程までの集団と異なり、直接この場所を探り当てたであろうその少年は、自身の素性を語ろうとする。その時…。
「お兄ちゃん?」
「え?」
そう声をかけたのは、リーファだった。
「お兄ちゃん、私だよ…直葉だよ」
「スグ…ほ、本当にスグなのか?」
間違いない。間違えるはずがない。そこにいたのは、紛れもなく兄であった。2年ぶりにあった兄は…。
「うんそうだよお兄ちゃん…会いたかった…」
あの時の姿のままだった。
一度リフレッシュしないと、どんどん中身が雑になっていく今日この頃。というか、心壊れる寸前5秒前?
あと、データなのに盾を引き付けるなんてどういうこと?とは聞かないで。