仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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余談
士は夏海達と合流する前にちょっと寄り道しております。


SAOの世界1-10

「ただいま戻りました」

 

 キリトが2階に連れていかれて30分後、まず仲良く降りてきたのはアスナとリーファの二人であった。どうやら話し合いによって意気投合したらしい。それからしばらくして、キリトが降りてくる。

 

「し、死ぬかと思った…」

 

 なんだか、最初に見たときよりもやせ細ったような印象を受けてしまう。因みに、3人は様々なことを話したようで、キリトが、色々なプレイヤーとフラグを立てているという話には、流石のリーファもあきれた様子だったらしい。

 

「フラグってライトノベルとかギャルゲーでしか聞かない言葉だよ…」

 

 と、その話を聞いた桜子が突っ込んでいた。まぁ世の中には13人とフラグを立てる隊長や、恋愛原子核という登場人物のほとんどとフラグを立てるような猛者も世の中にはいるので、今のところまだまだであるといえるのではないだろうか。と士は考えていた。

 

「お疲れさん」

「エギルお前な…」

「それより、約束があるんじゃなかったのか?」

 

 キリトがエギルに対して何か言おうとした時、エギルはそう言葉を遮った。この辺りの言葉の使い方は人生経験が高いからであろう。

 

「あっ、そうだ、ニシダさんと約束が…今何時だ?」

 

 そう言ってキリトがメニュー画面を出そうとする。が、そこにアスナが割り込む。

 

「大丈夫、まだ十分余裕があるよ。というか、約束に合わせて説教の時間短くしたんだけれど?」

「うっ、なら本当はもっと長かったのか…」

 

 そういえばアスナは何度かメニュー画面を出していたことをキリトは記憶しているが、あれは時間を見ていたのか。キリトの言葉を聞いたリーファは、そこででた名前に聞き覚えがあった。

 

「え、ニシダさん?それってあの釣りが大好きな?」

「あ、あぁ…知ってるのか?」

「うん、私さっき士さんと一緒に湖に言ったんだけれど、そこに…それじゃ約束って…」

 

 あの時、ニシダは言っていた。午後から他のプレイヤーと協力して湖の主を釣り上げると。他のプレイヤーとはキリトの事だったのか。

 

「あぁ、あの湖の主を釣り上げるには自分だったら筋力が足りないからってな」

「ふ~ん…」

「キリトさん、僕たちもそれ見に行ってもいいですか?」

「うん!私たちも主釣り上げるの見てみたい!」

 

 そういうのは、桜子や鳴滝といった麻帆良組である。よく考えてみるとこの4人は世界を渡ってから写真館の中で缶詰となっていた。もうそろそろ外に出たい気分なのだろう。まぁ、ここはゲームの仮想空間であるため本当の外、というわけではないのだが。

 

「えぇ、いいわよ。皆で行きましょうか」

「あっ、私は留守番でいいですか?」

 

 そう答えたのはリーファである。

 

「ん?なんでだよ」

「それがその…」

 

 リーファは事情を説明する。先ほど士と一緒に湖に出たとき、血盟騎士団と小競り合いがあって、その時自分の顔を覚えられた恐れがあるのだ。もし自分が血盟騎士団のメンバーと外で出くわしてしまえば、ややこしいこととなる恐れがある。

 

「そういうことか…分かった。それじゃスグ、ニシダさんとの約束が終わったらう絶対に迎えに来るから」

「スグ、じゃなくてリーファって呼んで」

「え?」

「リアルの名前を出すのはマナー違反なんでしょ?」

 

 リーファは、ALOでプレイするにあたり、そう言ったネットマナーも学んでいた。実際SAOでは2年が経過してもなお、現実世界での名前を明かしていないプレイヤーが多い。アスナ等の本名でプレイヤー名を登録している人々を除いてである。なお、そのようなプレイヤーは大体がネット初心者であり、第1層始まりの街にいる子供たちもそのようなメンバーが多いそうだ。

 

「…分かった、んじゃ行ってくる『リーファ』」

「?うん」

 

 キリトは、そう言った。気のせいだろうか、リーファは彼が悲しげにその言葉を発したような気がした。

 

「エギルさんは、どうするの?」

「ん?俺はいい。ここでコーヒーを飲んでいるよ」

「お前…カフェイン中毒になるぞ…」

 

 アスナの問にそう答えたエギルの言葉に、キリトはあきれたように言った。カフェイン中毒は、主に短時間の内に多量のカフェインを取ることにより引き起こされる中毒症状である急性カフェイン中毒の事である。軽度の場合は、吐き気や神経過敏等の症状が出るが重篤な場合は頭痛や痙攣、ひどい時には死んでしまう人までいるのだ。

 

「あぁ、心配ない。ここはゲームの中だからな、どれだけ飲んでも現実には影響がないだろう」

「あっ、そう…」

 

 やはりあきれたように言った。まぁ、エギルは現実でコーヒーショップを経営しているらしいので、やはりコーヒーが好きなのだろう、と思うのは偏見であろうか。そういえば、コーヒーを飲んでいる時に言っていた。『このコーヒーは、ゲームの中じゃ1番だが、日本では2番目だな』と。キリトはその言葉に、『じゃぁ、一番は自分が淹れるコーヒーか?』と茶化した。それに対してエギルはただ一言『お前も人生経験を重ねればわかるさ』とだけ言った。一体人生経験とコーヒーになんの関係があるのだろうか。キリトは全く分からなかった。それはそれとして、結局キリトたちと一緒に行くことになったのは麻帆良組の四人だけとなった。

 

「では、行ってまいります」

「はい、気を付けて」

 

 見送るのは夏海とユウスケ、そしてリーファの3人。士はまだあの部屋にいた。と言うのも、エギルに一つ聞きたいことがあったからだ。

 

「それで、俺に聞きたいことってなんだ?」

「ヒースクリフについて教えろ」

「ヒースクリフ?そういえば、さっき戦ったと言っていたな」

 

 士がエギルに聞きたかったことと言うのはヒースクリフの事だ。彼は、どうやらどこかに組織に属していて、かなりの権力を持つ強者であるということまでは士は分かっていた。しかし、それ以外の情報はない。もし、次に彼と戦うことがあったら、そう考えてエギルに声をかけたというのだ。特に最後に見せたあの分身のような技、特にそれについて聞いておきたかった。

 

「そうだな、まず奴は『血盟騎士団』というギルドのリーダーだ」

「あぁ、あの後ろにいた集団か」

 

 確かに、彼の後ろには何人も鎧を着た人間がおり、ヒースクリフもそうだが、全員体のどこかに血のような赤色を施していた。士は思う。もしもヒースクリフが一対一ではなく、集団でかかってきていたらどうなっていただろう。無論、ヒースクリフほどの者はいないとは思う。しかし、それを差し引いてもあの男が率いているのだ。おそらくだれもが強いのであろう。

 

「血盟騎士団は、このSAOで最強と言われているからな。特にヒースクリフは、現在SAO内に2人しかいないユニークスキルの持ち主だ」

「2人?」

「あぁ、因みに、もう一人の所有者はキリトだ」

「あいつが…」

 

 ユニークスキルは、エクストラスキルの中の一つである。エクストラスキルとは、武器の熟練度等を挙げただけでは出現しないスキルの事で、それ以外にも出現条件があるとされるが、ハッキリとした条件が分かっておらず、出現すれば、珍しいスキルという物だ。そしてユニークスキルは、その中でもさらに珍しいものと称され、ヒースクリフの『神聖剣』、そしてキリトの『二刀流』以外のスキルは確認されていない。

 

「ヒースクリフの神聖剣は、長剣と十字盾二つセットによる攻防どちらにも使えるスキルだ。それだけじゃなく、ヒースクリフ自体も剣の技量が底抜けに高く、まさに最強のプレイヤーと言われている」

「なるほど…一つ聞きたい、その神聖剣というスキルには、高速で動くなんてスキルがあるのか?」

「?…いや、ないはずだが…ただ…」

「ただ…なんだ?」

「いや、実はキリトの奴も同じようなことを言っていてな…」

「キリトもか?」

「あぁ、実はアスナは以前血盟騎士団に所属していてな、そこで色々あって、アスナのギルド脱退をかけてキリトとヒースクリフが対決してな…互角の勝負を繰り広げていたんだが、最後の最後に、キリトのソードスキルを防がれて、んで負けちまったんだ」

「キリト、あいつがな…」

 

 見た目にはそんな風には見えなかった。しかし、まさかSAO最強のプレイヤーと戦えるほどの者だったとは。

 

「あの後、キリトは言っていた。まるでヒースクリフの盾が突然目の前に出現して、剣を防いだようだった…てな」

「…」

 

 エギルから聞けるヒースクリフについての情報は以上のようだった。しかし、彼の謎が解けたわけじゃない。まるでカブトのクロックアップのように一瞬で動き、それも周りの人間にもそれを気づかせないほどの動き、ヒースクリフとは何者なのだろうか。


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