仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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この世界長いな…。一つ一つの世界がこれぐらい長いと、書いているこっちとしてはなんかまとめきれてないなと思う。


SAOの世界1-13

 運命の75層ボス戦当日。キリト、アスナの両名は第75層・コリニアの転移門広場へと光と共に現れた。このコリニアという町は、一目見ただけでもギリシア建築の建物やコロッセオらしき建物があったりと、古代ローマらしき風景が広がっている。よく考えると茅場昌彦は約100種類ものフロアを考えだしているのだから、かなりの想像力と構成能力があったのではないだろうか。他者からの意見も少なからずあったかもしれないが、それすらも現実にできる茅場昌彦は、流石であると言える。この転移門広場はかなり広く、すでに数多くのプレイヤーが集まっているものの集団としてはばらけているように見える。そのため、キリトとアスナの二人は人ごみの中からすぐにエギル、それからキリトの数少ない理解者の一人である風林火山という小ギルドのリーダー、クラインを見つける事ができた。その二人に駆け寄り、いわゆるブリーフィングのような物を始める中、キリトはパルテノン神殿状になっている建物の方を見る。そこにいたのは、

 

「眠い…」

 

 と一言つぶやく士である。彼は、キリトを含めて、どんどんと集まってくるプレイヤーたちを眠たそうな眼をこすりながら見ていた。さて、彼が何故眠いといったか、そしてどうしてそのような場所にいるかについては、この転移門という言葉から説明しなければなるまい。転移門とは、各層の主だった村に存在する門の事で、そこから別の層の転移門へと転移することができる。つまり、この75層に転移すると自動的にその門の周辺に集まることになり、この場所をヒースクリフが集合場所に指定したのは限りなく理にかなっていると言える。だが、残念なことにそれが理由で、士はかなり早起きをしたのだ。そもそも、彼は鳴滝のせいでクエストの討伐対象となっている。そんな彼が、普通に転移門を使用すると周囲をプレイヤー達に囲まれて、ややしこしい展開となることは想像に難くない。そのため、士は朝早くに夏海によってたたき起こされ、集合時間よりもかなり早くに到着して、プレイヤーが集まるまで隠れていたのだ。そのおかげで何とかプレイヤーには発見されずに済んだのだが、かなりイライラが溜まっている状態である。その時、見覚えのある集団が現れた。先頭にいるのはヒースクリフ、その後ろにいる同じ服装の者たちは血盟騎士団に違いない。

 

「やっと来たか…」

 

 そもそも、彼は自身が狙われていると分かっているのに何故この場所に来たのかと言うと、無論75層ボス戦に参加するためだ。しかし、正規のプレイヤーでない彼がもちろん討伐メンバーに加わるということができるはずがない。だから作戦はこうだ。まず、討伐メンバーが集まり迷宮区という場所に移動を始めたら、士は少し後ろから後をつける。その際、キリトとアスナが一番後ろを歩き、なるべく見つからないようにする。なお、アスナは一応血盟騎士団の副団長のため、前を歩かざるを得ない可能性も考えられる。そのため、もしもの場合は士の事を知っているエギルに頼む算段となっている。そして、ボスの部屋の前に着いたら、全員が扉に注目し、一斉にボス部屋に入る。そこで後ろを見るものなどほとんどいないはずだ。だから、そのタイミングで彼もボス部屋に入る。まさに完璧な作戦、と士は自画自賛していた。なお、キリトとアスナはその作戦会議中に苦い顔をしていた。その理由を聞いたとき、あるアイテムを使えばその作戦はご破算となってしまうと言っていたが、士はそんな都合よくあるわけない、と自信満々に語っていた。

 

「コリドー、オープン」

「なっ…」

 

 まぁ、都合のいいこと都合のいいこと。ヒースクリーフが取り出したのは、まさしくキリト達が危惧していた大きな長方形のクリスタル。コリドーという名称のそれは、回廊結晶という、いうなれば転移結晶の複数版である。任意の地点を記録し、そこに向かって大人数のプレイヤーを転移させることができる。これほど有用であるのだが、それに比例して手に入れることのできるクエストや場面が限られている。そのため、ここぞという場面でなければ使用されない貴重なもののため使用される確率は低いであろうと、士は浅はかにも考えていた。しかし、このざまである。ヒースクリフを始め、プレイヤーは次々と出現した渦の中へと入っていく。キリトは、入るのを戸惑った。無論後ろにいるはずの士の事を気にしての事である。

 

「キリト君…」

 

 そんなキリトに、アスナは声をかけた。

 

「いつまでも入らなかったら怪しまれるよ、ここは…」

「…あぁ」

 

 アスナに後押しされて、キリトは入っていく。その様子を遠くで見ていた士は走る。

 

「クソッ!」

 

 そんな士をあざ笑うように、渦は士の目の前で消失してしまった。士は、近くにあった柱を思いっきり叩く。

 

「あの野郎やってくれたな…」

 

 士は、まず自分の快眠を奪ったヒースクリフに対しての私怨をつぶやく。そして、すぐに次にどうするべきかを考える。だが、迷宮区はその名前の通り迷路である。そのため、プレイヤーは少しづつ少しづつ迷宮区を進んでルートの解明を目指すのだ。そしてプレイヤーが街に戻ってその地図を公開することによってほかのプレイヤーたちが明確な地図を手に入れることができる。士は、役割としてはプレイヤーではあるが、ゲームに参加しているわけではない。そのため地図を手に入れることもできなければ、メニューを開くことなんてできないため地図を手に入れることなんてできないのだ。

 

「とりあえず、写真館に帰るか…」

 

 ともかく、この場所にとどまり続けるのはそれはそれで危険だ。一度、22層にある写真館に帰ってどうするか考えなければ。士は、転移門の前に立つ。ここに来るときには自分も使えていたのだから、帰りも使えるはずだ。

 

「転移…」

 

 そこまで言ったところで士は考える。

 

「あの村、何て名前だ?」

 

 そういえば自分は、あの村の名前を知らないということに気が付いた。転移のためには、村の名前を知っていることが前提である。だが、彼はここコリニアと第55層グランザムという名前しか知らない。これはまずい、そう思ったその時、士の目の前に二人の女性プレイヤーが転移してきた。

 

「あちゃ~やっぱり間に合わなかったか…ごめん」

「いえ、仕方ありませんよ急にお客さんが来ちゃったんですし」

 

 士は、一目散に二人のプレイヤーの元へと走り寄る。

 

「おい、お前ら」

「はい?」

 

 

 

 一方そのころ迷宮区最深部、ボスの部屋の前ではメニュー画面を出して、武器やアイテムの確認をするなど、各々のプレイヤーがボス戦に向けて準備を行っていた。そんなプレイヤーたちの後ろで、キリトは後ろを見ていた。それは、少し前に消えたコリドーの渦。

 

「結局、士さんは来れなかったか…」

 

 もしかしたらあの後突っ込んでくるのではないかと淡い期待はあったが、結局ダメだったようだ。

 

「キリト君大丈夫、いつも私達で何とかなったじゃない…」

「…あぁ」

 

 だが、少し士の力をあてにしていたという節もある。ヒースクリフと拮抗したというその実力があれば、もしかしたら、この戦いででるであろう死人を減らしてくれるのではないか、そういう期待が。だが、アスナの言うことももっともだ。自分たちは彼がいなくとも今まで何とかやってきた。たとえ、このボス戦がいつもと違う物であっても、自分たちで何とかして見せる。絶対に、アスナを守り通して見せる。そして、エギルと、クラインと一緒に帰る。そう決意する。

 

「準備はいいかな」

 

 そう言葉を発したのは門の前にいるヒースクリフだ。彼が自分の前に立てている巨大な盾は、存在感と威圧感、そして威厳を感じさせる。そしてヒースクリフは、今回のボス戦についての説明を始める。

 

「基本的には、血盟騎士団が攻撃を食い止める。その間に、君たちは可能な限り攻撃パターンを見切り、臨機応変に反撃して欲しい」

 

 そのような布陣を取る理由は二つある。まず一つ目に、血盟騎士団がこの戦いのホスト役のような物であることだ。自分たちから誘っておいて、後ろに回るなんてことをすれば他のプレイヤーからブーイングを受けること間違いなしであろう。と、言ってもほとんどのボス戦では血盟騎士団がホスト役を受け持つことが多かったのでいつも通りと言えばいつも通りなのだが。二つ目の理由に上げられるのは、やはり偵察ができなかったことによる情報不足だ。相手の攻撃、HPバーの数どころか、姿形すらも判明していない。その状態で戦うのだから、まずヒースクリフ含め強プレイヤーが集まっている血盟騎士団が相手の出方を見るというのは、作戦として理にかなっている。いや、それしかないと言った感じか。

 

「厳しい戦いになると思うが、諸君なら切り抜けられると信じている」

 

 そしてヒースクリフは一つ間を置いて言う。

 

「解放の日のために」

 

 その言葉を聞いた瞬間、周りのプレイヤーは一斉にに雄たけびを上げる。キリトは、その言葉を発したヒースクリフを見て、ある人物を思い出す。SAO最初のボス戦、そこでプレイヤーを一つにまとめていた男、ディアベル。

 

『勝とうぜ!!』

 

 彼は、あの戦いでボス戦における最初の犠牲者となってしまった。もしも、あの男が生きていたら、ヒースクリフのような人間になっていただろうか。彼が生きていたら、キバオウを抑えつけ、もしかしたらシンカーたち有能なプレイヤー達と共に軍をまとめて、今も攻略組としてここにいたのかもしれない。ヒースクリフの言葉は彼と同じだ。最初の戦いで、自分が死ぬかもしれないと思っていたプレイヤーの勇気をたぎらせたあの言葉、暗中模索の中必死に前を向こうとしていたあの時と全く同じ状況なのかもしれない。アスナは、他のプレイヤーと違って、小難しい顔をしているキリトの手を取って、小声で言った。

 

「大丈夫だよ、キリト君は私が守る。だから、キリト君は私を守ってね」

「…あぁ、必ず」

 

 そして、ヒースクリフは扉を押し、ゆっくりと扉は開いていく。それと同時に、プレイヤー達もそれぞれ武器をとり、キリトもまた剣を2本抜き、身構える。そしてエギル、クラインに先ほどより少し緩んだ顔つきで言う。

 

「死ぬなよ」

「へっ、お前こそ」

「今日の戦利品で一儲けするまでくたばる気はねぇぜ」

 

 そして、扉は完全に開かれた。プレイヤーたちは、あるものは深呼吸し、あるものは息を止め、またあるものは唾を飲み込む。そして、先頭にいるヒースクリフが言った。

 

「戦闘開始!!」

 

 その言葉と同時に、全プレイヤーが雄たけびと共にボスの部屋へと駆け出していく。プレイヤーはそれぞれ散開し、全員が入ったところで、扉が閉まった。いつもなら敵のボスがその場に待っているはずだ。いつもなら。プレイヤーたちは周りを見渡し、一人の男が言った。

 

「何にも…起きないぞ…」

 

 いや、何人かのプレイヤーは聞こえていた。何かが動くカタカタと言う音。アスナもその一人だ。右を見る、いない。左を見る、いない。では…その時、アスナは何かに気が付いたようにハッとなった。

 

「上よ!!」

 

 その言葉によってすべてのプレイヤーの目は天井へと注がれる。そして、アスナの言う通り、そこにいた。骨で作られた怪物。両腕に大きな鎌を持ったその怪物は、静かに、だが威圧的にプレイヤー達を見下ろしていた。

 

「スカル…」

「リーパー…」

「クアァァァァァ!!!!」

 

 クライン、そしてキリトはモンスターの頭上に現れた文字を読んだ。『The Sukull Reaper』、冠詞が付いたそれこそ、ボスキャラであることの証であった。現れたHPバーは5本。かなりの長期戦になることが予想された。プレイヤー達にヒースクリフは言う。

 

「固まるな!距離を取れ!!」

 

 その言葉によって何名かは動き出したが、突然現れた異様な姿による恐怖のため、動けないものが多かった。中には真下にいるプレイヤーもいる。キリトはその内最も危険な位置にいた2人のプレイヤーに言う。

 

「こっちだ!走れ!!」

 

 その言葉で、プレイヤーたちは走り出す。

 

「クアァァァ!!!!!!」

 

 だが、無常にもスカルリーパーは天井から降り立つ。瞬間、ボスを中心に地面が灰色から赤に変わっていく。スカルリーパーは真横から鎌を振るう。その一撃は、その場にいたプレイヤー二人をキリト達の方向へと飛ばす。アスナはその内の一人の落下地点に入り受け止めるために両手を出した。しかし…。

 

「あっ…」

「なっ…一撃で…」

「無茶苦茶だ…」

 

 アスナの目の前で、二人はポリゴン状のエフェクトを残して消滅。ゲームオーバー、つまり死んだのだ。だが、ここにいるプレイヤーたちにとってはその光景は日常茶飯事である。モンスターを倒すときにも、同じエフェクトで消滅してしまうのだから。だが、何よりも衝撃だったのは一撃でプレイヤーのHPを0にしたその攻撃力である。ここにいるプレイヤーたちは紛れもなく、トップランナーとして走り続けてきた攻略組。それに従ってレベルもHPも能力も高いはずだった。そのプレイヤーが、2人同時に一撃で死んでしまった。そして、スカルリーパーは次の獲物を見つけたように地面を這いながら進む。キリトは、何かを勘違いしていた。いつもと同じボス戦だと。今回も、きっとみんなで無事に帰ることができると。だが違う。帰れるかどうか分からない、開けてはならない釜を開いてしまった。紛れもなくそこは地の獄…。地獄であった。




実は以前SAOのクロスオーバー小説を第1層からやろうかなと思っていたことがある。色々な作品を詰め込みすぎて2年たっても終わらなそうと思って結局没に。なんていうことをしでかしてしまう自分、ここからご都合主義が多いっす。
そもそもいるはずのない彼女達がいる時点で…。

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