仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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この小説、ちょっとスピードを上げていかないと色々と不都合なことになっていく。…半年たつとまた新しい仮面ライダー絡ませたくなる病が発症する恐れが…。


SAOの世界1-14

 ここは、誰かを待っている人が集まる店、出されるコーヒーがかなりおいしいで有名な写真館、光写真館である。

 

「キリト君たち、大丈夫でしょうか…」

「士も行ってるんだから、大丈夫だと…大丈夫かな?」

 

 若干不安げになりながらも、ユウスケはキリト達の安否を気遣っている。と、言うのも士は自意識過剰のため、たまに自信満々に行動を起こして失敗することがあるのだ。さらに士はああ見えても沸点が低い傾向にあり、特にプライドを気づつけられたときは、大人げなく怒ることがある。実際、問題が多すぎる。本当に大丈夫だろうか、と二人が話している時、隣の台所では栄次郎が麻帆良組の面々を集めて何かをしようとしていた。

 

「じゃあ、今日はプリンの作り方を教えようかね」

「わ~い!」

 

 実は昨日から、調理の上手い栄次郎と麻帆良組4人とで、お料理教室が始まっていたのだ。昨日はクッキー、今日はプリンである。栄次郎からしてみれば、親戚のお孫さんが来たようなノリで行っているこれは、もはや日課になりそうな勢いで根付いている状態である。まぁ、栄次郎からしてみても麻帆良組からしてみても楽しいことには違いないのでいいのであるが。栄次郎はプリンを創る前にまず、本棚の中から料理本を取り出す。クッキーの時まではそうではなかったが、プリンはクッキーよりも材料や機械、時間を気にする難しい料理のため、料理本を見ながら解説したほうが正しい知識を教えられると考えたからだ。その時、本棚の中に妙な本があることに気が付いた。

 

「おや、この本は…」

 

 どう見ても料理の本ではない。表紙にある題名も中身も全て英語らしき文章で書かれているため、どんな内容なのかよくわからない。一体いつ本棚に紛れ込んだのかも分からない。首をかしげる栄次郎に、あやかが声をかける。

 

「あ、その本は私のです」

「え、君のかい?」

「はい、先生にもらった本です。なんでも魔法の…」

「まだですか~?」

「もう準備できてるよ~」

 

 と、言う言葉が聞こえてくる。待たせてはいけないと思い、栄次郎は本を本棚に戻して、料理の本を改めて取り台所へと向かい、あやかもそれに続く。夏海は、そんな彼女たちの事をほほえましく見ていた。と、ここで夏海はもう一人の子供を探す。いた、リーファは窓から外を見てたそがれていた。もちろん、キリトたちのことが気になるのだろう。

 

「心配ですね」

「…はい、手に届かない所で心配するより、手に届く所で心配するほうが辛いです」

 

 昨日までは、手を伸ばしても届かないと諦めていた。だが、いざ実際に手の届く所にいると、それはそれで辛い。主に心情的にだ。リーファは一つ溜息をつく。

 

「大丈夫ですよ、きっと士君が付いているんですから」

「そうそう、どうせすぐに帰ってくるよ」

「おい、帰ったぞ」

「ほら帰ってきた…ってえぇ!!?」

 

 士が部屋に入ってくる。突然の出来事にユウスケはノリツッコミのようなものをしてしまった。いくらなんでも早すぎる。今頃の時間だとまだ迷宮区という場所にたどり着いてすらもいないのではないだろうか。

 

「士君、流石に早すぎませんか!?」

「あぁ、あいつら俺を残してボスの部屋までワープしやがった」

「え、それじゃキリト君たちは!?」

「分からん、それに追いかけるにしても問題がある」

「問題?」

「あぁ…まず1つ目に」

 

 と、士は人差し指を立てる。

 

「今からどれだけ走ったとしてもボス戦に紛れ込むことは不可能だ」

「まぁ、ボスの部屋は一番奥にあるということですし…」

「2つ目に」

 

 と、続いて中指も立てる。

 

「そのボス部屋までの順路が分からない。プレイヤーだったら公開されたマップとやらをダウンロードすることが可能らしいが、俺たちはプレイヤーじゃないし、リーファは別ゲームのプレイヤーだから入手できるかもわからん」

「なるほど、確かにそうか…」

「そして3つ目、これが一番の問題だ」

 

 最後に、薬指を立てる。

 

「もし運よくボス部屋にたどり着いたとして、どうやって中に入るかだ」

「あっ、ボスの部屋は、入ったら扉が開かないって…」

 

 以上、現状の問題点である。

 

「1つ目の問題点については一応手はある。が、それ以外については完全にお手上げだ」

「そんな…」

 

 リーファは、絶望的な表情になる。キリトとアスナに期待していないわけではなく、過小評価しているわけではない。だが、昨日の士の戦いを見ていて、士であったらキリトを完全に守ってくれる、そう思っていたからだ。せめてアレが使えていたらすべての問題は万事解決するのだが、とはいえないものねだりはしょうがない。残った問題2つを解決する手はないといえ、ボス戦に参加することは不可能と思われた。

 

「あの~…」

 

 その時、少女の声が聞こえる。声がする方を見ると、二人の少女と一匹の竜がそこにはいた。

 

「えっと…君たちは?」

「私はリズベット、リズって呼んで」

「私はシリカです、この子はピナ、私のパートナーです」

「きゅる!」

 

 ユウスケはその二人を見たことなかった。無論リーファと夏海も同じだ。彼女たちは何者なのだろう。と、思っていたとき士が語りだす。

 

「あぁ、この二人は22層に戻るときに村の名前を教えてくれたプレイヤーだ」

「村の名前?」

「そう、こいついきなり22層の名前を教えてくれって近づいてきてね。あなた、一歩間違えれば牢屋行きだったんだからね」

「牢屋?」

 

 ハラスメント防止コードという物がある。つまりセクハラ防止だ。このゲームにおいて、禁止されている行為の一つであり、それを犯し、被害者となったプレイヤーが出現するウインドーのOKボタンを押した瞬間、第1層にある黒鉄宮の監獄エリアへと強制転移される仕組みとなっている。しかし、士は正規のプレイヤーではなかったため、そういった類のものが出なかったのだ。

 

「それより、どうしたんだ?」

「はい、ボス部屋までのマップなら、私持ってるんです」

「本当ですか!?」

「はい…このボス戦に私たちの知り合いのプレイヤーが参加するから、見送りだけに来たんですけれど、一応マップだけは更新していたんです」

 

 そう言いながら、シリカはメニュー画面からマップを取り出す。確かにそれは第75層迷宮区のマップのようだ。それを見て、士は親指を挙げる。

 

「でかした」

「は、はい」

「リーファちゃん、これなら受け取ることはできる?」

「えっと、メッセージ機能を使えばもしかすると…ちょっと待ってください」

 

 といって、リーファはシリカに近づいていく。「あれ?今左で…」とか、「えっと、これには事情が…」といったような会話がなされていく。だが、これでマップの問題は解決したも同然。後は最後の問題である。

 

「でも、部屋に入らないとどうにもできませんよ」

「だな…」

「士先生」

「…今日はご都合主義のオンパレードか?」

 

 その時、台所から声をかけられた。

 

「ぐわぁぁぁ!!!」

 

 また一つガラスが割れたような音がし、プレイヤーがポリゴン状の破片となっていった。これで何人目なのだろうか。数える余裕など彼らにはなかった。ボス攻略に際しては、ヒースクリフ、キリト&アスナを中心にスカルリーパーの両方の鎌を押さえ、その間にほかのプレイヤーが攻撃を加えるということとなった。そもそも、この戦いが普通のボス戦になるなどとは思っていなかった。と言うのもそこがクリスタル無効化エリアであるだけ、入ったら出られなくなるといったことだけでなく、75層という数字から見ても普通のボスが現れないと考えられていたのだ。SAOは100層の内の四分の一、つまり25層づつにそれまでとはくらべものにならないぐらいの強ボスが出現することが分かっている。25層では軍が大打撃を受け、前線から離脱。50層では、ヒースクリフによる時間稼ぎと援軍がいなければ危うく全滅していたというほどだった。だから、きっとこの75層でも強敵が現れると考えられていた。だが、考えられていたということと、実際に目にするということは同じようで全く違う。

 

「クッ!!」

「はぁぁ!!!」

「このぉ!!」

 

 あと何時間戦えるか、あと何時間で敵を倒すことができるのか。しかし、スカルリーパーのHPバーはまだ半分を切ったあたり、対してヒースクリフ以外のプレイヤーのHPはイエローゾーンへと突入している者がほとんどだ。このままだと全滅だってあり得ない話ではない。どうする。いや、彼らが入ってきた扉はすでに閉じてしまっている。前に進む、剣を振るうしかほかない。

 

「くそぉ!!!」

 

 そして、それはプレイヤーの気力をそぐには十分である。後何時間戦えばいい。後どのくらい攻撃を加えればいい。終わりの見えない戦いは、人々の心を疲れさせ、縛り、そして硬直させる。集中力が続かなくなるということも問題だ。平均的に人間の集中力は33分しか持たないとどこかの文献に書かれている。そのタイムリミットも後少しまで迫っていた。

 

「キリト君、大丈夫!?」

「あぁ、今の所…なんとか…」

 

 鎌を受け止める役目を担っているキリトとアスナの二人は、特に疲弊していた。途中で後ろに下がってポーションで回復し、また鎌を受け止めるといった行動を繰り返していたのだが、もうポーションはなくなってしまった。これで致命傷を受けてしまえば、回復する手段はない。などと言っていても仕方がない。キリトはボスに向かって走り出す。

 

「うおぉぉ!!」

「キリト君!?」

 

 キリトはアスナの制止を無視し、横から迫るボスの鎌をスライディングするように避け、懐へとたどり着く。そして、キリトが剣を構えると、途端に二刀の剣は光を放ち始める。そして、彼はその名前を呼ぶ。

 

「スターバースト・ストリーム…!」

 

 まず、右手に持った剣で腹部を横に切る。続いて左手の剣を突き刺し、右上に向けて切る。そして次々と加えられる目にも止まらない連撃が光の軌跡と共にボスの中へと消えていく。そして、ラストの突き攻撃、これが全16連撃の二刀流スキル、スターバースト・ストリームである。

 

「ッ!」

 

 全ての攻撃が終わる。と、同時にキリトに硬直時間が襲い掛かる。硬直時間は、ソードスキルを放ち終わった際に出現する時間のことで、この時には大きなスキができる。スキができるということは、その分敵から反撃される時間が増えるということで大変危険な状態となる。その時、スカルリーパーの鎌がキリトを襲う。キリトの細い剣ではその攻撃を防ぐことなどできるはずはない。キリトでは。

 

「クッ!」

 

 その時、大きな盾がキリトの身体を鎌から守った。

 

「キリト君、いくらなんでも無茶が過ぎる」

 

 ヒースクリフだ。

 

「一度下がるぞ」

「あぁ…!」

 

 ヒースクリフは、鎌をはじいた後、キリトと共に後ろへ跳ぶ。

 

「いくらリーファ君のことを気にしてても焦っても仕方がない、ここは確実にいこう」

「あぁ、分かってる…」

 

 確かに、自分は若干焦っていたのかもしれない。出なければ、単独で攻撃を仕掛けるなどと言う危険な真似しないだろう。

 

「キリト君、一人じゃ危ないよ!」

「ごめん、ちょっと頭に血が上っていたみたいだ…」

「来るぞ!」

「ッ!」

 

 キリトのスターバースト・ストリームによって、3本目のHPバーは消滅したが、しかし、それでもまだ2本残っている。冷静にならなければ。その時、聞き覚えのある音がした。

 

「ゴゴゴ?」

「いったい…?」

 

 先ほどから巨体のボスが動いているため、地響きが絶えることはない。だが、その音は地響きとは違う。聞き覚えのある。聞いたことがある。さっきも聞いたはずの音だ。確かあれは、この部屋に入るとき…。

 

「バカな…」

「え?」

 

 ヒースクリフが、驚きの表情をして、後ろを見ている。キリトも、ボスの動向に気を付けながら後ろを見る。そこには開いている扉。開いている扉?

 

「な、どうして扉が開いて…」

 

 時間差で開くようになっていたのか、いやそんなことしても意味がない。ではどうして。答えは、そこに現れたシルエットが表していた。

 

「あれは…まさか…」

 

 空に浮かんではいるが、間違いない。クエストに描かれていた鎧と全く同じだ。まさか、開くことができない扉を開くなんて、いや、あのクエストの名称、あれは…。

 

「世界の破壊者…ディケイド…」

「ボス戦に現れる援軍ってのはゲームでたまにあるらしい…」

 

 75層ボス戦は佳境に入っていた。




今回のご都合主義リスト。
あやかがネギまの世界でネギからもらったという本。
原作では別に見送りなんてしていなかったリズベットとシリカ。
何故か迷宮区のマップを持っているシリカ。
あと、次回で判明する問題点1・3の解決方法。
本当にご都合主義が多い。

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