『そらのカナタの!』って漫画クロスさせたら面白そうと思ったけど、未完じゃん…。他、今でも色々な作品を模索中な今日この頃。
なにか作品の提案があったらこれからも検討します。
「クッ!ウアァ!!」
殺意のこもった二振りの刃、だがそれが彼に通ることはない。二つの剣がどれだけの光の軌跡を描こうとも、その盾がすべてを跳ね返し続けていた。余裕の表情でそれを見ていたヒースクリフは、剣を振るうときに生まれるスキを見つけると、即座にキリトを斬ろうとする。キリトは寸前でそれを避ける。その時に、髪の毛が数本舞うエフェクトが描かれていることから、本当に寸での所で避けたのだろうことが分かる。
「グッ!ウッ!ハァッ!!」
一方の攻撃は完璧に防がれ、一方の攻撃は当たるか当たらないかのギリギリ。キリトの剣は攻撃の剣だ。しかし、ヒースクリフの剣は防御の剣である。一見、ヒースクリフの盾は大きい為、死角が大きくなり、不利であろうと思う。しかし、体の半分以上を守ることのできる盾と言うのは、その死角をあまり補うほどの性質を持っていた。対して、キリトの防御手段は、剣で受け止めるか、避けるか。反応速度が随一であるキリトであるからこそできる手段であり、素早い攻撃ができるということは、二刀流のメリットでもある。だが、はっきり言うと今のキリトの戦い方は対人戦では完全に間違っていると言ってしまえる。そもそも、よく時代劇等で今キリトが行っているような殺陣のシーンがよくあるのだが、これはテレビ的な演出であり、戦国時代などの1対1の戦いでは、つばぜり合い又はにらみ合いの時間が長かったそうだ。斬られてしまえばそれまでなのだから、慎重になるのは当たり前だ。だが、テレビ的な演出の殺陣シーンを何度も見せられてしまえば、そういう戦い方だと勘違いしてしまうのは仕方がない。この世界はHPが0になったら死ぬという制約があるが、逆に言えば0にならなければ死なないということだ。彼は、74層ボス戦に置いて、スカル・リーパー相手に繰り出したスターバースト・ストリームを使用してギリギリ、途中からは斬られることもお構いなしに、ごり押しに近い形で勝っていたのだ。斬られても痛みをほとんど感じない、部位欠損というクリティカルヒットに近いことをされて腕がちぎれても痛みがないというこの世界の常識は、斬る斬られるの恐怖心を完全に殺し、フィクションの戦い方を完全再現してしまったのだ。
(二刀流スキルのモーションをデザインしたのは奴だ!システム上で設計された連続技はッ!すべて読まれる!!ソードスキルに頼らず、自分の力で倒すしかない!!!)
彼は元々剣道をしていた。その記憶をもとに闘うしかない。だが、ここに一つ過ちがあった。現実の戦い、そこでは竹刀は1本だった。今では、剣道で二刀流というのもあるのだが、キリトがそれを使いだしたのは、このスキルを手に入れてから。つまり、今まで二刀流での動きは全てソードスキルというシステムに動かされて使用していた。我流二刀流は、ほとんど初めてであるのと同然なのだ。
「す、すごく激しい攻撃ですわ…」
「あぁ、だがそれまでだ」
「え?」
士はあやかの感想にそう答えた。確かにキリトは素早い動きで闘っているが、どちらかと言うと、キリトの動きはぎこちないように感じた。特に、左手がだ。キリトは右利きである。そのため、現実でも右手を支えにして竹刀を振っていた。左手で剣をちゃんとした形で振ったことがないのだ。だから少しぎこちない動きをしている。士はライドブッカーを取り出しながら言った。
「このままじゃ、負けるな…」
「そんな…」
(速く!もっと速く!!)
キリトはそんな士の考えを知らず、速さを求めていた。もっと速く打ち込め。もっと速く動け。ヒースクリフの反応速度を超えろ。どうなったってかまわない。こいつを、倒す。負かす。殺す。二人の周りに煙が立ち込める。プレイヤーが動けば土煙が上がるというシステムであるが、しかしそれはほぼ微量なものであるはずだった。しかし、キリトの素早い動きに合わせて土煙のエフェクトを足していたら、いつの間にかそれが大きなものとなっていたのだ。明らかにゲームの速度を超える速さになっている。ヒースクリフは、そのことに驚愕しながらも、盾で防いでいく。外からは、キリトが剣を振るうエフェクト、それが盾にあたるエフェクトのみが見えていた。
「なにも…みえない…」
「このままじゃ援護射撃もできない…か」
「お兄ちゃん…」
「キリト君…」
ライドブッカーをガンモードにした士が一つつぶやく。いざとなったら横槍を入れるつもりだったが、この煙では二人の立ち位置が分からない。誤射する恐れもある。
「フッ!」
「クッ!!」
その時、キリトの頬をヒースクリフの剣がかすめる。このままじゃ負ける。焦ったキリトは、出してはいけない最大のしくじりを犯してしまう。
「ゥアァァァァァァァッ!!!!!!!」
煙が拡散し、キリトの二刀が光り出した。ヒースクリフは不敵に笑う。それを見て、キリトはようやく我に返った。
(しまったッ!)
「キリト君だめ!!」
あやかは、アスナの叫びに反応する。
「アスナさん、どうしたんです!?」
「ソードスキルを使用した後には硬直時間が出るの!このままだとキリト君はッ!!」
ソードスキルには、使用後の硬直時間が発生する。そのため、プレイヤー間で硬直時間を起こしたプレイヤーと入れ替わって戦う『スイッチ』と呼ばれる戦法が考え出された。これによって、硬直時間に敵に倒されるということが無くなる。だが、当たり前だが、これは1対1の場面では使えない。簡単に一言で言うとやばい、である。その間にも、キリトのソードスキル、スターバースト・ストリームは無駄にヒースクリフの盾に当たる。硬直時間云々の前に、彼にはソードスキルは熟知されているために通用しない。だから使用しないと決めていたが、焦りが彼の思考を鈍らせたのだ。
「クッ!ハァッ!!ハァァ!!!」
一つ、また一つと当たっていく。だが、一つたりとも攻撃は盾より向こうに行かなかった。キリト、アスナ、リーファの視界が段々とゆっくりになっていく。一太刀、一太刀だけでもいい。ただ、その攻撃が当たればいい。動け、動け、動け、動け、動け。避けて、止まって、逃げて。しかし、無常にもその攻撃は終わってしまう。
(ごめん、アスナ、スグ、俺はッ!!)
「ウアァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」
最後の一突き。全身全霊を込めた最後の攻撃。覚悟と思いのこもったその攻撃はしかし、無情にもヒースクリフの盾に当たり、耐久値の無くなったダークリパルサーは折れてしまった。
「さらばだ」
ヒースクリフは、剣を振り上げる。赤いエフェクトが剣に宿る。動け、いや動けないのは分かっている。もう彼にはどうすることもできなかった。
「あっ…」
彼には…。視界に現れたのは、アスナと直葉…。ヒースクリフの剣は、二人の身体を袈裟切りに斬る。
「タイムアップだ」
寸前でピタリとヒースクリフの剣は止まった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「ア、アスナ…スグ…」
スグは麻痺がかかってなかったから動けるのは分かる。しかし、アスナはどうだ。麻痺状態だったはずだ。なのに、何故彼女は動けている。一体、何故。それに、タイムアップとは何のことだ。
「悪いが、君たちに付き合っている暇はなくなったようだ」
そんなヒースクリフの目の前にメニュー画面が浮かんでいる。メッセージでも受け取ったのだろうか。それを見てから、アスナはレイピアを、リーファはスウィープセイバーを取り出す。
「やめたまえ、私はもう戦うつもりはない」
「なっ…」
「どうやら、新しいステージの用意ができたらしい」
戦うつもりはないだと。自分から戦いを煽っておいて、戦うつもりはないという彼の言葉に、フラストレーションがたまっていく。だが、突然の出来事が色々と起こりすぎて脳の処理が追い付いていない。
「おい、それはどういう意味だ?」
そこに、援護しようとしたが、アスナとリーファが射線に入ってしまったために撃つに撃てなかった士が代わりに聞いた。
「言葉通りの意味だ。もうそろそろ始まる」
「始まるだって?」
数秒後、地面が揺れ始める。
「じ、地震ですか?」
「地震なんて、このゲームで…キャッ!」
最初は、小刻み出会った揺れはどんどんと激さを増していく。立っていた者たちは、その場に伏せなければならないほどだ。
「くっ!一体何なんだ…」
士も、地面に片手と片足を突いて、倒れないように踏ん張る。そんな中も、ヒースクリフは一人立ち、このボス部屋に入った時のように盾を前に立てて演説を開始する。
「ソードアート・オンラインは次なるステージへと突入する。君たちに最もなじみ深く、そして誰もが一度は想像したことのある世界へと姿を変える」
ヒースクリフは、それを嬉しそうに話していた。
「私は、その本丸で待っている。次に会う時を楽しみにしている」
ヒースクリフはその言葉を残すと、次の層へと進む階段を上っていく。キリトと士は、揺れに耐えながらも立ち上がる。
「待ちやがれ!まだ、まだ決着はついてねぇぞ!!」
「…キリト君」
「ッ!」
ヒースクリフは、キリトの言葉を無視し、扉を押す。扉が開いていくが、その先は白い光によってよく見えない。
「これが私の望んだ世界だ…楽しみたまえ」
その言葉を最後に、扉の奥へと消えていってしまう。
「待て、茅場!!」
「キリト君!」
「お兄ちゃん!」
「待て、キリト!」
揺れが段々と収まってきた。それを皮切りに、キリトはヒースクリフを追いかける。そのキリトを、アスナ、リーファ、士の三人が追いかけていった。扉の中へと入る。この扉は、次の層の転移門へとつづく扉だ。だから、その先にあるのは、第76層の転移門のはずだ。一瞬目が眩むほどの光が彼らの目を襲った。強い光、ここまでの光を浴びたのはこのゲームに入って初めてだろう。周りからはざわついた声が聞こえ始める。誰かいるのか、いやこの階層に入ったのは自分たちが初めてだ。ではNPCなのだろうか。それにしたって数がおかしい気がする。その時、目が慣れだした。そして…。
「うそ…?」
「こいつは…」
「そ、そんな…」
リーファ、士、アスナはその光景に驚愕した。確かにそこには人がいた。だがどう見てもNPC、というか、SAOに似つかわしくないほどのラフな格好をした集団が目の前にいた。下を見てみる。黒々としたアスファルトで舗装されている道だ。SAOはほとんどが石畳、または舗装もされていない道だった。だから、このような物を見るのはSAOにおいては初めてだ。上を見た。巨大な建物の数々。天井高くそびえたつ迷宮区には程遠いが、ソレの次ぐらいに大きい建物群が左右、そして遠くにもある。決まり手となったのは、目の前にある建物だ。大きなポスターの貼られたそのビル。一番上の方にある数字にも見覚えがある。1、0、9、何度見ても、何度目をこすろうともそこにある数字は変わらない。色は言葉にしずらいほどの色であって全くと言って違うのに、ここがソレだとしか思えなくなってきた。耳に聞こえてくるのは、車のクラクション。気が付けば周りにいた人間は皆、遠くの方にいる。ここは、スクランブル交差点のど真ん中なのだ。信号が変わって、自分たち、そして後ろにある門が邪魔となって通行できないであろう車が列をなしていた。間違いないだろう。ここは、この場所は、キリトは信じられないという風に言った。
「渋谷…なのか?」
まさか、次の階層は渋谷という現実にもある町なのか。確かに茅場は自分たちになじみぶかい場所と言っていた。だが、これはあまりにもSAOの世界観を無視しているではないか。それに、空は青空じゃない、いやなんだ、何かに包まれているように見える。それに、何なのだこの違和感は、なにか恐ろしいことになっている気がする。その時、叫び声が聞こえた。
「な、なんだあれ!!?」
「おい、落ちてくるぞ!!」
落ちてくる?この門の事ではないのは確かだ。ならば、何だ。答えは、空を見上げるとすぐにわかった。小さな点だったものが、徐々に徐々に落ちている。あれは、何だ。いや、待て、あの形見覚えがある気がする。なんだ、どこで見た。思い出せ、あれは、2年前…。
「嘘…」
「リーファちゃん?」
「あれ…アインクラッドだよ…」
「なに?」
それでキリトはハッとなった。
(そうだ!アインクラッドだ…。なんてこった、2年間中にいたから外観があんなんだってこと失念していた…)
そこでキリトは疑問に思った。何故アインクラッドが現れるというのだ。自分たちがいるのはアインクラッド、目の前にあるのもアインクラッド。
(待てよ…渋谷と同じ風景、目の前に現れたアインクラッド、そして…)
キリトは周りを見る。そこにいる人たちは皆騒然となっている様子だ。イベントなのか、いやここまでの表情のバリエーションをこの層限定で、しかも見たところ500人はいるそれぞれの表情を割り当てるのはかなり面倒だ。それでいてこのリアリティー。
(考えたくはない…でも、もしも…)
「もしも、アインクラッドじゃなかったら…」
思わず自分の考えが外に出てしまう。
「ここが、アインクラッドじゃなかったら…現実世界だったら…」
「そんなことって…!」
「俺だって、考えたくない…けど…」
目の前にある真実が、全てを物語っている。見覚えのある交差点、見覚えのある格好の群衆、見覚えのある建物、自分たちがとらわれているアインクラッドが目の前にある状況で考えられるのは…。
「ここは…正真正銘本物の渋谷だ…」
第76層 渋谷
約6000人のプレイヤーは、現実へと帰還した。
次回、仮面ライダーディケイド エクストラ「どうして俺たち、帰ってきちまったんだろうな」「俺…仮面ライダー失格なのか?」「さよなら、おばさん…」「こいつらは、剣を持つ必要はなかった!」「キリト君…!」「ごめん、アスナ…」
【アインクラッド・ラスティング】全てを破壊し、全てを繋げ