仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

49 / 265
SAOの世界2-7

「えっと…あやかちゃん、桜子ちゃん…それから史伽ちゃんに風香ちゃん…よしこれで全員分買いましたね」

 

 若干忘れ気味になっていた夏海は、こんな事態にあっても普通に営業をしている強者デパートで服を買い揃え終えたところである。このデパートは、かなり大きく、デザイン的にも中央にの屋上まで続く吹き抜け、階ごとにガラスが張ってあるが、これもデザイン制を意識したものなのだろうか。それはともかく、吹き抜けからくる太陽の光は、かなり綺麗なものなのだろうが、今は例のドーム状の物によって、光が半分以上届いていないのでそれほどという物ではない。

 

「えっと…他に何か買わないといけないものありましたっけ…あっ」

 

 夏海はあることを思い出した。そういえばコップを買ってなかったということに。昨日今日と、麻帆良組の使っていたコップは、お客様に出す用のコーヒーカップだった。でも、しばらくは彼女たちと共に旅をすることになる。だったら、そんなお客様用の物でなく、彼女達専用のコップを買ってた方がいいのではないかと考えたのだ。因みに、夏海や士、ユウスケ、栄次郎は自分たち愛用のコップを持っていた。栄次郎のコップは、底が少し広くなっているミルクピッチャーのような形の物。士の使っているのは、マゼンダ色の、薄いピンク色の物。ユウスケの使っているのは、他よりも少し大きく、表面に『YU-SUKE』と自分の名前が書かれている物、そして、夏海の使っている者は、士の使っているコップと同サイズで、表面にはクローバーがいくつも書かれたコップ。因みに、何故か光写真館には常駐していないはずの海東大樹の専用コップもある。のだが、何故か不明だが変な湾曲があるコップで、表面にはどう見ても『良太郎ちゃん専用』と書かれている。良太郎は、電王の世界のデンライナーに乗っているイマジン達の契約者、つまり仮面ライダー電王の片割れなのだと士から聞いたことがあるが、もしかしたらその人から、いや十中八九盗んできたに違いない。あれはいつか返すとして、彼の分のコップも買ってきた方がいいのだろう。もはや、夏海は光写真館の女房という感じになっている。

 

「皆の分のコップ…あれを買ってから帰りましょう」

 

 そう思い、夏海は服をロッカーに入れた後、雑貨屋さんへと足を向ける。

 

「まぁ、このお店でいいかな…」

 

 その後すぐ、少女が一人店の中に入っていく。先ほど、ユウスケと出会った朝田詩乃である。あの後、彼女はしばらく雑貨屋を巡ったが、この異常事態の中で空いている店は、ここだけであった。このお店でいいかなとは言ったが、大型デパートの中に入っている店だけあって、売っている商品の数は多いため、まぁいいだろう。そう思い、店へと入っていく。

 

「えぇっと…コップ、コップ…」

「どこにあるかな…」

 

 夏海、朝田の二人は別々の場所にいたはずが、しかし次第に同じ場所に引き合わされるようにその場所へと向かって行く。それは、まるで示し合わせたかのように、偶然に、そして奇跡的なタイミングであると言えよう。

 

「「あ、あった」」

 

 その時、二人の手が触れた。

 

 

 バイクを走らせていたユウスケは、ふとある場所で止まる。多くの野次馬と共に、その道が封鎖されていたのだ。何があったのだろうかと、バイクを置いて野次馬の中へと入っていくユウスケ、そうすると、どんどんと硝煙の臭いと、いくつかの悲鳴までもが聞こえてくる。そして野次馬の一番前で見た光景は…。

 

「撃て撃て!街中で銃を撃つチャンスなんて、この先いつあるかわからんぞ!!」

「新宿二丁目、モンスターが多数出現しました!!応援要請が来ています!!」

「弾が足らんぞ!もっともって来い!」

 

 警察が必死になってモンスターを撃退している姿だった。一体一体の量はそれほど多くはない、とは言うものの、異形の怪物を相手にするというのは、彼らにいくらばかりかのストレスをかけていた。だが、あるアドバンテージの存在が、そのストレスを限りなくゼロとしている。遠距離攻撃である。元々SAOのモンスターは、近距離系の攻撃しかないモンスターが9割である。ある意味当たり前だ。そもそも剣での攻撃しかないSAOで遠距離攻撃しかしないモンスターばかりになってしまえば、難易度は跳ね上がる。流石に茅場昌彦もそこまでゲームバランスを崩壊させることは避けたようだ。もっとも、この国の防衛システムがちゃんと働ければ、もっと多くのモンスターを倒すことができているだろうが。現在、この国の自衛隊は機能していない。理由として、防衛大臣や総理大臣を含む多くの閣僚が海外への渡航によることの不在によるものが大きい。自衛隊を動かすには、防衛大臣または内閣総理大臣の命令があるかないかが大きなカギとなってくる。例え、どれだけ自衛隊員が多くとも、命令する人間がいなければ動くことはできないのだ。例え閣僚が国内にいなくとも、少し前であれば国際電話等で命令を送ることだってできたはずだ。しかし、現在謎のドームのために関東地方一帯が外との連絡手段を絶たれている、いわば陸の孤島状態となっているために、自衛隊への命令が一切なかった。では独自に動けばいいではないかと思う者もいるのではあろうが、しかし命令がなければ動くことのできない、命令が絶対であるという職業の者たちに命令を違反してもよいという命令をするものなどいなかった。自衛隊上層部も警察を援護したいと考える者もいた、だが、そうすれば待っているのは首切り、下手をすれば裁判にかけられ、重罪を背負うことになってしまう。国の安全を守るためのシステムが、たった数人の人間がいないだけで大義名分を失うという事実を表していた。

 

(このままじゃ、まずい。相手はデータのモンスターだ…あいつらなら…)

 

 敵はデータ上のモンスター命を持っていない。だから、今の迷っている自分であっても戦うことができる。そう考え、前に出ようとする。しかしその時、目の前にモンスターが投げたパトカーが 落ちる。

 

「キャァ!!」

「ここは危険です!離れてください!!」

 

 その衝撃に、ユウスケの周りにいた野次馬は封鎖をしていた警官の言葉を聞いて、一目散に逃げ出した。ユウスケは、その逆に、モンスターに向かって走り寄っていこうとする。しかし、警官はそれを許さない。

 

「何してるんです!あなたも逃げてください!」

「けど、俺は…」

「ここは警察が何とかしますから!さっ、早く!」

「ッ…」

 

 警察はユウスケを、クウガを知らない。ただ、罪のない一般市民を守ろうとしているだけだ。そして、そしてユウスケは警官に止められて改めて我に返る。

 

(生きている生きていないなんて関係ない…俺には…今の俺には覚悟がない…そんな俺が戦っても、足手まといになるだけだ…)

 

 ユウスケは、拳を一度握ると、バイクの元へと歩いていく。みじめだ。結局自分は目の前で自分以外の人間が戦っているというのに、勇気をもって戦っているというのに、自分はその光景を見てもいまだに覚悟を示すことすらもできない。ユウスケは、一人バイクに乗って去っていった。




 戦闘シーンのない小説なんて、こんなもの…。というか、なんだよ階ごとにガラスが張ってあるって、ここまで露骨な語彙力不足を嘆いたことはない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。