「えっ、士君はもう帰った?」
「ええ桜咲さんといっしょに」
学校についた2人は3-Aのクラスの一員であるという村上夏美から士はすでに桜咲という生徒とともに帰ったという話を聞いた。
「桜咲さん?」
「はい。あっあとエヴァさんや茶々丸さんもいました」
「3-Aの人ですね。4人がどこに行ったか分かりますか?」
「さぁそこまでは」
話をまとめると、士は桜咲、エヴァ、茶々丸という3人とどこかに行ってしまい、どこに行ったのかはわからないという。いったい士はどこに行ったのかと困っていたところ。
「あれ?夏海さんとユウスケじゃんどうしたの?」
「あっ!明日菜さんそれに木乃香さん、実は…」
夏海は朝出会った明日菜と木乃香に事情を話し、意見を聴こうと思っていた。しかし、ユウスケはそんなことよりあることが気になっていた、
「ねぇなんで俺は呼び捨てなの?」
そう夏海は『夏海さん』であるのに対し、ユウスケは『ユウスケ』と呼び捨てなのである。いったいこの差は何なのかと問いただそうかとしたが、
「え…。桜咲さんとエヴァちゃん?」
「無視された」
「ドンマイや」
無視されたユウスケは木乃香に慰められていた。しかし木乃香のその行いは中学生に慰められるという傷穴を広げられたようなものだったためユウスケはもっと落ち込んだ。
「……もしかして」
「!心あたりがあるんですか!?」
思い立った節がるのか、明日菜は彼女たちがどこにいるのか思いつく。そんな明日菜に夏海はどこにいるのかを聞いたが、
「ああ、いやなんでもないです!じゃ私達はこれで」
とはぐらかされて木乃香とともに去って行った。
「あっ待ってください」
夏海は見失ってなるものかといった風に二人についていく。
「あっ、待ってよ夏海ちゃん」
立ち直ったユウスケもそんな3人についていく。そしてその場に村上夏美一人がいったい何なんだろういった風に取り残された。余談だが物陰から夏海たちを監視していた弐集院は追いかけようとした際に携帯に連絡が入り、それに気をとられている間に夏海たちを見失ってしまった。
夏休みが近いこともあり、授業はあっても短縮授業で3時間のみであった。士は数学教師という名目だったが、なぜかほかにも社会と体育の授業も行っていた。体育に至っては長瀬楓や古菲という麻帆良四天王と呼ばれる超人レベルとテニスで勝負した。が、危なくコートを壊しそうになったために途中で取りやめになった。その際長谷川千雨が頭を抱えて、何かぶつくさ言っていたがその言葉を聞いていたものは誰もいなかった。それはともかく、授業が終わった後背中に竹刀袋を背負った桜咲刹那に呼び止められた士は、幼さの残る顔立ちで金髪のエヴァンジェリン、どこからどう見てもロボットの茶々丸らとともに森の中に入っていった。薄暗い森は、悪霊がいるかのごとくうなっていた。しばらくすると、森の中の切り開かれた場所にログハウスがあった。エヴァに何かの確認をする刹那をしり目に、士はいつも道理その中の写真を撮っていた。
「なんだこの悪趣味な…」
ログハウスの中は人形がたくさん置いてあった。このログハウスはおそらくエヴァの家である。出席簿にもここの住所が書いてあった。という事はこの人形はエヴァンジェリンのコレクションという事になる。ふと見るとその中の一体がまるでこちらを見て笑っているように見えた。士がその人形をつかもうとすると、
「…こちらです、士先生」
「おいどこに連れていく気だ」
「来れば分かります」
「…ったく」
そう言って士は桜咲についていき地下への階段を下りていく。エヴァンジェリンと茶々丸は上に残った。そのルートは、多くの人形が置いてあった。今度はさっきのような小さい物ではなく、人と同じかそれよりも大きい物であった。
「………ここです」
刹那が連れてきた部屋には中央に大きなスノードームのようなものが置いてあり、薄暗い部屋の中でなぜかその部分だけが妙に明るかった。上からスポットライトを当てているようだ。
「なんだこれは、ミニチュア…うぉ!」
士がそれに近づいたその時、光に包まれその場から士が消えた。
「…」
それに続き刹那もまた光に包まれその場にはスノードームのようなものだけが残った。
「全く、別荘を少し貸してくださいとは言っていたが。まさか先生を連れ込むとは」
上に残ったエヴァンジェリンはソファーに座り刹那がこの日の休み時間に、別荘を貸してくれと言われた時のこと思い出した。今日はネギとの修業があったが、その真剣な目を見てこれは何かあるなと思い承諾した。まさか刹那が今日突然あのクラスに来た門矢士を連れ込むなど思いもよらなかった。
「彼は何者なんでしょうかマスター?」
「わからん…ただ」
「ただ?」
「ふつうの人間ではない。それ以上は分からん」
茶々丸にマスターと言われたエヴァンジェリンはそういうとまた考え込む。刹那はこの学園の秘密を抱えているものの一人だ。そしてその性格から、一般人にその秘密をやすやすと明かすとは思えなかった。という事は彼も裏の人間で刹那の知り合いと思われる。しかし、授業中も士に漏れていた押さえきれない殺気から、良い間柄ではないことは分かっていた。では何なのか、それがわからないまま少し休むと茶々丸に言いエヴァンジェリンは寝床に向かっていった。
「?ここは、さっきのミニチュアか」
目が少しくらんだ士ではあったが、すぐに治り、周りをよく見る。するとそこは先ほど見たミニチュアの建物と全く同じだった。とりあえずその光景を写真に収める士の背後に刹那が現れた。
「門矢士」
「ん?呼び捨てか」
いきなし生徒に呼び捨てにされた士。今日の授業を思い返してみても鳴滝姉妹や、神楽坂明日菜といった、うるさく若干目上の物に対しては不適切な言動を言う輩はいたものの刹那はそんな雰囲気も出していなかったから少しは驚いたが、しかし思い返してみると一日中感じた視線は、刹那から放たれていたものではないかと思えてくる。
「この街から出ていけ、さもなければ」
「さもなければ、なんだ」
背中の竹刀袋から真剣を取り出した刹那に向かい、怒気を含んだ声でそう言う士。
「!…お嬢様にこの街に手を出すなら私が退治する!この悪魔め!」
士を敵認定した刹那は改めて真剣『夕凪』を構えた。士は、
「ハァ、またか。人気者はつらいな」
そういって呆れていた。以前の世界でもやれ悪魔だとか、やれ破壊者だと言われて大抵は一世界につき最低一人に襲われていた。そしてその襲ってくるものはたいていはその世界のライダーであったり、その関係者であったりするのだ。今回の世界では刹那がその役回りであった。という事は刹那は何らかの関係者となる。懐からライダーの証であるベルトなどの変身道具を取り出さないことから見ても、この少女が仮面ライダーではないだろうと士は分かった。
「よしわかった」
其れは兎も角敵対心むき出しの彼女を止めるために、士はどこからかディケイドライバーというベルトを取り出した。
「!」
「かかってこい。生徒の非行を止めるのも教師の役目だ」
そういうと士はベルトを腰に巻き、ライドブッカ―という武器にもなりカードを収めているところから仮面ライダーディケイドのカードを取り出し。
「変身!」
[KAMENRIDE DECADE]
ベルトにそのカードを入れる。するとそのベルトから電子音がし、士の周りに灰色の鎧のようなものが出てくる。そして士と一体になるように重なり、頭にカード状になったものが数枚刺さったその時色が付いた。マゼンダ色の仮面ライダー、その名も仮面ライダーディケイド。数々の世界をめぐり、数々の世界を救ってきた悪魔兼破壊者兼救世主がついにこの世界に舞い降りた。
「!それが本当の姿か!」
「まあある意味な。行くぞ」
「ハァ!」
ライドブッカ―を剣形態のソードモードにした士と夕凪を構えた刹那は双方ともに駆け出し、ちょうどその中央で相対する。この世界に現れた仮面ライダーと、この世界の裏の人間の一人、魔法生徒との初対決であった。
ほとんど戦闘していなかった。というか、ここまでの間に出ていないレギュラーキャラがちらほら…。