仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 あぁそう言うことか…。メンバーをかなり分散させてしまっているからカット数が増えて、こうも少しづつ少しづつにしか投稿ができないのか…。
 今回、本来であれば中ボスとして登場する予定だった男が不要になったので消します。


SAOの世界2-8

「ここがお前の店か?リズ弁当」

「リズベットね」

「リズベッド?」

「リズベット!」

「リズペット?」

「…あんたもしかしなくてもわざとやってる?」

「ばれたか…」

 

 士とリズ弁、いやリズベットの二人は第48層、リンダースにあるリズベットの店≪リズベット武具店≫へと帰ってきた。あの後、地面を掘り進み、ついに剣の素材となる素材を見つけることに成功した。リズベットによると、あの大穴は龍の巣であったらしい。そこにある素材は、龍の排泄物であるらしく。つまり…食事中には絶対に言ってはならないアレである。また、以前その場所に来たときは、次の日の朝に龍が戻ってきて、その背中に飛び乗ることでその巣穴から脱出できたらしい。それが本来の脱出方法であり、イベントでもあるらしい。そして、巣穴にあったあの謎のキャンピングセットは、前回リズベットがキリトと一緒に来たときに回収することができず置いて行ったものだったらしい。果たして、あの巣穴の中で二人に何があったのか、それを知っているものは二人しか知らぬことである。今回は、士が一緒に行ったため、一夜を待たずに仮面ライダーオーズダジャドルコンボで空を飛んで脱出してきたのだ。

 

「とりあえず、私は中で剣を作っておくから」

「あぁ、そう言ったことでは、俺は戦力外だからな」

 

 人には向き不向きがある。今回に至っては、そもそもそのような能力を士は持っていないので、リズベットに任せるしか他はなかった。完璧人間を自称する彼であっても、流石にこれには何も言えない。ついでに言えば、今回彼女がするのは、ただ剣を打つだけではない。その剣を最大値まで強化しなければならないのだ。キリトが使っていた剣もまた最大値まで強化していたものだった。そのため、同じ使い心地にするためには、こちらの剣もまた同じくらいまで強化しなければならないのだ。

 

「キリトの所に持っていくのは私がやっておくから、あなたはもう帰っていいわよ」

「待て」

「ん?」

 

 それだけ言って店の中へ入っていこうとする彼女を、士は制する。一つだけ、聴きたいことがあったからだ。

 

「何故そこまでする必要がある?」

「え?」

「すでに外の世界とつながって、何人かは帰ることができているはずだ。これ以上、戦わなくても」

「でも、まだ帰れない人だっている」

「…」

 

 士の言葉を彼女は途中で切る。士も、それは考えていた。関東地方だけが閉ざされた、と言うことは関東地方以外の出身であるプレイヤーは、誰も帰れていないのと同じだ。そうでなくても、外に出られたという達成感により、すでに何人かのプレイヤー群がゲームから降りている状態になっていると言える。だが、たとえそれらのプレイヤーがゲームを終わった気になっていたとしても、それ以外のプレイヤーにとってはまだ地獄は続いている状態なのだ。

 

「まだ戦うプレイヤーがいるのなら、剣を作り続ける…。それが職業クラスのできる唯一の戦いだから」

 

 と、リズは手に持った素材を見つめながら言う。自分は、キリトやアスナのように剣を上手く使えない。だから、裏方として、誰かのために武器を作り続ける事、そしてそれによって誰かが誰かの命を救って、そしていつの日にかゲームをクリアしてくれることを、願っていた。だが、これはゲームクリアとはいえない。むしろ、被害者が増えただけ。箱庭の規模がさらに大きくなっただけである。そんな世界、クソッタレである。

 

「お前の考えは分かる。だが、キリトが戦い続けるほうに入るとは限らない」

 

 そう、彼女がそもそもその素材を取りに行ったのも、これから作って、さらに強化するというのも、全てはキリトにその剣を持っていくため。だが、そもそもキリトが戦いをやめてしまったら、そんな苦労もすべてが無駄になってしまうだろう。キリトの家は埼玉にあり、今回の騒動で閉ざされた地域の一つに入っている。彼がこのまま降りてしまうことだって考えられるのだ。だが、リズベットはそうは考えていないようだ。

 

「キリトは、絶対に降りたりしない」

「そう考える根拠は?」

「根拠は…」

 

 はっきり言うと、ない。だが、何故だか知らないが、彼がこのまま引き下がるなんてこと考えられないのだ。確かに、彼と過ごした時間は少なかったかもしれない。ちょっと抜けたところはあるが、かっこいい部分も垣間見える。そんなキリトの事を、一瞬だけ好きになっていたことがあった。だが、結局は親友のために片思いだけで終わってしまった。自分で一つ線を引いて、もしかしたら、自分は彼の事を英雄か何かと思い込んでいたのかもしれない。自分は、彼に英雄としての希望を持たせた責任を取らせようなんて思っていない。むしろ、このままアスナと一緒に平凡な生活に戻ってもらいたいとも思っている。だが、何故だかは分からないが、彼なら、彼だったら、立ち上がる。このゲームを本当の終わりに導いてくれる。そう思ってならないのだ。そう、いうなればこれは…。

 

「女の勘よ!」

 

 この世で最も不確かなしかし、最も信頼できるそれが、一番の根拠であった。その言葉に、一瞬変な空気が漂うが、しかし士も一テンポだけ置いて言う。

 

「…大体わかった」

 

 それだけ言うと、士はその場から離れ転移門広場の方へと向かって行った。そして、それを見送ったリズベットは、一つ深呼吸してから店の中へと入っていった。

 

 

 

「ALO…なるほど、面白い世界を作ってくれたものだ…」

「…」

 

 ヒースクリフは、真っ暗な部屋の中パソコンを操作しながらそう誰かに話した。

 

「だが、絶対にゲームをクリアできないようにしているのは気にくわないな、須郷…いや、ここはオベイロンと呼んだ方が賢明かな?」

「…ッ!」

 

 彼が話しかけていた人物、それは総合電子機器メーカー≪レクト≫の古ダイブ技術研究部門の主任研究員であり、茅場昌彦の大学での後輩、須郷伸之である。だが、その姿は到底人間の物とは思えない姿をしている。一番大きな違いと言えば、その大きく尖った耳。そして、それはリーファと同じALOの特徴であった。どういうわけか、彼までもがリーファやSAOプレイヤーと同じく、ゲーム世界の姿のままで現実世界に現れてしまっていた。ヒースクリフは、パソコンの画面をスクロールしながら言う。

 

「グランドクエストの難易度は、バカバカしいほどに高く、仮にそれに勝ったとしても、その先の道は作られてすらいない…全ては金儲けと、この人体実験の準備のためか?」

 

 ALOでは、空を飛ぶときに滞空制限がある、と言うことは以前説明したと思うが、ALOにおけるゲームクリア、というより目的は、9つの種族で戦いつつ、他種族に先駆けてALOの中央にある「世界樹」と呼ばれる樹の頂点と、そこにあると言われる伝説の≪空中都市≫を目指すこととなっている。そして、≪空中都市≫に最初に到達した種族はそこに住まう高位種族である光妖精族≪アルフ≫と妖精王≪オベイロン≫により≪アルフ≫に生まれ変わることができ、滞空制限解除の恩恵を受けることができるという、ストーリー性も併せ持っている。ALOが発売されて1年で、何とか世界樹の下にまで到達することまではできたが、グランドクエストと呼ばれるクエストのあまりの難しさに頂上に到達することは叶わず、到達点の門の向こうにあるという空中都市を見ることができていなかった。だが、それもそのはず、空中都市など存在しないのだ。正確に言うと、設定がなされていない。つまり、ゲームクリア不可なのである。ヒースクリフは、レクトにハッキングを仕掛けた際にそのことに気が付いた。何故、このようなことになったのか。ヒースクリフは現実に戻って、この場所にたどり着いてからリーファと同じ状態になっていた須郷を除く全職員をモンスターを利用して追い出し、須郷のパソコンを操作、そして実はALOは、須郷にとっては金儲けの道具でしかなく、さらにSAOがクリアされた際には、何名かの人間の意識を拉致し、人体実験を行うなどと言う暴挙が書かれていた。

 

「茅場昌彦…また邪魔するのか!」

「…」

 

 須郷、いやオベイロンはそう言う。だが、ヒースクリフは何も語らない。

 

「アンタはいつもそうだよ!いつもいつも何かを悟ったような顔をし、終いには僕の欲しいものを端から奪っていく!」

「では、ひとつ言わせてもらおう」

 

 オベイロンの悲鳴にも似た叫び声に、ヒースクリフは冷静に語る。

 

「君が金儲けの道具として利用したALOは、もともと私の作ったSAOのサーバーをコピーしたものじゃないか」

「ッ!」

「昔から変わらないな君は。私利私欲を肥やそうとして、不用意に地雷原に足を突っ込んでしまう」

「そうやって上から目線で物を言う!」

「君は、なにか勘違いをしている。私は、上から目線で物事を語っているのではない…君程度の男に敬意を払う義理も人情も持っていないだけだ」

「貴様ぁ!!!」

 

 オベイロンは、剣を取りヒースクリフへと向かって行く。だが、ヒースクリフは即座にメニュー画面を出し、75層のボス部屋で行ったことと同じ方法で、麻痺を起こす。

 

「ぐおッ!」

 

 ゲームマスターとしての権限がないオベイロンにそれをかわすすべなどなく、地面に倒れ伏す。ヒースクリフは、そんな彼に近づき、メニュー画面を操作しながら言う。

 

「君は、中ボスにすらなりきれない…このパソコンの中の情報はあるべき場所に送って置く。君は先に独房の雰囲気を味わっておくがいい」

「ヒースクリフゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

 そのボタンを押した瞬間、オベイロンの姿は消え失せてしまった。

 

「私のゲームで無礼な真似は許さない」

 

 彼は、SAO内、第1層にある黒鉄宮という宮殿の中にある監獄エリアへと送られた。犯罪や、ハラスメント行為をしたものを閉じ込めておく牢屋のようなものである。ヒースクリフは、須郷のいた場所を一度見た後、もう一度メニュー画面を開き、あるプレイヤーの名前を出す。無論、その名前は…。

 

「早くきたまえキリト君…君がまだ、英雄であるのなら…」




 因みに私はこの小説内でリズベットを出そうとしたときリズベッド、リズペットだと本当に思っており、後で調べて違うということに気が付きました。あと何を考えたか≪リズ弁当≫って面白いなと思ってしまい、この小説でのリズベットのあだ名が生まれてしまいました。
 因みに、リーファがSAOの世界に入ったりしたのは、主に須郷のせいです。が、インターネットの事はあまり知らないため、適当に用語を並べても自分ですら理解できなかったため、その説明のシーンは没にしましたごめんなさい。

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