仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 因みに、私はミリタリーオタクというわけではありませんので、描写に誤りがある恐れがあります。
…そういえば原作今見返しましたが、茅場はSAOのメインフレームは、アーガス本社の地下にあるって言ってましたね…。というか、よく考えてみるとサーバーを別の場所に移すなんてある意味危険な行為するわけありませんよね…。


SAOの世界2-17

 自衛隊にとって、それは初めての日本での戦闘火器を使用した戦争の記録だった。この作戦に指揮を統括する首相や防衛大臣は関わらなかった。だから、個人個人が自分で考え、最善の一手はどういうことを指すのかを配慮し、そして全員が各々の目的のために立ち上がった。ある隊員は言う。確かに、それは自分勝手な身勝手な行動だったかもしれない。だが、それでも守りたかった。未来を子供たちに残すために。

 

「フン!ハァ!!」

「くらぇぇぇ!!!!」

 

 それぞれの場所で火花のエフェクトが咲き誇る。色とりどりに剣が煌めき、茅場昌彦の考え出した空想上の生物たちと戦う。奥から現れたモンスターの姿を見て、エギルが叫ぶ。

 

「気を付けろ!!スカルリーパーだ!!」

「クシャァァァァ!!!!」

 

 その言葉と同時に、75層のボスであったスカルリーパーがその姿を現した。スカルリーパーは、身体をくねりながらプレイヤーたちの間を抜けていく。いや、プレイヤーが避けていると言ったらいいだろう。だが、その巨体をどうやって倒すか。あの時は、多くのプレイヤーが一致団結し、9名もの犠牲者を出しながらも、そしてヒースクリフが協力していたために勝つことができた。同じく、その作戦で貢献したキリトとアスナ、士はもっと前線の方行ってしまっている。これは、厳しい戦いになる恐れがある。だが、その時エギルは気が付く。HPバーが1本しかないということに。弱体化しているのだろうか。だが、それは好都合。しかも奴が向かっている先には…。エギルは、近くにいた知り合いのプレイヤーに言う。

 

「シンカー!奴を誘導するぞ!」

「誘導!?…なるほど、了解した!ユリエール!」

「はい!!」

 

 そこからは元軍のメンバーでの連携だ。彼らは、スカルリーパーの前を横切るように飛び出して誘導したり、攻撃を加えることによってその方向を変えることによってスカルリーパーをある場所へと誘導する。一方、そのある場所にいる者たちは…。

 

「メッセージが来ました!今、モンスターを一体こちらに誘導しているとのことです!」

「よしっ、弾を詰めろ!!」

 

 SAOプレイヤーである男性はそう上官に言う。自衛隊に所属しているプレイヤーである彼は、エギルを含めて多くのプレイヤーと情報を密にし、それを上官に連絡、そしてそこから上官が隊員に向けて指示を送っているのだ。

 

「メッセージを送れ!こちらの準備は万端だ!だが、動きを止めてもらわなければ当たらないとな!」

「了解!」

 

 エギルは、そのメッセージを受け取ると、全速力でシンカーの元に駆け寄る。

 

「奴がポイントに着いたら動きを止める!お前とユリエールで左の鎌を頼む!」

「なに、だがエギル、君は…」

 

 彼の言葉から察するに、右側の鎌はエギル一人で担当するつもりなのだろう。だが、それは危険極まりない行為だ。シンカーも75層攻略戦に参戦はしていなかったもののその巻末は知っている。あのスカルリーパーの攻撃は、ラスボスであるヒースクリフ、そしてキリトとアスナの2組でようやく止め、その間に他のプレイヤーが攻撃を仕掛けるという作戦で何とか持っていったという話だ。途中の乱入者が現れなかったら、もっと手間がかかっていた恐れがあるとも聞かされている。エギル一人に任せても大丈夫なのだろうか。

 

「なに、少しの間だけだ!耐えられ…」

 

 その時、その言葉を最後まで言わせないものが現れる。

 

「その役目!ワイにもゆずれや!!」

「!」

 

 その言葉と同時に現れたのは一人のウニのようなトゲトゲの頭を持つプレイヤー。

 

「キバオウ!」

 

 元軍の副リーダーであり、軍衰退の要因を作った男。ビーターと言う言葉を作った張本人である。彼は、22層でディエンドにコテンパンにのされた後、自分のホームとしている場所で身を隠していた。本来だったらそこで彼のゲームは終わっていただろう。だが、アルゴからのメッセージを見て、ある言葉を思い出した。それは第1層、最初のボス戦の前のこと。ボス討伐のためにメンバーが集まった時にディアベルが言ったあの言葉。

 

『このデスゲームもいつかクリアできるってことを、始まりの街で待っているみんなに伝えなくちゃならない。それが今この場所にいる俺たちの義務なんだ!』

 

 確かに、そこでじっと待っていてもゲームは終わるだろう。だが、それはディアベルが許してくれないだろう。違う、自分の心が許さない。あのディアベルの言葉で奮い立った人間が、自分のほかに何人いたことだろう。あの時、何人ゲームがクリアできるということを信じていたものがいただろう。それが、あと少しで、あとほんの少しがんばれば手中に収めることができるのだ。キバオウは立ち上がる。自分たちの義務を果たすために。そして、彼は自分についてきてくれた数少ないキバオウ派のメンバーと共に駆け付けたのだ。

 

「ビーターだけが活躍してもおもんないからな!ワイにも仕事させてもらうで!」

「フッ、頼む!」

 

 4人はそれぞれ右往左往しながら進んでいるスカルリーパーを追い越して走る。そして、その場所のすぐ近くまで来ると、その時を待った。そして、スカルリーパーが決められたポイントに姿を現した。

 

「来たぞ!しっかり狙え!!撃つだけなら1812年でもできるが、撃破に関しての演習の成果を見せることができるのは今日だけだぞ!!」

「了解!」

 

 スカルリーパーが、ソレを。戦車の姿をその目に捉え向かう。だが、それが戦車の場所まで行くことはなかった。

 

「今だ!」

「ハァッ!」

「ハァァ!!」

「どぅりゃ!!」

 

 エギル、キバオウが右の鎌の攻撃を受け、シンカー、ユリエールが左の鎌の攻撃を受け止める。その攻撃は確かに重かった。だが、受け止めきれないわけじゃない。それぞれ後ずさりをしながらもしかし、スカルリーパーは徐々に動きが止まっていく。そして、エギルが叫ぶ。

 

「スイッチ!!」

 

 その言葉と同時に、4人ともその場を退く。それと時を同じくして。

 

「撃てーっ!!!」

 

 戦車の砲口が火を吹いた。弾は一直線に目標へと向かって行き、見事にその頭へと命中した。

 

「目標は!?」

「健在です!!」

 

 弾が当たった場所からは煙が上がるが、それでもまだ倒れる様子はない。だが、隙を作ることはできた。攻撃を受けた衝撃で後ろにのけぞったスカルリーパーは体勢を早急に整えることはまず不可能であろう。それがチャンスとばかりにシンカーが言う。

 

「今だ!畳みかけろ!!」

「うおぉぉぉ!!」

「死にさらせぇぇ!!!」

「レンジャー部隊!一斉射撃!!」

「レンジャー!!」

 

 そして、周囲に集まったプレイヤーたちのソードスキルがそれぞれ決まり、そして自衛隊による銃弾の雨あられもけいかいに鳴り響いた。防御手段のないスカルリーパーにそれを防ぐ手立てはない。そして…。

 

「クシャァァァ!!!!」

 

 断末魔と共にその身体をガラス片へと変えた。

 

「よっしゃ!!」

「喜んでいる暇はない!まだまだこれからだ!」

「おう!」

「残弾を確認!充填が必要な者は下がれ!!」

「レンジャー!!」

 

 そしてエギルたちは勝利の余韻に浸ることなく、次なる戦いへと向かって行った。

 

 

「キャッ!」

「リーファさん!」

 

 空中を飛び回っていたリーファはしかし、地面から現れたツタによってとらえられる。その後同じ場所からモンスターらしきものが出現した。食虫植物型のモンスターのようだ。そのモンスターをシリカは見たことがあった。47層、ピナを生き返らせるためのアイテムを取りに行った時に出現したモンスターだ。リーファはそのまま、大きな口を開けたモンスターの真上で逆さづりとなってしまう。

 

「リーファさん!落ち着いてください、そいつは…」

 

 弱いから冷静になれば簡単に倒せる。と自分がキリトに言われたセリフを交えてアドバイスをしようとした。が、しかしリーファは聞いていないようだった。片手をモンスターの方に向けて何かを言っている。あれは、呪文だろうか?

 

「セアー・スリータ・フィム・グローン・ヴインド!」

 

 瞬間リーファの前に文字の配列が出現し、そこから緑色をしたブーメランのような形の刃が5つ出現し、リーファを捕らえている2本のツタを切除しながらモンスターに突き刺さる。それによって自由になったリーファは、剣を抜くと、モンスターの弱点と思わしき唯一色が違う場所めがけて剣を突き立てる。その瞬間、剣を立てた場所から紫色の液体が飛び出し、モンスターはガラス状の破片となって消滅した。リーファは、羽を上手に使ってゆっくりと地面に降り立つ。

 

「ふぅ…危ないところだった…」

「え、り、リーファさん!今の何ですか!?」

「え?あ、そっか…これはALOの攻撃魔法だよ」

「ALOって…リーファさんのしている…」

 

 シリカは、すでに麻帆良ガールズとお茶会をしている中で、リーファのみがALOという別のゲームからSAOに来ていることを知っていた。一度は、それを疑ったものの、SAO内でメニュー画面を開くときに自分たちは右手で操作していたが、彼女だけ左手で操作していたということを思い出し、何となく納得していた。

 

「うん!面白いゲームだよ、今度一緒に…あっごめん…」

 

 リーファは、ただALOという自分にとって面白いゲームに誘っただけだが、しかしそれが失言出会ったことに気が付く。今目の前にいるシリカ、周りにいる人間は全員SAOに2年間閉じ込められて、時間を奪われたのだ。そのため、それがトラウマとなっているかもしれない。だが、シリカは言う。

 

「ううん、平気。普通のゲームだったら、私もしてみたいかな…ねっピナ!」

「キュイー!」

「そう…そうだよね!」

 

 そう、SAOとALOは確かに基本構造はよく似ているかもしれない。だが、全く違うゲームだ。似て非なる物であるALOをしてもいないのに嫌いになるわけはない。シリカは、現実に戻ったらALOをリーファと一緒にしたいと思った。そして、リーファは思う。あぁ、これがゲーマーの気持ちなのだと。自分が面白いと思ったゲームを他人に伝えて、そしてその人がやってみたいと言ってくれる。それほど気持ちのいいことはない。これがゲーマーの、キリトの気持ちなのだと、今ハッキリと分かった。

 

「ッ!」

 

 その時、先ほどのモンスターがまた新たに、今度は3体出現する。リーファとシリカは臨戦態勢を取り、周りのプレイヤーもまた同じく戦える用意をした。が、その時である。

 

「「「「「忍法影分身の術!!」」」」」

「へ?」

「え?」

 

 たくさんの子供が一斉にモンスターに向かって行ったのだ。赤い忍者服を着こんだ子供たちは全て同じ顔をしているように見える。というか、その顔は完全にあの光写真館にいた双子だ。唐突な展開にプレイヤーたちは唖然となってしまった。そして、続いて

 

「「『敵を撃て』!」」

 

 光の矢のようなものがモンスターに衝突する。その言葉に後ろを向いてみると、そこにいたのはやはりあの写真館にいた桜子、そして雪広あやかだ。桜子は、チアガールのような恰好をしている。シリカは、何が何だか分からず、一応リーファに聞いた。

 

「えっと…リーファさん?」

「な、なに?」

「あれもALOの魔法ですか?」

「えっと…違うと思う」

 

 困惑。その言葉が一番ふさわしい混沌とした雰囲気となった。そして、シリカの言葉を聞いたあやかが言う。

 

「これは、ALOの魔法ではありません。別世界の本物の魔法です」

「本物の…って、まさかあやかさん達は本当の魔法使い何ですか!?」

「ちょっと違うかな?」

「はい!僕たちは、魔法使いの弟子のようなものです!」

「仮契約だけどね」

「???」

 

 これには、流石にハテナマークが浮かんでしまう。それはともかく、先ほどの攻撃で2体のモンスターは倒せたわけなので、残るは後一体のみ。

 

「と、ともかく残り一体!HPの残りも少ないしこのまま!」

「はい!行きましょう!そして…アスナさん達のところに…」

 

 リーファには、あやかがその言葉を感慨深く言ったような気がした。

 

 

「フッ!ハァッ!」

「ハァッ!セイヤ!」

 

 そして、前線。こちらではかなりの数のモンスターが密集し、先へと進めない状態となっていた。だが、それでも彼らは前へ進む。すべてはゲームクリアのために。その時、ライドブッカーから士の元に2枚のカードが飛び出した。

 

「!」

 

 ブランクだったカードに色がともる。これは、キリトのファイナルフォームライドである。左上にキリトの姿、右下にある二人もキリトだろうか。だが、格好が違う。だがファイナルフォームライドは今までどんな危機的な状況であっても押し進むことができた。これなら、一気呵成に突っ込むチャンスがでるか。士はその内一枚をバックルに入れる。

 

≪FINAL FORM RIDE KI-KI-KI-KIRITO≫

「ちょっとくすぐったいぞ」

「え?」

 

 ディケイドは、キリトの背中に触れる。その瞬間、キリトの身体が光に包まれ、そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 何も変わらなかった。

 

「え?…え?」

「なに?」

 

 通常は、これで少し、いやかなり変化するはずなのだ。流石に仮面ライダーのように関節が無茶苦茶になるほど折れ曲がるわけではないだろうが、せめてネギのように何かしらの変化があってもおかしくないはずだ。

 

「失敗か?」

「いや、そんなことはないはずだ」

 

 ユウスケは、言うが即座に士に否定される。そして、何かを感じたのはキリトも同じことだった。

 

(なんだ今の…何かが俺の頭の中に入ってきたような…)

 

 キリトは、そう感じる。剣、二刀流、羽、飛ぶ、妖精、ピクシー、魔法、黒、スプリガン、GM、銃、長髪、温もり、エリュシデータ、ダークリパルサー、ブラックプレート、光剣、ファイブセブン。聞きなじみのある言葉、聞き覚えのない言葉、たくさんの言葉がキリトの頭の中を動き回る。そして、次にそれらをどう使えばいいのかがなだれ込んでくる。まるで説明書を読んでいる気分だ。その時、キリトがまだそれを受け取っている最中にそいつは現れた。

 

「!」

「キリト君、あれ!」

「あぁ、74層の…」

 

 出現したのは羊の頭を持ち、大剣を持った巨人。74層のボスであった≪ザ・グリームアイズ≫だ。士が、キリトに聞く。

 

「強いのか?」

「あぁ、普通に戦っていれば勝てない…」

 

 こいつとの戦いでは少数人での軍のパーティーが勝手に挑んでしまったためにパーティーの隊長コーバッツを含めた3人が死亡。67層以来のボス戦での犠牲者が出てしまった。この時は、偶然居合わせたキリト、アスナ、風林火山のメンバーが救援に入り、キリトが二刀流スキルを公の場で初披露して挑んだことによってギリギリ勝つことができるぐらいの強敵だった。

 

「だが今は人数がいる!皆で囲んで、波状攻撃をかけるんだ!」

「了解!」

 

 キリトは、周りにいるプレイヤーに応援を頼む。だが、いくら人数をかけたといってもその強さは変わらない。十分の注意が必要であった。その時、グリームアイズが大剣を振り上げる。

 

「みんな!後ろに避けて!!」

 

 アスナが、周囲に向かってそういった。その言葉と同時に一人を除いて後ろへと下がる。

 

「え?」

 

 一人、キリトを除いてであった。

 

「キリト君!」

「あいつ!二刀流じゃないってのに!」

 

 クラインは、キリトがエリシュデータ以外の剣を所持していないということが分かっていた。このままでは、キリトが危ない。危ないはずなのだが、何故かキリトのその背中には安心感があった。あいつなら何とかしてくれる。あいつなら、何かしでかしてくれる。そう思った。そして、その剣が振り下ろされる。

 

「キリト君!」

 

 砂煙が、彼らの姿を消し切る。キリトがどうなったのか、分からない。だが、彼らにはある自信があった。キリトがここでやられるわけないという。謎の自信が。

 

(そうか…分かった!)

 

 砂煙の中で、キリトは目の前に振り下ろされた大剣の峰に乗る。そして、次に跳ぶとグリームアイズの肩に乗り、そして羽ばたいた。

 

「なっ!」

「えっ!」

「なるほど、それがお前のファイナルフォームライドか」

 

 砂煙が、ある方向へと一つの道を作るように伸びた。それは、グリームアイズの後ろ。そこから出現したのは背中に羽と、大剣を持った黒い影。その羽は、リーファの背中についている者と非常によく似ていた。

 

「それじゃ、あれって!」

「あぁ…キリトだ」

 

 士の言う通り、その影はキリトだった。いずれキリトが手に入れるであろう力の一つ、スプリガン、ALOのキリトであった。




 ファイナルフォームライドの弁明とまぁまぁ重要な話は活動報告で。
 あと、もう伏線伏線って言わないようにします。うっとおしいと思われると思いますので。…本当は怖いから重ね重ね言ってるんですよね。ご都合主義とか、なんの前触れもなしにやりやがったとか、突発的行動だとか言われるのが怖くて…。
あと、今回からしばらく本文が長いです。やりたいこと詰め込みすぎた…。これでもまだ削った方です。

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