仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 昨日のエグゼイドに出てきた奴どこかで出そうかな…。殺意が沸きましたです。自分がかつて設定だけ作った転生オリ主の性格を優しくした感じの奴で、ムカつきましたですはい。ニコさんマジかっけ~。


SAOの世界2-19

いや…キリト君…いや…。

 

いなくなった…いや。

 

信じたくない…いや。

 

そこにいない…いや。

 

見たくない…いや。

 

いや。いや。いや。いや。いや。いや。いや。いや。いや。いや。

 

奴が、こちらを向く。

 

 キリトは、目の前でガラス片へとなった。だが、何かがおかしい。何故、彼はこうも簡単に死んでしまったのだろう。75層の時にはあんなにも抵抗したはず。なのに、何故…。ヒースクリフは士の方に身体を向ける。士は、何かをしている様子はない。ディケイドが何か細工したというわけではないようだ。では、その時彼女の口が動いた。

 

「まさか!」

 

 ヒースクリフは後ろを向く。そこにいたのは…。

 

「うおおぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 剣を左下から右上に振り上げるキリトの姿だった。

 

「キリト、君?」

 

 アスナは、自分の目が信じられないでいた。キリトが、そこにいる。幻覚でも妄想でもない。キリトが、ヒースクリフの左腕を切り落とした。だがどうして。先ほどガラス片となって消えたはずのキリトが、どうしてそれが一点に集まるようにキリトを形作って復活したのだろう。その時、リーファが言う。

 

「やった!成功した!!」

「え?」

 

 成功した。つまりキリトを復活させた何かに彼女が関わり、そして知っているということだ。

 

「リーファちゃん…何をしたの?」

「還魂の聖晶石です!」

「え…」

 

 アスナは、そのアイテムに聞き覚えがなかった。何なのだろうそれは、ALOのアイテムだろうか。その疑問に答えたのは、ヒースクリフだった。

 

「SAOで唯一プレイヤーが死亡した場合の蘇生手段として設定したアイテムだ」

「えっ…そんなものが…」

「ただし、10秒以内であればという制約が付くがね…」

 

 10秒以内。と、言うことは目の前で死んだプレイヤーであれば、即座にそのアイテムを使用してプレイヤーを助けることができる。だが、一つ疑問があった。

 

「そんなアイテムがあるなんて…」

 

 アスナは、そんなアイテムがあるなんて知らない。ヒースクリフの言ったことが正しいであれば、それはSAO内でも一番のレアアイテムとなるだろう。だが、そんなアイテム噂にならないはずがない。いや、待てよ、そういえば一時期そんな噂を耳にしたことがあった。確かあれは…。

 

「第35層のクリスマスイベント…そこで手に入れていたのか…」

「あっ…」

 

 その言葉によってアスナは思い出した。そういえば1年前の冬にある噂が流れたことがあった。クリスマスに35層の森のどこかの木の下に現れるモンスターを倒せば、蘇生アイテムを手に入れることができるという話だ。あの時、アスナもまた森に潜ってその木を探したが、どうしても見つけることはできず結局イベントが終わってしまい。プレイヤー1名がそのアイテムを手に入れたということを風のうわさで聞く程度だった。まさか、そのプレイヤーがキリトだったのか。けど、アイテムストレージにはそのような名称のアイテムはなかったはずである。キリトが言う。

 

「そのアイテムはソロプレイヤーである俺は必要のないものだと思い、クラインにやった」

「でも、クラインさんはそのアイテムを使わずじまいで…そして今回お兄ちゃんがあなたと戦うと知って、私に回復結晶と一緒に渡したんです」

「回復結晶?」

 

 アスナは、リーファの言葉に疑問符を浮かべる。蘇生アイテムはともかくとして、回復結晶は何故?その疑問には今度は士が答える。

 

「クラインというやつはこのエリアが結晶無効化エリアである可能性も考えたんだろう。だから、蘇生アイテムを使用する前に結晶が使用できるエリアであるかを確認するために回復結晶というものリーファに渡したんだろう」

「…だが分からん」

 

 ヒースクリフはそう言う。

 

「いくら妹とは言え、初めて使うアイテムを、他人に使わせるなど…」

「それは…」

 

 それがどんな効果かは確かに書いている。だが、それが、その場で復活する者かどうか分からない。時間差で復活するものかもしれない。アイテムをそのままに復活するかどうか分からない。第一、10秒という短い時間の間に兄が倒されたという動揺を押し隠してそのアイテムを使用できるかも分からない。その言葉に答えたのはキリト…。

 

「妹だからだ」

「!」

 

 ではなく士だ。

 

「自分と共に生き、成長してきた。互いに考えていることも通じ合っている妹を信じることができないで何が兄だ。そこに信じる、信じない。そんな問答は必要ない。完全に二人で一人の存在…それが兄妹だからだ」

 

 この世界で、一番多くその時間を過ごす者。それは、仕事仲間でも、学校の学友でも、奥さんでもない。家族。その中でも、一番多くいることになるのは母、そして兄妹だ。最初から兄という人間はどこにもいない。最初は、一人、または兄妹の一番下で家族に囲まれながら生きている。そして、いづれ家族がもう一人できる事になったら、それがたとえ男女どちらであっても、男は兄となる。兄となった人間は責任感を植え付けられ、妹を守るために必死で生きる。妹は、兄という人間を信頼する。それは、父や母とは違う信頼。この信頼関係は、たとえ偽物であったとしても本物である。リアルである。誰もが否定して、違うと言ったとしても、それが本当の事であるのは変わりないこと。兄は妹のために先に行き、人生の先生となる。妹は、兄から人生を学び、成長していく。それは、どれだけの時間がたったとしても普遍的なものなのである。

 

「フッ…家族の絆…という物か…」

「とにかく、これでお前を守る物はなくなった…お前は無防備だ」

 

 キリトは言う。確かに、ヒースクリフが盾を持っていた左腕は部位欠損によって失われている。これが、キリトが咄嗟に考え出したシステム内でヒースクリフを打倒す戦法。蘇生アイテムも、部位欠損もどちらもヒースクリフ、茅場昌彦の生み出した物。だが、彼がおおよそ想像もしていなかった方法でキリトは使ってきたのだ。今、彼が持っているのは剣だけである。形勢は逆転したと言えよう。

 

「だからと言って手加減はしてくれないだろう?」

「あんたは…手加減をして勝てる奴じゃないからなッ!」

 

 そして、ついにキリトとヒースクリフの第3ラウンドが開始された。キリトは二刀流、ヒースクリフは剣一本。だが、流石ラスボスと言ったところだろう。ヒースクリフは剣1本でキリトの剣裁きを次々と受け流す。

 

(流石開発者…生半可な攻撃じゃ通らない!)

 

 ヒースクリフの狙いはわかっている。部位欠損は、毒や麻痺のようなものと同じもので、時間がたてば回復してしまう。蘇生アイテムはもうない。先ほどのような奇襲はできはしない。回復してしまえば、もう打つ手が無くなってしまう。そのため、早めに決着をつける必要があった。

 

(もっと速く!もっと強く!!)

「クッ!」

 

 その鬼人の如きキリトの攻撃はヒースクリフを退かせる。連撃に次ぐ連撃。それは、剣一本でしのげられるほど容易いものではなかった。致命傷ではないが、次第にキリトの剣がヒースクリフの身体を捉え始める。

 

「はぁぁぁぁ!!!!」

「くっ!うおぉぉぉ!!」

 

 キリト、そしてヒースクリフが叫ぶ。アスナは彼の、ヒースクリフの叫ぶ姿を始めてみた気がする。どちらも負けることなどできない戦いだ。キリトは、世界の運命を担っているといっても過言ではない。ヒースクリフは開発者として、そしてSAOのラスボスとして負けるわけにはいかない。いや、彼もまたゲーマーだろう。2年間ずっととは言わなくても、かなりの時間をゲームに費やしてきたのだから。世界の命運も、開発者の維持も関係ない。

勝ちたい。

負けたくない。

 強者であるということは、とびっきりの負けず嫌いであるということなのだ。

 

「ッ!」

「ハァッ!」

 

 ヒースクリフの剣が赤く光り、キリトのレイピアが青く光る。ソードスキルだ。それを見た士は思った。次で決まると。真正面からのぶつかり合い、どちらも現在力が拮抗している。と、言うことは最後に決まるのはどちらがより勝ちたいと思っているか。気力の違いだ。

 

「ハァァァァァァァ!!!!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 二つの剣が交差し、二つのシルエットが重なる。アスナの目からは、どちらも相手の胸を貫いているように見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 いや、よく見るとキリトはエリシュデータを使ってヒースクリフの剣を左に反らしている。しかしそれでもギリギリだ。胸を貫かれているのは…。

 

「…見事だ」

 

 ヒースクリフだけ。それを見たキリトは、レイピアから手を離して後ろへと下がり、尻餅をつくように座る。

 

「キリト君!」

「お兄ちゃん!」

 

 リーファ、そしてアスナがキリトに駆け寄った。士もまた、ヒースクリフを注視しながらキリトへと近づく。

 

「スグ…アスナ…勝ったぜ」

「勝ったぜ、じゃないよ!びっくりさせないで!!」

「うっ、ごめん…」

「説明する余裕がなかったから…」

 

 と、二人は弁明した。それもあるだろうが、あそこまでの慟哭がなかったらヒースクリフも少しはそれに違和感を感じて、キリトの計画が察しられる恐れがあったため、これはこれでアスナに知らせなかったのは正解と言えよう。

 

「フフッ…まさか、君達家族にしてやられるとはな…」

「!」

 

 ヒースクリフがそう言った。まさか、まだやれるのか。そう思ってキリトが剣を取ろうとする。しかし…。

 

「いや、私のHPはもう0だ。今はしばらく君たちと話す時間を作っているだけだ」

「…そうか」

 

 HPは0、と言う言葉を完全に信じるのであれば、もうヒースクリフと戦うことはないのだろう。というか、これ以上ヒースクリフと戦いたくない。あんな強敵と戦うのはこれで最後にしてもらいたい。SAOでは、の話である。

 

「このビルの地下にサーバーがある。その前にある機械を壊せば…君たちの勝ちだ」

「団長…」

「英雄…勇者か。…私も欲しかったよ…その称号を」

「茅場…」

 

 ヒースクリフは目を閉じ、その瞬間ガラス片となって消滅した。そして、胸に刺さっていたレイピアは地面に落ち、甲高い音を立てる。彼は、最後の瞬間どちらで死んだのだろう。モンスターだろうか。ラスボスだろうか。それとも、一人のプレイヤーとしてだろうか。だが、それに答える男は、もういない。アスナは、レイピアを拾う。その瞬間。それを見計らったかのように地響きが始まった。

 

「な、なに!?」

「ビルが揺れてる、地震!?」

「いや…これは…」

 

 アスナ、そしてリーファは動揺するが、士は違った。一人玄関の方を見る。それを見て、他3人もそちらを見る。そこにあったのは…。

 

「せ…」

「戦車!?」

 

 こちらに堂々と前進している戦車であった。

 

「突っ込んでくるな」

「避けろ!!」

 

 冷静な士と、パニックになるその他。キリトたちがその進行方向から逃げた瞬間、もう聞き飽きたガラスが割れる音と共にその緑色の巨体がレクトのエントランスへと現れた。

 

「随分なお客様だな」

「な、なんで?」

「キリト!!」

「!」

 

 その声と共に戦車の後ろから現れたのは、剣を持ったリズベットである。

 

「リズ弁当」

「リ・ズ・ベ・ッ・ト!!」

 

 と即座に訂正される。そういえば、先ほども士はリズベットの事をリズペットなどと言っていたが、まじめに覚える気はないのだろうか。

 

「リズ…その剣…」

「そう、ダークリパルサー!強化して持ってきてあげたわよ!」

「そうか…ありがとう」

 

 これは助かる。レイピアはアスナに返したので、これで二刀流の黒の剣士が復活だ。重さも申し分ない。能力も前まで使っていた物と大差ない。これならいける。

 

「士!」

「ん?」

 

 さらに、その後ろからクウガ、そしてクライン、エギル、シリカ、それ以外にもたくさんのプレイヤーが現れる。

 

「士、茅場は?」

「あぁ、キリトが倒した。これから、あいつの置き土産を壊しに行くところだが…」

「ん?」

 

 士の目線を見て、クウガもまた後ろを見る。そこにはモンスターが山のように玄関に向けてきている様子があった。スペインの牛追い祭りのようだ。

 

「やば…」

「このままじゃ閉じ込められるんじゃ…」

「その前に茅場の言っていた装置を破壊しに行く」

「キリト!こっちは俺たちに任せろ!」

「最後の大一番…耐えて見せるさ!」

 

 エギル、クラインの二人がそう言う。無論、周りのプレイヤー達も同意見のようだ。聖竜連合のシュミットが、自分のリフェンダー隊を率いてプレイヤーたちの盾になろうとしている。それだけじゃない。光写真館にいた少女も、それにあれは、ヨルコにカインズ、シンカー、ユリエール、キバオウまでいるではないか。自分の知っている人間がこの戦いに参戦していた。前線に来るほどのレベルではない者もいるはずだ。それなのに、皆戦っている。それは、意地でもあり覚悟でもあるのだろう。だが、これ以上戦いが続いたらいずれ犠牲者が出てしまう。早く何とかしなければ。

 

「…分かった!頼む!」

「任せておけ!」

 

 そして、キリト、アスナ、リーファ、ディケイドだけでなく、リズベットとシリカ、そしてクウガもまた同じく地下にあるサーバーへと向かって行った。ついにこの世界が終わる時が来た。




『兄が妹より早く産まれるのは、妹を守ってやるためだ』って言葉考えましたが、他作者が先にどこかでひろうした名言らしいので没りました。

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