「ふっ!はぁ!」
「なんの!!」
「二人とも頑張ってください!」
一連の大きな事件が終了を迎えたその日、光写真館に戻ってきたメンバーたち。現在麻帆良ガールズと夏海は、家庭用ゲーム機と何本かのソフトをこの世界で買って遊んでいた。
ナーヴギアやアミュスフィアの出現によってこういったテレビに直接繋げて遊ぶゲーム機器は少なくなっていたが、しかしそれでも面白い物は面白いのだろう。一方、そのころ士達はと言うと……。
『ということでSAOプレイヤー全員が目覚めたことが確認されており……』
「よかった……みんな帰ってきたみたいだね」
「あぁ……」
ユウスケと士の見ているテレビのニュースは、プレイヤー全員が無事に解放されたことをつげていた。ユウスケはそれを見て喜び、士はそれに対してそっけない態度で応じた。その時。
「やぁ、士」
廊下から海東が現れた。
「海東、お宝は手に入ったのか?」
「あぁ、これさ」
そう言って彼が取り出したのは正四角形の箱と長方形のゲームのパッケージのようだ。それぞれ、表面にはナーヴギア、そしてソードアート・オンラインとある。しかもそちらのパッケージに至っては未開封のようだ。
「回収されたナーヴギアの新品と唯一現存している未開封のSAO……これほどのお宝はないだろう」
「なるほどな……」
これは想像だが、SAOは元々1万個販売という物だった。つまり1万人のプレイヤーがSAOに入っていたということになる。しかし、茅場昌彦は2年間ずっとプレイしていたわけではなく、時々外に出て作業をしていたはずだ。と言うことは、彼の使用していた者はログアウトすることができるように特別にプログラミングされたものとなる。つまり、1万1個目のSAOだ。
ありえない話だろうが、プレイヤーの数が1人多いということが気づかれると、内部に自分がいることがばれる恐れがある。そのため、正規のSAO一つを取り除いたのではないだろうか。そのため本来の1万個目のSAOを茅場昌彦が所持していたのだろう。
「そして、一つ報告がある」
「なんだ?」
「……茅場昌彦は死んだよ」
「なに?」
「僕が紙に書かれていた場所にある山小屋に入ると、そこには女性と、ベッドの上に茅場昌彦の死体があった。脳を焼いて死亡したらしい」
「……ナーヴギアとは違うのか?」
「あぁ、女性は茅場昌彦の身の回りの世話をしていたらしい。彼は、SAOの世界が崩壊すると同時に命を絶つという事を画策していたそうだ」
「何のためだ?」
「スキャニング……だそうだ」
「スキャニング?」
「あぁ、奴は自分の記憶と思考をデジタルコードに置き換えて、電脳となってネットワーク内へと行ったらしい」
「そんなこと、可能なのか?」
「さぁ、確率は1000分の1……どちらにしても、彼という人間はこの世界からは消えたことになる」
「……」
彼は、この世界にいることに絶望したのだろうか。
いや、違うと信じたい。彼は希望を見出したのだ。この世界の事を任せることのできる小さく、そして強大な希望を。
だから、自分は、巨大な悪は消えなければならない。そう思ったのかもしれない。自分はこの世界に必要ない。だから、自分は自分のしたいことをしたのだろう。彼は文字通り、インターネットという仮想世界へと逃げたのかもしれない。
だが、それは否だ。彼は冒険しに行ったのだ。人間の悪いが集まる未知なる世界へと。
この世界で唯一現存する。異世界へと。
「士君、写真ができましたよ」
「ん?あぁ」
『警察は詐欺の容疑でレクトの社員、須郷伸之容疑者を逮捕、送検し余罪を……』
士はテレビを消して、廊下から入ってきた栄次郎が持っている写真を見た。それについて栄次郎が感想を言う。
「きれいに写っているじゃないか」
「あぁ……」
そこには、和人、明日奈、里香、圭子、直葉の姿が写っていた。その後ろにはうっすらとキリト、アスナ、リズベット、シリカ、そしてリーファの姿が見えた。偽りの生活が終わった。だが、それで彼らの中からもう一人の自分が消えることはない。彼らはきっと戻ってくる。
あの、夢や、欲望が渦巻く、ゲームの世界へと。そう、写真は案じていたようにも見えた。
「じゃ、僕は行くよ。また新しいお宝を探しに行かないと」
灰色のオーロラを出して、海東はそう言いながらその中へと潜っていった。
「あっ、おい!……たく……」
士は、それを止めようとしたが間に合わなかったため、少しだけ悔しそうに頭を掻いた。ユウスケはそんな士の様子を見て聞く。
「どうかしたのか?」
「いや……その時はその時か」
「?」
「よぉし!必殺技いくです!!」
その時、鳴滝の声が聞こえた。
「そりゃ!!っととと!!!」
鳴滝は、少々大げさにコントローラーを振り回すと、バランスを崩し、いつもの背景ロールへと激突。すると、その衝撃でまたも上からもう一枚背景ロールが降りてくる。
そして、眩いばかりの光が終わったその時、現れたのは……。
「鏡?」
「鏡、ですよね……」
銀色の鏡だ。これが、次の世界のキーワードなのだろうか。
士は、背景ロールへと近付き、そこであることに気が付く。
「いや……これは……」
「え?」
そして、士は描かれている鏡に触れる。
いや、描かれているのではない。それは背景ロールの前に浮かんでいるのではないだろうか。
士が触れた瞬間、またも眩いばかりの光があたりを包んだ。
「くっ!」
「士君!」
夏海の叫ぶ声が聞こえた。だが…。
『宇宙の果てのどこかにいる私の使い魔……』
「なんだ?」
『神聖でなくても、美しくなくても、強くなくてもいい……』
「おい、誰だ?」
士の耳に聞こえてきたのは、今にも消え失せそうな少女の声。
『お願いだから……だれか来て……』
光が消え去ったその時、そこに士の姿はなかった。それと同時に、鏡の姿も消えていた。
「士君!?」
「士!」
夏海、ユウスケは士の姿を探すが、もちろんどこにもない。
残ったのは柄の変わった背景ロール。大きな魔法陣にその中には青、赤、茶、そして透明な宝石がはまった指輪と、中央には何語か分からないが文字が書かれていた。
次回、仮面ライダーディケイド エクストラ
「ディケイド……カドヤツカサ?」「 これ以上家の恥をさらさないで!」「私達、もっと違う形で出会えたら」「ここに留まっていられるほど、俺は強くないから……」「お願いだから、せめて貴族らしく死なせてよぉ!」
【消失の使い魔】全てを破壊し、全てを繋げ