ゼロの使い魔の世界1-1
―これまでの仮面ライダーディケイドエクストラは―
「ユウスケはユウスケですし、五代さんは五代さんです」
「どれだけ時間がかかってもいい。まっすぐ、自分の道を歩きなさい」
「こんな奴が笑うために…誰かが泣くのを見たくない!」
「ここにいるすべての人間が今、未来を見つめている。こいつらこそ、本当の戦士であり、真の主人公だ」
「おかえり、和人…」
「初めまして…桐ケ谷…和人です」
歌も歌うことのできない鳥は死んだほうがいい。
何をやっても失敗ばかり。
家族に迷惑をかけて、自分は生きている意味があるのだろうか。
答えは決まってる。意味なんてない。
これ以上迷惑をかけるのなら、もう私はいなくなった方がいい。
嫌だ、死にたくない。
死にたくなんてない。
死ぬなんてできるはずがない。
私には、勇気がないから……。
薄暗い部屋で、やせ細った少女は体育座りをした壁に寄りかかっていた。部屋にはベッドがある他には、ボロボロになった本や本棚、それからかなり端の方にトイレぐらいしかない。それらも元々は新品同様にきれいなものであったのだがしかし、いつの間にかこんなにひどいありさまになってしまった。
少女はゆっくりと立ち上がると窓から外の景色を見る。窓の外は、きれいなものだ。山は、緑が生い茂って、池の水面は空の色を映して真っ青に見える。兵士の姿も何人か見える。ここから今すぐにでも抜け出したい。だけど、鉄格子がはめられているから、どうやったとしてもそれは不可能だろう。
あぁ、鳥はいいな。あんなに自由に飛んでいる。だがそれも今の内。いつかもっと大きな鳥が来て、あっという間に襲われ、食われてしまう。だから、好きなだけ飛びなさい。今は、自由を楽しみなさい。せめて、自由である内に……。
彼女は、地面に置いてある棒を持つと、もはや日課となってしまった呪文を口ずさむ。
「宇宙の果てのどこかにいる私の使い魔……」
いるのかどうかも分からない。いたとしても自分に答えてくれるかもわからない。
「神聖でなくても、美しくなくても、強くなくてもいい……」
もう、何だっていい。この際、死ぬほど嫌いなカエルだっていい。彼女は祈るように最後の言葉を紡ぐ。
「お願いだから……だれか来て……」
今にも消えそうな、そして涙声も混じったその彼女の声。消えて、風の中へと消えゆくかの如く発せられたその言葉と同時に、彼女はその棒を振る。瞬間。
「ッ!」
一つのおおきな爆発が起こる。もう、慣れっことなってしまったその衝撃に彼女は、目を爆風から守るために目をつぶって保護する。激しい風が顔に当たり、それによってあまり手入れもされていない桃色の髪の毛が揺れる。
ベッドがきしみを上げ、ついにその四本の内二本の足が折れた。あぁ、もう明日からは直に床で寝なければならない。唯一この数か月間耐えに耐えていた頑丈なベッドも崩れ、ついに家具という物はこの部屋には無くなってしまった。
そして、爆風の先には、大きな動物の姿は何も見えない。彼女は呟く。
「また……失敗しちゃった……」
今日も失敗してしまった。だが、もうあきらめているのかもしれない。何を?未来をだ。これ以上、家族は一人を除いて自分に、いや自分も自分にすら期待していない。これ以上何も変わるはずもない。いつもと同じだ。
朝起きて、質素な朝ごはんを食べて、質素なお昼ご飯を食べて、こうして魔法を使って、質素な晩御飯を食べて、そして寝て、次の日に起きる。これを繰り返す。これが今の彼女の日常だった。暖かいご飯なんて、しばらく食べていない。
少女は、壁にもたれかかるとそのままズズという服のこすれる音も気にせずに座り込んだ。
「……死んじゃいたい」
生きる気力が感じられないほど物騒な発言。それを聞いているのは、彼女の他には一人しかいなかった。
「たくっ、何だこの爆発は?」
「え?」
そう一人しか……だ。
「お前か?俺を呼んだのは?」
少女の前に現れたのは男だった。首から長方形の箱を吊り下げた男。顔は整っていてかっこいいと思える男。男。男。男。人間。
「あ、あんた……誰?」
「俺か?俺は……」
そう言うと、男は、どこからか薄っぺらい長方形の小さな紙を取り出すと、その表面、何か変な仮面が書かれている方を見せて言う。
「ディケイド、門矢士だ」
「ディケイド……カドヤツカサ?」
彼は、ディケイド・カドヤツカサというらしい。変な名前だ。苗字があるということは、貴族なのだろうか。いや、決してそんな風にはみえない。そもそも、貴族の証である杖も出さないし、マントも着ていない。では、平民なのだろうか。……平民、今の自分にはピッタリだ。
「で?なんで俺を呼んでいた?」
呼んでいた。自分は呼んだ覚えはない。だが、呼んだとするなら、もしかすると彼は……。
「ねぇ、かがんでちょうだい」
「?」
男はとりあえず少女の言う通りしゃがんでみる。すると、少女はゆらりと立ち上がり、棒を彼の額に当てると言葉を発する。
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
そして、ルイズは男の唇に自分の唇を接する。たった数秒間だったのだろうが、しかしそれは何分、何時間もの長さに彼女は感じた。この突然の出来事に、さしもの士も固まってしまう。そして、ルイズは唇を離して言う。
「感謝しなさい、ファーストキスよ。……もうそれに何の価値もないけれど」
「おい、どういう……ッ!」
士が言葉の真意を聞こうとするがしかし、その言葉は突然の激痛によって遮られてしまう。
「クッ!……な、んだ……」
今まで多数の痛みをかんじてきたが、しかしこれほどの激痛も珍しい。左手を中心にした痛み。体中が熱くなる。
「大丈夫よ、使い魔のルーンが刻まれているだけだから」
「ルーン……だと?」
「じきに収まるわ」
その言葉通り、少しづつ痛みが治まり、熱さも無くなってくる。一体何だったのだろうかと、士は左手の甲を見る。そこには見覚えのない模様が書かれていた。これが使い魔のルーンという物なのだろうか
「おい、これがルーンとか言うやつか」
「えぇ……見たことのないルーンだけれど」
ルイズ自身もそのルーンを見たことのないものだという。ということは、ルーンには決まった形という物があるのだろうか。
士は、ルイズが落ち着いてきた所を見て、周囲を観察する。だが、ひどいものだ。ボロボロになった本と本棚。足の折れたベットや破片となった机らしきものや椅子らしきもの。窓には鉄格子がはまっていて、窓ガラスはない。おまけに端の方にはトイレまであるだなんて、まるで牢屋のようだ。
さらに、極めつけにおかしいものがある。光写真館だ。ある時期を除いて、彼が世界を移動する際には必ず光写真館があった。なのに、そのドアすらも見当たらない。あの鏡らしきものが原因だろうか。
「おい、この世界は……」
「やっぱり……」
「ん?」
士がルイズにこの世界のことについて聞こうとしたその時、ルイズが何かを語り始めようとしていた。
「ちゃんとした使い魔も呼べないなんて、やっぱり私はゼロなのね……」
「ゼロ?」
ルイズはその言葉と同時に、どこか遠くを見るように窓の外を見た。
士は、首に下げているトイカメラで彼女の姿を撮影する。だが、おそらくひどいものになっているだろう。士の写真の性質もそうだが、今は電気も付いていないために、外からの光のみのため逆光で暗いだろう。いや、それ以上に被写体に問題があった。髪がボロボロであるとか、服装がひどいとか、それ以上に生きる気力の感じられない。まさに、ゼロに感じられた。
一歩進む、この時点で一。二歩進む、この時点で二。一つの村から旅を始めると、一つずつ数字は増えていく。二つ目の村でまたゼロに戻るだろうが、自分が歩んできた数は消えることがない。出会った人数が消えるわけではない。でも、歩みを止めたら、もうそこで終わってしまう。自分の人生全てがゼロとなってしまう。あぁ、怖い。自分の人生全てが無くなってしまうのが。あぁ、怖い。無駄な人生だったと言われるのが。だがら私はいつまでも歩く。いつまでも、前へと進んでいく。そうしないと生きていけないから。そんな私が、私は怖い。
ー世界の破壊者ディケイド、いくつもの世界を巡りその瞳は何を見るー
ある動画の感想にびっくりするほど不吉なことが…。どうしてこうも自分がやろうとしていたことを公式でやられる(予定)かな…。