仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 今回、何故日曜日に投稿したか、それはあとがきを見たらなんとなくわかります。
 あと、今回の話の中で、ある漫画のセリフを改変して使用しています。さて、なんでしょう。


ゼロの使い魔の世界1-6

 不思議だ。死という物を初めて体験するのだが、ここまで痛みもないとは知らなかった。アカデミーの研究者たちは、首を切り落とされても数秒くらいは意識はあるのではないかと話していたが、それは嘘だったようだ。こうして、すぐに死ぬことができたことが証拠である。

 死ぬことができた、本当に?では、何故こうも煩いのだろう。死後の世界には、人が沢山いるのは知っていたが、まさかここまで煩いとは。いや、違う。この声は先ほどまでと同じ民衆の声ではないだろうか。そんなはずはない、はずなのだが。

 アンリエッタは恐る恐る目を開いてみる。その先にあったのは、先ほど見たまんまのカゴだ。無論、自分がその中に入っているということはなく、先ほどと同じ位置から見ているとしか思えない目線だ。何故……。

 

「間に合った……」

「え?」

 

 その時、男の声が上からした。体が動かないので真上を向くことができないので、誰がそうつぶやいたのか分からないが、しかしその男が何かをしたというのは確かだ。

 

「き、貴様何ッ!」

 

 その時、処刑人がその男の名前を問おうとするがしかし、殴られるような音と共にその声は消えてしまう。そして、アンリエッタの首を固定していた木の枠の固定具を取り外すと、首が抜けるようになり、アンリエッタは男によってすぐさま下に敷いてある板ごとスライドして、ギロチンの真下から脱出する。そして、アンリエッタが脱出したのとほぼ同じタイミングで、先ほどまで自分の首があった場所にギロチンの刃が落ちてくる。だが、その刃がおかしかった。えぐれている、壊れている。何かが刃の真ん中を貫いたように穴ができていたのだ。まさか、先ほど聞いた『バキッ!』という音の正体はこれなのだろうか。

 

「今拘束具を外すから!」

「え、えぇ…」

 

 また、あの男の声がした。アンリエッタは首が自由になったので少し後ろを向いてみる。そして、そこにいたのは拘束具を外そうとしている赤い男。角らしきものが見えることから獣人か、はたまた悪魔だろうか。いや、だとしたら何故自分等を助けようとしているのだろう。

 ここで、時間はさらに二日前へと遡る。

 

 

「はぁ……士、見つからないな」

「そうですね……」

 

 ユウスケ、あやかの二人は士を探して色々な国々を周っていた。だがその成果は全くと言っていいほどなかった。今日もゲルマニアという国まで行ってみたものの、出会えたのは赤髪の女性を始め、情報を持っていない人達のみ。次は、ガリアという国に行ってから、光写真館へと一時帰るつもりで、今日は森の中であやかと共に野宿するため、火を立てて薪をしている。

 

「あいつ、本当にどこ行ったんだ?」

「もしかしたら、この世界にはいないのでは?」

「いや、キュルケって人は士が吸い込まれたのは、使い魔召喚のための鏡なんじゃないかって言ってたから、この世界にはいるはずだ」

 

 ゲルマニアで出会った赤い髪の女性。彼女に、士が消えたときのことを話したところ、それは使い魔召喚の儀式に使うゲートによく似ているということだった。もしそれが正しいとなると、士はこの世界にいるはずだ。

 もし明日、ガリアという国でも見つからなかったら、今は戦時中だからということで避けていたトリステインという国に行ってみよう。そうあやかと話している途中のこと。

 

「ん?」

「どうしたんですか、小野寺さん?」

「いや……今誰かの声が聞こえたような……」

「え?」

 

 とりあえずそこまで行ってくる。そうユウスケは言って、声がしたであろう方向へと彼は行く。そして、その方向には一人のブロンドの髪の全身傷だらけの女性が、木を背にして座っていた。その近くには、馬が一匹いるようだが、どこかにつながれているということはないようだ。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

「君、大丈夫!?ひどいケガだ……手当てしないと!」

「し、心配ない……こんなの、すぐに陛下の所に……クッ!」

 

 女性は、心配するユウスケを制して立ち上がろうとするが、しかしすぐに崩れ落ちてしまった。

 

「そんなケガじゃ無茶だ!……せめて、身体を休めるくらい」

「必要ない!……私がこんなところで道草を食っていたら、陛下が……」

「陛下陛下って!今大事なのは君自身じゃないか!」

「ッ!」

 

 その言葉でついにあきらめたような女性は、ユウスケの肩を借りて、馬と共にあやかの元へと連れていかれる。

 女性のけがの治療については、同じ女性のあやかに任せ、ユウスケはその間馬の世話をすることにする。あやかは、ゲルマニアという国のある町の薬屋で念のために薬草や塗り薬を買っていたので、それが役に立った。

 それから一時間がたったであろうか、ユウスケが草むらの中からあやか達の方を見ないように話しかける。

 

「あやかちゃん、どう?」

「えぇ、もう入ってきてもよろしいですよ」

 

 そう言われてユウスケは、馬を近くの木とつないで、たきぎの側へと移動する。そして、横になっている怪我をした女性を一目見る。あやかの手当ては適切出会ったようで、血だらけだったその顔も、包帯がまかれてはいるが綺麗なものだ。

 

「手当てしてくれて、感謝する」

「いえ、当然のことを下までです」

「あぁ、君……名前は?」

「私は、アニエス……トリステイン銃士隊隊長をしている」

「トリステイン……それって確か、今戦争をしている」

「……」

 

 トリステイン、ユウスケたちがゲルマニアの街で聞いた情報によると、劣勢は明らかであり、近くトリステインの軍を率いていた姫がガリアで処刑されると言われて、それで戦争が終わるのではないかと言われているらしい。

 

「姫……そういえばさきほど陛下と……」

「……陛下は、明後日……ガリアで処刑されることになっている」

「やはり……」

 

 アニエスは話す。自分は一週間ほど前まで陛下、アンリエッタというらしい。アンリエッタや数名の部下とともに国中を逃げていたらしい。そして、トリステインにある学院にかくまわれている最中、神聖アルビオン王国の傭兵に襲撃され、そこで部下は全員戦死し、アンリエッタもさらわれたそうだ。そして、傭兵部隊の隊長格の男によって足止めをくらってしまった。結果、教師一名の犠牲と共に、その男を倒したアニエスはすぐにアンリエッタの行方を寝ずに追った。

 そしてつい先日、アンリエッタの居所は神聖アルビオン王国ではなく、ガリアにあるということと、明後日処刑されるということを知った彼女は、傷を癒す暇なく馬を走らせたそうだ。しかし、手綱を掴む力もなく、偶然ユウスケたちの近くで落馬してしまったらしい。

 

「そうだったんだ……」

「急がなければ……ここからガリアまで一昼夜走って間に合うかどうか……」

 

 一昼夜とは、一日、24時間の事だ。ということは……。ユウスケは言う。

 

「だったら、今は休まないと」

「なに?」

「お姫様が処刑されるのは明後日の事なんでしょ?だったら、まだ猶予があるじゃないか」

「しかし!」

「しかしも何もないよ。そんな傷だらけの状態で戦って、お姫様を助けることはできない」

「……」

「それに、俺にだって考えがある」

「なに?」

 

 そう言うと、ユウスケは林の奥から一つの機械を持ってきた。アニエスは、そんな見慣れない物に驚く。

 

「これは……」

「これは、バイクって言って……最高時速300キロの……」

「待った……時速?」

「あぁそう言うのはないのか……とにかく、馬よりも速いんだ。だから、心配しないで」

「……信じていいのか?」

「あぁ!」

 

 そうして、ユウスケは明るい笑顔で親指を立てた。なんでかは分からないが、しかしその笑顔を見てると、こいつに任せても大丈夫だと感じ、ユウスケの提案に乗ることにし、今日の内は休むことになった。

 

 それから何十分経っただろうか。ユウスケの言う通り寝に入ったものの、しかしすぐに目が覚めてしまったアニエスは、周囲を見る。だが、そこにはユウスケの姿もあやかの姿もなかった。二人はどこに行ったのだろうか。薪にはまだ火がくべてあるためそう遠くには行っていないはずだが……。

 アニエスは立ち上がってあたりを散策する。そして、大通りに入ったところで二人を発見した。

 

「大丈夫あやかちゃん?」

「はい、元々私は乗馬部でしたから、馬には乗り慣れています」

「そうじゃなくて、一晩走り続けないといけない事だよ」

「大丈夫です。テスト前は徹夜で勉強だってしていたこともあるのですよ。一晩くらい平気です」

 

 雪広あやかは元々麻帆良では乗馬部だった。だが、馬に乗り慣れているのと、馬を走らせるのは少し違う。体重のかけ方やムチの打ち方、並びに信頼関係という物がある。元々アニエスの馬だったそれを乗りこなすのは容易いことではないだろう。しかし、こうしなければいけないわけがあった。先ほどユウスケが言った通り、馬で走るよりもバイクで走った方がよっぽど速いのは確かだ。しかし、逆に言えばバイクと馬が同時に同じ速度で走るということはできないのだ。そのため、明朝にガリアへ向かうとすれば、結局馬と一緒に走らなければならない、とすると結局間に合わない可能性もある。ここに馬を置いていくという手もあるだろうがしかし、そうすると今度はバイクの乗車人数が問題だ。二人までならともかく、三人とまでなってしまうと、バランスを崩す危険性がある。そうなってしまったら元も子もない。そのため、乗馬の経験があるあやかに馬を先には知らせてもらうことにしたのだ。ただ、その場合あやかが襲われるという危険性があるが、いつもの魔法の杖があるため心配ないそうだ。

 

「それならいいけど……でも、危険なことはしないでくれ」

「はい……」

「ん?どうしたの?」

 

 ユウスケは、あやかの表情の変化を見逃さなかった。そして、あやかは言う。

 

「小野寺さん、本当によろしいのですか?」

「何がだい?」

「アンリエッタ姫を助け出すということです」

「……」

 

 その会話を陰で聞いていたアニエスの心臓はその発言に大いに高なった。

 

「あやかちゃんの言いたいことは分かる……もしもアンリエッタ姫を助け出せたとしたら、俺たちは戦争に介入したことになる」

「もしそうなった場合、アルビオン王国やガリアの軍と戦わざる負えない時が来ます……けど、敵兵にだって帰りを待っている子供や、奥さんがいるはず……。そんな人達を倒す覚悟……」

「……」

 

 アニエスは思い出す。自分が今まで国のために、陛下のために殺してきた者たち、その後ろには家族がいたはずだ。守らなければいけなかった家族。国をそむいた逆賊を斬ったこともある。だが、その者たちも自分の守るべき、守りたい者たちのためにそうしなければならざる負えなかった者たちがいたはずだ。

 ……あの男も、最初は守りたいもののために汚れ仕事をした。その結果は、決して許すこともできないし、同情もすることもできない。だが、今の自分は奴と同じだ。いつか自分は、自分が斬った者たちの後ろで待っていた者たちの誰かに、あの男を殺した自分のような誰かに、殺されるかもしれない。自覚していなかったわけではないが、その事実だけを思い出すと、なんだか心がどんよりとしてしまった。

 

「……それでも」

 

 ユウスケが言った。

 

「ここに留まっていられるほど、俺は強くない……」

「ユウスケ……」

 

 アニエスは、ユウスケの言葉一つ一つを逃さないように聞く。ユウスケはあやかに笑みを浮かべながら言った。

 

「アンリエッタっていう人が死んだら、アニエスが悲しむ……せめて、その悲しみだけは止めたい……」

「そうですね……分かり切っていたことです」

「あぁ……じゃぁ、気を付けて」

「えぇ、そちらもお気をつけて……ハァ!」

 

 その掛け声であやかは、馬を発進させ、次第にその姿は見えなくなっていった。ユウスケはその姿を最後まで確認すると、アニエスの元に戻ろうと方向を転換させ少し歩く。すると、木の影に彼女の姿を見つけた。

 

「アニエス……」

「ユウスケ……」

 

 アニエスは、一度目を閉じて、そして決心したように目を開き言う。

 

「アンリエッタ陛下を救い出すために、貴官らの手助けを願います」

 

 先ほどまでは、ユウスケ、そしてあやかが勝手にアンリエッタの救助に行く流れであった。だからこそ、アニエスはその言葉を付けた。それは、アニエスが初めて彼らにアンリエッタの救出の助力を誰かに頼んだ瞬間だった。

 

「……あぁ、必ず救い出そう」

 

 ユウスケは、その言葉にサムズアップで返した。

 

 明朝、そこには薪をした痕跡と、一直線に伸びる謎の模様のみしか残っていなかった。




 普通の作者だとここで脱線して世界を救うという目的から、ユウスケのハーレムを作ろうという目的になるところです。
 ちなみにもしもこれが普通の小説ならあやか、詩乃、アニエス、アンリエッタは確実、ひどいものだとザジと直葉とシリカがハーレム入りしているものと思われる。なぜかという理由は長くなるため活動報告に載せますが、ただし不眠で精神的に疲れていたときのもののためいつも通り胸くそ悪い内容です。そのため、見るのは自己責任でお願いします。
 キャラの一人歩き(ユウスケハーレムルート)を止めるのが大変です。

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