仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 宇宙をかける少女スパクロ参戦オメ!
 ……というテンションで危うく士達を派遣しそうになりましたけど、幸運にも?主人公を敵にしてしまいボツになりました。←超遠回りのヒント。東京から大阪に行く途中に香港に行っちゃうぐらいの遠回り。


ゼロの使い魔の世界後編
ゼロの使い魔の世界2-1


―これまでの仮面ライダーディケイドエクストラは―

「ちゃんとした使い魔も呼べないなんて、やっぱり私はゼロなのね……」

「貴方は、私のたった一人の妹だもの……」

「ここに留まっていられるほど、俺は強くない……」

「シャルロット・エレーヌ・オルレアン、私の恩人です!」

「お願いだから、せめて貴族らしく死なせてよぉ!」

「皆に……死んで償ってください!!」

 

 

 

「……」

 

 暗い、どこまでも暗いどこか。

 

「……ここは、どこだ?」

 

 深海のように暗く、そして冷たいその場所で、彼の目が覚めた。

 

「俺は……どうしてこんなところに……」

 

 彼は、思い出す。この場所に来た経緯を、だが思い出すことができない。それどころかさらに大きな問題を抱えているということに気が付く。

 

「……俺は、誰だ?」

 

 自分の名前が思い出せない。自分は誰で、どこで生まれて、どんな人生を送ってきたのか、それすらも分からなくなってしまっていた。

 

「あれ、なんで俺……俺?……俺、なのか?誰だよ、俺は……」

 

 自分が分からない。自分とは何か。自分は人間か。人間とは何だ。自分は生きているのか。死んでいるのか。生きているとは何だ。心臓は動いている。だが、周りを見渡しても何もない。光の一つも見えやしない。こんなところで、何もすることのない、何もできない自分が、自分の事すらわからない自分が、生きていると言えるのだろうか。

 だから叫ぶ。彼はただ叫んだ。

 

「俺は、誰だ!」

 

 ひたすら叫んだ。

 

「誰か、教えてくれ!」

 

 叫んで、悲しんだ。

 

「頼むよ……アイツでもいいから、誰か答えてくれよ……」

 

 彼は気づかない。自分がある人物を求めているということを。彼は思い出せない。それが、彼にとって今一番会いたい人物であるということを。彼は気づかない、それが、愛であるということを……。

 

 

 

 

 

 

 ここにいるのは彼一人、彼は孤独だった……。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ちょっといい?」

「え?」

 

 わけではなかった。体育座りでうつむいている彼の肩をポンポンと後ろから叩く人がいた。彼は後ろを向く。そこには、女性が立っていた。

 

「あ、あんたは?」

「私?う~ん、分からない」

「え?」

「名前も思い出せないし、自分がどんな人間だったのかも全然分からない」

「それって……」

 

 俺と同じ。そう言おうとした彼は、しかしその後の彼女の言葉に度肝を抜かれた。

 

「でも、それでも別にいいかなって私は思う」

「え?」

「だって、名前が分からなくても、今までどんな人と会ってきたのか忘れても、私はここにいるもの」

「ここに……いる」

 

 なんて前向きな少女だろうか。自分にこの少女のようなポジティブ思考があっただろうか。不安も恐怖も、そんなものない。一体、この少女は何者なのだろうか。

 

「……そうだよな、ここにいるんだもんな……俺だって……」

「うん、ところで、それは何?」

「それ?……ってこれか?」

「うん」

 

 そこでようやく気が付いた。自分が何か黒い布を持っているということに。少し広げてみた。どうやら、服か何かのようだ。ロングスカートにしては長すぎる。ポンチョにしてはちょっと柄がなさすぎる。でも、何故だろうか、これを見ていると。

 

「なんだか……懐かしい感じがする」

「もしかして、さっきアイツって言ってた人の物かもね?」

「え、アイツ?」

「あれ?言ってなかった?さっき『アイツでもいいから答えてくれ』って」

「アイツ……誰、何だろうな」

 

 たぶん、無意識なことだったのだろう。自分には、その言葉を言った記憶がなかった。だが、隣にいる少女はその言葉を聞いたというのだから、きっと自分は言ったのだろう。記憶にない、その誰かの事を。

 

「でも、一つ記憶取り戻したじゃん」

「え?」

「誰か、会いたい人がいるっていう記憶だよ」

「あっ……」

 

 会いたい。そうだ、会いたいんだ。名前も、顔も分からない。だが、絶対に自分が守らなければならない、そんな少女。少女。そうだ、少女だ。自分が会いたいのは、少女なのだ。彼女に、会いたい。会いたくて仕方ない。

 

「……会いたいな」

「それじゃ、会いに行こう!」

「へ?」

 

 そう言われて、少年はその手を引かれて立たされる。

 

「ちょっと待てって!会いに行こうってどこにいるのかも……」

「だから歩くの。目標があるんなら歩けるでしょ?」

「え……まぁ、そうだけど……」

「なら大丈夫!私も一緒に歩くから、その人のところまで!」

「いや、話を聞けって!」

 

 少年は行く。少女と共に、当てのない旅を、その暗い道を、どこにあるのか分からない光に向かって。だが、何故だろうか、不安はなかった。彼女と一緒なら、きっと何とかなる。そんな気がして、ならなかった。

 

 

 

 暗中模索という言葉がある。暗闇の中、あがき続けて、対策を考えていくこと。だが、必ず何かが見つかるとは限らない。だからこそ探し続けたいと、人は思うのだろうか。だが、それでも見つからないということがあるだろう。だから、一緒についてきてくれる仲間を欲するのだ。怖いから、何も見つからないという不安が怖いから。だから、一緒に励まし合い、努力し合って進んでいける仲間を欲するのだ。やがてその輪は大きく広がり、そして目線を広げてくれる。だから探し物は必ず見つかると決まっているのだ。ほら見てみろ。その道は、光り輝いているではないか。その道こそが、君の探していた成功への架け橋だ。迷わず、慌てず、進みなさい。その先に、待ち人は必ずいるでしょう。

ー世界の破壊者ディケイド、いくつもの世界を巡りその瞳は何を見るー




 あの矛盾(どれだよ)の解決方法は、これしかなかった。

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