仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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ゼロの使い魔の世界2-10

 ルイズは、頭を抱えたまま座り込んでしまう。そして、今頭をよぎったその顔を思い出そうと奮闘する。

 

「誰?誰?誰?……あなたは誰なの?誰なのよ!?」

「ルイズ、どうした!」

「ルイズさん!」

「ルイズ!」

 

 公爵たちは、そんなルイズを心配し声をかける。だがその状況を改善する手立てもない為、心配することしかできなかった。

 その彼女の様子を見て、ワーム共も何やら慌てふためきだした。

 

「まさか、奴の記憶が!」

「でもどうして?マシンは正常に動いているはず……」

「……」

「カトレア、あなたまさか……!」

 

 士は、そんなワームの姿を見てこのルイズの状態は、ワームが何か関係しているのではないか。そう考える。だが、一体彼らが何をしたというのだろうか。先ほど、エレオノールに擬態していたワームが『マシン』という言葉を使っていた。マシン、機械……そういえば、屋敷でシエスタを助けにある部屋に入った時、薄暗い部屋の中にぼんやりと光を放つ機械を見た。まさか、あれがルイズに異変を与えているというのだろうか。だが、何の……。

 

「ユウスケ、海東」

「え?」

「……」

「少し時間を稼いでくれ。もしかすると、ルイズの記憶が役に立つ可能性がある」

「どういうことだよ、それ?」

 

 士は、ユウスケと海東に時間稼ぎを頼む。ルイズの様子を見る限り、このまま戦うのは危険だ。彼女の言葉を聞く限りには、どうやら誰かの顔が頭に浮かんでいるようだ。もしその誰かが、彼女の記憶の中にいる本当にいる人物であるのなら、そしてワームがその記憶を封印していたものとするならば、その封印を解いて損はないだろう。

 

「とにかく、時間が必要だ。できるか?」

「士、一つ言っておく」

 

 海東はそう言うと、ディエンドライバーを構えながらワームの方に向く。そして、一枚のカードを取り出しディエンドライバーにセットする。

 

「僕に命令できるのは、僕だけだ……変身!」

≪KAMENRIDE DIEND≫

 

 いつも通りにディエンドに変身した海東は、さらに三枚のカードをチョイスしてディエンドライバーに装填し、発射する。

 

≪KAMENRIDE ZERONOS MACH GARREN≫

 

 銃口からいくつもの色とりどりの影が出現し、そして複数の姿が重なって、三つの仮面ライダーが現れる。

 

「最初に言っておく。俺はかーなーり強い!」

 

 胸に線路の形を模した金色の装飾を施した緑主体の仮面ライダー。仮面ライダーゼロノス、この状態はアルタイルフォームと呼ばれている。このライダーは、電王の世界に所属している仮面ライダーで、桜井侑斗という男が変身する。時を渡る電車ゼロライナー、そして契約したイマジンのデネブと共に時の運航を守る使命を担っているのだ。因みに、先ほど言った言葉は、彼が戦いを始めるときにいつも言っている言葉である。

 次に、二人目の仮面ライダーがいちいちポーズを決めながら言う。

 

「追跡、撲滅、いずれも……マッハ!!」

 

 そして体の前で武器を持っている右腕を回しながら言う。

 

「仮面ライダー~~~マッハ!!」

 

 白を主体とし、バイクのヘルメットのようなマスクの仮面ライダー。右肩にタイヤを付け、マフラーを風になびかせている。彼は、仮面ライダーマッハである。ドライブの世界所属の仮面ライダーで、詩島剛という男が変身する。因みに前述のセリフもまた彼が戦いを始めるときのセリフである。

 そして、三人目の仮面ライダーは……。

 

「……」

 

 赤を主体とし、ディエンドと同じく銃を使用する仮面ライダー。仮面ライダーギャレン。ブレイドの世界の仮面ライダーで、橘朔也が変身する。ブレイドの世界の仮面ライダーのモチーフはトランプで、ダイヤの形をそこらかしこに見えることから分かるように、ギャレンはダイヤをモチーフとしている仮面ライダーだ。因みに、彼一人だけが何も言わなかったのだが、それが当たり前であって、他の二人の方が異端だということは言っておく。

 

「変身!」

 

 それに続いて、ユウスケもまたポーズを決めてクウガへと変身する。この時点ですでに5人の仮面ライダーが並び立つ。もはや地獄絵図。

 

「誰も僕に命令できない。だからこそ、僕の道は自分で決める」

「つまり、助けてくれるんだろ?」

「そう言うことさ」

 

 戦いに入る寸前、海東が言った。言葉の中ではトゲがあり、素直な性格ではないものの、それもまた彼らの友情であるのは間違いない。二人の仮面ライダーと、三つの仮面ライダーの魂が、わらわらといるワーム向かって突撃する。

 

「お姉ちゃん、私達も!」

「うん、行くよ!」

「二人ともお気をつけて!!」

 

 鳴滝姉妹もまた影分身によって数増しができるため、自主的に参戦する。これによって時間は稼げるはずだ。だが、ルイズは自分の頭の中を探ることに精一杯で、そんな様子なんて知る由もなかった。

 

 誰?貴方は、誰なの?……それに、何?この記憶は……これは、あの時の夢の光景だわ。そう、使い魔を召喚した夢。平民の使い魔を……あいつを召喚した夢……。

 

「ッ!」

「士先生?」

「右手が……」

 

 士は、左手に熱い何かを感じる。まるで、焼き印を付けられているよう。そう、昨日と同じ、ルーンを刻み込まれる時の痛みだ。これは一体……。公爵が、その手についている文字を見て言う。

 

「それは……使い魔のルーンか?」

「あぁ、あんたの娘に付けられたもんだ」

「これって!」

「エレオノール姉さま、どうしたんです?」

 

 そのルーン文字を見て、エレオノールが声を上げた。

 

「これは、以前本で見たことがあるわ。確か、ガンダールヴの……」

「ガンダールヴ?それは確か始祖ブリミルの!」

「はい。この世で最も偉大なメイジブリミル……ブリミルは使い魔を四人持っていいます。その中の一人が『ガンダールヴ』、神の盾と呼ばれる伝説の使い魔のルーンよ」

 

 エレオオールは、アンリエッタの言葉にそう答えた。エレオノールは、たくさんの本を読んでおり、その中にガンダールヴのルーンが書かれていたのだ。だが、それはある衝撃的な事実を彼女たちに教えていた。

 

「ガンダールヴ……ということは、ルイズは……」

「虚無……の使い手という可能性も……」

「まさか……」

 

 士達の知らぬところでどんどんと話は進んでいく。だが、この事実に驚愕しているこの世界の人間の顔を見ていると、なにかとてつもないことであることは分かる。虚無というのは確か、魔法の基本四系統以外にあるもう一つの魔法の系統だったはず。だが、それは伝説と言われ、虚無の使い手はあまり存在することのないと以前聞いたような気がする。

 

「しかし、何故士先生がそのガンダールヴというものだったのなら、ルイズさんが虚無の使い手……ということになるのですか?」

「簡単なこと、伝説の使い魔を呼ぶことのできるのは、虚無の使い手のみ。だから、彼がガンダールヴならばルイズは……」

「違う……」

「え?」

 

 エレオオールの言葉、しかしそれを否定したのはほかならぬルイズだった。

 

「士は……ガンダールヴじゃない」

「ッ!」

 

 ルイズが、そう否定すればするほど、士の手の痛みは増していく。まるで、脈打つように、鼓動を刻むように痛みが規則的になってきた。

 

「ガンダールヴは、私の使い魔は……っ!」

 

 激流のように、まるで一つの壁が壊れたかのように、彼女の脳裏に激流のように記憶が、思い出があふれ出していく。

 

『だから俺は、ルイズさんが召喚した使い魔なんだろ?』

『寝るのは床でもいい……メシはまずくたっていい……しょうがねぇからなんだってしてやる……でも、下げたくねぇ頭は下げられねぇ!!!』

『貴族だから何だってんだ!死んだら終わりじゃねぇか!!』

『伝説も貴族も平民も関係ねぇ!こいつを守るのだけが取り柄の……何にもねぇ、ゼロの使い魔だ!』

 

 サ……イト……

 

 ピシッ!

 

『俺が誰より守りたいのは!』

『俺はお前が大好きだって、ずっと前から言ってるだろうが』

 

 ヒラガ……サイト……

 

 ピシピシッ!

 

『ルイズ、約束する。俺は死なない。大好きなルイズを残していくもんか。だって俺は、ルイズの……ゼロの使い魔なんだ!』

 

 

「サイト……ツ!」

 

 思い出した。思い出した!思い出した!!

 ルイズの頭の中、そこに彼が自分に話しかけるたびに空にはヒビができる。また一つ、また一つ。そしてついに彼女は全てを思い出した。そう。あの日、自分のもとに来て、自分の使い魔になって、いろんな冒険をした。そうだ。自分たちはレコン・キスタを倒した。そして、トリステインを、シエスタの故郷のタルブの村を救った。学院に現れた傭兵も打倒し、コルベール先生も死ぬこともなかった。タバサも、タバサの母親も救って、ガリア王国のジョゼフ一世も、ミョズニトニルンも倒した。エルフとも和解の可能性も作りだし、そしてエンシェントドラゴンとの戦い。トリステイン、ガリア、ゲルマニア、そしてエルフ……今までではありえないほどの連合軍が協力して、そして虚無の力で倒して、自分とあいつは、英雄となった。そして、あいつが、サイトが何かに吸い込まれた……。

 そうだ。あの日から私たちは変わった。このトリステインに降りてきた異物、それがいなくなっただけでこうも世界は変わってしまった。自分も、彼の事を、生涯で一番愛し、そして自分の事を愛してくれる人の事を忘れてしまった。そして、そのぽっかりと開いてしまった穴の中に偽物の記憶と偽物の世界が埋まって、弱気な自分が生まれてしまった。自分だけじゃない。自分の周りの姫様やシエスタたちの記憶も偽物の記憶で埋められて、そして悲しみで溢れた。でももう大丈夫。全部思い出した。全部取り戻した。そう、士はガンダールヴじゃない。彼は、あいつの代わりに私を守るために来た、いわば使い魔の代理。彼のおかげで、私は大事な物を取り戻すことができた。あいつの名前、あいつの言葉、あいつの思い、そして……あいつとのキスの味。そう、あいつの……あのバカ犬の名前は!!

 

「私の、使い魔の名前は!ヒラガサイト!!」

 

 その魂からの叫び声、それと同時にミラクルライトの光はさらに増し、ついにその思いが空のヒビへと当たり、ヒビは完全な穴として完成する。そして、そこから二つの影が舞い降りた。

 

「あれは!」

「そうよ、あいつよ!ルイズの使い魔は!」

「えぇ、私たちも思い出しました」

「忘れていた……お前の事をな」

「あいつは……」

 

 貴族の証であるマントを持って舞い降りた一人の青い服の男。自分を英雄にしてくれた彼の姿が、シルエットからはっきりと姿を変えていく。その瞬間、士の左手の文字は消失する。それと同時に痛みも引いた。その姿をみた、キュルケやアンリエッタ達もまた彼の、そして士もまた彼女の名前を思い出した。姿は変わって、小さくなっているが間違いない。面影は残っている。

 

「ルイズ!」

「遅いわよ、バカ犬……」

「悪い、でももう大丈夫だ」

 

 サイトとルイズは抱き合った。まるで、何十年も離れていた夫婦のように、重く、そして想いのこもった熱いもの。心に刻み込まれた偽りの記憶が薄れていく。嫌な記憶、みじめな記憶、それらが全部消えていく。そして残ったのは、本当の記憶、偽りの中にあった喜び、楽しみ、そして彼とのこの一年間の愛と冒険の記憶。もう、離したくない。ずっと、こうしていたい。ずっと、サイトといたい。ずっとずっと、一緒にいたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 のだが、ルイズには一つ気になることがある。

 

「よかったね、サイトくん!」

「あぁ、ありがとう、えっと……」

「あぁ、そっか。ずっと一緒にいたけど、まだサイトくんは私の名前知らなかったね。私は……」

「ねぇサイト……」

「ゲッ!」

 

 ルイズから離れたサイトは、なにやら嫌な予感を感じた。そう、ルイズは気になっていた。何故、もう一人いたのだろうか。それも、ずっと。ずっと?自分が、ワームによって死にそうになっていたそんな時に、サイトは女の子と二人っきりでイチャイチャしてたということだろうか。幽閉されて、明日の事も全く分からなかった自分に比べて、なんとも楽しそうなこと楽しそうなこと……。

 

「ずっと一緒にいたってどういうこと?」

「いや待てルイズ!この子は、変な空間の中で出会ってそれで……」

「それで?」

「悪気はないんだ!俺がお前の名前を忘れている時に会って励ましてもらって!」

「私が苦労している中で随分と楽しいことしていたみたいね」

「待てなんでそうなる!」

 

 悲しいかなそれは焼きもち、悲しいかなそれは嫉妬という感情を間違った方法で表現することしかできない彼女の性格。あぁ、一年連れ添ったパートナーの再会、それがまさかこんな結末になるだなんて思いもよらない。ルイズは、杖を天に大きく掲げて、そして振り下ろしながら言う。

 

「顔に書いているのよ……このバカ犬!!」

「ぎゃぁぁ!!!」

 

 爆発。だが、このドタバタを、懐かしいと思いながらも、嬉しそうに楽しんでいるルイズの姿がそこにはあった。……サイトにとってはたまったものではないのだが。




 8時30分に次を投稿します。そして、ついに彼女の名前が明らかになる。(これ隠すために明らかに不自然なことやっちまってたんだよな……)これでやっと肩の荷が下ります。
実は、彼女の登場は大きな賭けです。何故って?今頭の中で浮かんでいるある展開が彼女によって潰される可能性があるからです。まぁ、あの子ならしょうがない。
 というか、感動の再会には必ずオチを付けないといけないという決まりでもあるのだろうかというほどSAOの世界に続いて残念なことに……。
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