仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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すまない


ゼロの使い魔の世界2-14

「えいっ!やぁ!!」

 

 意外や意外、夏海&シエスタのフライパンコンビは、かなりの数のワームを倒していた。相手が蛹態のワームでクロックアップしないということもあるだろうが、しかし、恐ろしい戦闘能力だ。

 周りを見ると、すでにワームの姿はほとんどいない。ユウスケたちが上手く倒してくれたようだ。そう思い、夏海は彼らに合流しようとした。その時、右方向から殺気を感じた。彼女は咄嗟にフライパンを体の前に持っていき、楯のようにした。その瞬間だった。フライパンを突き抜けて、鋭利な矢の先のようなものが突き抜けた。

 

「な、夏海さん!」

「大丈夫です。目の前で止まりました」

 

 後ろを見ると、どうやら半分ほどが入って止まっているようだ。もう少し深かったら危なかった。しかし、これは一体何なのだろうか。その時、笑い声が聞こえてくる。

 

「フフフフ……」

「!」

 

 そこにいたのは、カリーヌに擬態していたワーム、レジアナピスワームだった。これはあのワームの攻撃だったというのだろうか。そういえばフライパンに刺さったものをよく見ると、蜂の針のようにも見える。まさかそれを飛ばす能力を持っているというのだろうか。

 

「夏海!シエスタ!」

「アニエスさん……」

 

 そこへ、森の中からアニエスが走り寄ってきた。その手にはドライブから受け取った剣を持っている。彼女はあたりにいるワームをすべて倒しつくした後、アンリエッタの事を公爵やマチルダに任せてこちらに来たらしい。アニエスは、夏海とシエスタの前に立ち、ワームへと立ち向かう恰好を取った。

 

「ただの人間が、ワームに勝てると思っているか?」

「やってみなければ分からない。ただの人間の力……見せてやる!ハァ!!」

「無駄なこと……」

 

 アニエスは、ワーム目掛けて走り、そして袈裟切りに斬りかかった。しかし、ワームはクロックアップにてそれを避ける。アニエスは、そのワームの動きを追うが、当然それは不可能だった。刹那、彼女は首に重い痛みを感じたと思ったら仰向けに倒れ、後頭部に頭痛がする。見れば、ワームは目の前で自分の首を絞めている様子だった。

 

「さぁ選びなさい。このまま首を引きちぎられるか、それとも心臓を貫いてもらいたいか!」

「くッ!」

「アニエスさん!!」

 

 シエスタの悲痛な叫びが彼女の耳に入る。一見すれば、ピンチだ。だが、見方を変えればこれはチャンスである。目にも止まらないほどの速さを見せるワームが今、こうして目の前で自分に組み付いて動かない。ここでワームにダメージを与えることができれば、何とかなるかもしれない。だが先ほどの衝撃で、ドライブからもらったハンドル剣から手を離してしまい落としてしまった。銃なら何とかなるかもしれないが、しかし銃は自分の下に入ってしまってとることができない。絶好の、またとないチャンスなのに、何もすることができない。そうこうしているうちに首が絞められ、息苦しくなってくる。その時、彼女は、死のすぐ目の前に来てようやく思い出した。そうだ。自分は剣を持っているじゃないか。それも、今すぐ取り出せる場所に。

 

「所詮、人間風情の力等その程度!お前は何も成すこともできず、絶望の中で死んでいく!!」

「た、たしかに……平民の力など、たかがしれている……だが、それでも私は……」

 

 アニエスは、腰にさしてある剣を抜くと、死角からゆっくりとワームの胸にそ刃を向ける。そして……。

 

「陛下の騎士だッ!!」

「ッ!」

 

 彼女の剣、ワームの胸に突き立てたのは包丁だった。昨日、シエスタがアンリエッタに向けた剣。彼女がそれから手を離した後、アニエスが包丁を回収し、そして剣がなく手持無沙汰だった彼女はそれを腰に忍ばせていたのだ。

 無論、これでワームが倒せるとも思わなかった。実際に、ワームの身体を貫くということはなかった。だが、ワームがたじろいだのは確かだ。それによってワームは思わずアニエスの首にかけていた手を離してしまう。そして、その一瞬を見逃さずアニエスは思いっきりその身体に蹴りを入れて、ワームがそれによって後ろへと引いた。

 

「ゴホッ!ゴホッ!!」

 

 苦しみから解放されたアニエスは咳き込む。

 

「おのれ、よくも私の身体に傷を!」

 

 憤怒したワームは、またも針を飛ばそうとする。アニエスは、何とか右にでも、左にでも避けなければならない。そう思った矢先、アニエスの上を何者かが跳んでいった。

 

「超変身!!」

 

 仮面ライダークウガ、小野寺ユウスケだ。クウガは、赤い色の身体から、銀と紫の鎧に変わると、ワームに刺さっている包丁の柄を握る。その瞬間、包丁が光だし、巨大な剣、タイタンソードへと姿を変える。

 

「グアァァ!!」

 

 刺さっている小さな包丁を大剣へと変化させたため、その面積に比例してワームの傷口を広げていき、ついには身体を突き抜けてしまった。その瞬間、ワームの背中から火花が飛び散った。そして、クウガはタイタンソードを引き抜き、一つ蹴りを入れた。

 

「グッ……くッ!!」

 

 大きな傷を負ってしまったワームは、もうクロックアップをするほどの力を持っていなかった。そして、ここからは ダメ押しだ。

 

『ヒッサーツ!!』

 

 その電子音と共に、ワームの四方にタイヤが出現し、それぞれが中心にいるワームに向かって行き、ワームを挟もうとする。それを成そうとしているのは、赤い仮面ライダー、ドライブだ。その隣のアクセルフォームのファイズは右手を一度スナップさせると、左手のファイズアクセルのボタンを押す。

 

≪START UP≫

 

 ドライブは、左手に付けているブレスレットをシフトレバーを操作するように上げると、ブレスレットの前方に付いているライトが光り、そしてベルトが言う。

 

『FULL THROTTLE!!SPEED!!』

 

 その瞬間、彼の後ろから一台の車が出現し、彼の周りでドリフトをするように回転する。その瞬間、ワームは四つのタイヤに押し出されて、ドライブの元へと飛ばされる。

 

「あれは……」

 

 アニエスは、目の前で起こる何もかもが謎だった。しかし、なにかものすごいことが起こるということは分かった。その時、ユウスケが言う。

 

「アニエス!君の持っている銃を貸してくれ!!」

「え?あぁ……」

「ありがとう」

 

 アニエスは、自分の持っている唯一の武器をユウスケに手渡すと、ユウスケはすぐに変身ポーズを取る。

 

「超変身!!」

 

 瞬間、銀色の身体は、緑色へと変化する。そして、アニエスの手渡した単発の銃はまるでボウガンのような形のペガサスボーガンへと変化した。その間にも、ワームはドライブのもとに飛び、ファイズは、その瞬間に姿を消し、ドライブはドリフトをする車に飛び、それを踏み台にワームに向かってキックを繰り出す。

 

「フッ!!ハッ!トリャ!!」

「グッ!アァッ!!ガッ!!」

 

 それも一回だけでなく、何度も何度も同じ行動を繰り返し、そのたびにその威力も、そして速さも増していく。その時、赤い矢状の何かがワームの上空に五つほど現れる。これは、ファイズの敵であるオルフェノクにとって毒物である流体光子エネルギー、フォトンブラッドである。つまり、それはファイズの攻撃、必殺技だ。通常のファイズのそれは、一体の敵に対して一つしか現れないが、アクセルフォームを使用している場合は、一度に複数の敵をロックオン又は、一体の敵を複数回ロックオンし必殺のライダーキック、クリムゾンスマッシュを叩きこむことができるのだ。

 

≪3……2……1……≫

 

 緑色のクウガ、ペガサスフォームのクウガはペガサスボーガンのレバーを引く、するとそれにつられて再前方に弓状で左右対称についていた弓が折りたたまれる。そして、クウガは耳を澄ませる。先ほどの数字は、彼の耳に聞こえてきたファイズアクセルのカウントダウンだ。そして彼は見つける。ドリフトする車、トライドロンの隙間からワームを狙い打てるタイミングを。その瞬間、ドライブが最初に決める。

 

「テヤァァァ!!!」

 

 ドライブは、最後の蹴りを決めるとそのままトライドロンの車間の間を通りに左足でブレーキをかける。その瞬間、地面の土が舞い上がった。

 

「タァァァァ!!!」

 

 続いて、ファイズのクリムゾンスマッシュが多段ヒットする。

 

≪TIME OUT≫

 

 最後に、クウガがペガサスボウガンを撃つ。

 

「ハァッ!!」

 

 放たれた弾丸はトライドロンの車間を通り、ワームを貫通した。

 

「グッ、おのれぇ……たかが人間が……こんな……ぐあぁぁぁぁ!!!!」

 

 その瞬間、ワームは黄色い爆発によって消滅した。因みに、仮面ライダーの位置関係は、左にドライブ、右にファイズ、そして目の前にクウガが状態だ。そして、その爆発を見送ったクウガは黄色くくすぶっている炎を見ながら言う。

 

「人間だから、できたのさ……」

「ん……」

「あぁ!」

「そう……ただの人間でも、抗うことができる。抗う勇気が……必要だったんだ、コルベール……それが、どれだけ酷なことだったとしても……」

 

 そう、彼らが頷いた瞬間、ファイズとドライブの姿は消えた。クウガは、消えてしまった後だが、しかし彼らの存在に敬意を表すようにサムズアップをした。そして、アニエスは、空を見上げた。今、そこにいるであろう罪人を幻に見て……。

 

「アウァ!!」

「クッ!グア!!」

 

 ハート、そしてブレイドの二人はグロリアンクトゥスワームとの戦いを続けていた。しかし、彼女たちは現在劣勢に立たされている状況にあった。と、言うのも、今相手をしているグロリアンクトゥスワームが、蝶々が鱗粉をまき散らすように触れると爆発する誘爆性のある粉のような物をまき散らし彼女、彼らに近づく隙すら与えなかったのだ。

 

「ハート!大丈夫シャル!?」

「うん、何とか……」

 

 ハートは基本的には格闘戦が主戦闘スタイルだ。それは、全てのプリキュアに同じことがいえるが。ハートは周囲を見る。とは言え、あるものと言えば木ぐらいである。だが、それで十分だった。

 

「ッ!はぁぁぁぁ!!!!」

「え?冗談でしょ?」

 

 ハートは、木の一本を地面から引き抜くと、それをワーム目掛けて投擲した。流石に面食らったものの、ワームはクロックアップによってそれを避ける。そして、ハートの周りに粉がまき散らさられる。

 

「ハッ!」

 

 ハートは、空中に飛んでその粉から逃げ出すことに成功する。そして、着地したのは湖のすぐ近くだ。

 

「残念でした」

 

 しかしワームは先回りし、すでに空気中に大量に粉をまき散らしていた。そして、空中を飛んだワームは、ハートの上空にも粉をまき散らす。そして、ワームはハートの目の前に着地する。

 

「……」

「ウフフ、これであなたは逃げることもできない。さてどうした者かしら?」

「さて、どうしようかしらね……」

「?」

 

 ワームは、彼女の口元に怪しげな笑みを見た。こんな危機的な状況で、どうしてそんなに笑うことができるのだろうか。いや待て、そういえば何か忘れている。誰かがいないような気がする。そう、自分は誰と戦っていた。今目の前にいるキュアハート、そして先ほどの場所に置いてきたブレイド、それから……。

 

「まさか!」

 

 ワームがそれに気が付いた瞬間、彼女は上空から現れる。シャルロットと、シルフィードだ。彼女が何をするのか簡単にわかる。自分を攻撃する?違う。そんな簡単なことではない。彼女が湖の方から来たということはおそらく……。その間にも彼女は呪文を紡いでいく。ここから、できれば遠くに行かなければならない。だがその時だ。

 

「ッ!」

 

 後ろから何者かに羽交い締めにされる。

 

「貴様、ブレイド!!」

「今のうちに、早く!!」

 

 シャルロットは、その言葉にコクッと頷くと、その呪文を言う。

 

「エア・ハンマー……!」

 

 その攻撃は彼女はワームにではなく、湖へと放った。その瞬間、水が跳ね上がり、雨のようにあたりに降り注いでいく。それによって、あたりを待っている鱗粉はすべて地面に叩き落されてしまう。そして、彼女の身体についていた鱗粉もまた同じく。これらの作戦は、キュアハートが発案したものだ。ワームの特性を瞬時に見切り、シャルロットとブレイドに作戦内容を伝えたのだった。これで、あの粉の攻撃を気にする必要は無くなった。

 

「クッ!だが、雨によって叩きつけられた粉でキュアハートは!」

「ッ!」

 

 その時、キュアハートの周辺で爆発が発生する。

 

「ハート!!」

 

 ブレイドは叫んだ。しかし、その心配は無用の長物であった。

 

「ハァッ!」

 

 ハートは、爆発の中から生還したのだった。

 

「嘘!」

 

 どうやってハートが生還したか。簡単に言えば、確かに粉は爆発するものの、それはすべて同時というわけではない。彼女に当たった粉が爆発した勢いで、爆発とは逆の方向へと飛び出したのだ。さらに、爆発によって他の粉もいくつかが吹き飛んでいったので、威力もまた弱まっていた。これは、極々簡単にしたものなのだが、それをすぐにやれてと言われても、多分できないだろう。彼女だからこそできたことだ。そして、ハートはそのままの勢いでワームに突撃する。

 

「ハァァァァ!!!!」

「ハァッ!」

 

 ブレイドは、ワームの背部から退散する際、一回、二回斬撃を加える。そして、ハートがワームをキックで吹き飛ばす。ワームは、何度となく地面に激突しながら、奥にあった木に当たって止まる。

 

「くっ……うぅ……」

「もう……やめて、エレオノールさん」

 

 ハートはワームに言う。できるなら、ここでやめてもらいたい。せめて生きる道を選んでもらいたかった。綺麗事かもしれないが、彼女もまたエレオノールならば、生き残る道を、ルイズと一緒にいる道を選んでもいいじゃないか。そう彼女は願った。しかし、エレオノールは言う。

 

「はっ……ははは、とんだお人好しよ……所詮私はただの怪物。彼女のようにワームとして生まれてすぐに擬態したのと違って、すでに怪物として完成された私たちに人間の世界で生きろなんて、修羅の道……ならば、ここで怪物として死んでやるわ!」

「そんなの!ッ……」

 

 言葉を重ねようとするハート、しかしそれはブレイドによって止められ、そして言う。

 

「君の言っていることも正しい。けど、世の中には助けようとしても、助けられない命が沢山ある」

「でも、あの人は!」

「分かってる、俺だって彼女の事を助けたい!でも……」

 

 マナは、ワームの姿を見る。ワームは今にも膝から崩れ落ちそうなほどにフラフラしている。しかし、それでもこちらに鬼人のように歩いてくる。その様子に、マナは一瞬だけ背中にヒヤリとした感覚を感じる。それを見たシャルロットは言う。

 

「彼女は、私たちと戦おうとしている。多分……死ぬまで……」

「そんな……そんなのって……」

「俺だって、命の選択をしようとは思わない。こんなところで生存競争について語ろうとも思わない。トランプにいらないカードなんて一枚も存在しないんだから……」

「……」

「君がどんな人生を送ってきて、これまでどれだけの人達を助けてきたのか分からない……もしかしたら、これが最初の絶望になるかもしれない。でも……お願いがある。君のその……綺麗な心を忘れないでくれ」

「え?」

「俺は……運命と戦う。彼女も、運命と戦って、そして受け入れたんだ。君が気に病むことはない。だから……たった一回の絶望で、彼女の死で、理想を追うのを止めないでくれ」

「ブレイド……」

「彼女は、君の綺麗事の犠牲になるんじゃないんだ。だから、頼む……」

 

 絶望したことはない。と言えば、嘘になるかもしれない。彼女は、絶望したとしても、すぐにそれを吹き飛ばしていただけだ。プリキュアになってから、誰かの命が失われる瞬間に出会ったことはまずない。失われそうになっても、彼女はその命を救ってきた。いや、どうしても救うことのできなかった命だってあった。しょうがないと言われてしまえばそれまでかもしれないが、しかし、それでも救いたかった命がそこにあった。だが、それでもハートは彼女を倒さなければならない。そうしなければ、いや違う。そうするのだ。彼女を、倒す。それが、彼女にとっての救い。そんな救いがあってたまるか。生きる事以上の救いなんて、未来を立たれることによる救いなんて、救いにはならないはずなのに。それなのに、自分は……。

 

「行こう、キュアハート……そして、彼女の命を背負うんだ」

「うん……!」

 

 ブレイドは、ラウドブレイザーのカードホルダーを展開すると、三枚のカードを取り出し、それをそれぞれ読み込ませた。

 

≪KICK THUNDER MACH≫

 

 その瞬間、三枚のカードのイメージが彼の後ろに現れ、そしてそれらが彼の中へと入って行く。ブレイドは、剣を地面にへと突き刺す。すると、彼の身体に電流が走り、電子音が鳴る。

 

≪LIGHTNING SONIC≫ 

 

 一方キュアハートは。

 

「ラブハートアロー!!」

 

 そう彼女が唱えた瞬間、光と共に弓型のソレ、ラブハートアローが現れる。そしてハートは、それのハートの部分にハートアローラビーズをセットする。そして、柄の部分にある上からピンク、青、黄色、紫のハートを順番になぞると、それぞれに設定されている音階の音が鳴る。そして、一番前にあるハート型のクリスタルがピンク色に光り出す。ハートは、持ち手を名いっぱいまで引っ張ると、弓状になっている部分が、先ほどまで小さかったのに、普通の弓道の弓のように長くなる。

 

「プリキュア!ハートシュート!!」

 

 その瞬間、キュアハートの前方にハート型のエネルギー体が出現する。これで双方準備が整った。

 

「ハァァァァァ!!ハァッ!」

 

 ブレイドは、ワームに向かって走り出し、そしてそのすぐ目の前で上空に跳ぶ。ハートは、そのタイミングを測ってから、ウインクするように狙いを定めて、弓を発射する。そして発射した瞬間、ハート型のエネルギー体に向かって、クリスタルに溜まっていたピンク色のエネルギーが光線となり、ハート型のエネルギーを射出した。それは、ワームへと直撃し、その身体を包み込む。

 

「グアァァァ!!!」

「ウエェェェェイ!!」

 

 そして、身動きの取れないワームの身体にブレイドのライトニングソニックが直撃し、その身体を電撃が這う。

 

「……!!」

「ッ!」

 

 ワームは、虹色の爆発を見せながら消滅した。ハートは、それを見終わると、ラブハートアローを下に降ろす。

 

「マナ……大丈夫シャル?」

「相田、マナ……」

 

 シャルルとシャルロットの二人は落ち込んでいるキュアハートに心配そうに声をかける。シャルロットにとっては、なぜ敵であるワームを倒した彼女が、ここまで落ち込むのか分からなかった。相手は、自分たちを殺そうとしていた。それなのに、どうして助けられなかったことに関してここまで肩を落としているのか。分からない。分からなかった。多分、永遠に分かることはないだろうと思う。

 

「助けることが……できたのに……」

「キュアハート……」

「え?」

 

 その時、ブレイドが彼女の目の前に立つ。そして、……。

 

「----」

「……」

 

 ブレイドは、その言葉を伝え終えると、消失する。そしてハートは、ただ二人のいた場所に向けて首を垂れる。それは、助けられなかったことに対する謝罪。そして、それは、約束を守るという覚悟を示したもの。顔を上げたハートは一度、両手で頬を叩くとすぐさま笑顔で一目散にある場所へと向かった。もう、過去は振り返らない。それに、彼女は死んだわけじゃない。自分の、子の胸に、この心の中にある。彼女の分まで生きるのではない。彼女のために生きぬこう。彼女は行く。それは、ルイズの元。彼女がいるであろう場所だった。




 自分の浅はかな考えのためにマナさんに辛い経験をさせてしまった。こんなことを経験させるためにこの世界につれて来たかったわけじゃない。ただ、その代わりと言ってしまえばあのワームに悪いがしかし、彼女たちを救ってくれ。君なら、いや君達ならそれができるはずなのだ。だからこそ僕は君たちに荊の道を指し示すことができるのだから。

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