彼女は俺から離れない   作:Sylvia

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プロローグ
プロローグ(1)『リア充』とは?


俺は中庭でヤな景色を見ていた。

どう考えてもこれから起こることが予測できる事態だ。

「先輩のことがずっと好きでした!私と付き合ってください!」

ほら、な?

茶髪のショートヘアの子がどこからどうみてもイケメンな先輩とやらに告白していた。女の子は目に涙を浮かべて可愛い顔(笑)を不安げに歪めている。

その子の告白に先輩とやらは。

「ああもちろんさベイベー!俺もアモーレさァ!カモンッ!この情熱大陸のような胸の中へダイヴトゥミィー!!」

いや、さすがにこの返答はないわ。

「おぉ、ジュッテームッ!んぼはぁっ!?先輩、ワキっ!!ちょっとワキがすっぱい!すっぱいけどそんなところも情熱的!シルヴプレェッ!」

なんなんだ、このリア充ども。

「……最近の若者は超情熱的だなぁ」

転校初日の昼休みらしく、人気のない中庭でぼっち飯をしてる最中にいきなり事故が起きたのだ。俺は仕方なく他人のラブシーンのために、わざわざ!植え込みの陰で息を殺してパンを齧っていた。

しっかしここの学食の焼きそばパン美味いな。

「転校して早々に他人のラブシーンに付き合わされるとかいきなりツイてないなぁ……」

お陰様で俺がものすっごい空気読めない、パパラッチになってる感じなんだけど、参ったなぁ。

向こうはガンガンヒートアップしてレッドゾーンまで突入しそうな勢いだし。

「……リア充爆ぜろよ」

「リア、充?」

どこからか声が聞こえた。疲れているのだろう。

しかし、隣には。

「え?」

腰まで届いている、クセのない綺麗で真っ黒な髪。その髪と対照的に真っ白な女の子らしい肌と華奢な身体と、

その身体を包んでいるワイシャツと赤いチェックはのスカート。ふわりと香ってくる女の子独特の優しくて甘い匂い。

そしてほんのりと朱く色付いた頬と、すこしだけ潤んだ瞳。

俺は何でこの子が俺と同じようにパパラッチしてるのかも、すぐそこに絶賛ラブシーン中のカップルがいることも忘れて、隣の女の子に見惚れてしまっていた。

「ど、どうか、した?」

「え?あ、ああ?ごめん、何だっけ?」

慌てて答えた。

「あ……う、うん……。さっきの『リア充爆ぜろ』って……」

「あぁ、いやさ。普通に青春してて、羨ましいなって思ってさ」

今回は普通に答えられた。

「羨ましい……?」

「内容は別に羨ましくもなんともないけど。憧れない?ああいう甘酸っぱい青春時代みたいなの」

さっきのリア充を指さす。

「甘酸っぱい、青春時代……この人達が……?」

少しだけ目を丸くしながら俺の指差す方に視線を移す。

「っっっっ!!!?!?」

「す、すまん!刺激が強かった!?」

隣の女の子は顔を真っ赤にして首を何度も縦にふっている。今時の子にしてはずいぶんと純情派な子なんだな。

丸聞こえの音声だけだとアレだけど、別に服脱いだり制服エ○チしてるわけでもないんだけど。

「はぁー、……顔が熱くなった……」

ぺたぺたと自分の頬に手を当てて、必死に火照りを冷ます仕草が可愛らしくて愛嬌がある。

でもこれだけ可愛い子だったら、告白なんて腐るほどされてるんだろうし、別にこんなの羨ましくなんてあるわけないか。

こっちは恋人どころか、転校したてで友達すらいないどん底スタートだってのに。なんだこの差は。

「いいよなぁ、リア充って威張れる奴らは。青春を目一杯に謳歌してるって感じで。」

「へ……?あ、うん……謳歌、してるよね……」

……………

「………あの、さ」

「あん?」

「そこの2人、そんなに羨ましい……?」

何故そんなことを?

「まぁね。ちょうど個人的な感傷に塩を塗りこまれた感じで」

「そう…」

「うん」

何でこんなところで、こんな可愛い子と、こんな状況で、こんな話をしてるんだろう。

ようやく転勤族の親から解放されて一人暮らしで落ち着けるっていうのに、こんな最低なスタートじゃ先が思いやられるな……。

「……ねぇ」

袖を引っ張られる感触で視線を隣の女の子に戻す。

「……………だったら、さ」

さっき以上に顔を赤くしながら、うっすらと涙が滲んだ瞳で俺を真っ直ぐに見つめている。

……うお、やばい。これは可愛い!

ってか正直こんな可愛い顔向けられると……すごい、勘違いとかしそうになるんだけど……。

「う、うん、な、に?」

何とか冷静を装って返事をすると、その子がゆっくりと瞬きをして決意と勇気のこもった目で俺を真っ直ぐに見つめてくる。

「……だったら……私が……私が、君をリア充にして上げる……。」

とんだ爆弾発言だ。

 

 




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