彼女は俺から離れない   作:Sylvia

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プロローグ(2)

「私が君をリア充にしてあげる」

「え?は?」

「君がリア充になれるよう、私が練習に付き合ってあげる……から……」

いや、ちょっと待てこの子は何を言っとるんじゃ

頬が桃みたいに染まってる〜可愛いなぁー

じゃねーよ!?

「……?」

目をみる。その瞳には嘘の欠片も見えないし、ましてや俺をからかっている様子なんか微塵もない。

僅かに震える唇からも、少し怯えたように、涙で滲んだ瞳からも、真っ直ぐな気持ちが伝わってくる。

こんな状況でこんな子に、こんな顔でこんなこと言われて、それを断れる男がいるだろうか。いや、いるわけがない!

だから俺は、名前も知らない目の前の女の子の申し出に

「ふ、不束者ですが、お願い、致します」

断ることができなかった。

 

その後の記憶は授業もふくめて、放課後まで綺麗に消えていた。ただ一つ覚えているのはあの女の子のとびっきりの可愛い笑顔だった。

 

 

 

「いよっしゃ!これで今日の授業終了のチャイムだ!ホームルームは面倒だからなし!以上はい、解散!!」

なんて適当な担任……

「あ、瀬田裕人は職員室に来い。渡すものがある。じゃ、先行ってるから早く来いよ」

………

「おいおい。真澄ちゃん、担任なのに誰よりも早く帰ったぞ……」

呆れたような声で言った。

我が叔母ながらなんて適当な。

じいちゃんばあちゃんの家で良く顔合わせてたし、家でのダメっぷりは知ってたけど仕事でもこうだったとは……。

クラスメイトは誰1人として戸惑うことなく、普通に帰り支度始めてるし、きっといつもこんな調子なんだろうなぁ。

「…にしても」

まさかあの子が同じクラスだったとは。

あれ、そういえば今まで気付かなかったな。

今周りを見渡して気づいた。

そして、さっき起こった昼のことを思い出して、彼女の方を横目で盗み見る。

「桜井柚季。見ての通り、整った見た目でファンが多いけど、無愛想なうえに携帯音楽プレーヤーと読書による『鉄の城』を崩せた者は今まで誰1人として存在しない」

急な説明に、声がした方を向く。

「え?」

「あんたが見惚れてるから解説してやったんだぞ、転校生の瀬田裕人?だから、情報料代わりにジュースでも奢ってくれないかい?」

黒に近い緑を後ろで結び、ポニーテールみたくしてる、女の子だった。

「いきなり転校生からカツアゲかよ山崎。お前は昔から変わらないなぁ。」

いや、知らない人だけどね?

「誰よそれ!すごいナチュラルに昔語りしてるけど、あたしとあんた初対面100%だからね!?」

なかなかいいツッコミだ。

「じゃあ初対面の相手にジュースせびる前に名乗ってくれ」

「名乗る前に適当に答えるあんたも充分凄いけどね」

ジト目で言われる。最もだ。

「親のせいで転校繰り返して来たからな。お陰で根なし草生活だったけど、こういう度胸だけはついたんだ」

気を使って話すよりも、最初から自分の地を出した方が早く仲良くなれると知ったってだけなんだけど。

でも、それで合わない人もいるわけで。そんな人とは気を使って付き合わないといけないし、悲しきかな転校族の処世術の知恵だ。

「でもまぁあんた気に入ったよ。そういう物怖じしないトコ。あたしは森崎綾香。お隣さんの席ね。よろしく」

「どうりで見たことある顔だと思ったよ。隣の席だったんだな」

「そこからかよ!見たことあるってか朝からずっと隣だったんですけど!

「森崎のツッコミいいなー。俺もたった今知り合ったとは思えないくらいだ」

「あたしにここまでツッコませるあんたのボケもなかなかのもんよ?ここまで物怖じ人見知りしない人も初めて見たし」

疲れたような声だ。俺にツッコならまだまだ体力は必要だぞ。

「ま、あたしのことは綾香でいいし、あたしもあんたのこと祐人って呼ぶから改めてよろしくね?楽しそうな人が転校してきて何より何より♪」

俺も今まで何度も転校してきて色んなお隣さんと会ったけど、今回のお隣さんはあけっぴろげで飾り気がなくて良い人っぽい。

スタートはなんか色々と訳わかんなかったけど、クラスメイトには恵まれた気がする。

「あ、でさ。さっきの…えーと、桜井さん、だっけ?あの子。無愛想でガードが『鉄の城』って言ってたけど……、本当にそんな完全合金Zな感じなの?」

「何だ、あたしのこと信じてないのかい?あのルックスだし、お近づきになりたい奴はそりゃあごまんといるけど、みーんな相手にもされないんだなコレが。1年のころは夢見た男どもが何人も特攻していったけど、誰1人として生還する者はいなくて、今じゃ高嶺の花とか孤高の姫って、みんな遠巻きに見てるのが関の山って感じさね。」

「ふぅん。無愛想な孤高の姫、ね」

昼休みのことを思い出すとそんなイメージがないんだよなぁ。

そりゃ、いまの桜井さんをみれば『鉄の城』とか言われたら、それはそれで納得してたかもしれないんだけど、ね。

「なーによ、桜井さんのこと狙ってんの?人がせーっかくありがたい忠告してあげたのにあんたも共同墓地に入るつもり?」

そんなつもりはないんだが

「そういう訳じゃ」

たしかにものすっごく可愛い子であるのは間違いないけど、狙ってるとか狙ってないとかそういう以前に、一体何がどうなってるのか自分でも分かってないしな……。

さっき出ていく時に一瞬だけこっち見たような気がするけど、そのまま帰っちゃったし、これは俺も帰るしかないよな……。

昼休みに言われたアレってやっぱり、転校生だからって

からかわれてただけなのか?

「転校してきたばっかの祐人に街でも案内してあげたかったけど、なんか真澄センセに呼び出されてたし、また今度だね」

ありがたい申し出をしてくれるもんだ。

「サンキュ。色々と助かる。これからよろしくな」

「おう、んじゃーねーまた明日」

 

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