映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
「なんで…魔女を倒して、なんでソウルジェムが出てくるのよ!!」
さやかの叫びがあたりに響く。確かに魔女は倒したはずだった。そしてグリーフシードが出てくるはずだったのに、そこに現れたのは魔法少女の変身アイテムであるソウルジェムであった。これには魔法少女ベテランのマミも魔法少女のことをよく知らないつぼみたちにも理解できずにいた。
「も、もしかして魔女が食べたソウルジェムってことは?」
「いえ、ここの魔女はグリーフシードから孵ってからすぐに私たちが倒したのよ、その前に戦ったという事はないはずよ」
「それじゃ、どういう事…?」
「それは…」
「驚いたよ、まさかグリーフシードからソウルジェムに戻すだなんて」
「!!」
つぼみたちが聞いたことのない声があたりに聞こえる。だが、プリキュア関係者は聞いたことがないが、魔法少女であるまどかたちにはそれに聞き覚えがあった。
「QB!!」
「やぁ久しぶりだね、まどか」
「この子がQBですか…」
QB、その姿はシプレたち妖精と同じくらいの大きさで、白いからだに赤い瞳、そして耳から生える毛が特徴的であった。マミは先ほどのQBの発言について意見を申す。
「QB…グリーフシードから戻す…ってどういう意味?」
「言葉の通りさ、濁りきってグリーフシードになったソウルジェムが戻るなんてこと、聞いたことも見たこともないってことだよ」
「ソウルジェムが…濁りきる?」
「ちょっと!それって、魔法少女のみんなが魔女になるってこと!?」
「そうだよ、初めましてだね来海えりか、それに花咲つぼみ」
「そん…な……」
まどかとさやかは衝撃の事実に言葉も出ず、マミに至っては女の子すわりでうつむいてしまった。彼女たちにかける言葉などなかった。なので、シプレやコフレがQBに異議を唱える。
「女の子を怪物にするだなんて、そんなの砂漠の使途と同じです!!」
「しょうがないじゃないか、そういうシステムなんだし聞かれなかったんだしさ」
「システムだからって、許せるはずないです!妖精の風上にも置けないです!!」
「残念だけれど、僕は妖精じゃなくて宇宙人だよ」
「宇宙人!?」
これがリアルでの未知との遭遇だと言うのなら、ある意味で歴史的になるだろう。だが、こんな生物と未知との遭遇をしても何らうれしくもない。
「…QBあなた先ほど聞かれなかったからと言ってましたけど、他にも隠していることがあるんですか?」
「例えばなんだい?」
「あなたがまどか達に言っていないことです!!」
「ソウルジェムが彼女たちの魂ってことかい?」
「たま…しい……」
マミが今にも消えそうな声でそうつぶやいた。ソウルジェムはその名前の通り、魂の宝石である。QBは少女の願いをかなえるとき、その人物の魂を抜いてそれをソウルジェムに変換するそうだ。だからもしソウルジェムを壊されると、肉体も死んでしまう。さらにソウルジェムがある一定の距離を離れても肉体は死んでしまうそうだ。
「ヒドイ…」
「こんなの…絶対おかしいよ……」
「君たちはいつだってそうだ。真実を話すと決まって同じ反応をするんだね」
「当たり前でしょうそんなの!!」
「僕達としてはむしろ感謝してもらいたいところだよ。魂と肉体を話すことで肉体が受けたダメージをダイレクトに魂に届くことも防いでるんだよ。肉体は外付けのハードウェアみたいなものだから、壊れてもすぐ修復できしさ」
「あなたは…人間を…女の子をなんだと思っているんですか!!」
「なんとも思っていないよ。僕には感情という物がないんだからさ」
「そんなの屁理屈にも…」
「キャッ!」
つぼみがまたQBに意見を言おうとするが、その後ろでまどかの悲鳴がした。何があったのかと振り向いてみると、まどかとさやかが黄色いリボン、マミのリボンに囚われ苦しそうにしている姿があった。
「マミさん、やめて…!」
「ソウルジェムが魔女を産むっていうんなら、皆死ぬしかないじゃない!!」
「!」
マミはその銃口をまどかの胸にあるソウルジェムに向け、引き金に指を添える。
「あなたも…私も!」
「だめです!!」
「!!」
つぼみは変身を解き、マミの銃口の先の弾道に立つ。
「お願い、どいて花咲さん…あなたは傷つけたくない」
「どきません、マミさんが変身を解くまで、私はどきません!」
「花咲さん…」
一触即発、だがどちらかというと不利なのはつぼみであった。もし今マミが銃を撃てばつぼみは死ぬ。そう、ただその引き金を今より引き絞れば、プリキュアの変身が解けているつぼみはあっさりと死んでしまう。それを分かっていてもつぼみは退こうとしなかった。
「あなたは、魔法少女じゃない…あなたは…人間なんでしょ」
「マミさんだって人間です!…たとえ心と体が離れていたとしても同じ人間です!!」
「…あなたには分からないのよ!ソウルジェムが魔女を産むという事がどういう意味か。私は…今までたくさんの魔法少女の命を奪って来たってことに…」
「でも、マミさんがやらなかったら、誰かにやられてたし、それに大勢の人が死ぬかもしれなかったんでしょ!」
「…」
えりかの言う通り、もしマミが魔女を倒さなくてもほかの魔法少女の手にかかったし、マミが倒していなかったら、自殺や行方不明になっていた人が大勢いた可能性だってあるのだ。大を救うために小を切り捨てるという事になるのかもしれない。しかし、小のために大、そして大の家族や親しい人たちの悲しい涙が流れなかったのはマミのおかげでもある。
「私が…私が誘ったから…ただ仲間が欲しかったから。私の自分勝手のせいで鹿目さんや美樹さんにこんな…辛い事を…押しつけて……こんな私に生きる意味」
「それは違います!!」
今度はまどかである。
「もし、マミさんに誘われなくても、私はいつか魔法少女になっていたはずです。それがちょっとだけ速くなっちゃっただけ…」
「鹿目さん…」
「それにマミさんがいなかったら私たちが初めて出会ったときに、死んじゃってた…マミさんが私達の命を救ってくれたんですよ!」
「美樹さん…」
二人がマミに出会ったのはほんの一週間前のことであった。魔女の結界に取り込まれ、使い魔に襲われる寸前だったところをマミが颯爽と現れ、まどか達を助けたのだ。もしマミがいなかったら二人はここにいなかった。もしマミが救わなかったら仁美や恭介といった二人の友人、そして二人の家族、多くの人間が悲しんだだろう。その悲しみを止めたのは紛れもなくマミであった。
「マミさんは今生きているんです。死んでいい人間なんて絶対いないです!!」
「意味なんて、後から探せばいいじゃないですか。だから……生きるのを…生きるのをあきらめないで下さい!!」
さやかとまどかのその言葉を聞き、マミの変身が解ける。と、同時にまどかたちを縛っていたリボンも溶け、まどかたちも変身を解く。それと同じタイミングで主を失った結界は崩れていった。
「ごめん、なさい…私…私ぃ……」
大粒の涙、それは哀しみの涙だったのか、それともQBに騙された事に気が付かなかった自分への怒りだったのか、悔しさだったのか、それとも…。その時、病院から看護師が出て来た。冷静になって周りを見ると、もうすでに夕方になっていた。
次回、ついにその時が来てしまう。