映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
1週間待たせた挙句にこれである。
そこらへんで大人たちの騒ぎ声が聞こえる。そこらじゅうで泥酔した酔っ払いが眠っている。子供たちが寝に入り、大人たちはその日あった嫌なことを吐き出すために騒ぎ、嘆き、そして自分の人生について考えだす。夜はまさしく大人の世界である。ではそんな世界に子供たちが出歩いていたらどう考えるか。答えは異常である。そもそもそれを止めようともしない親もどうかと思う。そんな街に二人の少女が歩いていた。と言っても町の中心から少し離れた場所にあるので、街と言ってしまうと仰々しく聴こえる。それでも真夜中に歩いていい理由にはならない。
「…」
「…」
其処を歩くのは一人は中学生、もう一人は小学生ぐらいの少女だった。その内、小学生ぐらいの少女がペタンと地面に座り込んでしまう。すると中学生ぐらいの少女が面倒くさそうに声をかける。
「どうしたゆま、もうへばったのか?」
「ううんまだへっちゃらだよ杏子、これくらい」
どう考えても疲れているようにしか見えないゆまと呼ばれた少女はだが、疲れたとは言わない。しかし、憔悴しているのは明らかであった。杏子と呼ばれた少女は頭をかきながらため息をつき。
「今日はもう魔女は出なさそうだし、これぐらいにしとくか…」
「うん!」
矢張り疲れていたのだろう。その言葉を聞いて嬉しそうにゆまが言う。だが、そこで杏子はあることに気が付いた。その近くに止まるべきホテルがなかったのだ。その日は魔女を探してあまりにも遠くまで来てしまった。いつもならその場合野宿をするのであるが、適当な場所が見当たらない。近くの公園の遊具の中という手もあるが、変な大人に絡まれてしまうことだってある。しかも今日は小学生のゆまも一緒のため、到底ろくでもないことにしかならないだろう。どうするかと考えていると、ふとある場所のことが思い浮かんだ。それは自分にとって嫌な記憶であり、そして思い出のある場所…。
「しょうがねぇか…」
彼女はゆまと一緒にその場所に向かった。そこは教会であった。とりあえずここなら屋根がある。屋根はあるが、窓ガラスが適度に割れているため風が入ってくるところは野宿と何ら変わらない。だが、それでも外で寝ることよりもましだった。
「ここって、教会?」
「あぁ、あたしの元の家だ」
「杏子の?」
「あぁ…」
どこからかろうそくを持ってきた杏子はそれを灯台に立てて火をつけた。そして杏子は階段に座るゆまの隣にゆっくりと座る。そんな杏子にゆまはあることを聞きたかった。だが、それは杏子には聞いてもらいたくない話かもしれなかった。だが、それでも好奇心を抑えられないのが子供の悪い癖でもあり、いい癖でもある。
「ねぇ、杏子はさ…どうして魔法少女になったの?」
「…聞きたいか?」
「うん…」
「…ろくでもない理由さ」
杏子の家は杏子、杏子の父、母、そして妹のモモの4人家族で父親は神父をしていた。信者もかなりいて、それなりに経営が成り立っていた。ある時、新しい時代のためには新しい教えが必要だと考えるようになった杏子の父は新しい宗教を立ち上げた。だが、彼が考えた宗教は、はたから見れば胡散臭い新興宗教として映り、信者たちはどんどんと彼の元から離れて行った。父の想いに共感していた杏子は「みんながおやじの話を、真面目に聞いてくれますように」という願いでQBと契約した。結果、道行く人たちは杏子の父親の話に耳を貸すようになり、次第に信者の数も増えて行った。そして杏子はその裏で魔法少女として戦った。そんな中で自分がかつて師匠と呼んだ人と出会い、その人にいろいろと学ばせてもらった。こうして表では杏子の父親が世界を救い、裏では杏子が世界を救うという狭い箱庭のような世界が彼女の中で広がっていった。だが、そんなある日、カラクリが父にばれてしまった。杏子の父は杏子を人を惑わす魔女だと罵声を浴びせ、勘当同然で家から追い出し、そして酒浸りになってしまう。この時の彼の心はどうだったのだろうか、自分の力が足りなかったことに嘆いていたのか、それとも、自分の娘が魔女になってしまったことに嘆いていたのか。今となっては理由ははっきりしない。なぜなら真相を聞く機会はすでに失われてしまったから。杏子にさらなる不幸が襲った。それが一家心中である。ある日、杏子が教会のことが気になってのぞいてみることにした。だが、そこにあったのは唯燃えさかる教会であった。杏子はすぐに家の中に入った。だが、そこにあったのは床に血まみれになって倒れている母と、首をつっている父だけだった。すぐさま残りの一人、モモのことを杏子は探した。だが彼女がいたと思われる子供部屋は杏子が見たときにはすでにつぶれていて、遺体すらも発見できなかった。こうして彼女は一人ぼっちになってしまい今に至る。もし杏子の妹が生きていればおそらくゆまと同じ年頃であっただろう。
「…あたしは、自己満足のせいで家族を不幸にしちまった…」
「そんなことない…杏子は…杏子は……」
「そんな顔するな、もうあたしは大丈夫だから」
「…うん」
「やぁ久しぶりだね佐倉杏子」
「!」
その時、後ろから一つの声が飛んだ。
「QBか…」
「QB?…このウサギみたいなのが?」
「!…ゆま、お前…」
杏子はゆまがQBを見ることができるという事に驚いた。
「前例があるとはいえ珍しいね、君みたいな歳の子が僕のことを認識できるだなんて…」
「え?」
一陣の風が灯台の上の火を揺らして消した。あたりは暗闇に包まれ、風見野から二人の姿は消えた。次の日の朝、教会に杏子を探しに女性が訪れたが、もちろん会うことはできなかった。
想像力と独創性のない自分が恨めしい。悩んだ挙句に消去しかけたある設定を入れることにしました。
次回、あのキャラの過去話ですが、どこからか非難受けそう…。