映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

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あなたの分まで生きて見せるから

 破裂音がマミの耳を貫いた。

 

「え?」

 

 目の前にいる使い魔が吹き飛ぶ。さらに続いて赤い閃光が目の前に降り立ち、多数の使い魔を切り裂いていく。一通り片付いた様子を見ると、ソレは自分を抱え上げ、えりかたちの元へと連れていく。どうやら使い魔が吹きとばした自分の銃を空中で捕まえて、それで使い魔を撃ちぬいたらしい。照準も安定しないであろうそれを成しえたのは紛れもなく熟練の技であると言えようか。

 

「マミさん、大丈夫!?」

「え、えぇ…」

「すぐに回復します!」

 

 そういってさやかは自身にさやかの固有魔法である回復の魔法をかける。みるみる内に傷口が塞がって、その内きれいさっぱりと無くなってしまった。

 

「たく、こんだけの魔法少女がいるってのに何手こずってんだよ」

 

 それは、マミを助けた少女の言葉である。さやかとえりか、そしてコフレは見たことがなかったが、マミだけはその少女の事を知っていた。

 

「佐倉さん…」

「久しぶりだな、マミ」

「マミさん、こいつのこと知って…」

「杏子~」

「!」

 

 さやかが少女の事を聞こうとしたその時、この部屋に一人の少女が入ってきた。年頃は見た目ではなぎさよりももっと下。幼稚園に通っているぐらいであろうか。

 

「なっ…おい!外で待ってろって言ったろ!」

「でも、杏子のことが心配で…」

 

 杏子と少女は、どうやら知り合いであるようだ。そしてさやかが怒気を含んでいるであろう言い方で杏子に言う。

 

「あんた、子供をこんなところにまで連れまわしてんの?」

「…仕方ないだろ、こいつが勝手についてきたんだから」

 

 さやかは正義感の強い人間である。今の少女の状況は、猛獣の檻の中に人間を連れ込んだようなものである。杏子は不可抗力であるように言うが、さやかはそういう状況にした杏子のことが許せなかった。

 

「だからって!」

「二人とも、喧嘩している場合じゃないです!」

「そうだよ、魔女を倒さないと!」

 

 コフレ、えりかに言われて口論は一時止まる。といってもさやかが一方的に迫っているだけなのだが。そして、杏子は当然であるがコフレの存在に疑問を持つ。

 

「なんだこいつ?QBの仲間か?」

「違うです!コフレは妖精です!あんなのと一緒にしないでください!」

「お、おう…」

 

 アレの本性を知らない人間からすれば、まぁそうなるだろう。しかし、アレの外道さを知っている人間、いや妖精からすればあの宇宙人と一緒にされるのはたまったもんではない。とはいえ、喧嘩している場合じゃないといった本人、いや本妖精が喧嘩腰になるのはどうだろう。そんなこんなしている合間にマミが少女に名前を聞く。

 

「あなた、名前は?」

「ゆまは…千歳ゆま……」

「そう…それじゃゆまちゃん、コフレちゃんと一緒に私の結界の中にいてね」

「うん…杏子、頑張ってね…」

「…あぁ」

 

 そしてゆまが結界の中に入ったことを見終えると、マミはまた魔女の方に向き直る。

 

「マミさん、大丈夫?」

「えぇ…」

 

 マミは先ほどの様子を思い出す。魔女が泣いたことによって銃を撃つことをためらってしまった。そのせいでピンチを招いてしまって、生きることから逃げようとしてしまった。もしも杏子がいなかったら自分はあのまま殺られていたことだろう。マミは一度ソウルジェムを確認する。やはり半分くらい濁っている。一時の間死という絶望を認識してしまったからだろう。これだけは、どんな魔法少女の魔法であってもどうにもならないものだ。マミは所持しているグリーフシードでその穢れを吸い取った。穢れを吸って黒く染まったグリーフシードを見てつぶやく。

 

「この子の命を奪っておいて…偽善者ぶるなんて……」

「え…」

「?」

 

 杏子にはその言葉の意味が分からなかった。が、えりかとさやかはそれが意味するものを知っていた。

 

「…行きましょうみんな…あの子を救うために…」

「…はい!」

「やるっしゅ!!」

「おい、あの子ってのは誰のことだ?」

「それは後でゆっくり話すから!」

 

 頭にハテナマークを浮かべた杏子を置いて、3人は飛び出していく。杏子は首をかしげて何が何だか分からないといった風な顔を浮かべてから3人についていく。

構図は先ほどと同じ、使い魔との対決がほとんどであったが、違うのはマミと杏子もまた戦闘に参加していることだ。ベテランである二人の参戦はえりかとさやかの心に余裕を持たせることに成功し、状況を優位に進めることができた。そしてまたマミが魔女の目の前に降り立つ。先ほどは、成功するかどうかわからず一か八かで攻撃しようとしていたが、今度は確信が持てる。その理由に挙げられるのは、魔女が泣いたことだ。マミは魔女が泣いたのは、一種の防衛反応のようなものではないかと考えていた。それまでどのような攻撃をしても通らなかったマミの攻撃、その時は一切泣かなかった魔女が、泣いたということは、威力の高い攻撃にはバリアは耐えられないということであろうと考えたのだ。マミはまたも巨大な砲台をセットする。

 

「今度こそ…行くわよ!」

 

 その時、また魔女が泣いた。

 

「マミさん!」

 

 えりかが叫ぶ。

 

「大丈夫…あなたを救うから…」

 

 マミは静かにそう言う。

 

「ティロ!」

 

 自分にはえりかたちプリキュアのようにグリーフシードをソウルジェムに回帰させる能力は持っていない。そのえりかたちもプリキュアに変身する能力を失ってしまった。だから自分たちには彼女を倒すしかその心を救う手段を持ち合わせていない。今までたくさんの魔女を倒してきたというのに今更その手を止めてどうなるというのだろう。彼女は進むしかない。いや、進まなければならないのだ。

 

(こんな形でしか止めることのできない私を許さないで)

 

 それが、引き金を引く覚悟(つみ)なのだから。

 

「フィナーレ!!」

 

 砲台から放たれた銃弾はマミの予想通りバリアを貫通し、魔女を貫いた。魔女を倒すにはただその一撃だけで十分足りていた。落書きの魔女を中心に鮮やかな色の奔流があたりを包み込む。そしてそれが収まった時、魔女がいた地点にはグリーフシードが落ちているだけであった。マミは地面に刺さったソレを手に取り、じっと見つめる。

 

「私、あなたの分まで生きて見せるから…あなたの命を使わせてね」

 

 マミは、手に持ったグリーフシードを両手で包み、胸にそっと抱き寄せる。次の瞬間、結界が崩れていく。主の死と同時に、その魔女にとっての楽園が消えていく。魔女にとっての最後の居場所が消滅していく。マミたちは元のトンネルへと戻ってきた。

 

「マミ…」

「ねぇ、ちょっと」

 

 戦いが終わったところを見越してさやかが杏子に話しかける。

 

「ん?」

「今度こそ教えてもらうからね、あんたとあの子の事」

 

 あの子、とは無論ゆまの事である。今はえりかとコフレと一緒に遊んでいる。

 

「だな、どうせしばらく世話になるんだ」

「へ?」

 

 杏子は変身を解いて懐から『うんまい棒』というお菓子を取り出して食べだす。コーンポタージュ味らしい。それをさらにもう一本取り出してさやかに向ける。

 

「食うかい?」

「…」

 

 どう対応していいのか分からなかったが、取りあえずもらうことにした。

 

 その時。頭の中に声が響いた。

 

『みんな聞こえる!?聞こえてたら返事をして!』

「まどか?」

 

 それは紛れもなく先ほど別れたばかりのまどかの声であった。なにやら焦っているようだ。

 

『どうしたの鹿目さん?』

『マミさん!大変なんです!早くしないとつぼみちゃんが殺されちゃう!』

『えっ?』

「つぼみ!!」

 

 その言葉を聞いたえりかは飛び出していく。続いてマミ達もワンテンポ遅れてまどかの元へと走り出す。一体つぼみ達の身に何があったというのだろうか。話は数分前に戻る。




現在、外伝的なものを書いている最中ではあるが、あるキャラのアイデンティティーを壊しかねなくて戦々恐々としている今日この頃。
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