映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
「ここは、魔女の結界の中のようですね…」
つぼみもこれを見るのは2回目ではあるが、その特徴的な世界観を見間違えるわけない。それはさておき、現在つぼみ達はある問題を抱えているのである。
「まどかとなぎさ…見当たらないです」
先ほどまで一緒にいたはずの二人、だがその姿が消失してしまった。つぼみは、自分の足元にあったグリーフシードに目が行ってしまったために、もう一つグリーフシードがあったことには気が付いていないのだ。つぼみは頭を悩ませる。進むべきか、退くべきか。プリキュア歴があるとはいえ、新人の魔法少女である自分が一人だけで魔女を倒そうとするのは危険が伴う。だからと言って魔女を放っておくことはできない。今自分が何とかしなければ、この結界の魔女による犠牲者が出てしまう恐れがあるのだ。やさしさとたくましさ、そして勇敢さを併せ持つつぼみに、選択肢などなかった。
「行きましょう、シプレ…魔女を倒しに」
「つぼみ、大丈夫ですか?」
「怖くないと言ったら嘘になります。でも…」
つぼみは指にはめてある指輪状のソウルジェムを宝石の形に変化させ、変身する。
「できることがあるのに、何もしないなんて…そんなのはいやです」
それが、彼女の覚悟である。生半可な気持ちで魔法少女になったわけじゃない。それが彼女花咲つぼみの強い意志なのである。
「はいです!」
シプレにはそれを止める気はなかった。それは、彼女との信頼関係がなせるものであった。二人は、結界の奥へと足を向け、歩き始めようとする。しかし、そんな彼女たちの熱意を鎮めるように冷たい声が彼女の耳に届く。
「花咲つぼみ…」
「え?」
その声に振り向くと、そこにいたのは見滝原の制服の色を暗くしたような服に身を包み、左手に大きな盾をつけた少女。よく見ると、宝石を手の甲に付けているのが見れる。よく見ると、その少女の顔には見覚えがあった。確かあれは、自分が見滝原にきた当日に…。
「暁美ほむら…さん?」
つぼみがえりかと一緒に職員室に行った時、初めてであった少女、転校生として自分たちと一緒にあの教室で自己紹介をした暁美ほむらだ。
「つぼみ、しっているですか?」
「はい、私たちが見滝原中学校に来たその日に転校してきた女の子です。ほむらも魔法少女…」
そう言いながらほむらのもとへ近づこうとする。が、
「…」
「え?」
ほむらはどこからか取り出した銃の銃口をつぼみに向け、眉一つ動かさないで言う。
「さよなら」
「え…」
「つぼみ!」
拳銃の引き金が引かれ弾が飛ぶ。それがスローモーションのように彼女には見えていた。
「くッ!!」
つぼみは地面に倒れこむ。拳銃から放たれる銃弾を避けることは普通の人間には不可能である。秒速500Mを超えているのだから、気が付いたときには胸を撃ちぬかれて死んでいてもおかしくはない。しかし。
「つぼみ!大丈夫ですか!」
「はい…腕をかすめましたけど、なんとか」
彼女は傷を負ったとはいえ避けた。それは、本能がなせる業というしかほかない。または、人間をやめたからこそできたものというべきか。
「チッ…外した」
それを見て、ほむらはつぼみにまたも銃を向ける。つぼみはその様子を見て、すぐにほむらに向けて声をかける。
「やめてくださいほむら!どうしてこんなことをするのですか!」
「どうして?」
ほむらは、冷たくその言葉を言い放つ。つぼみは立ち上がりながらそれを聞いた。
「この先には魔女がいるはずです…こうしている間にも誰かが…」
「確かにそうね、でもその前にあなただけは…」
「!」
重火器に疎いつぼみにも分かる。ほむらが取り出したものは紛れもなくマシンガンと呼ばれるものであると。
「倒させてもらう」
「つぼみ!」
「シプレは下がっていてください!!」
つぼみは、地面に武器のバラを刺してシプレの周りに結界を作る。先ほどマミ達との特訓の際にマミから教えられた技の一つである。シプレ、コフレが一緒についていくにあたって、彼らを守るための技を持っていた方がよいという判断のためである。
序盤の戦闘を有利に運んだのはほむらである。つぼみは、バラの茎をムチ状に長くして戦っていたのだが、ほむらには全く届かないでいた。彼女は、ムチがどこまで伸びるのかを数分戦闘するだけで把握し、射程外から飛び道具で攻撃していた。そして何よりの脅威であったのは…。
「…」
「また消え、ッ!!」
「つぼみ!!」
焼き印をいくつも背中に押し付けられているような激痛がつぼみを襲った。ほむらの放った銃弾がつぼみの背中に当たったのだ。中には貫通していったものもある。
「ごふっ…」
「つぼみ!」
「大丈夫…です!」
つぼみは身体を修復しようとしたが、銃弾の雨はその間にもつぼみを襲う。終わることのないそれを避けながら回復するということは困難であるため、痛覚を消すことで応急処置する。しかし、それは一種の麻薬のような物。使い続けると、己の心を破壊してしまう諸刃の剣。マミはそう言ってこれを禁断の技としてめったに使わないように言った。しかし、そんなことを気にしている余裕などなかった。それに痛覚を消したとしても、体に残る痛みの記憶が消えるわけでもなかった。それにしても、さっきから何なのだろうか。避けたと思ったら当たっていたり、またどこからともなく爆風が吹き荒れる。おそらく彼女の能力だと思うのだが、それが何なのかわからない。
「ハァ…ハァ…マミさんに教えられたこと…やってみます!」
つぼみは、ほむらの足元にダーツの矢のように薔薇を投げ込んでいく。瞬間、ほむらは消える。そして現れた先にも薔薇を投げ込む。そして消える。現れる。薔薇。消える。これを数回繰り返したとき、ほむらの周りを薔薇が囲む。
「行きます!!」
つぼみは地面に手を置き、茨を操作する。茨のほぼすべてがドーム状になってほむらを囲んでいく。その時である。
「っ!」
茨の動きが止まる。それどころか、周りのすべてが色を失い、まるで時が止まったかのように動かなくなった。その時、完全に囲む寸前の茨のドームのてっぺんからほむらが飛び出してくる。その足から、つぼみが絡ませた茨の足かせが地面の方まで伸びている。これが、マミの教えの一つである。得体のしれない敵と戦うときは、敵をいつでも拘束できるように準備しておくこと。そのための茨だったのだが、今回はそれが答えにつながったようだ。
「ちっ…」
ほむらは茨に銃口を向け、弾を放つ。次の瞬間、世界は色を取り戻し、そして茨が爆発する。
「クッ、いったい何が…え?」
その爆風にとっさに目を保護するために腕を顔の前に持ってくる。しかし、そのために視界が狭まり、彼女が接近していることに気が付かなかった。ほむらは、銃をつぼみの胸にあるソウルジェムに接する。その距離はゼロ。
「終わりね」
外す余地などみじんもなかった。
「あっ…」
はずだった。
「つぼみちゃん!!」
「!」
その声に意識を逸らされたほむらは一瞬引き金を引く指が遅くなる。つぼみはとっさにほむらの銃を右手で掃う。
「グフッ!」
「ちっ…」
ソウルジェムは何とか守ったが、とたんに息苦しくなる。痛みは消しているが、息苦しさは関係なしに彼女を襲う。
「ハッ、ハッ、ハッ…ゴブッ!」
おそらく、肺に穴が開いたのだろう。吸っても吸っても息苦しさは止まらない。それどころか、口の奥からは血があふれ出し、それが息を吸うという行為すらも邪魔して窒息しそうになる。ソウルジェムは無事ではあるが、このままだとつぼみは別の原因で死ぬことになるだろう。その時、つぼみに声をかけ結果的につぼみの命を救った少女が現れる。
「ほむら…ちゃん」
「…」
鹿目まどかが、この殺伐とした戦場に参戦した。