映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
「なにそれ!それじゃあいつただ自分が気に入らないって理由でつぼみを殺そうとしたの!?」
というのはさやかの意見である。現在彼女たちはマミのマンションで、ほむらについての話をしていた。因みにさやかとまどかは、家に今日は先輩の家で勉強会をするということを家に連絡していたそうだ。それにほむらや、キリカという少女の事も気になったらしい。
「えっとほむらちゃんはそう言っているんだけれど…」
「けど何よ」
「…私、ほむらちゃんがそんなに悪い子には見えないんだ…」
「私もです」
「つぼみですか?」
なぜ二人がそう思ったのか。それは、彼女の目が理由である。何かをあきらめたかのような目で、悲しそうな眼をしていた。なにか、今の状況に納得がいっていないような、そんな風に見えた。そしてつぼみは時の停止した世界で聞いていた。
「また、あなたを救えなかった…」
「え?」
「ほむらが時を止めていたときにまどかに言った言葉です」
確かに、そう言っていた。それもより一層の悲しい目をして…。
「また?」
「またってなにさ?」
「分かりません…それにほむらの行動にも納得のいかないことがあります」
「納得のいかない事?」
「…なぜほむらはまどかを殺そうとしなかったのでしょう…」
「え?」
確かに、時が止まった世界において人一人の命を奪うことなど簡単であろう。現につぼみは危うく殺されかけた。それなのになぜ、まどかの横を素通りするなどしたのだろう。まどかを殺す絶好のチャンスであったのにあの時銃を下したのか。つぼみは、そこにほむらの真意が隠されていると思っていた。
「でも、それはつぼみを殺すことを最優先にしていたからじゃない?」
「いくら私のことが憎いといっても、目の前にいる無防備な人間を見逃すでしょうか…。それにどちらかというと、まどかの方が魔力も大きいですし…魔法少女を淘汰することが大前提であるのなら、まどかの方を先に殺そうとするはずです」
つぼみの言う通り、じつは魔法少女としての素質に関してはまどかの方が一枚上手であった。マミやさやか、なぎさの魔法少女としての素質は同じくらいでそれから少し上に行ったぐらいのところにえりかがあり、つぼみとまどかはそれよりももっと上にいた。故に魔力の大きさもそれに比例しており、まどかの魔力量はつぼみのそれよりも若干高かったのだ。
「それは…」
「それにほむらは、まどかが結界の中に入ってきたときに動揺していたんです…」
「動揺?」
「はい…」
あの時、ほむらの銃口は確かにつぼみのソウルジェムを捉えていた。もしも、ほむらが引き金を引くのが遅れていなければつぼみは間違いなく死んでいただろう。では、なぜほむらは銃を撃てなかったのか、それは、まどかがつぼみに声をかけたから。その声に気を取られたために一瞬だけ引き金を引くのが遅れてしまったためであった。
「でもさ、やっぱり私はほむらの事許せない…」
「えりか…」
えりかにとっては、親友を殺されかけたのだから当然許せるはずがなかった。もし、まどかが行くのが遅れていたら、もし自分たちの到着が遅れていたら、つぼみなぎさ、そしてまどかのだれかが死んでいたかもしれないのだ。当然許せるはずがなかった。でも、とつぼみは言う。
「…私はちゃんと生きてます」
「つぼみ…」
「それだけでいいじゃないですか…だからほむらの事を恨むのは止めてください」
「…つぼみがいいって言うんならいいんだけど…」
周りが何と言おうと、結局のところ大事なのは当事者の意見である。当の本人がそういうのであったら、周りは何も言う資格がなくなってしまう。ということで、ほむらに関する話は終結した。と、ここでつぼみ達はあることに気が付く。
「そういえばマミさん達はどこに?」
先ほどから、マミとそれから杏子、ゆま、なぎさの姿が見当たらない4人はどこに行ったのだろうか。
「ゆまとなぎさはもう寝ちゃっているけれど…どこだろ?」
さすがに二人は夜更かしに耐えれなかったようだ。ゆまはまだ7歳であるし、なぎさもなぎさで10歳にして、生き返り、戦闘、死にかけるなどとどこの戦争に参加しているのだと思われるほどのことを1日、いやほとんど半日で行って疲れ切っていた。では、他の二人はどこにいるのだろうか。
「佐倉さん、そちらはどう?」
「あぁ、ちゃんと全部置いといたよ」
答えは、高いところである。マミと杏子はほむらが襲撃してくることも考え、マンションの周りに魔力にのみ反応する警報装置のようなものである。これで、ほむらやほかの魔法少女がつぼみとえりかを襲ってきても、すぐに対処することができる。それは別段機械的なものではなく、ほとんどマミの魔力で作られたものであるため、一般人がそれを見ることはできない。そして最後に、屋上にソレを置いて、これで下準備は完了である。
「これで大丈夫ね…」
「マミ」
杏子は、マミに声をかける。しかし、彼女は昔のように…。
「マミさんって呼んでくれてもいいのよ…昔のように」
「あたしには…もうその資格はないさ……」
杏子は、自分自身にはもうマミをそう呼ぶ権利はないと思っていた。あの日、一緒に魔法少女をやっていたのに、最後には勝手に別々の道を歩いて、マミを一人ぼっちにしてしまった。その負い目があったから。彼女本人が許したとしても、自分が許せなかったから。
「そう…ねぇあのゆまちゃんって子は…」
「あぁ、ちょっと前に成り行きで助けたのさ」
数日前、杏子が助けた少女ゆまは、両親を魔女に殺され、一人ぼっちになってしまった。そんな彼女を自分に重ね合わせたのか、杏子はゆまを保護したらしい。そして、昨夜、ゆまにも魔法少女としての素質があると分かった。ゆまは魔法少女になりたがっていたが、しかし、杏子は魔法少女がどれだけ辛いものなのかが分かっていた。魔法少女になるとろくでもないことになると。結局のところ、杏子の考えはあっていた。しかし、それは杏子の想像以上のものであったことも確かである。
「そうなの…」
「…土下座してでも、頼むつもりだった」
「え?」
「もしも、あたしが魔女を倒している間にゆまが魔法少女になっちまったら笑い話にもならないから…だから……」
そこまで来て、マミは杏子が何のために自分にあ会いに来たのかを察した。もしも、自分が魔女を倒している最中にQBが勧誘してきたらゆまを守り切れるはずがないと思ったから。だから、彼女はこの街に来たのだ。現時点で唯一信頼することができるマミのもとへ。
「いいのよ、佐倉さん」
「マミ…」
「おかえりなさい」
「…ただいま」
それは、2年前の二人の物語の続きだったのかもしれない。そのあとすぐ、マミと杏子はつぼみ達のもとに戻った。今後のことはまた明日話すとして、今日のところはもう寝るということとなった。
皆が眠りについた1時間後、少女が一人目を覚ました。なぎさである。
「…」
「眠れないのかい?」
「QB」
そんななぎさに声をかけたのはQBだった。なぎさは、QBに一つ聞きたいことがあった。
「QB、あの子は…のんちゃんはどうなったんですか?」
のんちゃんとは、なぎさの昔の友達である。のんちゃんの魔法少女としての素質はかなりの物であり、そのためにQBは彼女の勧誘をかなり念密にしていたようだった。
「なぎさが魔女となったすぐ後だよ…彼女が亡くなったのは」
「…そう、ですか…」
予想していたことであった。彼女の病気は重く、長くはない、そう思っていたから。
「ては…あの子は?」
「…前に言ったはずだ。彼女の素質はそれほどでもないって。もし彼女を魔法少女にしたとしてもすぐに魔女に殺られてエネルギーを取ることなんてできなかっただろう」
あの子、というのはもう一人の友達のことである。明るく、暖かい少女は当時魔法少女の素質はあるにはあるが、なぎさにすら遠く及ばず、QBを見ることもできなかった。
「彼女は今もあの街で暮らしている…もちろん魔法少女のことは知らずに…ね」
「そうですか…」
なぎさは思う、それでよかったのだと。こんな世界のことも知らないで生きるなんて今の自分には到底不可能なこと、しかし、彼女はそれを手に入れて、そして普通の生活をしている。それでいいのだ。だが、それと同時に考えてしまう。もしあの時、彼女が一緒に魔法少女になってくれていたら。お邪魔になっていたとしてもいい、もしあの子がそばにいてくれたなら。
「…」
「分からないな、いったい彼女のなにが君を変えるというんだい?」
「…なぎさにもわからないです…でも、あの子だったらきっと…」
あの子だったら、つぼみやまどかがしてくれたように自分を励ましてくれていただろう。もしかしたら、自分は魔女にならなくてすんだのかと知れない。なぎさは、彼女にそれほどの力があると信じていた。
「分からないな、君たち人間という生き物は…」
「QBも…いつかわかるときが来るといいですね」
「分かるはずないさ…僕たちには感情なんて…」
『QB、あなたにもいつか、分かるときが来るよ』
「…」
まただ、彼女の顔が浮かび上がる。何故なのか、何故和久のぞみの最期が思い出されるのだろう。QBは、自身に起こっているものがなんなのか分かっていなかった。QBには知るよしもなかった、それが…。
原作ではどうだったのかはわかりませんが、取りあえずこの小説の中では、マミと杏子が一緒に戦っていた時期は2年前ということにしています。
あと次回、製作中の外伝の2話を先行投稿した後、魔法少女の日常編に入ります。そんな長いことはないでしょうが、オリジナルの魔女が3、4体出てきます。(外伝に出てくる魔女以外全部モチーフのキャラがいるのですが、ふざけんなと思われる方がいらっしゃると思います。しかし、せめて温かい目でご覧ください)