映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
つぼみとまどかの二人は現在、モール3Fの女子トイレの中にいた。無論連れションなどというかわいいものではない。彼女たちは、魔女を探しに来たのだ。しかし、そのためには邪魔なものがあった。客である。女の子二人が、宝石を手の平に乗せて、モール中をうろうろする、しかも夜遅くにである。それは、もはや奇行と言われてもおかしくないものである。では、客がまったく来ないバックスペース、つまり立ち入り禁止の店の裏側を回ればいいと考える者もいるだろうが、それではさすがに大きなモールの中すべてを回ることなどできないだろう。そのため、二人は閉店時間までトイレの中で待ってから、行動するということになったのだ。その時間まであと14分ある。物音を立てると、中に人がいると気が付かれるため、二人は念話で時間をつぶすことにした。
『へぇ~あゆみちゃんって子は、自分の力でプリキュアになったんだ…」
『はい、妖精の力をまったく借りないで変身したのはあゆみちゃんだけなんです』
今話しているのは、つぼみの友達の一人、坂上あゆみの事であった。日本中にプリキュアは数あれど、その中でも妖精の力、または異世界由来の変身道具を微塵も借りないでプリキュアになったのは彼女だけであった。では、どうやって彼女はプリキュアになったのか、言えるとしたらただ一つ、奇跡である。一人の友達を助けたいというただそれだけのために彼女はプリキュアになった。そのため、彼女だけは特別なプリキュアであると言える。
『どうしてその子や…つぼみちゃんたちはプリキュアになれたんだろうね…』
『まどか…』
一言いえば、運である。つぼみやえりかがであったのがシプレやコフレであって、そしてまどか達が遭遇したのがQBだった、ただそれだけの違いである。だから、その逆もあり得たのかもしれない。まどか達がシプレ、コフレに出会っていた可能性もあった。つぼみ達がQBに出会っていた可能性もあった。少しの違いだけですべてが変わってしまう、人生とは恐ろしいものである。
『あっ…』
『灯りが消えましたね…』
そしてつぼみはスマートフォンを見る。時刻はちょうど午後11時、モールの閉店時刻であった。
「行こう、つぼみちゃん」
「まどか」
そして二人は、入室していたトイレの個室から出ようとしていた。その時、つぼみがまどかを止め、そして言った。
「…私の家、花屋さんなんです」
「え?」
「温室もあって、そこにあるリュウゼツランがきれいだったんです」
「リュウゼツラン?」
「はい」
リュウゼツラン、別名万年蘭と言われるそれは、花開くのに10年から最悪数十年はかかると言われており、さらに一度花開くと枯れて死んでしまうのである。
「一度花開いて死んでしまうなんて…悲しい花だね」
「私はそうは思いません」
「え?」
リュウゼツランは確かに一度花開いただけで枯れてしまう。しかし、枯れる寸前に子株という物を根元に作り、次の世代にしっかりと受け継がれていく。儚い、しかし尊いものであるのだ。
「一回の開花のために自分の人生をすべて使って、後のために種を残していく…リュウゼツランは、そんなけなげでたくましい花なんです」
「そうなんだ…」
「魔法少女とプリキュアも同じかもしれません」
「え?」
「人生の中で一度だけ大輪の花を咲かせて、そして次の世代へと受け継がれていく。それは、魔法少女もプリキュアも変わらない事です」
「…」
プリキュアも魔法少女も、昔があったからこそ今の自分たちがいる。過去が守ってくれたからこそ現在があり、そして現在を守ることによって未来を創ることができる。そのチャンスがあるのは魔法少女もプリキュアも同じことであるのだ。
「もう、私の家のリュウゼツランは花を咲かせて枯れてしまいましたけど、いつかみんなで一緒にリュウゼツランが花を咲かせるところを見ましょう」
「…うん、行こう…いつか」
二人の約束が果たされる時が来るのだろうか。私にはわからない。誰にも分らない。だが一つ言えることは、つぼみのその言葉のおかげで暗かった雰囲気が良くなったということである。
「では、行きましょうまどか」
「うん!」
そして二人は暗闇の中に向かっていった。今その場にある光は避難誘導のための緑のランプ、それからまどかのソウルジェムのピンク色の光、それから遠くからこちらに向かってくる白い光だけである。
「白い光?」
「あ…あれって…」
コツコツコツ、足音がどんどんと近づいてい来るのが分かる。コツコツコツ、白い光も大きくなってくる。コツコツコツ…。
「ん?なんだあの光…」
カッカッカッ。足音が速くなった。どうやらソウルジェムの淡い光を見て向かってきているらしい。間違いない。
『警備員だ…』
『逃げましょうまどか』
『うん!』
それの存在を忘れていた。そもそもここはかなり大きな商業施設である。警備員の一人や二人いない方がおかしいだろう。
「あっ、消えた?」
二人は、警備員の持つ懐中電灯の光から逃れるように逆方向へと走っていく。しかし、その方向にも警備員が一人、否よく見ると二人いるのかだろうか。やはり、閉店まで待つという選択は間違いだっただろうか。しかし後悔しても仕方がない。二人一緒にいると見つかる可能性が高くなる。そのため、魔女に遭遇したら念話でもう一方を呼ぶということで二手に分かれることになった。それから数分後、つぼみは一人一階にあるおもちゃ屋に来ていた。
「やっぱり、真っ暗なのは少し怖いですね…」
夜のおもちゃ屋というのは意外と恐ろしい。何がというと、色々である。先ほどは、後ろにあった大きなぬいぐるみがいきなり倒れてきて危うく叫び声を挙げそうになった。とにかく、その場所に何もいないだろうと思って離れようとした時であった。
「!」
手のひらのソウルジェムが光りだした。間違いない、近くに魔女の結界がある。少し歩く。光りがもっと強くなる。すぐ近くにあるようだ。そして少し歩く、しかし光が小さくなる。通り過ぎたのだろうか。来た道を戻る。光が大きくなる。間違いなく結界はそこにあるのだ。しかし、見たところ、入口らしきものはなかった。どういうことだろう。その時、目に入った物は、先ほどの大きなぬいぐるみである。
「まさか…」
ぬいぐるみの後ろの壁を除いてみる。あった。その魔女の紋章らしきものが書かれている。ここが結界の入口だろう。
『まどか、結界の入口を見つけました』
つぼみはすぐにまどかへと念話を送る。まどかは、それにすぐさま答えた。
『本当?どこ?』
『1Fのおもちゃ屋、大きなぬいぐるみの後ろです』
『分かった、すぐ行く…でも時間がかかるかも』
『分かりました…では…!』
『どうしたの?』
コツコツコツ、つぼみの耳に聞こえてきたのはあの音であった。
『どうやら、警備の人が近くに来ているようです』
『え、大丈夫なの?』
『…危険ですけれど、先に結界の中に入っています』
『…分かった、でも無理しないでね』
『分かっています。では、またあとで』
『うん』
そして、つぼみは結界にソウルジェムをかざし…。
「はぁ~…時給いいからって警備員なんてやるんじゃなかったかな…」
彼は、いわゆるアルバイトである。だが、それと同時に暗所恐怖症であった。しかし悲しいかな、チラシに乗っていた破格の時給に蜜に集まるハチのよう吸い寄せられ、このアルバイトを選んでしまった。因みに、なぜ時給が高かったかというと、このモールにはある噂があったからだ。それは、夜になると幽霊が出るというよくあるものだ。前任の警備員が見たらしい。夜深く、当たり前だが、人っ子一人いなくなった店内を周っていたときのことだ。ふと、あるお店から強烈な黄色い光を見たらしい。なんだろうと行ってみる物の、そこには誰もおらず、なぜそのような光が出たのか分からなかったそうだ。その光はそれから何度も見るようになり、次第にそれは幽霊だ、お化けだ、妖怪だなんて言う者が現れ、何やかんやあって警備員全員が辞めてしまったそうだ。そのため、店側は困りはて、とんでもない額の時給をちらつかせて人を集めたらしい。そんな場所だって知っていたら絶対にこんなアルバイトしない。それにしてもさっきのピンク色の光は何だったのだろう。行っても結局は何もいなかったが、もしかしてあれは幽霊だったのだろうか。だが、幽霊は黄色だったはずだ。新種の幽霊なのだろうか。ほら、今もまたピンク色の光がおもちゃ屋から…。
「え?」
突然のその光、彼はすぐにおもちゃ屋のへと向かった。しかし、そこには何もなく、ただただぬいぐるみが並んでいるだけであった。では、あの光は何だったのだろうか。そして、彼の下した結論は…。
「うん、疲れているんだな…きっとこの頃寝ていないからだ…きっとそうだ」
…警備員としてその判断はどうかと思う。だが、彼のお陰でつぼみたちが見つからなかったと考えると、その判断は正しかったと言っておこう。
…なんでリュウゼツラン?と思われた方いらっしゃると思われますが、これが私のコミュニケーション能力の限界です。
次回、オリジナル魔女登場。とりあえずある程度の情報を…。
ヌイグルミの魔女
デリツィア
その性質は独歩
次の回の一番最初の、結界恒例謎ポエムであれか、と思う人が出てくるははず。言っときますが、平行世界の同一人物ですから。…便利な言葉である。