映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
「このっ!このっ!!どいてよ!!」
さやかは、また一体使い魔を倒した。だが、遠くからはまだまだ兵隊型の使い魔が出現する。というか、なんだあの使い魔の恰好は。青を主体とした服。持っている武器はそれぞれ違うが、銃やブーメラン、バット、刀にヌンチャクにボウガン。だがそれら全てが何だかおもちゃのようにも見える。まるで、子供時代から全く変わりのない大人のようだ。
「こんなところで、こいつらの相手をしてる場合じゃないのに…」
さやかは焦っていた。掴まってしまった杏子が、今もあの場所にいるのか限らない。もしかしたらどこかに連れ去られてしまったか可能性だってある。今は大丈夫かもしれないが、いづれそうなってしまう可能性だってある。それに、先ほど見たが、杏子のソウルジェムは戦闘の後であることもあって濁りがあった。すぐに、と言うわけではないだろうがしかし、放って置いたらいずれ魔女となってしまうかもしれない。杏子を早く助けなければ。
「ッ!杏子聞こえてる!?聞こえたら返事をして!!」
さやかは叫んだ。伝わっているかどうかは分からないが、それでも叫ぶしかなかった。さやかの声は、遠くまで響く。果たして、彼女の友を思うその声は届いているのだろうか。
「ん?」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「え…いや、なんでもない」
杏子は、誰かから呼ばれたような気がした。だが、気のせいだろう。父と母は、今日も信者の人達に自分の教えを説教している。いつもは、自分とモモも手伝いをしているのだが、今日は二人で十分だから、遊んできていいと言われたため、こうして公園まで遊びに来た。
「ねぇ、お姉ちゃん?」
「ん?なんだ?」
「お姉ちゃん、今楽しい?」
「当たり前だろ。父さんや母さん、モモがいて、楽しくないわけないじゃないか」
モモからの不意な質問に、しかし当たり前のように杏子はそう答えた。当たり前。そうだ、当たり前だ。父さん、母さん、モモ、家族がいて、楽しくないわけ、うれしくないわけないじゃないか。
「お姉ちゃんは、パパの事どう思っているの?」
「好きだよ…優しくて、行ってくれることは全部正しくて…」
「ママのことは?」
「もちろん好きさ。おいしい料理を作ってくれるし、私の事を暖かく迎えてくれるしさ」
「じゃあ、モモの事は?」
「…一体どうしたんだよ、モモ」
「答えて」
モモのその言葉に、杏子は頭を掻きながら答える。
「…私は…モモといつまでも一緒にいたい。モモはまだ小さいから、私がそばにいないといけないからな」
「本当に、一緒にいてくれるの?」
「もちろん」
「…よかった」
モモは、その答えに満面の笑みで答えた。日が暮れてきた。早く家に帰らなければ、流石に父さんに怒られてしまう。真赤な夕日が、二人を照らし、影ができる。長い一つの影。
「早く帰ろう!お姉ちゃん!」
「あぁ、帰ろう…」
杏子は、差し出されたモモの手を取ろうとする。杏子は、幸せを感じていた。
『杏子…』
「え?」
どこからか、か細い声が聞こえた。聞き覚えのない、しかし聞いたことのある声だ。誰だろう。
「お姉ちゃん?」
「…声が…」
「何言ってるの?早く帰ろうよ!ママが晩御飯を作って待ってるよ!」
「…あ、あぁ…」
また、その手を取ろうとする。しかし、また声が聞こえた。
『杏子!!』
今度はまた別の声。またも聞き覚えのない、しかし聞いたことのある声だ。一体先ほどから何なのだろうか。
「お姉ちゃん!」
モモの懐かしい声が、耳に入る。待った。懐かしい?どうして。一緒に暮らしているのに。いや、違う。今の私が、一緒に暮らしているのは…。
『杏子、無事に帰ってきて…』
「ゆ…ま…」
ゆまだ。千歳ゆまの声だ。師匠である巴マミの家で一緒に暮らしているゆま。師匠、何の?そうだ、魔法少女。私は魔法少女なんだ。その時、また声が聞こえる。
『杏子!!』
「さ…やか…」
『戻ってきて杏子!!』
「さやか…」
『まだ、私あんたに教わってない事いっぱいあるんだから!!』
「…美樹…さやか」
『私が!迎えに行くから!あんたは帰ってきなさいよ!!』
「…どっちだよ、たくよ…」
その声は、最初は小さかった。だが、言葉がつながっていくたびに大きくなって、杏子の耳にうるさいほどに聞こえる。そうだ、私は魔法少女。一つの願いを代償に血なまぐさい戦いの世界に足を踏み入れてしまった馬鹿な少女。そのせいで自分は、父を母をそして…モモを亡くした。そうか、だから幸せを感じていたのか。家族がいる幸せ、それは普通に生活していてもそれほど感じられない事だ。失ったからこそ初めて気づくもの。それは、ゆまもまた同じ。自分たちは家族を失った。そして、当たり前の生活という物を失った。だから、家族がいる当たり前がこんなにも楽しく感じたのだ。けど、もういい…。
『帰ってこい!佐倉杏子ぉ!!これは、命令だ!!!』
杏子はその言葉を聞いて先ほどの約束を思い出した。魔女を倒した方の命令を一つ聞くと言うもの。約束したことだ。だったら、守らなければ女が廃るという者だろう。
「悪いな、モモ…」
「…」
「私、行かなくちゃならない場所があるんだ」
「本当に?本当に、お姉ちゃんが行かなくちゃならないの?」
「あぁ…」
後ろ髪引かれる思いがする。しかし、それでも彼女は行かなければならない。ここで、家族4人暮らしていくことも選択肢の中にはあるだろう。だが、それは逃げにしかならない。いや、逃げどころじゃない。それは罪の否定だ。自分の行いによって死んでしまった家族への罪。その贖罪すらもできない。こんなところでリタイアできない。それに…。
『杏子…』
「待っていてくれる奴と…」
右手を上げる。また、たくさんの声がした。
『佐倉さん』『杏子ちゃん!』『『杏子』』『『『杏子!』』』
「私の事を心配してくれる仲間が…」
『杏子おぉぉぉ!!!』
「いるからな」
手を旋回させて、手の甲の側を見る。中指には、ちゃんとソレがあった。自分の罪の証が、赤く煌めきを放っている。
「分かってくれ…モモ…」
杏子は、光に包まれて、変身する。その瞬間、周りにあった公園は無くなり、あるのはただ白い空間と、モモの姿のみ。そして、それすらも光に飲まれて見えなくなっていく。彼女が消える瞬間、その表情は…。
「…」
笑っているようにも見えた。
「杏子おぉぉぉ!!!」
さやかは、また一体使い魔を切り捨てる。これで何体目なのだろうか。15体目あたりからは数えていない。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
だが、それでも彼女の周囲の使い魔はの数は減らなかった。いや、むしろ増えているのではないか。さやかは、剣を杖のように地面に突き刺し、体を支える。このまま戦い続けてはいづれ押し切られてしまうだろう。まず体力の前に手中力が切れてしまう。人間の集中力と言うのは33分までしか持たないよ言われている。その時間を越えてしまうと、集中が切れてしまうらしいのだが、すでにそれ以上の時間を戦っているはずのさやかの集中力がここまで持っているのは、ひとえに仲間を救いたいという執念だけである。しかし、それももはや限界にまで達しようとしていた。
「杏、子…」
このままでは彼女を助ける前に自分が死んでしまうかもしれない。だが、杏子を助けたい、杏子を待っているゆまのために。あぁ、そうか。もしかしてこれが自分の正義なのかもしれない。あの工場で自殺しようとしていた人達にだって家族がいたはずだ、天涯孤独だと思っていても、友がいたはずだ。マミと同じ正義。最初に会った時、マミもまた、自分とまどかを助けてくれた。そのおかげで、自分はまた家族に会うことができた。その嬉しさは、表現できるものじゃなかった。玄関の扉を開けて、今日は少し遅かったわねと母に言われて、御飯がすでに冷めているといいながら電子レンジで温めてくれた。父はいつも通りテレビを見ていて、遅かったじゃないか、彼氏でもできたかって笑ってて。あぁ、帰ってこれてよかった。そう思った。あの暖かい世界が、自分の帰るべき場所なのだと…そう思った。マミのおかげでそれに気づかせてもらった。そうだ、だから自分も守る。自分を待っていてくれる人の元にその人を返すために。それが、自分の正義となった。
「私は…負けない!杏子を…返せ!!!」
さやかは、地面に刺した剣を引き抜き、さらにもう一本剣を出して二刀の刀を持つ。諦めない。諦められない。諦めるか。さやかは、また使い魔に立ち向かおうとした。その時だ。
「え?」
杏子が連れ去られた家から赤い閃光と共に一つの影が飛び出した。
「何!?」
上空に跳んだ閃光は自分の元へと降りてこようとしていた。夕日を背にしているため逆光となっており、その形しか分からない。だが、さやかにはそれが誰なのか一目瞭然であった。その手に持った槍、なびいているポニーテール。そして赤い光。それらは、ある少女の特徴だった。そして、ソレは言う。
「さやか!伏せろ!!」
「杏子!」
さやかは、その言葉を聞くと、その場に伏せる。そして、杏子が自分の隣に降り、槍を振るうと、それは多節棍へと変化する。多節棍はもともと3本の棒をひもや鎖、金属などで一直線になるように連結した武器の三節棍という物があり、ヌンチャクの棒が3つになった形と言えば簡単であるそれが基礎と言ってもいい。だが、杏子のそれは、3つどころでなく数多くの棒が付いており通常、普通に使用することもままならないほど扱いの難しい武器だ。だが、杏子の場合はそれを魔法で操ることによっていとも簡単に扱っているのだ。多節棍はさやかの上を素通りし、周辺の使い魔十数体を一気に吹き飛ばした。杏子は、さやかと背中合わせになって立つ。
「よかった杏子…無事だったんだ…」
「あぁ…ありがとう」
「え?」
杏子のその言葉が小さく、さやかにはよく聞こえなかった。だが、聞こえていたとしても耳を疑う発言だったとさやかは思っただろう。
「いや、なんでもない。魔女は?」
「えっと…ううん、まだ見ていない…」
と、さやかは言う。そういえば、今のところ使い魔たちのほかに魔女らしきものは見ていなかった。杏子が連れ去られた家から杏子を捕らえるためのナニカが出てきたことから、それが魔女の一部であるという可能性もある。だが、その家も杏子によってはすでに破壊されており、そこに何かがいたという気配はない。では、魔女はどこにいるのだろうか。
「そうか…ッ!」
その時、杏子の目に夕日の赤い光がはいる。夕日…そういえば先ほどのあの世界にも夕日があった。待てよ、確かあの夕日は、影を作っていたが、一つだけ、幻想のモモの影しか映していなかった。そして、それは今も同じく、使い魔たちの下には影が作られているが自分とさやかの影はない。
「まさか…」
杏子の中にある考えが浮かんだ。もしかしたら、魔女の正体は…。
「杏子?」
「はぁッ!」
杏子は、手に持った槍をある方向へと投擲した。さやかの目には、その方向に何かがあるようには見えなかった。いや、違う。向かっている途中じゃない。向かう先にあるもの、それは…。
「太陽?」
真赤に光り輝く太陽であった。しかし、槍は太陽にクリーンヒットせず、かするのみであった。刺さる直前で動いたのだ。あれが太陽であるとしたらおかしいというしかないほどの動きだ。
「あの動き…」
「間違いない!あれが魔女だ!」
魔女の正体、それは誰でもない。空にいつも浮かんでいる、しかし魔女の結界の中にあるというのは少しおかしい太陽。皆の心にいつも浮かび、そしてどんな人間でも明るく照らしだす太陽が魔女だったのだ。
「行くぞ!」
「りょうかいッ!」
杏子、そしてさやかは跳び、一度使い魔の頭を土台にしてさらに飛距離を稼ぐ。そして、空中で足元に魔法陣を出現させそれを足掛かりにしてさらに魔女へと近づいていく。だが、そうやすやすと近づけさせてたまるかと、魔女は新たな使い魔を出現させる。
「カラス!?」
「使い魔だ!」
カラスの形をした使い魔が多数出現、こちらに向かってくる。ここまでの防衛策を持ってくるということは、そう言うことなのだろう。なんとしても魔女のところまでいかなくてはならない。
「私が先行する!さやかは後から来てくれ!」
「杏子!?」
と、言って杏子は使い魔の大群へと突撃していく。使い魔は、杏子に向けてそれぞれ突撃していく。その内一体が杏子へと激突する。
「杏子!」
さやかは、友の事を思い叫ぶ。だが、それは杞憂だった。杏子の身体が消えたのだ。
「消えた!?」
まるで蜃気楼のように揺らめいて消えた。と、思ったら、また別の場所から杏子が出現する。それにまたも使い魔が衝突する。しかし、それもまた消え、別の場所から杏子が、いや2人いる。よく見たら4人いるのだろうか。なんだ、おかしい。
「あっちにも杏子、こっちにも杏子…どれが杏子!?」
さやか、そして使い魔は混乱する。現れた杏子の数の多さに使い魔はどれを攻撃していいのか分からず、それぞれの杏子に向かって密集していた使い魔がばらけてしまった。
「そこ!」
結果、使い魔の密度の低くなる場所ができ、さやかはその穴から先へと進んでいくことができた。
「杏子は!?」
そう、杏子はどうなっただろうか。あの使い魔の群れにやられてしまったのではないだろうか。心配になり後ろを向く。使い魔は、今も杏子を追っているようだ。だが、どれもこれも本物の杏子を倒したという様子ではない。
「こっちだ、さやか」
「え!?」
突然のその声は、前から聞こえた。見ると、そこには杏子の姿。
「杏子!?一体どうして」
「幻術だよ。私の固有魔法…マミには『ロッソ・ファンタズマ』って名前付けられてるけどな」
「ロッソファンタズマ?」
要は影分身の術である。幻術によって、自分の分身を数体作り出し、相手を惑わすことのできる魔法だ。この技は、杏子が幻術を封印したことにより使われなくなった能力だ。使おうとすると、死んでしまった家族の顔が思い浮かぶから、それが使わなくなった理由だ。だが幻とは言え、改めて家族と向き合ったことによって、杏子の中で何かが変わった感覚があった。だから、封印していたそれを復活させることができたのだろう。
ともかく、杏子の分身に使い魔がつられていく中、杏子自身とさやかは無防備な魔女へと向かう。
「フッ!」
「ハァ!!」
途中、散発的ながらも使い魔は飛び出してい来るが、一体一体の力は弱い為、彼女あっちの敵ではなく、瞬く間に駆逐される。そして、先に魔女の所にたどり着いたのは杏子であった。杏子は、魔女に向かって言う。
「ありがとな、家族の夢…見せてくれて。おかげで決心した…これからも私はっ」
杏子は思う。自分は、家族の命を奪ったその罪を背負っているつもりだった。だが違う。本当は逃げていただけなのだ。ロッソ・ファンタズマが出なくなったのはそのためだ。自分の罪から逃げたから、幻術という魔法を使用することができなかった。だが、今は違う。家族の、モモの幻想と会話したからこそ、自分は罪を背負う決心がついた。彼女は言う。
「生き続けるさ」
杏子は、魔女に槍を突きたてた。
「う、うぅん…」
志筑仁美の目が覚めた。ここはどこだろうか。自分は塾へと向かっていたはずなのに、何故このような場所で寝ていたのだろう。時計を見る。今から向かってももう間に合うまい。そういえば、声を聴いた気がする。自分の心に直接語り掛けるような、そんな声が。
「いったい、私はどうしてしまったのでしょう…」
その時、どこか遠くから、いや意外と近いところだろう場所から声が聞こえてきた。
「なんでさ、なんでも命令聞くって言ったじゃん」
「あぁ、だから帰ってきただろ?」
「げぇ、あれ聞いてたんだ…」
「後、もう一匹の魔女倒したの私だから、権利は一つ私が持ってるから」
「うっ…」
女の子2人だ。一人は聞いたことのない声、だけれど、一人はよく知っている女の子の声。仁美は立ち上がると直ちにその声が聞こえる工場の中へとこっそりと入った。扉には鍵がかかっていなかったため、難なく入ることができた。暗闇ではある物の、上の窓から入る月の光、それから目をつぶっていたことによって暗闇に慣れていたことによって、暗いという風には思えなかった。だがそのために、彼女にとって衝撃的な光景を目撃する。地面にうつぶせになって倒れている人達である。
「だ、大丈夫ですか!」
仁美は、一番近くで倒れている男性に声をかける。どうやら生きてはいるようだ。仁美はそれに安心すると、音もたてずに工場の奥へと向かう。そして、一つの扉があった。この場所は先ほど自分が目覚めた場所に一番近い部屋である。ドアノブを回し、ゆっくりとドアを開ける。そして、彼女の目に映ったのは…。
「さやかさん?」
「えっと…め、目が覚めたんだ…」
「今の声、仁美?」
「あぁ、魔女を倒したから目が覚めたんだろ」
杏子、さやかは仁美が倒れている男性に声をかけたときの声を聴いた。さやかは、その声を聴いて少し安心する。もしかしたらまだ魔女がいるかもしれないと考えていたからだ。2体目の魔女が現れたときでさえ何も気配がしなかった。だから、まさかとは思うが3体目が隠れているのではないか。そう考えていたのだ。だからこそ、仁美の元気な声を聴いて、さやか自身も少し元気が戻った。
「さやか、窓から逃げるぞ。あの嬢ちゃんに見つかったら面倒なことになる」
「…私は残る」
杏子は、窓から逃げるように促すがしかし、さやかはそれには従わなかった。
「はっ?何言ってんだよ」
「私…仁美からずっと逃げてたのかもしれない…私が仁美の心のよりどころになってたのに…」
「けど、嬢ちゃんが心を病んだのは、塾とか習い事のためだろ?」
「もしも、私がそれに気が付いていたら…仁美が魔女に操られていなかったかもしれない…」
さやかは、もうこれ以上仁美をごまかすのは、彼女自身の、そして自分たちのためにも限界であると思った。それに、もしも自分たちが魔女との戦いの中で死んでしまった時、仁美は自分の本当の死因を知らないまま過ごすということにもなる。友達が行方知れずになったなんて、それこそ精神をすり減らせる要因になるのではないか。それが、最も大きい原因だったのかもしれない。
「…そっか、じゃ私は先に帰っとくから」
「え?」
「見知らぬ人間が一緒にいるよりも、二人きりの方がいいだろ?」
「杏子…」
そして杏子は窓から外へと出ていった。それからすぐ後に、ドアが開く音が後ろから聞こえる。ドアが開いて、そこから現れたのは当然…。
「さやかさん?」
「えっと…め、目が覚めたんだ…」
仁美は、倉庫らしき場所に一人たたずんでいるさやかの姿に目をパチクリさせて驚いた。さやかのその恰好は、青を主体とした鎧のようにも見える。月明りで逆光になっているからか、少し影になっているはずなのに、彼女の周りだけ青色のライトで照らされているかのように幻想的にソレらが見えた。
「さやかさん…その恰好は?」
「うん、ちょっと話そっか…長い話になるんだ…」
「えぇ、でも…何日ぶりでしょうか、ゆっくり話ができる何て…」
「うん…」
そして、夜は更けていった。仁美は、最初は魔法少女の事を聞いて信じられないという風であったがしかし、さやかが武器を突然出現させたりしてそれが本当の話だとすぐに信じてくれた。そして、泣いてくれた。さやかや、まどかに訪れるであろう逃れられない運命に。もしかしたら、明日にでも死ぬかもしれないという危険な世界に足を踏み入れてしまったということ、魔女という化け物になってしまうかもしれないということ、全部を聞いて、仁美は目から大粒の涙を流して、泣いてくれた。それからしばらくして、ようやく仁美の気持ちも落ち着いて着たであろう時刻、パトカーのサイレンの音を耳にする。だれかが通報でもしたのだろうか。それは分からないが、取りあえず自分たちがここにいてはまずい。そう思ったさやかだったが、仁美は言った。
「いえ、私は残ります。さやかさんは家族に内緒で出てきていますけど、私は塾に行っていると家族に思われていますから、ここで見つかっても問題はありませんし」
仁美にそう言われ、さやかは魔法少女の事は秘密にしてもらうことを約束して、一人でマミ達の所へと帰ることとなった。杏子が通ったルートと同じ窓から外に出たさやかの目には、やはりきれいな月が浮かぶ。きれいなその黄色い光の中へと青い閃光が消えゆく。そんな風に仁美には見えた。