映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

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お友達のお葬式に出るなんて……まだ御免ですから

 朝、少女は一人待っていた。いつもの道の途中にある公園で彼女が現れるのを。ふと見れば木々が生い茂り、その木々の中を動物園のように木でできた橋で歩けるように作られている。また、住宅に面した場所では、人工的に作られてた川があり、少し歩いたところにある大きな川以外では、ここだけで自然を感じることができる。そこに、一人の少女が元気よく現れた。

 

「あっ」

「おはようございます」

「仁美ちゃん……」

 

 待っていた少女仁美は、いつものようにまどかに声をかけた。まどかは、その声を聞いてうれしくなったのか、少しだけ微笑む。よかった、とても元気そうだ。

 

「仁美ちゃん良かった。元気そうで」

「はい、昨日一昨日と連絡を貰っていましたけれどすみませんでした」

 

 この土日、つまり仁美がさやかから魔法少女の事を聞いたあの日の後二日間、まどかは仁美に連絡を取ろうとした。しかし、仁美は電話に出ることはなく、どうしているのか心配していたのだ。

 

「うん、何してたの?」

「はい、病院のほうに」

「え?」

 

 仁美が言うには、工場でさやかと別れてすぐにパトカーと救急車が現れたらしい。匿名の電話で、工場で集団自殺未遂があったという連絡を受けて駆け付けたようだ。まどかは、たぶんその電話は杏子がしてくれたものなのだろうと思う。あんな夜遅くに工場の周りにいることができ、なおかつ詳細な情報を知ることができたのは彼女だけだからである。

 話を戻す。警察に保護された後、土日の二日間かけて精密な検査が行われ、医者からはとりあえず夢遊病ではないかとの診断を受けたそうだ。夢遊病とは、睡眠時遊行症や夢中遊行症などとも呼ばれる睡眠障害の一つだ。無意識の状態で起き出し、歩いたり何かをした後に再び就眠するが、その間の出来事を記憶していない状態を指し、精神的なストレスによるものが多いらしい。

 

「夢遊病……ね」

「流石に医師も警察の方々も、魔法少女のこと知りませんからね」

「うん、そうだね……」

「あっそれとですね」

「?」

「ストレスが原因と病院から説明されて、親が習い事や塾の時間を減らしてくれることになりましたの」

「え、本当に?」

「はい。どうにか、いち中学生の生活を続けることができるみたいです」

「そう、よかった……」

 

 さすがに娘のストレスが病気の原因で、そのストレスの原因が塾や習い事であると言われてしまうと、彼女の親も引き下がる負えなかったようだ。まどか達の魔法少女としての活動も考えると、一緒に遊びに行くという時間は少なくなるだろうがとはいえ、まどかにとっては仁美の日常生活が戻ってよかったと考えていた。

 

「そういえば、まどかさん」

「え、なに?」

「さやかさんはどうしたのですか?」

「あれ、まだ来てないの?」

「はい、私もさやかさんの方が先に来ると思っていたのですが……」

 

 と二人が言うのにはわけがある。彼女たちが学校に通う際はいつももう一人、さやかも一緒だったのだ。というより、いつもはさやかと仁美が先に待ってて、そこにまどかが合流するというのがほとんどだった。のだが、何故か今日にいたってはさやかは姿かたちも見えない。いったいどうしたのだろうかと電話をかけようとした瞬間。

 

「まどか~仁美~」

「あ、さやかちゃん」

 

 若干遠くの方からさやかが出現した。寝ぐせにプラスして、食パンをかじりながら走るという、だれがどう見てもさやかが寝坊したのだと勘づいてしまう伝統的な姿であった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「さ、さやかちゃんどうしたの?」

「いや、ちょっと寝坊して……」

「魔法少女としての活動が忙しくて、眠れていないんですか?」

「えっと……」

「ううん、昨日の夜の担当はつぼみちゃんとえりかちゃんだから……」

「アハハハ……」

 

 つまり、ただ単に寝過ごしただけである。そりゃ、笑ってごまかすしかないだろう。ついでに、ここで何曜日に誰が担当なのかを教えておこう。月曜日、まどか&マミ。火曜日、さやか&杏子。水曜日、マミ&なぎさ。木曜日、つぼみ&えりか&マミ。金曜日と土曜日は、次の日が学校がない為全員。そして日曜日がつぼみ&えりか&杏子となっている。つぼみとえりかに二つの曜日を任せているのは、マミの考えによるもので、二人が希望ヶ花市に帰った時のことを考えて、経験を積んでもらいたいと思ってのことだ。そして、ほむらや呉キリカの事もあるため、安全性の確保のためにベテランのマミと杏子の二人が交代に彼女たちの事を見守っているのだ。

 

「つぼみさんとえりかさん……あの二人も魔法少女なんですよね」

「うん、つぼみちゃんは、ふたばちゃんの病気を治すために、えりかちゃんは、つぼみちゃんだけに辛い思いをさせたくないって」

「そうですか……私にも素質という物があれば、きっと魔法少女になることを選んだのでしょうね」

「仁美ちゃん……」

 

 仲間はずれというのとは違うだろうが、とにかく友達二人が危険なことをしているというのにたった一人だけ、関係ないところで見ているというのは、正直言えば嫌だ。だが、自分には素質がない為、魔法少女になることはできないとさやかに言われてしまえば諦めなければならない。

 

「そして、上条君を…」

「え?」

「いえ……まどかさん、さやかさん、私には皆さんを応援することしかできません。だから、決して死なないでください」

「仁美ちゃん……」

「お友達のお葬式に出るなんて……まだ御免ですから」

 

 いずれ、歳を重ねて言ったら昔の旧友と葬式に出席しなければならない時が来るのは必然だ。だが、それが来るのは今じゃない。決して、今であってはならない。そして、その言葉にまどかとさやかの表情が曇り、その歩みを止めた。

 

「葬式もあげられるのかな……」

「え?」

「実は、あの時言わなかったんだけれどさ……もしも魔女の結界の中で死んじゃったら、死体すらも残らないことが多いの」

「そんな……」

「そんなことになったら、行方不明扱いになって、葬式すらもあげてもらえないかもしれない」

「親も、友達も……私たちが死んだことにも気が付かないで、決して帰ってこない待ち人を待つことになる……ねぇ、仁美」

「……」

「私たちがさ、ある日突然いなくなったら、それは死んだってことだから……私たちがいたっていうこと……」

「この前も……」

「え?」

 

 仁美は、二人に言う。少し、目に涙を浮かべているようだ。

 

「この前も言ったじゃないですか、私はさやかさんとまどかさんが、友達だったってことを忘れない。ここにいたってことを忘れない。二人は、私の最高の友達なんですよ」

「仁美……」

「仁美ちゃん……」

「だから、いつまでもたわいのない話をしながらこの道を歩きましょう。私は、一緒に戦うことはできません。だから、私には戦いのない日常を共に楽しむことしかできませんわ」

「……うん」

 

 戦いのない日常、それはまどかとさやかにとっては決して訪れることのないものだ。二人は非日常に足を踏み入れ、そこから戻ってくることなどできないのだから。だが、仁美の言いたいことはそこではない。仁美は、ただ自分と一緒にいるときだけは、魔法少女の事を忘れていて、ただただ日常を楽しんでもらいたいのだ。そこで一緒にたくさんの思い出を作って、いつか二人がいなくなっても、その思い出があることで、二人を行きらせることができる。自分にできる事が何か、この二日間必死になって考えた。結果的には考えがまとまることはなかったが、とにかく、できるだけ二人の近くにいようという極々当たり前な考えが思いついたのは確かだ。

 

「さぁ、行きましょう。早くしないと、遅刻してしまいますわ」

「……そだね」

 

 そして三人はまた歩き出した。いつもと同じ道を、いつもと同じスピードで。




 やっぱり、自分には日常なんてうまく書けないなと痛感しました。
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