映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

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 今回、外伝の人たちにも本編の人たちにも関係性がある話であるためこのようなタイトルとなっております。


【外伝&本編】キツイな……なにもできねぇのって

 娘が、何かを隠してる。それに気がついたのはそう遅いことではない。そう、あれはまだふたばが生まれる前の事。あの街に引っ越してきて、直の事だったはずだ。自分が、不意につぼみに話を向けると、何やらあたふたしたような、そして自分がつぼみの部屋に入ろうとすると、何度も待って欲しいと言われて、たまに避けていると思わしき場面が幾度もあった。あの子ももう十四歳のお年頃、親を避けたいという気持ちにでもなる物だろう。そう思っていた。

 明確におかしいと思ったのは、この街に来た時。自分は病院で寝泊まりし、つぼみは学校側が用意してくれたマンションの一室で友達の来海えりかと暮らしているため生活範囲が違ってはいるが、その変化を見逃すほど母親として廃っていない。特に病院にふたばの見舞いにえりかや、この街でできた友達と一緒に来た時だ。あの子はその際によくあくびをしていた。それは、希望ヶ花市にいたときにはなかったことだ。つぼみやえりかに、夜ちゃんと眠れているか聞いたところ。

 

『ちょっと、勉強についていけないところがあって夜中に勉強を……』

『わ、私も……』

 

 という返事が返ってきた。他人の娘さんを悪く言うつもりは毛頭ないが、当人の母親公認で、えりかの学力は劣っていると言うしかないらしい。えりかの母親の来海さくら曰く、つぼみはともかく自分の娘が学校交流の生徒として選ばれたのは学力的にもおかしいというようなことを言っていた。学校の評判を落とさないか心配だという冗談とも本音とも取れるようなことを言っていた。話は脱線してしまったが、見滝原のレベルについていくのに必死であろうえりかはともかくとして、つぼみがそこまで四苦八苦するものだろうか。それだけじゃない、他にももっと気になるところがあった。だから、きっとつぼみも、そしてえりかも何かを隠している。だが、みずきにはそれでも踏み入ったことを聞く勇気がなかった。多分つぼみの臆病な部分、内部的な面での性格は、彼女の遺伝なのだろう。

今はすでに午後十時を回っている。彼女は今日もふたばの隣にいたのだが、看護師から根を詰めすぎると精神的にも良くないと言われて、外でリフレッシュしてくることを進められてしまった。まさに、以前つぼみに自分が言ったことをそのまま返された感じである。だが、もし自分が外に出ている間に双葉に何かがあったら困ると言うと、ふたばの健康状態を把握する機械はちゃんと設置されているため、何かがあったらすぐに看護師が駆けつけられるようになっているらしい。もし何かがあったらすぐ連絡するのでということで、みずきは病室からでたものの、やはりそれでも心配で心配で、その話があったのが正午ごろだったというのに、何時間も病院の周りをうろうろしてしまった。そして、いざ町の中心にまできたものの、よく考えると自分はこの街に来てからは病院に缶詰めだったため街をよく知らないということに気づき、ただぶらぶらするだけで無駄に時間を消費してしまっていた。せめて、誰かにつぼみの事を相談できればいいのだが、この街にそんなことを相談できるような人間は誰もおらず……。

 

「あれ?あんたつぼみちゃんの……」

「詢子さん……」

 

 いた。いたというか、この街で唯一の知り合いと言ってもいいだろうか。彼女は、鹿目詢子。この町でつぼみにできた新しい友達のまどかの母である。詢子は、よく言われるキャリアウーマンという物で、家の事全般は夫の知久さんに任せているそうだ。今も、スーツを着ていることから、多分仕事帰りなのだろう。彼女はこの前も娘のまどかやもう一人の子供であるタツヤと共にふたばのお見舞いに来てくれた。その時タツヤくんがふたばをすごく気にかけてくれていて、いい友達になってくれるだろうなと思ったのは記憶に新しい。

 

「どうしたの、こんなところで?」

「え、えぇっと……」

 

 みずきはつぼみの事を話そうかと考える。しかし、知り合いとはいえニ、三度あった事があるぐらいだ。そんな人に人生相談なんてしていいのだろうか。と、思っていたがなにか悩み事があるのだろうかと考えた詢子は先手を打った。

 

「何か悩み事?」

「え?まぁ、はい……」

「ふーん……この辺りだとあそこが近いか……」

「?」

「時間、空いてる?」

「え?は、はい……一応……」

「それじゃ、ちょっと飲みに付き合ってよ」

「え?あの、私お酒は……」

「いいからいいから」

 

 ということで詢子に連れられて来たのは、外見からどこからどう見ても居酒屋であると分かる雰囲気を醸し出している店。赤い提灯や中から聞こえる騒ぎ声、テレビでみたソレとそのまま同じものがそこにはあった。二人は、店のドアを横開きに開け、そこに入った。だが、見る限りは開いている席はないように見える。その時、一人の少女が駆け寄ってくる。見た目からして、高校生のバイトであろうか。

 

「すみません。今席が……えっと、いっぱいで……」

「そっか……しょうがない、少し遠いけど……ん?」

 

 その時、詢子がある人物を見つけた。目線の先にいるのは、四人の男女グループである。詢子は、知り合いがいた旨を店員に告げると、その責にまで向かい、酔いつぶれているらしき女性に声をかける。

 

「和子、相席いい?」

「ん、詢子?」

 

 ショートカットに眼鏡をかけた女性だ。他に一緒に飲んでいたのは、左手のみに黒い手袋を付けた男性に、ロンゲできれいな顔つきをしている男性、それにシスターである。失礼だが、みずきはシスターがこんな場所にいることが意外に思った。

 

「後ろの人は?」

「え?あの、私は……」

「こっちは花咲みずきさん。つぼみちゃんの母親。みずきさん、こっちは早乙女和子、つぼみちゃんやまどかのクラスの担任」

「ふーん、花咲さんの……」

「え?あ、あの……」

 

 と言うと和子はものすごい勢いでみずきに迫った。先ほどから見ると、なにやらかなり酔っているようだ。テーブルの上にも空になったビール瓶か何本も置かれている。一体どれくらい飲んだのだろう。ともかく、みずきの肩に手をかけた和子は言う。

 

「ねぇ、三十を超えたおばさんは恋愛対象じゃないっていう男はどう思う!?」

「え?えぇっと……恋愛は年齢じゃないと……」

「そうれすよね!?年齢なんて愛の前では関係ないれすよね!!」

「なに和子、また振られちゃったの?」

「らしいです」

 

 と、シスターは言った。続けて、シスターはみずきのほうに体を向けると改まって言う。

 

「初めまして、私はシャークティ。麻帆良学園で教師をしながら、シスターをしています。それからこちらの二人は……」

「鵺野鳴介です。東京のほうで教師をしています。んで、こっちは玉藻」

「まぁ、では皆さん教師を?」

 

 と言うと、玉藻が反論をする。

 

「いえ、私は本来なら、東京で医師をしているのですが、ちょうど今見滝原病院の方であった大きな手術の応援のためにこっちに来ていて、出張のためにたまたま来ていた彼におごらされて来ているのです」

「おい玉藻、もう少し言い方ってのがあるだろ?」

「本当の事を言って何が悪いというのだ」

「……」

 

 さらに聞くと、鵺野は小学校の担任で、子供達からはぬ~べ~と呼ばれているそうだ。シャークティは人を探しに隣町の風見野に来ていたのだが、もう探す場所が無くなってしまったために範囲を広げて見滝原まで足を運んだらしい。そしたら、以前学校のある集まりで出会った早乙女と彼女が失恋した直後に運悪く再会し、流れでそのまま居酒屋に来ることになったそうだ。どうやら、彼女は出張も兼ねているらしく、一週間はこの町に滞在するらしい。

 そして居酒屋に来たら、男性二人がすでに飲んでいたらしく、特に玉藻に狙いを定めた和子が強引に一緒に飲むことを提案し、あえなく撃沈して、二重に傷ついてやけ酒を飲んでいたらしい。

 などということを小耳にはさみながら、詢子はビールを先ほどの店員に頼み、みずきはジュースを頼む。そして、それが来るまでの間詢子は聞く。

 

「それで、何を悩んでいるの?」

「えぇ、つぼみの事で……」

「つぼみちゃんか……」

「なんだかあの子、この街に来てから急に性格が変わってしまったみたいなんです。倉敷から希望ヶ花に引っ越した時にも同じようなことがあったんですけれど……」

「けど?」

「その時は、内気な性格だったのが明るくなって、でも今回は……なんだか、思いつめていることが多いというか……それに、ふたばに会いに来るときも……なんだか、前よりももっとふたばと一緒にいる時間を大切にしているというか……」

「それは、ふたばちゃんが病気になったからじゃないのか?」

 

 妹が病気になって、それが治った後でも気になって病気になる以前よりも接するということは、よくあることらしい。だがみずきは首を振る。

 

「……それもあるかもしれません。でも、なんだか逆のような気がするんです」

「逆……?」

「なんだか……ふたばの事を見る目が、いつもいつもこれが最期だって、そう言っているように感じて……考えすぎなのかもしれませんけど」

 

 確かに、自分にはそう見えたのだ。ふたばの事を抱いているつぼみの顔つきは、慈しみのようなものがこもっているようにいつも分かりづらい笑みを浮かべていて、毎日が今生の別れのようにふたばを抱きしめ、そしていつも帰る時には後ろ髪引かれるように自分の顔を見ていて、でもそれでも言えない、言うことができない、秘密にしなければならない、そんな風に彼女は帰っていくのだ。詢子は、その話を聞くと髪を掻いて言う。

 

「実はさ……まどかの方も同じなんだよ」

「え?」

「つぼみちゃん……が見滝原に来た頃からタツヤと一緒にいることが多いんだと……まるで、タツヤとの思い出を作るようにさ」

「二人に、何かあったんでしょうか?」

「わっかんねぇ……アタシの勘じゃ、間違いなくなにか隠している様子ではあるんだ、それも……結構な大事を……。けどなぁ、初めてなんだよアイツの本音を見抜けないなんて……」

「詢子さん……」

「情けねぇよな。自分の娘の事を全く分からないなんて、それで言ったら、私もアンタと同じ……だからアンタに指南できる立場にないってのになぁ……」

「……」

 

 この時みずきは感づいた。彼女も自分と同じ、誰かに自分の不安を話したかったのだろうと。それも、自分と同じように子供を持つ母親に。詢子は、続けて言う。

 

「ただな、一人で背負い込んでいるってわけじゃないんだよな。むしろ、何人かで秘密を分け合っているみたいで……」

「もしかして、つぼみ……だけじゃなくてえりかちゃんも……」

「他にも心当たりはあるけど……どっちにしろ、アイツら何か隠して、アタシになんの相談もしてこねぇ……ちったぁ頼りにされてるって思ったのにさぁ」

「……」

「キツイな……なにもできねぇのって」

 

 自分たちは、頼りにされていないのだろうか。そんな不安が彼女たちの心の中を通り過ぎていく。例え堅牢な建物であったとしても、ひとたびヒビの中に水やらが入り込んでしまえば、腐敗しそこから崩壊へとつながっていく。自分がお腹を痛めながら産み育てた母と子の絆も、ちょっとした問題一つで崩壊してしまう物だ。

 この先、どう娘たちに接したらいいのか、分からなくもなってきたその時、ぬ~べ~がグラスジョッキをテーブルに置いていった。

 

「私はそうは思いません」

「え?」

「二人の娘さんの事は、俺は何も知らないです。でも、相談しないという事と、相談できないという事は違う事なんじゃないでしょうか」

「相談しない事とできない事……」

「……そうかもしれないですね」

 

 続いてその言葉を広げたのは、シャークティである。

 

「私も……私の街も、大勢の人間が生徒に話すことのできない秘密を抱えて生きています。……でもそれが日常であって、秘密を秘密にしなければならないという事が普通で……。最初は、とても心苦しくて、いつかは教えてあげようって思っていた時期もありました。でも……誰もその秘密がおかしいってことに気がつかなくて、いつの間にか、そんな気持ちどこかに飛んでいってしまって……人を騙すことに何のためらいもなくなってしまいました……」

「シャークティ先生……」

「だから……おかしいってことに気づけてるっていうのは、それは……母親としては十分すぎるほどの能力だと、私は思います」

「……」

 

 世の中には秘密が多すぎる。そのせいで誰かが傷ついたり、誰かが誰かを傷つけてしまう。また、秘密の中には誰かを傷つけたくないという一心の元で秘密を作ってしまうことだってある。だが、結局はその秘密を作ってしまったせいで自分の心を傷つけたりすることがある。秘密というのは、結局誰かを傷つけなければつくことのできない、この世で最も悲しい心の闇である。秘密にしても傷つく、秘密を喋っても傷つく。だったら、どうすればよいのだろうか。無論、秘密を作らないなどという物は通らない。人間は、生きている限り必ず一つは秘密を作ってしまう生き物だ。嘘をつかないと平穏無事に生きることのできないか弱い生き物だ。秘密がある。だから嫌いなどという短絡的な思考なんて必要ない。何故自分に対して嘘をつき続けるのか、秘密を作ってしまうのか、またどんな秘密を隠し持っているのか、知らなくて構わない。教えてもらわなくても構わない。秘密を持った人間が困ったその時にこそ、本当に頼りにされているのかがわかるのだから。だから、その時に言ってやるのだ。もう、秘密にするのは止めてくれと。

 

「そっか、そうだな」

「詢子さん?」

「いや……たまにはまどかのやりたいところまでやらせてやってもいいかってさ」

「……そうですね。本当に困ったら、きっと話してくれますよね……」

 

 二人は思う。自分たちの育て方は間違っていなかったはずだと。だから彼女たちは帰ることを信じて待つことができるのだ。だから、彼女たちは母親なのである。子供たちが話してくれないのは、きっとよっぽどの事情があるからだ。でも、きっといづれ話してくれる。いづれ、自分の事を頼りにしてくれる。そう信じる事しかできないのだったら、そうするしかない。例え、どれだけ思い悩んでいたとしても、命がけの事ではないはずなのだから。




 この話、半年近く投稿するべきか悩んでいたんですよね……。結論が、本文でよく出てくる『分かり合いたいのなら、話せばいい』一辺倒になってしまって、それじゃ面白くないからどう結論付けようか考えた結果、変な方向に話が進んでいってしまい……いっそ、この辺りをなかったことにしようと思いましたけど、先に伏線というか物語の方を外伝に少しだけ出してしまったため、悩んだ挙句投稿します。これは批判はま逃れないでしょう。特に今回ちょっとだけ登場し、名前も明かされていないある少女の次の話での扱いは原作ファンからしてみればう~ん……というような感じになる恐れが……。
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