映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
死にそうだった…。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
生きるのをあきらめかけた…。
「明君!!」
目の前で特務エスパーの人が倒れていく。
「止まりなさい!!動くと…撃ちます!」
私を守ろうとしてくれている…。
私にも戦う力があるのに…。
「撃てるのかしら…あなたに?」
怖い、怖い、戦うのが怖い。体から何かが抜け落ちていく感覚。あんなのもう嫌だ。
「と、止まりなさい!!」
「人を殺す覚悟…あなたにあるの?」
「うッ…」
今まで、自分は人を殺したことはない。当たり前だ、今まで戦ってきたのは全員人じゃなかったから。人と人との殺し合い。目の前で拭きだした血、壁にたたきつけられた鈍い音、それらは彼女を恐怖という一つの呪いで縛るのに足りていた。
「あなたの気持ち分かるわ…私も初めて人を殺したと認識した時、悲しく、苦しかった…」
「でも、殺さないと誰かが泣くことになる。…なら」
「ッ」
本当にそうなの?あなたは、悲しいんじゃないの?苦しいんじゃないの?そういう自分の気持ちを押し殺してまで誰かを殺す意味なんてあるの?
「私が、それを止める」
それって、使命感?…そんなの
「違う…」
「え?」
みゆきは言う。違うと。
「誰かの幸せを願うのは間違っていじゃない…でも!」
≪Ready?≫
みゆきもまた、誰かの幸せのために戦ってきた。それは、プリキュアとしての戦歴を見ていけば分かることであろう。人を、動物を、妖精を、そして敵をも幸せにするために戦ってきた。だが…
≪go!go go! let’s go HAPPY!≫
「誰かの気持ちを粗末にして…幸せになっても…」
ハッピーは誰かに与えられるものではない。自分で掴むもの。
「私は全然ハッピーじゃない!!」
キュアハッピーは、ただそれを手伝ってきただけである。誰かの幸せのために自分が犠牲になる?そんなの絶対許さない。そんな身勝手許さない。誰かのために自分をおろそかにするものに本当の幸せを振りまくことはできない。だから彼女は他人をハッピーにするだけでなく、自分自身もハッピーになる。それを目指して戦ってきた。だから彼女は強いのである。だから彼女は、プリキュアなのである。
すずねは、目の前の状況に困惑していた。魔法少女と思われていた少女が突如変身した。それも、ソウルジェムではなくコンパクトのようなものを使用して。ここにきてようやくすずねにも分かった。自分が勘違いをしていたということに。魔法少女が変身する場合はソウルジェムを使用する。これが絶対条件だ。そしてソウルジェムは身体から100メートル離れると接続が切れ、動かすことができなくなってしまう。つまり、ソウルジェムを肌身離さず持ち歩いている。これも魔法少女としての絶対条件である。そのため、ソウルジェムを所持していたみゆきの事を魔法少女と思っていた。しかし実際には違っていた。ならば、そこに大きな疑問が生じることとなる。
「そう、あなたは本当にプリキュアなのね…なら、そのソウルジェムは誰の物なの?」
「…これは、さっき巨人さんが落としたものだよ」
「巨人さん?」
「うん、本棚に囲まれた場所にいた…悲しい目をした巨人さん」
「…まさか、魔女?」
すずねは、ハッピーの言葉からそう判断せざるを得なかったが、それは正しい回答であった。なお、実際にソウルジェムを落としたのは巨大な本の方ではあるのだが、それを言うと若干ややこしくなるので、巨人で通すことにした。
「…その魔女は、それ以外に落さなかったの?」
「魔女…ううん、巨人さんはこの宝石以外は何も…」
「そう…」
すずねは、その言葉を聞くと手に持った剣の先を下に向ける。
「どうやら、私の勘違いだったみたいね…ごめんなさい」
「すずねちゃん…」
「みゆき、それから…そこで気絶している人にも伝えて」
「え?」
すずねは、初音の方を見てそう言った。どうやら、気絶している人、というのに明は入っていないようだ。
「あなたを魔法少女に勧誘するような奴が現れても絶対に口車に乗らない事…すべてを失いたくなければね…それじゃ」
「ま、待って!!」
すずねは、ハッピーのその言葉に見向きもせず、魔法によってその姿をかき消し、その場には、気絶した二人と、小鹿&キュアハッピーだけになった。だが、それからしばらくは安心できなかった。消えたすずねが襲ってくるということも考えれることであるからだ。ハッピーはソウルジェムを握りしめ、すずねが襲ってくるということに備える。小鹿もまた、降ろした銃を構えなおし、ソレに備えた。それから1分、2分何も起こらなかった。
「どうやら、本当にいなくなったみたいですね…」
「はい…」
ハッピーと小鹿は、すずねがいなくなったと考え、ひとまず息を抜く。小鹿は、取りあえずハッピーに事情聴取をするべきであると思った。しかし、その前にやらなければいけないこともあるということも確かである。小鹿は、気絶している初音と明の元へと向かう。
「初音ちゃん、明君大丈夫!?」
「う、うぅ…」
「っ…」
どうやら、二人はそれほど重症ではないようだ。だが全身を叩きつけられたことには変わりはない。はやく病院に連れて行かなければ。その時、遠くから警官隊が小鹿に向かってライトを照らす。ようやく連絡を入れた警官隊が来てくれたようだ。小鹿は、警官に救急車を頼み、一人ハッピーの元へと向かう。が…。
「いない?」
その場にはキュアハッピーの姿はなく、ただ地面に何かのシミが残されただけであった。
「プリキュア…あの子に聞いた方が得策かもしれないわね…」
小鹿はそう考え、そして事後処理を行うことにした。
「はぁ、はぁ、はぁ…こ、怖かった…」
ハッピー改め、みゆきはなんとか本棚を探し当て、一か八かで自分の部屋を思い描いた。今度はうまくいき、なんとか自分の部屋に戻ってこれたようだ。そのタイミングで、ようやく変身を解いたみゆきは、脱力して倒れこむ。あれは、夢だったのか、そう思いたかった。だが、自分の手の中にあるソウルジェムと……が濡れていることからいってそれはなかっただろう。あの場であったことは、すべて現実に起こったことなのだ。本に囲まれた巨人、特務エスパー、そしてすずね。
「泣いてた…」
特に、すずねのことが彼女の頭から離れなかった。彼女の悲しそうな目、それが印象に残っていた。そして、彼女が言った言葉…。
「ごめんなさい…か」
みゆきは、それが彼女の本心なのではないかと思っている。彼女は、本当は心優しい人柄なのではないだろうか。だから、自分が間違っていたと気づいたときに、思わず謝罪の言葉が出てしまったのではないだろうか。みゆきは、すずねとじっくりと話がしたい、そう思っていた。ともかく今するべきことは、お風呂に入って、着替えることである。今日はぐっすりと眠れそうである。そして彼女の頭からはノートの事なんてすっかりと抜け落ちてしまっていた。
彼女が、3組のプリキュアと一人のプリキュアが行方不明となったことを知るのは、次の日の事であった。
いろいろな意味でやっちまった感があるこの外伝。今回でとりあえずみゆきVSすずね回は終了となります。取り合えず一回本編の方に戻って、ゆっくりと外伝のことについてか考えます。…そういえばかずみ組だけどうやって介入させるか考えてなかった。あの子らは原作終了後の設定なのは決まっていますが…。因みに、行方不明の、主に以前カメオ出演扱いにされそうになったプリキュア組は別にすずねに殺られたわけじゃありませんから、あしからず。ただ、自分が現在資料を集めている最中のため、ちょっと旅行に行ってもらっているだけです。