映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
星空みゆきは、宝石を太陽の光にかざしてみる。きれいな色をしているが、すこし濁っているような気がする色だ。
「これが、その宝石?」
「うん…なんだか、昨日よりも黒くなっているような気もするんだけれど…」
「ピンク色の宝石…いくつか聞いたことはありますけれど、この装飾品は何なのでしょう…」
「これが、怪物の中から出てきたんだよね?」
「アカンベェとは違うたんか?」
「大きな鼻も付いてなかったから、違うと思う…」
そう語ったのは、黄瀬やよい、青木れいか、その後ろには、緑川なお、日野あかねの二人がおり、そしてみゆきの持っているカバンの中には一匹のぬいぐるみのような生物。
「デコルも全部集めたはずクル!きっと別のプリキュアの敵クル!」
その生物の名前はキャンディ、彼女達スマイルプリキュアの妖精である。
「でも、みんなから聞いた敵じゃなかったなかったような…」
あの暗い雰囲気に一番近いのはコワイナー、ウザイナーあたりだろうが、聞いていた話と印象が全然違う。物を落とすということから自分たちの敵だったアカンベェやつぼみ達の敵だったデザトリアンも当てはまるが、アカンベェは確実に違うし、デザトリアンの特徴であるしゃべるということもなかった。では、一体…。
「ほんなら、最後に出てきた魔法少女っていうんのの敵やと考えたほうが自然やな」
「そうなんだろうけれど…」
あかねの意見に、みゆきの表情は曇る。確かにあの怪物は敵だったのだろう。だが、その後彼女に出くわした時のやり取りは…。そんな彼女の表情を見て、なおが言った。
「だけれど…ってなにか気になることでも?」
「うん、私…その子と鉢合わせした時に、怪物からこれが出たって言ったら、その子『嘘を言わないで』って言ってたの」
「嘘?」
「うん、その後魔女から出るのはソウルなんとかじゃなくてグリーフなんとかだって…言ってた気がする」
刃を突き立てられた間の会話、頭が真っ白になって覚えているのは大体その程度である。
「それじゃ、みゆきの戦ったのが魔女で、この宝石がソウルなんたら…ちゅうことか?」
「うん、そういうことだと思う…」
「ソウルは魂、グリーフは嘆きという意味合いを持っていますね」
「魂に、嘆きか…」
「魔法少女に魔女…一番関係のありそうなのはみらいちゃんやリコちゃんだけれど…」
「うん…」
その時、5人の表情が曇ってしまう。なぜかというと、実は今やよいが言ったみらいやリコと言うのは魔法使いプリキュアというプリキュアのメンバーであるのだが、現在もう一人の仲間である花海ことはと妖精のモフルン共々行方不明になっているのだ。デウスマストという敵との最終決戦、それが終わった瞬間魔法使いプリキュアのメンバーが行方不明になっただけでなく、他にもハピネスチャージプリキュア、プリンセスプリキュア、そしてキュアエコーと、12人のプリキュアと妖精たちが行方不明になってしまっているのだ。彼女たちがどこにいるのか、そして何故消息を絶ってしまたのか、いまだにわかっていないどころか、今日初めて彼女たちが行方不明になったという情報が彼女たちに来たという有様であった。
「で、どうするんや?あれもあかんこれもあかんってなると、なんのやりようも…」
「では、こういうのはどうでしょう」
八方塞がりになりそうなとき、青木れいかが言った。
「世の中には、亀の甲より年の劫ということわざがあります」
「かめのこうより?」
「としのこう?」
「クル?」
スマイルプリキュアの特徴として、5人中4人が勉強が苦手なのだ。その代わりとしてその分の知能は全て青木れいかに割り振られていると言っても過言ではない。こういった役どころは、全てのプリキュア組に最低一人は存在している。のだが、スマイルプリキュアだけだろう、青木れいかがいないと途端に危機的状況に陥ってしまうプリキュアチームは。と言われるぐらいアホの子がそろっている。
「はい、カメは万年生きると言われており、それに比べれば人生の八十年程度は短く感じるとしても、年長者の経験から身に着けた知恵や技術は貴ぶべきという意味です」
「へぇ…それでそのカメさんがどうしたの?」
青木れいかのどこかの辞典から引用してきたような説明は軽く聞き流されてしまった。が、よくあることなのでれいかも気にせずに続ける。
「つまり、こういう時にはお年寄りの意見を聞きに行くということです」
「年寄言うけれど、うちらプリキュアの事を知っている年寄なんて…」
「「「「う~ん…」」」」
「う~んクル…」
と4人と1匹は顎に手を当てて考える。それからしばらくして、やはり仲のいいもので同時に思い出した。
「「「「あっ!つぼみちゃんのおばあちゃん!」」」」
「クル!」
「ごめんねゆり、わざわざ来てくれて」
「いいのよ、それより仕事の時間は大丈夫なの?」
とある店の前で、手を合わせて同じくらいの年の女性に謝罪したのは、来海ももか。そして、その相手、一冊の本を持ち眼鏡をかけた女性は月影ゆりである。
「えぇ、今から駅に向かえばなんとか」
ももかは高校生でありながら人気のカリスマモデルである。今日もこれから仕事がある。が、ゆりに返さなければならないものがあったため、こうして家に立ち寄ってもらったのだ。普段は、マネージャーによって送り迎えされているのだが、車の方が故障したため、電車で向かうということになったそうな。
「あら?」
その時、ゆりが何かに気が付いた素振りを見せた。
「なに、どうしたの?」
ももかが、ゆりの向いている方を見ようとするが、ゆりは一言。
「いえ、何でもないわ。ちょっと目にゴミが…」
「本当に?」
と言ってゆりはメガネを取って目をこすった。どう見てもごまかしているのだが、彼女がなんでもないというのなら何でもないもしくは、知ってもらいたくない事なのだろう。ももかは、ゆりがなにかしら隠していることを知っていた。だが、深くは聞かない。彼女の様子がおかしくなったその時には、何があったか聞こうと思っていた。しかし、むしろ最近彼女は明るくなった印象がある。この先も彼女がゆりの正体を知るときは永遠に来ないのかもしれない。だが、それでいいのだろう。なぜならももかは彼女の親友であり、そして信頼しているのだから。
「ほら、早く行かないと、仕事に遅れるわよ」
「えぇ、じゃあまた明日ね、ゆり」
「えぇ…」
そして、ももかは一人駅の方へと歩いていった。それを見送ったゆりは、フェアリードロップの裏の道へと入っていく。先ほど、ゆりが見た5人が、そちらの方へと降りていったからだ。で、案の定そこにいた。
「あなたたちは、何をしているの?」
「あっ、ゆりさんこんにちは…もしかして怒ってらっしゃる?」
そこにいたのは、変身を解いたスマイルプリキュアの5人と、キャンディであった。彼女たちははるばる七色ヶ丘から蝶々デコルを使用して飛んできたのであるが、なんだかゆりの顔はこわばって、眼鏡に光りが当たって目の奥が見えないのもあって、なんだ怖い。
「怒るというより、呆れたわ…こんなことして、誰かに見られたら騒ぎになるわよ」
「その点は心配には及びません、ここに来るまで高いところを飛んでいましたから」
と弁明したのはれいかである。などと言う物の。
「で、私に見られたことについては?」
「…」
「御免なさい…」
「クル…」
と、素直に謝罪するスマイルプリキュアの面々であった。
「あなたたち、ふしぎ図書館なんてものがありながら、どうしてわざわざ…」
「それが、ふしぎ図書館は…」
ふしぎ図書館を使えば一気に目的地へとたどり着くことができるのだが、昨晩の件もあるので、しばらく使わないでおこうということになったのだ。れいかは、昨晩のみゆきの体験した出来事と一緒に、この町に来た目的を伝える。
「そんなことが…」
「ゆりさん、その本は何ですか?」
「え?あぁこれ、えりかに貸していた本よ、半分も読んでいなかったみたいだけれど…それより、薫子さんに用事があるのなら、私も一緒に行くわ」
「え?どうしてゆりさんも?」
「あなたたちだけで行かせると不安なのよ」
「ははは…すんません」
と、いうことでゆりと共に薫子が園長をしている植物園に向かうことになった。
同じころ、一人の少女が、薫子の植物園を尋ねに来ていた。
「そう、マイアが…」
薫子は、少女からその言葉を感慨深そうに聞いて、一度手にしている紅茶のカップを下に置いた。マイアという人と薫子は昔親しくしていたことがあったらしい。そんな女性が数か月前に亡くなってしまったということをついさっき聞いたばかりだった。
「グランマは、私に…ううん、私たちに大事なことを教えてくれました」
「そう…かずみちゃんお願いがあるの。マイアの事…忘れないであげてね」
かずみという少女はマイア、彼女がグランマと呼ぶ女性と一緒に暮らしていたそうだ。その最期に立ち会ったのも、彼女だったらしい。それから数か月、何年も一緒に暮らしていたグランマのいなくなった悲しみで、ここまで報告が遅れてしまったそうだ。
「もちろん…絶対に忘れません。グランマに教えてもらったイチゴリゾットも、たくさんの思い出も…絶対に…」
「そう…ありがとう」
薫子ももう60代後半である。自分が生きれるとして十年か二十年か、刻一刻と自分に死の宣告が迫ってきているのを感じる。だから自分の中に生きる人たちが死んでしまうという事が悲しく感じてきている。だから、こうして若い人間が、彼女が素晴らしく思った彼女達の事を覚えてくれるなら、それはうれしいことであった。その時、入口の方から声が聞こえる。
「ごめんくださ~い」
「誰かしら?」
そして、声の主たちが姿を現した。無論、みゆき達とゆりである。
「突然すみません、薫子さん」
「あらゆりちゃん、後ろの子たちは?」
「はい!私たちはスマイ、ッ!」
「う、うちらはゆりさんの友達なんや、なぁ!」
「そうそう!なんでもない普通の友達!」
と、やよいが自分達の所在を明かそうとするので、あかねとなおが取り押さえた。あかねは、小声で目の前にいる黒髪の少女に聞こえないように言う。
「どあほッ!なに堂々と正体明かそうとしてんねや!!」
「え?なんで?」
「プリキュアのことは普通の人達には内緒でしょ!薫子さんの目の前にいる子が関係者かどうかも分からないのに!」
「あっ、そうか…正体を隠すのはヒーローのお約束だもんね!」
「本当にわかっとんのか!」
「本当に分かってるの!?」
ヒーローのお約束どうこうはともかくとして、流石に自分たちの正体を広められるのは御免である。とはいうものの、プリキュアには何人か、一般人にその正体を知られている者もいるのではあるが。
「私星空みゆき、あなたは?」
「私は…かずみ、昴かずみだよ…薫子さん、それじゃ私はここで失礼します」
「えぇ、またいつでも遊びに来てね」
「はい!じゃあねみゆき!」
「うん!」
挨拶、そして別れのテンポが速すぎるだろ。というツッコミはこの際無しで。こういうメンバーだからとしかいいようのない。
「ところで、今日はどうしたの?」
「あっ、はい実は…」
薫子は、みゆきがバッグから出した宝石を見て目を見開いて驚いた。
「これは…ッ!みゆきちゃん、これは…」
「えっと、怪物を倒したら出てきたんです…確か名前はソウルなんたらだって…」
その言葉を聞いて、みゆきたちの後ろで帰ろうとしていたかずみが反応する。
「…ソウルジェム」
「そうそう!ソウルジェム!」
「ソウルジェム!?」
みゆきの言葉を補完するように言った薫子の言葉にかずみが反応してみゆきたちの元に駆け寄る。
「本当だ…これ、ソウルジェムだ…」
「かずみちゃん?」
「かずみちゃん、あなた…」
そして、それは図らずも、かずみが関係しているということを示していたことを薫子は察した。
「魔法少女、なの?」
「…はい」
おかしい、いつもはインスピレーションが沸いて勝手に文章(主にポエムと情緒関連)が書き足されるのに、今回はあまりそんなことがなかった…。
あとグランマの名前がマイアというのは、公式のものじゃないかもしれません。