映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

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外伝(みゆき編):あなたたち私と同じでしょ?

「スズネさんという女の子を探しているのですが、ご存じないですか?」

「え?」

 

 青天の霹靂とはこのことかと、その言葉を聞いた成見亜理紗と日向茉莉はそう思った。まさか、その憎き少女の名前を見知らぬ少女から聞こうとは。知っている。もちろん知っているその少女の名前は。自分の仲間の、友達の、詩音千里の仇なのだから当たり前である。

 

 青木れいか、黄瀬やよい、そしてかずみの友達の御崎海香は、すれ違った人に対して同じ事を聞いていた。把握している情報が名前だけなのでそれが最も簡単かつ、今できうる最善の手ではあった。そして何人かの中学生は、スズネの事を知っていた。しかし、手に入れられた情報は少なく。髪飾りに鈴の付いたお守りをしている。とか、最近転校してきたらしいという、極々当たり障りのないものしかなかった。れいかは言う。

 

「やはり、名前だけで探すのには、限界がありましたね」

「まぁ、どこの中学に通っているのかが分かっただけでも良しとしましょう」

「でも、学校帰りに待ち伏せするにしても七色ヶ丘からここまで遠いし……」

 

 実際学校帰りにこの街に来たのだが、辺りは夕日が落ち始め、町の色は橙色の様相を呈している。ふしぎ図書館を使えれば一瞬のことだというのに、みゆきが陥った事故のと雨に電車を使用するしかないため、このような時間にこの街に来ることになってしまった。明日もまた同じようにこの街に来るのなら、結局下校時刻は過ぎてしまっているだろう。

 

「そうね、私たちもそう何度もあすなろを空けるわけにはいかないし……」

 

 海香たちの住むあすなろとここホオズキは目と鼻の先にある。とは言うものの、そう何度もあすなろを留守にするわけにはいかない。魔女の件もあるし、特に海香はベストセラー作家、やすやすとホオヅキには来れない。

 

「とりあえずもう少し聞き込みをして、その後皆さんと連絡を取りましょう」

「うんそうだね」

 

 れいかはそう言うと、すぐそばにいた中学生二人、その制服は先ほどまでの話を総合すると、スズネが通っている中学の制服であり、もしかしたら少しはスズネの事を知っているかもしれないとれいかと海香の二人は考え、話しかけた。

 

「あの、申し訳ありません。お尋ねしてもよろしいですか?」

「はい?」

 

 一人は、薄い桃色の髪をしたツインテールの女の子。もう一人は、緑髪の三つ編みの女の子だ。

 

「スズネさんという女の子を探しているのですが、ご存じないですか?」

「え?」

 

 瞬間、二人の顔が変化したのを感じとった。目が少し見開き、まるで何かに驚き、慄いているかのような。緑髪の女の子に至っては左足を半歩引いて、後ずさりしているような気もする。間違いない、この二人はスズネの事を知っている。それも、反応からすればみゆきのように……薄いピンクの髪の少女が歯を食いしばって言うれいかに言う。

 

「あんた、アイツの仲間?」

「仲間……ううん、私たちはただスズネちゃんって子を……」

「待って」

「海香ちゃん?」

 

 やよいの言葉を海香は遮り、そして四人に路地裏に入るように促した。二人も少し警戒しながらもそれに従う。そして、人目につかない場所に着いたのを確認すると、海香は言った。

 

「あなたたち、私と同じでしょ?」

「同じ?」

「そう」

 

 海香は、左手をゆっくりと持ち上げ、手のひらを反す。すると、その上には宝石、ソウルジェムが乗っていた。

 

「魔法少女」

「ッ!」

 

 その刹那、桃色の髪の少女は変身し、鎌を振り上げて海香に襲い掛かった。その刃が海香を捉える瞬間、海香もまた魔法少女に変身し、一歩踏み出して刃のついていない鎌の持ち手を掴む。その腕を魔法で強化しているため、怒りで我を忘れてめちゃくちゃに振り回した彼女のその攻撃を止めるのは簡単だった。

 

「落ち着きなさい。私たちは敵じゃないわ」

「だったら、なんでアイツの事を知ってんの!」

「その前に武器をしまいなさい。このままだとろくに話もすることができないわ」

「そしたら、今度は私たちを殺すつもりでしょッ!チサトみたいに!!」

「チサト?」

 

 れいかには、その名前に聞き覚え、いや見覚えがあった。新聞でホオズキで連続して発生している女子中学生連続殺人事件の一番新しい被害者。つい先日通夜、告別式が行われたばかりである少女の名前が、詩音千里という名前だった。やはり、関係者だった。スズネの名前をだした反応からみゆきのように彼女に襲われた経験があるとは思っていたが、まさか被害者が友達であるという少女に出会うとは思いもよらなかった。とにかく、このままの状態じゃ話も聞くことができない。れいかとやよいもプリキュアに変身しようとスマイルパクトを取り出そうとする。が、その前に動いたのは相手のもう一人であった。

 

「アリサちゃん落ち着いて!」

 

 緑の髪の少女は、魔法少女に変身すると、アリサと呼ぶ少女を後ろから羽交い締めにする。

 

「止めないでマツリ!こいつらはチサトの!」

「まだそうと決まったわけじゃないよ!まずは、話を聞こうよ!!」

「ッ!」

 

 マツリに説得されて少ししてようやくアリサは落ち着いた。随分と情緒不安定な人間だとは思ったが、しかし彼女の精神状態をとやかく言うには彼女を知らなさすぎるし、彼女たちの話を聞いていれば、友達をスズネに殺されているのだからこの反応も当然なのかもしれない。とにかく双方変身を解いて、彼女たちの話を聞くことになった。

 

「まずは自己紹介をしましょう。私は、青木れいかと申します」

「私は黄瀬やよい、よろしくね」

「私は御崎海香、よろしく」

「あ、はい。私は日向茉莉です……アリサちゃん」

「……成見亜理紗」

 

 とりあえず自己紹介をしたものの、アリサは気に入らない様子でふてくされている。まぁそれはいったん置いといて、さっそく本題に入る。

 

「それで、二人はスズネさんとはどんなご関係で?」

「さっきも言ったでしょ、チサトの仇よ……」

「チサトちゃんは、私たちの友達だったの、それが……」

 

 それは、突然の別れだった。ある日、もう一人の仲間と一緒に四人で夜のパトロールに出た時、それぞれの担当地区に分かれて魔女を探していた際にあった。チサトという少女との念話での連絡が途切れたことに不審を感じたアリサは、チサトが担当していた区域へ探しに出た。しばらく探し、そしてアリサはチサトを見つけた。スズネに刀で背後から串刺しにされた状態で。アリサは、その姿を見た瞬間にスズネに飛びかかった。だが実力差、並びに怒りで我を忘れ正常な判断ができていなかったことも災いして、簡単に負け、気絶してしまった。そのすぐ後にマツリともう一人の仲間が駆けつけたことによってアリサの命は助かったものの、いつも彼女たちと一緒にいた仲間がいなくなった穴は、いまだに抜けるはずもなかったらしい。

 

「そう……」

「では、みゆきさんがスズネさんと出会ったのは、そのすぐ後だったというわけですか……」

「ねぇ、海香さん、なんで二人が魔法少女だっていうこと分かったの?」

「日常生活で仲間なんて言葉使うのは部活か何かのグループの集まりか、であのアリサって子から尋常じゃない殺気を感じたから、魔法少女関連だと思っただけよ」

「?……なるほど」

 

 やよいにはよくわからなかったが、取りあえず分かったようなふりをしておく。

 

「それで、あなたたちもその……友達を?」

「いえ、なんとか無事でした。けど、その子がスズネさんと友達になりたいというので」

「はぁ?」

「うん、そうね。私も最初聞いたときそんな感じだったわ」

 

 と、アリサの反応に海香がうなづいた。自身を殺しかけた人間と友達になりたいなんて酔狂な人間、この世に何人いる事だろう。だが、れいかとやよいの二人の脳裏に何人も思い浮かぶのも怖いところである。

 

「わたしと似てるかな……」

「え?」

 

 その時、マツリがそうつぶやいたような気がした。どういうことなのかを聞く寸前、アリサが何かに気が付いた。

 

「アイツ!」

「え?」

 

 アリサの目線、それはれいかたちの後ろに向けられていた。三人はその先を見るために後ろを向く。そこにいたのは、その答えはマツリが言ってくれた。

 

「ス、スズネちゃん……」

「ッ!」

 

 反対側の路地裏から、誰かを追っていたらしく、走った後のように息切れを起こしながら左右を見渡している。そしてまた同じ路地裏へと戻っていく。間違いない、遠目から見てもその特徴的な髪飾りが見える。鈴の付いたお守り、先ほどまでの聞き込み通りだ。その姿をみたアリサは、瞬時に道路を横切って魔法少女に変身して海香にしたように彼女に飛び掛かる。

 

「天乃ォ……スズネェ……!!」

 

 スズネも変身して、その攻撃を受け流す。そして、アリサは後ろに跳んで距離を取った。

 

「アンタの事はマツリから大体聞いたわ。謎の転校生だかなんだか知らないけどね……」

 

 アリサは、頭上で武器の鎌を回転させる。それは、まるでスズネを威嚇するように。だが、スズネは顔色一つ変えない。

 

「んなことどーでもイイわ。アンタはチサトの仇……」

 

 そして刃を左斜め下にして臨戦態勢を整えて言った。

 

「今度こそ、ブッ潰す!!」

 

 なんとも、血の気の多い。だが、スズネは冷静に言う。

 

「……今の貴方では私には勝てない。それに私は奏ハルカに用がある」

「ッ!……なるほどね……!こんどはハルカを狙おうってワケ!?そんなことさせない!!マツリ!」

「……うん!」

 

 奏ハルカ、聞いたことのない名前だが、二人の反応からすると、先ほどの話の中に出てきたチサトとは別のもう一人の仲間の事なのだろう。

 

「大変、私たちも……ッ」

 

 れいか、やよいもまた変身しようとする。しかし、またも海香に止められる。

 

「貴方たちは、かずみとカオルを呼んで、ここは私に任せなさい」

「でも……」

「大丈夫、魔法少女同士の戦いは慣れてるの」

「……分かりました。お気をつけて」

「……スズネちゃんゴメンね……」

「……何度やっても同じよ、何人集まろうとも……」

 

 

 

 

「愚かね」

 

 三人がスズネと戦っている間に、やよいはみゆきに、れいかはあかねに連絡を入れた。あかねの方には連絡が行き届き、すぐにこちらへと来ることになったが、みゆきには連絡が付かなかったようだ。それもそのはず、みゆきとかずみは電波の届くことのない、魔境へと潜り込んでいたのだった。

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