映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
後は本編をどうするか。
事件は全て解決した。カガリに関しては一度保護という形でB.A.B.E.Lの方で保護し、後々警察のほうに引き渡すことになった。スズネもまた同じく。
流石に少年院のへの入院の可能性があるが、マツリと完全に会うことができなくなるというわけでもないし、根が優しいスズネなのだから、きっとすぐに出ることができるはずだ。カガリもまた、改心してくれることを願ってこの事件の幕は全て降りた。
そう。この事件は、である。
「QB……お前に聞きたいことがある」
「なんだい?」
皆本は、B.A.B.E.Lの本部に応援を呼び終えると、すぐにQBに話しかけた。戦いの中で彼が気になったこと。疑問になったことがあったからだ。
そう、それは名前だ。自分の記憶が確かならば、彼が知っていることがおかしな名前を、おかしなタイミングで言い放った。それがとても気になったのだ。
「花咲つぼみ、来海えりか……」
「ッ!」
「え?」
プリキュアの仲間たちは、皆本の口から出た言葉に驚愕した。特に、ムーンライトにとって、その名前は自分を救ってくれたとも等しい仲間の名前だったからだ。
「君は、その名前を戦いの中で、それも成見亜里紗を洗脳から救うときに言い放った。二人が行ったように、ソウルジェムの汚れをとろうとしている……と」
「それって……!」
そう。QBはたしかにアリサに向けてチルドレンたちがトリプルブーストを使用している最中にその名前を言い放っていたのだ。さらに、そのQBの言葉からして、QBが二人の名前を知っているだけじゃなく、二人もまた魔法少女、そして魔女のことを知っているということの裏付けでもあった。
「どういうことなのさ! QB!?」
「どうして、二人のことを……」
「魔法少女……願い……もしや!」
「ビューティ、どないしたんや?」
その時、ビューティーの脳裏に最悪な答えがよぎった。彼が、QBが二人の事を知っていた。その理由。全てが、それにつながっているというのならば話は早い。しかし、もしもそうだとしたのならば、なんて悲しい事だろうか。例え、彼女たちが魔法少女の秘密を知らなかったとしても、なんて。
「考えたくもないですが……QB、貴方は……」
ビューティーは、今にも泣き出しそうなくらい悲しげな表情を浮かべてQBに聞く。自分の、最悪な仮定話を。できれば、外れていてほしい。二人の身に何も起きていてもらいたくない。そう、考えながら。
「契約したんですか、つぼみさんと……魔法少女の契約を」
「その通りさ」
「なッ!?」
その答えは、プリキュア、プリキュア以外。つぼみたちのことを知る知らない者たちの顔を驚愕に染め上げるのに十分であった。
あまりにも間髪入れずにQBが答えたために、一瞬だがビューティーの質問の意味すらも分からなかった。そんなものが多かったであろう。その中でも一番に現状に復帰することができた皆本が聞いた。
「どう言うことだ!?」
「花咲ふたばさん……つぼみさんの妹なのですが、心臓に重い病気を持っていて、それを治すために見滝原に、つぼみさんもまたそれについて行ったと言ってました」
「ふたばちゃんの病気は、治ったといつきからは聞いたけど……まさか!」
「魔法少女になる時の願いで……治したってこと?」
花咲ふたば、つぼみの妹であるまだ赤ちゃんである女の子で、生まれつき心臓に病気を持っていた彼女は、心臓疾患ならびに小児科医療の充実していた隣町の見滝原総合病院に入院したということ。そして少し前にその病気が奇跡的に完治したという情報を知っていた。
当初は死の淵に立たされそうになっていた女の子に訪れた奇跡に、プリキュアの仲間たちの誰もが喜んだ。けど、もしもその奇跡がつぼみが魔法少女になる時の願いによる物だとしたら。それは、奇跡なんかじゃない。自己犠牲だ。いや、それもこれも魔法少女の過酷な運命を彼女たちが知っていた場合のこと。もしも知らないうちにつぼみが魔法少女になっていたのならば、それもそれで哀しことであるが。
「そう考えられます。QB、どうですか?」
「その通りだよ」
「そんな……」
と、その時だ。ムーンライトの持つスマホが鳴った。とてつもなく絶妙なこのタイミングで、である。
「いつき? どうしたの?」
電話の相手は、いつきという少女。彼女もまた、つぼみやえりかと同じ、ムーンライトの仲間である。今このタイミングでの電話。なにか嫌な予感を感じながらもその電話をとったムーンライト。
「……え」
次の瞬間。彼女は、手に持つスマホを握る握力がなくなり、脱力。スマホは、地面へと吸い込まれるように落ちていった。
「一体なんの話だったの?」
「……」
「ゆりさん?」
ムーンライトは、まるで出来の悪いカラクリ人形のような動きで仲間たちの方へと向くと言った。
「つぼみと、えりかが、行方不明になったって」
「!?」
「そんな、どう言うこと……」
これは、たんなる偶然か。つぼみが魔法少女になったという話を聞いたその直後に、行方不明になるなんて。いや、偶然じゃない。二人に何かがあったのだ。それも、自分たちが想像することもできないような何かが。
「薫ちゃん!」
「……ッ! 分かった! ハァッ!」
瞬間、薫は超能力を使用した。相手はーーー。
「ッ! 何を!」
当然のようにQBである。彼のいうように、なぜいきなりそんなことをしたのか。全ては、紫穂の指示である。薫にQBを能力で拘束するように指示を出しだ紫穂は、すぐさま彼に近づいた。
「悪いわね。チマチマ話を聞くよりこっちの方が楽だから。薫ちゃん! そのまま!」
「分かってる! 絶対に逃がさない!!」
そう。いちいちQBに話を聞いていたら、どれだけ時間が経つか分かった物じゃない。ならば、彼を拘束し、その間に自分の能力で彼の脳内を除けばいいだけだ。
そう考えた紫穂だったが、それがどれだけ危険なことであったのかすぐに判明する。
「ッ! うぅ……」
なんだ、この情報量は。一体、何十、何百体分の記憶があるのだ。何年、何十、何百年分の記憶があるのだ。それは、彼がこの地球に降り立ってからの全ての記憶。それら全てを読み取るのは実質不可能に近い。
人間の脳はそれほどきおくできるようにできていないのだ。それ以上を記憶すると、待っているのはよくて廃人か、あるいはーーー。
「紫穂!」
「だい、じょう、ぶ!」
取捨選択しなければ。必要な情報は、数年じゃない。ここ一月程度の話。アメリカ、インド、フランス。そんな他国の情報なんていらない。沖縄、北海道、東京。そんな遠い土地の記憶なんていらない。必要なのは、必要なのは,必要なのは。
ここ!
「きゃッ!」
その瞬間、紫穂は弾け飛んだ。力の出し過ぎと負担でオーバーロードのような形になったのだ。だが、そのさきに偶然かずみがいたためにその体が壁に叩きつけられることもなかったのは不幸中の幸いだ。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「紫穂!」
「紫穂、大丈夫か!?」
「え、えぇ……それより……」
駆けつけた仲間にそういった紫穂。そう。自分のことなんか後回しでいい。今重要なのは隣町にいる魔法少女たちなのだ。
彼女は見た。つぼみという少女、そしてえりかという少女が魔法少女になる瞬間を。一体の魔女をソウルジェムに戻して、妹のため、そしてそのソウルジェムの持ち主のために彼女たちが全てを知りながらも契約したということを。
そしてその先に待っていた仲間の魔法少女の魔女化と、三人の魔法少女との戦い。そのうちの一人は彼女も知っている女の子だった。
同じB.A.B.E.Lの仲間、ということになる賢木が見せたイメージ映像を見た時、そして魔法少女という存在を知った時にもしやそうなのではないかと思っていた。しかし、まさか本当に彼女も魔法少女だったなんて、そして敵対していたなんて、思っても見なかった。
「紫穂、何が見えた!」
何が見えた。そう、聞かれるとこう答える。たくさんのものが見えたと。しかし、当然その全てを説明している時間はない。
見えたのだ。彼女には。見滝原にいる、つぼみやえりかも含めた魔法少女の面々が危機に陥っている姿が。なぜ気が付かなかったのだろう。先程まで見滝原で捜査していたはずなのに、どうして気づいてやることができたなかったのだろう。こんな大事件が起こっているなんて、どうして。
「見滝原の、魔法少女の子達が危ない!」
「え?」
「それ、どう言う事?」
「説明してる時間もないわ! 早く行かないと……」
そう。早くいかないと手遅れになるのだ。いや、もしかしたらもう既に。
そんな、珍しくも紫穂が焦っている姿を見せた瞬間だった。
「え?」
「なに、これ……」
「サニー! ピース! マーチ! ビューティ! ムーライト!」
スマイルプリキュアのハッピーを除いた四人。キュアムーンライトの、そしてーーー。
「クル!?」
「キャンディ!」
妖精のキャンディの体が光り出した。この感覚は、まさか魔力か。そう魔法少女の面々が判断したのも束の間だった。五人と一体は、一瞬だけ強い光を放ち、その場にいた人間たちの目をくらませたと思ったら、目を開けると、そこには誰もいなくなっていた。
まるで、そこには元々誰もいなかったかのように綺麗に。消え去っていた。
「みんなが、消えちゃった……」
「何故、プリキュアの皆が……」
「プリキュアを狙ったテレポーテーション?」
と、B.A.B.E.Lのエスパーは考えていたがしかし、魔法少女の面々の見解は違っていた。
あの時感じた魔力。もしかしたら彼女たちは魔法によって飛ばされたのではないだろうか。けど、どこに。それに、もしもプリキュアだけを狙った物だとしたら不可解なことがある。
「ちょい待ち! せやったらなんでロゼッタやハッピーが……」
そう。どうしてキュアハッピーとキュアロゼッタがこの場に残されているのだろうか。特に、ハッピーに至っては他の仲間たちが飛ばされたにも関わらず、である。
新たな謎が芽生えた直後、さらに事件は巻き起こる。
「うっ……」
「ハッピー!」
ハッピーが、崩れ落ちた。そうだ。自分達はとんでもないことを忘れていた。今までなんともないように振る舞っていたから完全に忘却の彼方に消え去ってしまっていたが、彼女は先程重傷を負ったばかりなのだ。それも、命の危険が考えられるほどの。
だが、崩れ落ちたのは彼女だけじゃない。
「ッ!」
「ロゼッタ!?」
キュアロゼッタもまた、その場に両膝をつくように崩れ落ちた。
どうして彼女まで。彼女は別に重傷を負うようなことなんてなかったはず。それなのになぜ、同じタイミングで崩れ落ちたというのか。
「い、一体これは……」
周囲の人間が困惑する中である。
光が二人を襲った。それも他のプリキュアをさらった光なんて目じゃないほど強く、そして禍々しい光だ。
桃色の光に包まれたハッピー、黄色の光に飲み込まれたロゼッタ。その意識は、もうここにはそんざいしていない。いたのは、真っ暗闇の空間の中であった。
何も見えない。光はおろか、自分の姿すらも見えない不可思議な空間。その中で、二人は聞いた。
あなたたちの願いを教えて
と。
「願い?」
「願い……私の、願い?」
一方その頃。二人の姿を見ていた魔法少女のかずみやスズネたちはその姿にどこか既視感のようなものを感じていた。
「これ、まさか……」
そう、これは紛れもなくQBが普通の女の子を魔法少女とする時のそれにそっくりなのだ。けど、こんなに光り輝いていたか。こんなに強い風が吹いていたか。こんなに、静かだったか。
違う。これは、なにかが違う。
願いなさい。貴方の願いを
「そっか、なら、私の願いは……」
「私の、願い……は」
闇の中にいた二人は願う。奇しくも、ソレはどちらも似ている物だった。違うところといえば、生者と死者の違い。
一人は物言わぬ肉体を頼んだ。
一人は虚無にいるかいないのか、わからない者を頼んだ。
それが正確に叶えられるものかどうかはわからない。それに意味があるのかもわからない。でも、それでも彼女たちは望んだ。
本当のハッピーエンドを。
そして、そのために自分自身を犠牲にするということを。
そして、周囲にいる人間たちは見た。
「嘘、ソウルジェムが!?」
彼女たちの胸から露出し始めているソウルジェムの姿を。
まさか、QBが二人を魔法少女にしているのか。いや、違う。
「そんな馬鹿な……僕は、なにもしていない、何もしていないのに!?」
こんなに動揺を見せるなんて、あのQBがここまで感情をあらわにしているなんて。この姿から察するに、おそらくこれは彼の仕業ではないのだ。だったら、一体なんなのだ。自分達は、一体何を見ているというのだ。
なぜ、彼女たちは笑っているのだ。何もわからないままに、ハッピーと、ロゼッタは言った。
「一度無くなった命を蘇らせる事はできない……でも、これなら……」
「私の、大切な友達を……」
奇跡を、願いを。
叶えてほしいと、二人は口ずさんだ。
夢の中で見た何かに向かって。
そして、二人のプリキュアがこの世から消えた。
ならびに、この世界にまた新たな魔法少女が二人、誕生した。
変身が解けた二人の少女は、意識を失ってしまったらしく、その体が力なく後ろに倒れようとしていた。
「みゆき! ありす!」
周囲にいた仲間たちは、彼女たちが倒れる前に駆け出した。受け身の取れない彼女、このままでは頭を地面にぶつけて大怪我するだろう。その前に、なんとかしなければ。
しかし、彼女たちがたどり着こうとした直前だった。
「!?」
光に包まれた一人の女性が現れたのだ。一体何者か、女性は倒れかけた二人の事を抱きかかえると周囲を見渡す。どうやら、困惑しているようだ。何故、自分がここにいるのだろうかと。
「ここって……ありす? それに、みゆきちゃん?」
二人の事を知っている。ということは、女性はプリキュアの仲間なのだろうか。あるいは、協力者。光が収まってくると、徐々に女性の姿が見えてきた。だが、その姿ははたから見れば滑稽だ。
着ているのは桃色のジャージ。だが、とてもじゃないが女性の大きさに合わせているとは思えない。小さすギルのだ。だから、ズボンは女性のくるぶしからひざ下くらいまでのやや日焼けした足が見えており、上着もまた身の丈に合っていない様で、前のファスナーは止めることが出来ず下のシャツがさらけ出されている。
それに、服もズボンもどちらもボロボロで、みすぼらしいと言ってもいいのかもしれない。でも、何故かそんな女性のことが格好良く見えた。
「そっか、私たち……戻ってきたんだ」
戻ってきた。一体それはどういう意味なのか。皆本が女性に聞こうとした瞬間である。光が完全に収まり、女性の顔が見えた。
「な、君は!?」
知っている。この顔。前にB.A.B.E.Lのデータベースで見たことがある。しかし、変だ。確か、彼女は今14歳の少女のはず。それなのに、なんだこの体格。まるで何年も戦い続けてきたような風格は、一体なんだ。どうして、中学生だったはずの女の子が大人になっているのだ。
困惑する皆本。それに気が付いたのだろう。女性は、彼に向けて笑みをこぼし、言った。
「初めまして。私は相田マナ……今は、二十三歳……かな?」
二十三歳、どういうことだ。何故いきなり彼女は九歳も年を重ねたのだ。そんな疑問が沸いてくる中で、彼女はありすの懐に乗っているソウルジェムを優しく撫でた。
そうか、自分を、この世界に戻したのは、戻してくれたのは、帰らせてくれたのは彼女だったのか。
ならば言おう。ありがとうと、そして―――。
「ただいま!」
命と音は同じである。
どちらも人と人を繋げて、どちらも未来に繋がって、そしてどちらもいつかは消えゆく物。
どれだけ耳の奥に残る音楽であってもいつかは消える。
どれだけ大切に育てられた命も、やがて消える。
そんな儚い定めが待つ二つの繋がり。
でも、終わりがあるからこそ、人は命を大事にする。
終わりがあるからこそ、人は音を一生耳に残そうとする。
終わりがあるから、人は繋がりを大事にする。
例え誰かの命が潰えても、その命が作り出してくれた繋がりや絆は誰かが未来へと持って行ってくれる。
例え音を演奏してくれる人間がいなくなっても、楽譜という物があれば、誰かがソレを未来で演奏してくれる。
命は終わる。音は終わる。でも繋がりは消えない。
命は新たに産まれる。音は、新なる音楽を生んでくれる。繋がりは、誰かに繋がっていく。
今はそっとしておこう。
その繋がりが、誰かを再び繋げてくれるその日まで。
誰かが覚えている限り、命は繋がっていくのだから。
誰かがいる限り、繋がりは消えないのだから。
この世から、音が消えることは無いのだから。
リィン……