ONE PIECE 暗殺者は信じない 作:瞳やんと
ここプライベートが忙しく、なかなか文に取り掛からないことが多かったので、今回はリハビリとして投稿しました。
この作品で指を鳴らして、調子を取り戻していこうと思います。
アメリカ。
高層ビルが立ち並ぶ深夜帯。
ある男は、煌びやかなネオンに照らされながら、不敵に笑いながら歩いていた。
手の感触から伝わるのは、ある「粉末」。
そして乾燥させた「アレ」は、徐々に彼の笑みを深くさせる。
ああ、早く吸いたいなぁ。
それだけが彼を支配し、彼は足を速めた。
そして、薄暗い路地に入る。
その時だった。
「脱法ハーブの快楽に浸かる気分はどう?」
突然、背後から声をかけられた。
男はびくりと肩を震わせ、振り向く。
路地の入り口付近にいる女性ーーーいや、少女を見つけると、一心に彼女を警戒し、観察した。
黒いスーツ姿で、髪をお団子ツインテールにしている女性……そして顔立ちはーーーー日本人。
こちらを見て笑っている少女に、男は余裕の笑みを見せる。
「なんだね嬢ちゃん。痛い目に遭いたくなかったらさっさと去るんだな」
「あら。こっちの質問には答えてくれないのね。アメリカ人ってマナーが悪い人の集まりなのかしら」
日本人でありながらスラスラと喋っている。
日本人がどれだけ外国語が話せるか理解してないが、それよりも煽りのように聞こえた少女の応えに、男の沸点が近づく。
早く吸いたいのに。
この女が邪魔だ。
それだけが、彼を支配している。
男は少女に近づき、気持ち悪い笑みを浮かべた。
「おいおい嬢ちゃん。あまり大人を怒らせるもんじゃねぇ。もう一回言う。痛い目に遭いたくなかったらさっさとお家に帰りな。……ああ、もしかして物理のことだと思ってるか?なら言い方を変えてやろう。ーーーー気持ちいいことになってもいいのなら、付き合って」
「もういいわ」
直後。
意気揚々と喋る男の額に、硬いものが当たる。
男は視線だけでそれを辿るとーーー黒い物体が映った。
そして次に映ったのが、少女の手。
男の体は冷えだし、再度確認する。
男の額に向けられている黒い物体。
そしてそれに手をかける、少女の手。
そこから導き出されるのは。
少女が手にしていたのは『拳銃』だった。
「ひ、あぁっ!?」
それを認識すると、男は先程とか打って変わって怯えだす。
数歩距離を取ろうとしたが、足に力が入らなくて尻餅をつく。
それに合わせて、銃口はゆっくりと、男の方へと向き直る。
暗闇で少女の表情が見えないのが、男の恐怖心をさらに高ぶらせていた。
少女は言う。
「脱法ハーブって凄いわよね。自分の快楽の為に、どんなに周りが犠牲になっても吸い続けちゃう魔法の薬。まだ世界中に存在するキケンなお薬。真実はどうなんでしょうね」
少女の冷たい声が逆撫でする。
男はほぼ過呼吸状態になっていて、まともに会話ができなかった。
それを知っていてもなお、少女は続ける。
「まぁ、そんなものがなくても、世界中には狂った人が何千何万といる。永久に絶えない無限ループ…なんて言ってもいいかもね」
ハンマーを下す。
「苦しそうね。長い話は好きじゃない?安心して。今のあなたが見ているのは『幻覚』。脱法ハーブの副作用よ」
男の手が、滑る。
背中を強く強打した男だったが、それよりも、「死ぬ」という恐怖が、彼をさらに追い詰めていた。
そして。
「じゃあ、幻覚を覚めさせてあげる」
「おやすみーーーーーー『醜い人間』」
世界は暗転した。
バイブ音が鳴る。
少女は胸ポケットに入れていた携帯を取り出し、電話の相手を確認して出た。
『仕事は終わったようだな』
電話の相手は男だった。
何処か妖艶を見せる男の声に、少女は顰めっ面を見せる。といっても、少女の表情は彼にはわからないが。
男は続ける。
『今どこにいる』
「目的地から西通り」
『迎えを向かわせる』
「必要ないわ」
『そうか。なら次の仕事を言い渡す。よく聞け』
電話の向こうから、紙をめくる音が聞こえる。
少女はその音を聞きながら、また口を開いた。
「ねぇ」
『何だ』
「迎えを寄越すなら、着替えを持ってきてくれないかしら?硝煙の臭いが付いて嫌なのよ」
『……どういう風の吹き回しだ?今まではそんなもの、気にもしなかっただろう』
「………そうね」
少女自身もよくわからなかった。
だがこの硝煙の臭いに何故か嫌悪感を駆られ、一刻も早く取り除きたいと一心に思ってしまった。
もう一度言う。少女自身もよくわからない。
男の溜息がよく聞こえてきた。
そして、やれやれという調子で言う。
『お前も、乙女になってきたのか?』
「馬鹿言わないで。そんなふざけたことに一切興味はない」
『年頃の娘とはよくわからないものだ。ーーー迎えは向かわせる。だからお前はその先にあるビバリーヒルズ行きのバス停で待っていろ』
「……わかった」
ここからバス停まではそんなに遠くはない。かれこれ10分も歩けば着く距離であろう。
それを確認し、男はまた紙をめくる音を立てた。
『で、次の仕事だが。明日の早朝を狙う。場所は少し遠いところだが、カリフォルニア州ダウンタウン・ロサンゼルスの、北のほうにある住宅街だ』
「ダウンタウンからは出ないのね」
『ああ。……迎えが来れば、そこから直球で行かせることができるが』
「お願いするわ」
もうそろそろバス停に着く頃だろうか。
少女は少し足を速めながら、男と会話を続ける。
悲鳴が聞こえても無視。
騒めきも無視。
この男との会話を優先しなければならない……不本意だが。
だが男は構わず、少女の周りを検索し始める。
『周りが騒がしくなってきたぞ?』
「…………………」
『もしや、また早めにやってしまったか?』
「人のいるところで、そういう直球はやめてくれない?」
『ああ失礼した。ならこう変えようーーーーー相手の醜さにイライラして、つい光の当たるところで殺してしまったか?』
「ええ。だってイライラしたんですもの」
即答だった。
男は笑いを押し殺して、なおも続ける。
『ククッ…!ああ、やはりか。だと思ったよ』
「その話はもういいかしら?どうせ処理できなくて、明日には報道されるんだし…さっさとターゲットの情報を言って」
『ああ失礼した。じゃあ言うぞ』
紙の音を立て、男は続けて言う。
『ターゲットはサロン・ジェルバード。女。表では高層ビルの社会人として生活しているが、裏では何かコソコソとやっているらしい』
「正確なことがわからないの?」
『ああ。依頼人からは、こいつが裏で何かやっているから調べて欲しいとだけ来たが、その後突然殺して欲しいと来てな。俺達もよくわからない』
「意味がわからないわね。裏で何をやっているのかが気になるわ。ーーーでも、殺るんでしょう?」
『ああ。どんな理由であれ、依頼は依頼だ。ーーーーー殺せ』
簡潔にそう命令された。
少女は「了解」と応え、次の情報を求める。
「で、その人の容姿は?」
『………………ちょっと待て。……………よし。写真を送る。あとはそっちに任せる』
「了解」
イヤホンを取り付けて、耳から聞こえる男の声を聞きながら、送られてきた写真に注目する。
送られてきたのは、金髪の女性だった。
男から正確な情報が聞こえてくる。
『金髪のロング。身長は176cm。目の色は青眼で、小顔。歳は20前後の女性だ』
「普段着ているものはわかる?」
『焦げ茶色のトレンチコートをよく羽織っている。あと、白色のバッグをいつも肩にかけている』
「………まぁ、それくらいなら大丈夫か」
そう言いながら、少女は前を確認するために顔を上げた。
いつの間にかバス停に着いていたようだ。
少女はバス停から少し離れた路地裏に位置づき、男の会話を続ける。
『迎えももう少しで着く』
「わかった。迎えの車は?」
『赤色のフェラーリだ』
「また高級車を…懲りないわね」
『若い内に贅沢はするものだぞ?』
「余計なお世話」
と言いながら、辺りを見渡した。
その行動をしている時に、少女の目はある女性に止まった。
女性はこちらに背を向けて立っている。恐らく、バスを待っていると思う。
だが少女は目を凝らし、先ほど送られてきた写真を照らし合わせる。
女性は金髪のロングーーー当てはまる。
身長は176cmーーー正確ではないが、170後だというのは確信できた。
そして焦げ茶色のトレンチコートに、白いバッグーーー当てはまる。
後は、顔を見ればーーーー。
少女はイヤホンを押さえ、男に言った。
「ねぇ」
『何だ?』
「迎えの車。ちょっと待ってもらえないかしら」
『どうした?』
「ターゲットの女が見つかったかもしれない」
『何?』
男は訝しそうに返す。
やがて数秒後に、少女に言った。
『もしターゲットの女だった場合、追跡しろ』
「迎えの車は放っていくわよ」
『構わない』
「わかった」
それだけを言い、少女は『通話を続けたまま』ポケットの中に携帯を入れる。イヤホンも付けたままだ。
そして、ごく自然に女性の隣に行く。
そして腕組みをし、いかにもバスを今か今かと待ち望んでいる客に装う。
装いながら、少女はちらりと、女性を観察した。
そして、確信した。
女性の前髪から覗く「青眼」。
そして、他の人よりも若そうな雰囲気。推定「二十歳前後」。
さらに、少し小顔。
ビンゴ。少女はこの女性がターゲットの女性だと確信し、そして男にこう伝えた。
「当たり」
『よし、追跡しろ』
「……………」
無言で俯く。
そして、バスが来た。
バスには恐らく夜勤帰りのサラリーマンやOLが乗っているであろう。
女性の後に、少女も続く。
そこまで混んでいなかったので、席は十分に空いていた。
女性は二人席の方に座る。
なら自分は、その二つ後ろの席に座ろうと進んでいた。
その時だった。
空気が冷たくなった。
いや、正確には『少女の周りの空気が冷たくなった』。
少女は足を止め、腰あたりに伝わる『冷たい空気』に、視線を向ける。
ゆっくりと、そこから続くもの。
少女は空気を止め、『ソイツ』を睨んだ。
「オトナリ、ドウゾ」
拙い日本語だった。
しかし、その単語だけはこちらに向けて言ったのはわかる。
少女がどうしようかと迷った時、『流れに身を任せろ』という男の指示が出た。
少女は少し顔を顰め、しかし女性の言うとおりにして、その席に座ろうとする。
「座る以前に、それを仕舞ってもらえない?」
声を小さくして、少女はそう言う。
女性は『ソレ』を器用に、かつ素早く仕舞い、手に持った。
『ソレ』を見せびらかす女性に不信感を感じたが、刺激させてはいけないと、女性の隣に座る。
そして、バスが動き出す。
一言も、発しない。
女性も、少女も。
周りの人も。
最初に喋ったのは、女性だった。
「日本語デ、シャベリナサイ」
やはり拙い日本語だった。
しかし何かの意図があると睨んでいる少女は、女性の指示に従う。
「………あなたは、サロン・ジェルバードでいいの?」
「イカにも。ワタシがサロンデス」
「私を脅して何をしたいの?」
「ミライの扉をヒラクためデス」
「……は?」
何を言っている。
そんな風に返すと、女性ーーーサロンは、またナイフをちらつかせた。
「ダイジョブデス。キョカハもらってイマース」
「何を言っているの。説明しなさい」
「説明、デスカ。もうシッテいるとオモッテイマシタガ」
「何なの。あなた何を言っているの」
本当に、この女は何を言っているんだ。
もう周りのことなんか忘れて、怒鳴り散らしそうだった。
しかしサロンは、尚もすかした表情で、言う。
「デハカンケツニ説明シマショ。
と言っても、モウ始まりマス」
その時だった。
バゴォォォンッッ!!と、前方で爆発が起こった。
少女は驚き、前方を見る。
それと同時にバスは急停車し、多くの人がその反動を食らう。それはもちろん、少女も例外ではない。
だがそれよりも、少女はこの出来事を飲み込めないでいた。
バスの目の前で起こった爆発は、尋常ではなかった。
道路の道端で起きた、謎の爆発の規模は大きかったのだ。
窓は割れ、爆発の近くにいた人は血を流し、そして地面も抉るように破壊されている。
せめてもの救いは、その周りに人があまり少なく、かつあまり近づいておらず、死者が少ないということだろうか。
一体この爆発は、何なんだ。
その爆発音は男にも届いていた。
男は焦ったように少女に聞く。
『おい、なんだ今の爆発は!?』
「前方で大規模の爆発が発生したわ」
『は?何だって急に…!』
「わからない。だけど……」
言葉を濁し、少女は隣のサロンに目を向ける。
サロンは、笑っていた。
ただ、笑っていた。
バスの中にいる人たちのざわめきも大きくなり、外の人達の悲鳴も、混乱も大きくなる。
そんな中で、少女とサロン……正確に言えば、少女がサロンをジッと睨んでいた。
少女は言う。
「これはあなたの仕業?未来の扉を開くために、やったことなの?」
「ええ。そうよ」
いきなり日本語から外国語に変わった。
少女はそれに少し驚きながらも、自分も外国語で対応する。
外国語の彼女は、明らかにさっきから雰囲気が変わった。それを頭の中に入れて。
「何故?」
「それが私の仕事。安心して、死者は"いない"」
「そう。それがあなたの裏の仕事ね。なら、ここで片付ける」
人が多いが、仕方がない。
これ以上被害が出ないために、そして"自分の為に"。
少女は銃を取り出して、引き金を引く。
はずだった。
「ダメよ。それじゃあ私を殺せない」
銃を構えた少女を見ても、サロンはただそれを見ているだけだった。
まやかしだ。こいつが言っている事は。
銃弾を頭で受ければ、こいつは死ぬ。
どうせ、恐怖に怯えているだけ。
少女はそう、自分に言い聞かせる。
だが、何故だろう。
嫌な予感がするのは。
女性は、続ける。
「後20秒で、扉は開かれる」
「……は?」
「そう、未来の扉が」
「その未来の扉というのは、一体何なの」
嫌な汗が出る。
だめだ。こいつの言葉に惑わされてはいけない。
だけど、頭に残る。
「未来の扉ーーーーつまり、第2の扉。その扉が開かれる条件は、わかる?」
「全く意味がわからないわ。さっさと答えて!」
『おい、一体何をしている!?』
男の声が響く。
拳銃を掴む手に、力が入る。
呼吸が時々止まる。
そして、サロンが言った。
「それはね
死ぬことよ」
「ーーーーーーは?」
次の瞬間。
ドゴォォォンッッ!!と、バスの中で大きな爆発が起きた。
バスが振動する。
血が飛び散る。
火花が散る。
炎が上がる。
人の焼ける臭いがする。
尋常じゃない痛みが襲う。
何かが焼き切れる音がする。
少女はそれを一度に受け。
そして、暗転した。
「第2の扉が今、開かれる。
その扉に行く資格がある者は、計12人。
さぁ、その『第2の人生』で、波乱に暴れなさい」
それは幻聴だったのだろうか。
だが、何も考えられない少女に。
そんなものが幻聴がどうか、わかるはずがなかった。
扉が、開く。
第1話、ありがとうございました。
あとがきはこの本文の解説や、雑談などに使うつもりです。
時には一言で済んでしまう時もありますので、ご了承ください。
さて今回は、サロンが多く謎を残していきました。
ここで全部晒しはしませんが、ちょっとでも皆様の疑問にお答えできるように頑張ります。
■少女
今回の主人公です。容姿はBWのファイツちゃんを元にしています。
少女の過去は男だけが知っています。あとは誰も知りません。
使用するのは銃とナイフ。時には収納性の棍棒を使います。
■男
少女のボスに当たる人です。
少女は男の命令で動きます。しかし全てが殺しの依頼なので、言わなくてもやっちゃうことが多いです。
使用するのは謎。
■女性【サロン・ジェルバード】
今回のキーカードということは、もうみなさんのお分かりですね?あれだけ派手にやってしまえば嫌でもそう思うでしょう。
数々の謎を残していきましたが、本編でどう関わるかは楽しみにしといてください。
使用するのは基本ナイフです。
続いてタグの説明。
今回皆様疑問に思ったことベスト5に入るでしょう。何故サンジが入っているのかと。
実はこの作品、非常にサンジがよく出てきます。
もしかしたら原作主人公のルフィを抜かすほどに出てきます。断言します。凄い出てきます。
なので今回はタグにサンジと入れさせていただきました。
……甘い雰囲気が漂っても、暖かい目でニヤニヤしながら見てくださいね?
ではこれにて失礼します。
2話もよろしくお願いします。