ONE PIECE 暗殺者は信じない 作:瞳やんと
体の激痛が治まらない。
体中が、凄く痛い。
頭がグラグラする。
体もグラグラする。
でも、硝煙の臭いはない。
何かが燃える音も、臭いもない。
悲鳴も聞こえない。
足掻く声も聞こえない。
聞こえるのは、風音だけ。
何で風音が聞こえるのだろう。
それに、何か下から押し上げられているような気がする。
体が冷たく感じる。
ああ、自分は死ぬのだろうか。
まだ何も。
"復讐"も、果たしていないのに。
そして彼女は。
暗い"海"へと、落ちていった。
「…………」
知らない天井だ。
目が覚めた彼女が最初に思ったのは、それだった。
ここはどこだろう。
いや、そもそも自分は生きているのだろうか。
あの爆発では、死んでいるはずだ。
なのにこんなに五体満足でいれるはずがない。……いや、もしかしたら四股全部痺れているという可能性もある。
だから手を動かした。
しかし。
「……ッ!?」
手を動かした瞬間、激痛が走る。
いや、ちょっと待て。
まず自分は手を動かせるのか?
だから痛みを感じるのか?
足も、ちょっと動かせば痛みはそんなに来ない。
普通に動かせる。
……なら、自分は。
五体満足で、生き残っているのか?
少女は信じられず、目をパチくりとし、今の状況を確認しようと首を動かす。
そして、見た。
カチャカチャと何かをやっている。
動く、トナカイを。
「…………え」
いや、動くのは当たり前だ。生物なのだから。
だが今はその『二足で動くトナカイ』に驚き、思わず声に出してしまった。
その声が聞こえたらしいトナカイはこちらを向き、満面の笑みでこう言う。
「おお!気がついたか!体調はどうだ?」
なんでトナカイが喋るのだろう。
少女は状況を深く飲み込むまで、開いた口が塞がらなかった。
■(´・ω・`)■
麦わら海賊団は、のんびりと航海を続けていた。
ルフィ、ウソップ、チョッパーは釣りをぐうたらと続けており、ゾロは筋トレ。ナミとロビンは今デザートを運んできたサンジの料理を堪能している。
何も無い、このまま何も無い時間が過ぎると思った。
だが。
「……ん?」
それに気づいたのはルフィだった。
空を見ていたルフィが『ソレ』を見つけたのは、偶然だった。
ルフィは手を翳し、目を細めて『ソレ』の正体を暴こうとする。
それを見たウソップは「どうしたルフィ?」と声をかけた。
「……何か落ちてる!」
「え?」
ルフィが立ち上がってそう叫ぶ。
ウソップもそれに釣られ、チョッパーもそれに釣られて空を見上げた。
そしてそれが伝染するかのように、他の仲間も空を見上げる。
空から降ってくる『ソレ』は。
「ーーーー人間だぁ!」
「しかも女性だ!?」
ルフィがまた叫び、サンジが目をハートにさせて後に叫ぶ。
落ちているのは、二人が言ったように『人間の女性』だった。
そんなに距離はないので、海に落ちてもぎりぎり助けられるが、あまりゆっくりとはしていられないであろう。
それに。
「……おい、あいつ怪我してねーか?」
また目がいいルフィが言った。
それに同調して、ゾロも顔を顰める。
「ああ。結構な怪我だ。ありゃやべぇぞ」
「何!?なら早く助けないと!」
サンジがスーツの上着を脱ぎ始めると共に。
その女性の体は、海へと近づいていった。
「おいルフィ!お前ギリギリで受け止めれねーのか!?」
「よっしゃ任せろ!」
「まぁて!?お前がやったらあの子の傷が増えちまうじゃねえか!」
「ハッ、そうだ!」
「いやそんなこと言ってる場合じゃ……!」
彼らが無意味な言い合いをしていると同時に。
ドボォン!と、何かが勢いよく海に落ちた音が響く。
その音を聞いたルフィ達は青ざめ、サンジは疾風のごとく海に飛び込んだ。
ナミが叫ぶ。
「何やってるの!チョッパー!あんたは治療する準備しなさい!怪我してるんでしょ!?」
「う、うん!」
「うわああああああああおいおい大丈夫かぁ!?あそこ赤く染まってるぞ!?」
ウソップが落ちていった場所を指しながら叫ぶ。
女性が落ちた場所には、ジワジワと赤いものが、広がっていた。
それを見たナミは顔を歪め、チョッパーは医療室へと入っていく。
「船をあそこへ!」
「お、おう!」
ウソップが慌てて舵を操る。
後は、サンジが彼女を助けるのを待つだけだ。
■(`・ω・´)■
(……いた!)
脚力で落ちてきた場所まで素早く移動してきたサンジは、その有様に眉を顰める。
女性の腕を掴み、自身に引き寄せながら、女性の怪我の具合を瞬時に判断した。
一言で言うと、まずい。
腕から、頭から、足から淡い赤色が噴き出している。早く手当をしなければ、命を落とすかもしれない。
サンジは海面が近づいているのを確認。そしてその側にメリー号があることも同時に確認し、海面に上がる。
「ぶ、は」
「サンジくーん!」
頭上でナミの声がする。
サンジはそのナミに向かって、叫んだ。
「ナミさん!この子早く手当てしねえとやばい!」
「わかってる!今チョッパーが準備してるわ!」
「捕まれサンジ!」
ルフィが腕を伸ばす。
サンジはその腕に捕まって、ルフィはサンジと女性を引き上げた。
そっと引き上げ、サンジは直ぐに女性ーーーいや、少女を寝かせる。
そして改めて、その悲惨さを直視した。
「ッ……」
「酷い……」
少女の腕は血で染まり、もはや肌の色が見えない。
腰と足には激しい焼け跡が残っている。服もボロボロになっており、血で染まって使い物にならない。
頭からは尋常じゃない程の出血。もしこのまま、誰にも見つからずにいたらーーー間違いなく、命を落としていた。
「準備できた!早くその子を!」
チョッパーがドアを開けながら言った。
サンジはまた少女を抱き上げ、裸足のまま部屋に行き、ベッドに寝かせる。
「ちょっと時間かかる。絶対死なせないからな……!」
後は、チョッパーの腕の見せどころだ。
サンジは硬い信頼を胸に、少女の無事を祈りながら、部屋を後にした。
■(´∀`)■
「よかった……目を覚まして……!」
少女は混乱寸前だった。
目を覚ました瞬間、ここは何処だ、身体中が痛い、五体満足で生きている、そして喋るトナカイ。
これを突きつけられて、混乱しないと言いきれない。
少女は小さく、喋るトナカイに言う。
「……こ……は?」
「医務室だぞー!お前すっげー怪我だったんだからな!」
トナカイが覗き込んで、泣いている。
少し視界が狭いことに気付き、自分は眼も怪我しているのかと悟った。
しかし、医務室……?
自分は助けられたのか。この訳もわからない喋るトナカイに?
また混乱寸前の彼女を他所に、トナカイは扉を開けて誰かに言った。
「おーい!あの子が目を覚ましたぞー!」
「何!?」
その時、男の声がした。
そしてすごい音でこちらに向かってくるのがわかる。
扉の合間から覗いてきたのは、眉毛がぐるぐるの金髪の男だった。
男は少女を見た途端、瞬間移動の如く少女の前に跪き、少女の手をとる。
「おはようございます、レディ。気分はいかがでしょうか?もし大丈夫なら私めが栄養満点のスープを……」
「ッ!?」
しかし。
少女は男の手を、払った。
男が驚きで固まっている最中、少女は怪我をしているとは思えない動きをする。
素早く起き上がりバク転をして壁まで下がった後、彼らを睨んだ。
「あの子目を覚ました……え、なにこれ!?」
「おーい大丈夫かー?」
ゾロゾロと、何人かが入ってくる。
オレンジ頭の女、麦わら帽子の男、緑髪で刀をぶらさげている男、長鼻の男、黒髪の女が、少女と男の状況を見るなり驚愕した。
少女は彼らにも警戒しながら、彼らに言う。
「……ここは、何処?」
それは先程の質問と、変わりなかった。
しかし少女は気づいている。
少しだけ、ゆらゆらと揺れていることに。
普通の医務室なら、こんなにも揺れを感じることは無い。それに医務室が木製の部屋なんて、見た事がなかった。
それにーー明らかに格好が怪しすぎる。
緑髪の男は普通に刀を堂々と持っているし、まるで冒険のような立ち振る舞いの彼らに、一層警戒を強くした。
トナカイが慌てた様子で応える。
「だ、だから医務室だよ!それよりお前、そんなに動かない方が……」
「来ないで、私に触らないで!それにここは本当に医務室なの?何なのこの揺れは!あなた達は、一体誰なの!?」
「落ち着いて。質問には答えるわ。だから安静にして。あなた酷い怪我だったのよ?下手したら命に関わっていたから、そんなに興奮しないで。ほらサンジくん、しっかりしなさい!」
オレンジ頭の女が、固まっていた男の頭を叩く。
「ハッ!」と思い出したかのように頭を上げた男は、素早く立った。
緑髪の男は、刀を抜く準備をしている。
麦わら帽子の男は、まだ状況が飲み込めていない。
長鼻の男は状況を飲み込めていても、後ろで見守ってるだけ。それは、黒髪の女も同じだった。
少女はさらに顔を歪ませる。
「うるさい、うるさい!ゴホッ、早くここから出して!早くあの女を追わないと!追わないとおおあああああ!!」
「落ち着いて!」
「レディ!落ち着いてください!」
彼らの焦りが募る。
包帯からはじわじわと血が滲み出ており、口からも、少量だが血を吐き出していた。
傷が開いている。早く落ち着かせないと。
「落ち着いてくれ!頼むからぁ……!俺達は敵じゃないから、だから!」
「ここは船よ。あなた、空から落ちてきたのよ!傷だらけで、本当に危なかったの!」
オレンジ頭の女が、せめて質問に答えようと実行した。
その時だった。
ピタリ、と少女の動きが止まったのが。
「……落ち、てきた…?……船……!?」
そう呟いた後。
少女は彼らを押し切って、扉に向かう。
誰かが腕をつかんだようだが、少女はそれを振り払い、外に出た。
そして、絶句した。
「ーーーーー何、ここ」
周りに広がるのは、青い海。
そして、甲板と思わしきもの。
一歩、足を踏み出す。
「な、で、私、バスの中で……!」
いくら意識を失っていても、大怪我を負った人を海にまで連れ出すのか?
そもそも、海に連れ出す理由があるのか?
明らかに商売人じゃない。こんな見ず知らずの自分を、ここまで心配するという事は、体を売られたとも考えられない。
それに、先程の『落ちてきた』という、発言。
非科学的すぎる。
もう少女は、考えることを放棄したかった。
「なんなの……!なんなのよ一体……!」
私に何が起こっているの。
少女は、崩れ落ちた。
■( ・´ー・`)■
「……落ち着いた?」
とりあえずキッチン前のテーブルに連れてきたルフィ達は、彼女の様子を遠慮がちに聞いてみる。
少女は顔を俯いて、表情が伺えない。
出来れば、彼女が何に驚いているのか聞きたい。
暴れ出した理由も聞きたい。
傷が開いた所は、チョッパーが応急処置でなんとか手当てした。
「……ねぇ、大丈夫?」
ナミはまた聞いた。
「お前どうした?なんかあったのか?」
珍しくルフィが真剣に声をかける。
ルフィも、只事ではないと察したのだろう。
少女はまだ俯いている。
「何か言わねえと、俺達も対処の仕様がねぇ。せめて体調はどうとか言ってくれ」
ゾロが頬杖をつきながらそう言った。
それに同意して、ウソップは首を縦に振る。
彼女は色々なことがありすぎて、飲み込めていない。
せめて体調がどうなのか、知りたかった。
少女はまだ、俯いている。
そこに、コトリとスープが置かれた。
「どうぞ、レディ」
それはサンジが作ったスープであった。
少ししか野菜が入っていないが、さっぱりとしたスープは輝いており、とても美味だというのはわかるであろう。
そのスープをルフィが涎を垂らしながら見ているのは別の話にしておく。
少女は一度、スープに目を通して……また、俯いた。
「……食べては、くれませんか?」
恐る恐る、サンジが声をかける。
暫く沈黙を保っていた少女は、ボソリと零した。
「……用出来…い」
「え?」
「他人が作ったものなんて、信用出来ない」
今度はハッキリと言い、少女は立ち上がる。
「あ、待って」
「うるさい!」
サンジが止めようとしたが、少女はそれを振り払って、外に出た。
「……あ」
また、沈黙が走る。
「なぁ、それ飲んでもいいか?」
場の空気を呼ばないルフィを殴ったのは別の話。
誰でもね、見知らぬ人に拾われたらね、警戒すると思うの。
この子は例外だけどね……。
書いてると、文才力下がったなーって思う。第三者視点が自分の納得するものにならない。これでも頑張ったんですけどね……。
次は少女視点で行きます。頑張るぞ(๑و•̀ω•́)و
間にある顔文字は作者の遊び心である。反省はしていない。