バカとテストと召喚獣~もうバカとはいわせない~   作:青猫ハマト

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 受験終了!
 少しずつ思い出しながら書いていきます。
 これからも何卒よろしくお願いします。


11話

 次に目を覚ますと、眼前に女子がいた。

 それも、後ろ姿でさなくしっかりとこちらを目で見据えている女子が。

   

 「やっと起きたぁ」

 

 どうやら知り合いらしい。

 でも、結局僕は目の前の女子が誰かなんて分からない。

 だから、聞こうとした。

 

 貴女は?と。

 

 だが、その言葉が紡がれることはなかった。

 

 声が出ないのだ。

 

 「いい加減にしなよ、もうちょっとなんだから」

 

 「そうは言ってもさ」

 

 僕の声が聴こえた。

 僕は声が出ないんじゃない、話せないんだ。

 

 僕の意思など関係無く、淡々と話しは続く。

 

 「もういいよ!」

 

 「こっちだって真剣なんだよ!」

 

 「ッ...!」

 

 彼女が悲しそうな顔をする。

 少し心が痛む。

 

 すると、場面が変わった。

 

 彼女は泣いていた。

 

 「なんで、なんで!」

 

 「...」

 

 「明久!なんで!?」

 

 「...」

 

 何故か見慣れたような感じのする光景。

 

 僕は何も答えない。

 

 僕は血の付着したまさしく呪いの包丁のようなものを握って何かを刺していた。

 

 また、胸が痛んだ。

 

 そして、また場面が変わった。

 

 「うちの息子に近付かないで頂きたい」

 

 「見て、彼が...」

 

 「人殺しが」

 

 今度は罵詈雑言の嵐だった。

 

 だが、今回はあまり痛まない。

 

 それを境に場面は急かされているように、急激に流れ始める。

 

 「貴方が...!」

 

 「このバカが」

 

 「一生の恥だ」

 

 「死んで詫びてよ」

 

 痛みは強くなった。

 

 そして、とうとう耐えられなくなり目が醒めた。

 覚醒した。

 

 「...夢か」

 

 妙な夢だった。

 それに、まだ何か痛むような...。

 

 「ッ!ゴホッゴホッ!...ハァハァ」

 

 何だ、苦しい。

 胸がつかえるような錯覚に囚われる。

 

 

 ようやく落ち着いた頃には、さっきの夢なんて忘れていた。

 

 時間を確認する。

 午前3時。

 

 起きるにはまだ早い。

 

 だが、何故か寝ようとは思わなかった。

 

 それどころか、あちこちが痛む体に鞭を打ち、必死に立った。

 

 そして、歩行補助用具に身を委ねるように歩き出す。

 

 怪我などないが、何故か痛みを感じ、そして歩こうと思った。

 

 できるだけ安静にと言われた僕だが、そんなことは頭の片隅に追いやって、病室から出た。

 

 廊下に出た僕は、あてもなく勘で左に歩いた。

 

 数メートル歩くと右手に階段が見えた。

 

 どこに通じているかは知らなかったが、何かに誘われるがままに階段を登っていった。

 

 その階段は屋上に通じていた。

 

 普段なら錠が付けられていて、入れない筈の屋上は開いていた。

 

 何気無しに扉を開ける。

 

 

 屋上には何もなく、ただひっそりとした空間が佇んでいた。

 

 そんな空間に僕は安心感を抱いていた。

 

 きっとこの空間。虚無感や、静けさに支配されているこの空間は、僕の今の心に似ているのだ。

 

 数分間そこにいた僕は、病室に帰ろうと、振り向いた。

 

 しかし、そこには、姫路さんがいた。

 

 「!姫路さん!?」

 

 笑っていた、まるでフフフと言っているような笑い方だった。

 

 「吉井くん、酷いじゃないですか。私たちに酷いことをして」

 

 「君たちが僕を襲ってきたんじゃないか」

 

 「黙れっ!とにかく、そんな吉井くんにはお仕置きが必要なんです」

 

 そう言った姫路さんの目には生気が宿っていなかった。

 

 そうだ、忘れていた。

 

 昼間の雄二の警告を。

 

 僕はたった今、明久羅武ブラザーズに命を狙われているんだ。

 

 「それじゃあ、死んでください♪」

 

 駄目だ、これは人の話なんて聞かないタイプだ。

 

 「ひ、姫路さん。何故僕を狙うんだい?」

 

 「?そんなの決まってますよ。殺したいからです」

 

 「じゃあ、な、何故殺したいんだ?」

 

 「殺したいんです」

 

 意味が分からない。

 

 後ろに一歩退く。

 

 彼女は二歩詰める。

 

 狂気の沙汰じゃない。

 

 「さて、終わりですっ!」

 

 彼女が手に持っている鉄パイプを僕に降りかざす。

 

 咄嗟に目を瞑る。

 

 だが、衝撃は来なかった。

 

 「姫路確保!」

 

 あの刑事だった。

 

 姫路さんの腕を掴み、手錠をかけた。

 

 「無事かね」

 

 「は、はい。大丈夫です」

 

 「ふぅ、よかった」

 

 彼は、安堵の息をもらす。

 

 「彼女は精神的にアレらしくてね。君を襲ったのもさして理由は無いんだろう。隔離して、後で精神病院に送ろうと思っていたが、甘かった。すまなかったね」

 

 「あ、いえ。大丈夫ですよ」

 

 「そうか」

 

 なるほど、精神疾患だったのか。

 道理で可笑しかった訳だ。

 

 「それじゃあ。今回は助けれたけど、今度はそうも行かない。屋上なんかに上がるなよ」

 

 それだけ言い残し、刑事は屋上から出ていった。

 

 

 「もどるか...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side 霧島 学校にて

 

 「ねえ」

 

 「っ」

 

 目の前の少女がビクッとした様子で振り返る。

 

 私は、聞いておきたかった。

 

 「私たち、何処かであったことはある?」

 

 「あ、あにょ、な、な、無いと、思いましゅ」

 

 ダウト。

 

 「何処で会った?」

 

 「え、いや、そにょ」

 

 「緊張しなくていい、吉井が貴女を見て倒れたから気になっただけ」

 

 「そ、その」

 

 何かある、と思った。

 

 むしろ何か無かったら吉井は何かの病気であることになる。

 

 だが、あんなタイミングで倒れるなんて偶然にしては出来すぎている。

 

 だから、原因らしき人物に当たったのだが...。

 

 「えっと、そにょ、あにょ」

 

 噛み噛みで、言葉の整理が追い付いついてない。

 

 これは、長くなりそう、と感じた。

 

 

 

 side change

 

「ねえ」

 

 急に話しかけられ、私はビクッとなりつつ、振り向いた。

 

 「私たち 何処かで会ったことはある?」

 

 霧島さんだった。

 

 淡々と無感情にも聞こえる声。

 

 あの頃から変わってない。

 

 けど、私は嘘を吐こうとした。

 

 「あ、あにょ、な、な、無いと、思いましゅ」

 

 ヤバい、声が裏返った。

 

 「何処で会った?」

 

 簡単に嘘を見破られた。

 

 「え、いや、そにょ」

 

 「緊張しなくていい。吉井が貴方を見て倒れたから気になっただけ」

 

 っ!やっぱり、怒ってるのかな。

 

 「えっと、あにょ、そにょ」

 

 混乱して言葉が上手く見つけられない。

 

 落ち着くまで、時間がかかりそうだ、と自分で思った。

 

 

 

 

 




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