リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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いざ冥界へ

 

学園も夏休みに入り、シエナたちを手伝いに駆り出したりしながら毎日暮らしている俺たち。けして暇ではないのだが、アザゼルから連絡が入り急に冥界入りすることが決まった。

 

「なんでまた列車で行くんだよ。面倒だろ」

 

「お前は良いけど、眷属たちはどうするんだよ。一回は認証を受けなきゃならんだろうが。それにお前がストッパーにならないとどうなるか分からないぞ?ほら、八舞の嬢ちゃんだってなんかうずうずしてるじゃねえか」

 

「知るか。俺もお前もこのまま魔王領に直行だろうが。どちらにせよ、今日は移動だけなんだぞ。何処かに行く余裕なんてないだろ。……って言うか、なんで塔城ちゃんはあんなに沈んでるわけ?」

 

「これからのことが億劫なんだろ。自分の役割がなくなってきてることがな。……お前だって気づいてんだろ?」

 

「高神くんは神器の力を使えばどんな物でも作れるし、木場くんに至っては禁手(バランス・ブレイカー)にまで至った。姫島さんは魔力の扱いも上級悪魔レベルだよ。でも、そこまで悲観することか?」

 

「自分の戦車(ルーク)としての役割がなくなってきたことに怖がってるんだよ。仙術に関しても多少は毛嫌いしてる嫌いがあるからな。まず自分のことを受け入れなきゃ意味ないだろうに」

 

「……まあ、そんな風に物分りが良かったら今みたいな状況にはなってないだろうさ。そういえば、人工の神器の研究をやってるって聞いたんだが、あれは本当か?」

 

「ああ。俺の持ってるこいつもそうだしな。こいつはファーブニルの魂を核にして白龍皇の鎧や赤龍帝の鎧とかドラゴン系神器を元にして作ったもんで堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)っていうんだが、こいつの禁手(バランス・ブレイカー)の名前は堕天龍(ダウン・フォール・ドラゴン)の鎧(・アナザーアーマー)っていうんだ」

 

「分かった分かった。しかし、ファーブニルも封じられたか。ヴリトラもアルビオンもドライグも封じられ、タンニーンは悪魔。玉龍(ウーロン)は引退でミドカルズオルムは眠りっぱなし。現役として残っている龍王はいよいよティアマット位か?」

 

「お前らしくもないな。ドラゴンの未来でも憂いてんのか?」

 

「俺自身、柄じゃないとは思ってるがね。一応は俺も龍人だ。多少は考え込んだっていいじゃないか。……まあ、こういうのはタンニーンの役割なんだろうがな」

 

そうして色々と情報交換を含めて話し合っている後に未だ途中である禁手(バランス・ブレイカー)の調整をやっている間に車掌の認証を済ませていたようだ。アナウンスで次元の壁を越えたというのを聞くと窓を開けても良いかと聞いてきたのでどうぞ、と言っておいた。

 

「まるで子供みたいだな。何が楽しいんだろうな?」

 

そうボソリと呟くように言った俺の独白には誰も反応しなかった。そしてなんやかんやとやっている内にグレモリー領についたらしい。中々動こうとしない俺とアザゼルのことを不思議に思ったのか八舞が聞いてきた。

 

「お二人は行かれないのですか?もう出てしまいますよ?」

 

「俺たちはこれから魔王領に直行だ。だから悪いんだが、グレモリーの奥方と当主殿に挨拶をしておいてくれ」

 

「畏まりました。それでは頑張ってきてください。先に休ませていただきます」

 

八舞たちが降りたのを確認すると俺が一眠りつこうとした所で、アザゼルに邪魔された。

 

「なんだよ?俺の睡眠を妨害してまで聞きたいことでもあんのかよ?」

 

「いや、お前この間三日ぐらい行方不明になってたじゃねえか。その間、一体何をしていたのかと思ってな」

 

「ああ〜……異世界に飛ばされてた」

 

「は?」

 

「いや、並行世界だな。そこで色々と面白い物を見せてもらったよ。実に有意義な時間だったぜ?俺にとっては得る物の方が多かったしな。白龍皇の力を禁手(バランス・ブレイカー)に至らせることも出来たし、思いも寄らぬことをしてくれたしな」

 

「待て、待て待て!お前が何を言ってんのかまったく理解できないぞ!並行世界!?そんなもん作る方法が……いや、あるな。やれば出来るが、さすがに危険が大きすぎるぞ」

 

「ま、なんでも良いさ。俺にとっては得だったんだし、こうやって戻ってこれたんだからな」

 

俺はそれだけ言うと、聴覚をシャットアウトして眠りについた。アザゼルがなんか言っていた気もするが、放置して眠りについた。それから数時間後、魔王領に到着し魔王城での会議に参加したわけなのだが……

 

「会議は踊る。されど進まずってか。ただの無駄骨じゃねえか。お偉いさんってのはあれなのか?会議してねえと安心できないタチなのか?」

 

「そう怒るなよ。ああいう会議だって必要な事なんだからよ。……まあ、お前が言う事も最もだし事実なんだけどな。まったく禍の団(カオス・ブリゲード)だけでも厄介だってのに聖槍十三騎士団は人員も規模もまったく分からねえ。トップと幹部クラスが1人だけだ。

 

しかし、あいつの持っている聖槍は俺たちの知っている物じゃなかった。兵藤、あの聖槍が一体どういった物か知ってるんだろ?教えてくれよ」

 

「あれは殺せば殺した分だけ強くなる。そういった類の聖遺物だ。あれの類と相対するような事は絶対に避けろ。殺される可能性がはるかに高いんだからな。あれによって強化されるのは身体能力と頑強さだ。魂を重ね続ける事で強化されていく。お前らにはそういう概念がないから分からないだろうが、あいつにダメージを与えるにはあいつと同じくらいまで魂を昇華させるか、或いは……」

 

「或いは……なんだよ?」

 

「いや、これは言っても詮無い事だからな。言わないでおく。……必然戦うのは俺と眷属たちになるんだろうがな。悪魔はそもそも昇華なんて出来ないし、堕天使が昇華させる事が出来るなら堕天ならぬ昇天が起こるな」

 

魂を昇華させるとは、つまり神座に至るという事。もしそんな事が可能なのなら、そもそも堕天などしていないだろうが。一誠は言わなかったが、第三の選択肢としては逆に堕ちる所まで堕ちるという物がある。善と悪というのは合わせ鏡のような存在である。故に魂を昇華させるという事と魂を堕ちる所まで堕とすという事は同じ行為なのだ。

 

違いがあるとすれば、昇華させる事は神座に至るという事だが、堕ちる事は魔の器を満たし本当の意味で魔を統べる王ーーーー魔王になる事だ。だが、それは所謂六道輪廻と呼ばれる地獄のどれかに堕ちる事と同義である。そこまで堕ちた者がはたしてマトモな思考をしているか分からない。故に一誠は口にしなかったのだ。

 

「……おい、兵藤。お前は一体何を隠してるんだ?お前が言い淀むほどの事だ。並外れた……というかあり得ない事なんだろうさ。それでも可能性があるなら言えよ。そうじゃなきゃ始まらないだろ」

 

 

「……奴らと同じ聖遺物を身につける事だよ。アザゼル、お前は知ってるだろう?八年前、俺が海鳴市で出した物を」

 

 

「……まさか」

 

「あれから俺はあれを眷属を作る時にしか使用していない。聖遺物っていうのは、所持者の底の知れないぐらい深い深い渇望から形成されるんだよ」

 

「それなら話は……いや、簡単じゃないな」

 

「そう。もしも自分の渇望がとんでもなく醜い物だったら?プライドの高い上級悪魔や堕天使がそんな物を信じるわけがない。それにこれは等しく誰にでも使える物だ。今まで酷い目に合ってきた下僕悪魔が何もしない訳がない。これは神器(セイクリッド・ギア)以上に世界を左右する代物なんだ」

 

「やっぱり一筋縄じゃいかない、か……。そろそろグレモリー領に行くとするか。俺も疲れたしな」

 

「同意見だよ。さっさと寝たい気分だよ。食事よりも寝たい気分だしな」

 

俺たちはそのままグレモリー領に向かおうとしたが、寸前でセラさんとサーゼクスさんに捕まり今日は魔王城で過ごすことになった。皆が酔っ払って寝こんでいるのを見つつ、俺がゆったりと酒を飲んでいると後ろから出た手にグラスを持っていかれた。振り向いてみるとグレイフィアさんだった。

 

「まったく……サーゼクスもセラフォルーも情けないですね。あなたも一緒になって飲んでいては駄目でしょう?まだ未成年なのだから」

 

「そんな事を言われましてもね。まあ、なんだかんだでこうやって酒を飲んだりしたことはありませんでしたから。嬉しかったんでしょうね。それより、今まで一体どちらに?」

 

「色々と。メイドも色々とあるのです。あまり気にしないでください。……こんな風に騒げる時間がもう少しあれば良いんですけどね。事態はそれを許してはくれない」

 

「……俺たちはやれる事をやるしかないんです。たとえそれがどんな物であったとしても、自分が後悔していないと言いきれるならそれで良いんです。その思いがあればきっと前へ進んでいけますから、ね?」

 

「……そうですね。あなたの言う通りです」

 

冥界の空を眺めながら平和を噛み締めていた。これから先に待っているのは戦場だ。奪い合い、喰らい合う無情の戦場だ。爪牙をぶつけ合う事になるだろうな。あのラインハルトという男はまるで黄金の獣のようだった。黄金律を司る万能性を象徴する存在。

 

しかし、あの男の本質はそんなに素晴らしいものじゃない。破壊。この世に存在するありとあらゆる物の全てを破壊する事こそがあいつの望みなのだろう。だからこそ、仲間などいらない。必要なのは自分の手足となる従者だけなのだ。

 

今ならあいつと俺がぶつかりあっても俺が勝てるだろう。しかし、それをあいつは認めようとはしないだろう。今は爪牙の力を蓄える期間なのだろう。ならばこの赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)が二天龍の片割れがその爪牙をへし折ってやる。覚悟していろ、ラインハルト・アルゾフ・ハーデンに聖槍十三騎士団の爪牙ども。俺が必ず……破壊してやる。

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