翌日、早朝になってしまったが俺とアザゼルはグレモリー宅に向かった。グレイフィアさん先導のもと、荷物を持って部屋に案内してもらうと八舞とアイリスを除いた眷属全員が眠っていた。眉間を揉みほぐしながら俺は部屋を出て行った。
「さて、どうした物か。寝床も封じられてるし……かと言って特にすることがあるわけでもない。暇だ」
『相棒も眷属の事に関しては何もしないんだな。本気で怒った事もないだろう?』
「怒るほどの事をしているわけでもないしな。そういえば、こうやってゆっくりと話をした事ないよな。久しぶりに潜るとしようか」
食堂のような場所で椅子に座り、ゆっくりと眼を閉じた。神器たちがいる場所に向かった。あそこに行くのも久しぶりだな〜と思っていると、妙に騒がしかった。何かと思っていると、歴代の所有者と
「……なぁ、ドライグ。あれは一体何をやってるんだ?」
『模擬戦、のような物だろう。とはいえ、あれらとマトモに相対せるほどの奴がそんなにいないからか負けている事の方が多いがな。エルシャもベルザードもたまには出てくるが、基本的に奥の方に引っ込んでいるからな』
「ふぅーん……あ、やられた。って言うか、先輩泣いてるじゃん。どんだけやられてんだよ。……大分感情が出るようになってるな。昔とは変わったもんだな」
『相棒が
「懐かしいな。新しい覇龍を生み出す時にあの陰鬱とした表情が鬱陶しくなって使ったんだよな。俺ほどではなくても、歴代の連中は強い。実験台にはちょうど良かったんだよ。放っておいたら勝手に復活したしな」
『そんな理由でぶっ飛ばされていたとはな……あいつらも可哀想にな。とはいえ、もはや残留思念に近いのに何故生前よりも強くなっているんだ?可笑しいだろう』
「意地の為せる技じゃないか?冗談だけど。なんかコツみたいなもんでも見つけたんじゃね?技術は別に今でも磨けるしな。むしろ肉体の制限がないから今の方が強くなれるんだろ」
まあ、それもどうかとは思うんだがな。今の方が人間らしくて俺は好きなんだが、たまに変な事を言ってくるというか叫んでるからあまり関わりたくないんだよな。そんな事を思いながら眺めているとエリザヴェータが近づいてきた。
「お久しぶりですね、我が宿主。こんな所まで一体どうしたんですか?」
「久しぶりだな。あんまり使ってやれなくて悪いな。ここに来た理由なんて暇だったからとしか言いようがないな。……こんな事を何回もやってるのか?」
「え?……ああ、あれの事ですか?私やヴァレンティナはあまりやりませんが、エレンたちは暇になったりストレスが溜まっていたりするとやっていますね。正直な話、弱い者いじめのようですが……彼らも存外しつこいのでこういう事が度々起こるのですよ。そうでしょう?赤龍帝」
『負けず嫌いだからな。俺の宿主も白いのの宿主も大概は負けず嫌いだよ。そこは相棒も同じだが。負けを絶対に認めないが故、圧倒的な力を求める、などという事をするのも相棒くらいだ。まあ、赤龍帝らしいとは思うがな』
「それは褒めてんのか?貶してんのか?なんなら
『待て待て待て!相棒の全力に俺が耐えきれる訳がないだろう!しかも似通ったどころかあれはほぼ
「大丈夫だよ。ただ少しの間、死んだ方がマシだと思えるぐらいの激痛に襲われるだけだから。安心してくれ」
『安心できる要素が一つもないじゃないか!なぁ、相棒。俺たちは長年よろしくやって来たパートナーだろう?勘弁してくれ』
「人間に命乞いをするドラゴン……シュールですわね。まあ、あんな場面に一度でも立ち会えば分からない事はありませんが」
一誠は覚えていないが、一誠が初めて
一誠が完全に動きを止めた時にはドライグは血塗れで倒れており、戦姫たちは完全に満身創痍の状態だった。実はこの時、何故一誠が
「一誠、その辺にしておけ。これ以上は押し問答になるだけだろう。朝から私は血など見たくないぞ」
「あれ、エレン。もう模擬戦は終わったのか?」
「私の分は終わった。別に標的は私だけではない。リュドミラもサーシャもそうだし、オルガも狙われてるな。幼女嗜好なのか、それともあんな幼女にやられたのが我慢ならないのか。どちらかだろうな」
「それはしょうがないんじゃないか?俺でもオルガに負けたらへこむぞ。見た目と反比例するぐらいに力持ちだけどね。オルガは」
その外見からは考えられないほどの剛腕。体術に関しても優れている。斧型の武器であるムマはそう簡単に扱える物ではない。それを使えるのが女性だけとなれば尚更だろう。俺だって鎧も纏わずに単体でムマを使うとなると、身体強化を使わなければならないのだ。その力は以って然るべしと言うべきだろう。
「って言うか、朝から模擬戦してる人になんやかんや言われたくないんだけど。……まあ、いいけどね。良かったな、ドライグ。間一髪で命救われて」
『絶対に俺を殺す気だったんだろう!?いくら二天龍と呼ばれた俺でも相棒の全力には耐えきれないんだぞ?ただでさえあの頃よりも強くなっていると言うのに……』
「それで何をしに来たんだ?何時もは呼んでもあまり来ないのに。冥界にいるらしいが、どんな用事があるんだ?」
「んーっと……テロリスト集団の対策の会議と若手悪魔の顔合わせの参加。それにグレモリー眷属とシトリー眷属の修行、後はグレモリー領の温泉巡りとかもするつもりだし……」
「ほう。その時は是非出させてくれ。この場にい続けるというのも存外暇なのだ。私も久しぶりに風呂に入りたいしな」
「了解。……さりげなくソフィーも混ざってるね。まあ、暫くは大丈夫だろうな。知ってるかもしれないが、これまで経験した事がないような戦が待っている。俺が倒さねばならない相手がいる。力を貸してもらうぞ、俺の戦姫たち。この戦に勝つために」
「無論」
「分かってるわ」
「主の望むがままに」
「この手に勝利を掴んでみせる。俺たちの行く道に敵はいらないんだ。必要なのは守りたい家族と仲間と友だけだ。そのために眼前に立ちはだかる者は全て我が覇道で押しつぶす。欲する物は家族と過ごす平穏の刹那。さあ、行こう。自分の渇望を、願望を、叶えるために」
「お前は私たちの『王』だ。胸を張れ。前を向け。迷ったら頼れ。そうすれば私たちはお前に力を貸す。それだけが我らの願いなのだからな」