リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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創生龍

 

 

それから2日後、戻ってみると思いもよらぬ光景が目に入った。龍殺しの武具を空中に浮かせながらタンニーンを追いかけている高神くんの姿だった。どう見ても眼がイっちゃってる感じだけど……そして何をトチ狂ったのか視界に入った俺に向かってきた。まあ、カウンターの要領で殴り返してぶっ飛ばしたんだが。

 

ちなみにヒドラの時は衝撃が拡散するように殴ったが、今回は衝撃が貫通するように殴った。そのせいかすでにぼろぼろだった大地がさらにひび割れた。もうこの山は登山としては使えないな。損害の具合がヤバすぎる。血が出てないだけで戦争の跡地と何も変わらんぞ。どんだけ争ってんだよ。

 

「おいおい、いくら龍殺しの武具でもあそこまで無様じゃダメだろうが。タンニーン、お前相手は下級悪魔なんだぞ?そんなじゃダメだろ、最上級悪魔」

 

「何十本も龍殺しの武具が飛んでくれば逃げもするだろう……これでも俊敏性はあると思うが、それを掻い潜って武器をぶつけてくるから正直焦ったぞ。なんだこいつは?成長の速度が半端じゃない」

 

「たとえ弱くても龍の神器を持つ者だからな。才能はあるんだろうな。あんまりぼやぼやしてるとやられるんじゃねえの?最上級悪魔が下級悪魔にやられる……ただの悪夢だな。まあ、それだけ悪魔の未来が明るいってことだろうさ」

 

彼の伸び率は格段に上がってきている。禁手(バランス・ブレイカー)に至れるだろう。そう言えば……創生龍って一体どんな龍なんだろうか?オーフィスやグレートレッドなら知ってるんだろうか?ただの予想だが、タンニーンを始めとした龍王も知らない可能性が高い。ティアマットですらそんな龍は知らないと言ってきたからな。

 

『少なくとも俺も白いのも会ったことはないな。そんな龍がいるのなら挑まない訳がないからな』

 

しかも創生龍という単語と万物を創造するという能力しか知らないのだ。これでは何も知らないのと同じことだ。その名前もどういうルーツで生まれ、何故神器となったのか?その一切が不明な龍。ここまで不気味なものはそうそうないだろう。万物を創造すると言うならいくらあの聖書の神と言えども、倒して封印したという事はないのだろう。そんな事が出来るならドライグとアルビオンを封印するのに手間取る筈がない。死ぬなど以ての外だ。

 

それなら自分から神器になったのか?それならば何故?世の中に絶望したというわけではあるまい。それならば封印よりも自害した方がいい。人の可能性を見るため?そんな事になるのは何故?わざわざ神器に魂を封印などせずとも、次元の狭間などでひっそりと見守っていればいい。グレートレッドとオーフィスが犬猿の仲なのはあいつらが対極だからだ。

 

赤い龍の対が白い龍であるのと同じように。聖の対が魔であるのと同じように。唯一の無限の対は群体の夢幻なのだ。合わせ鏡であるがゆえに、相入れない。歴代の所有者たちが話もせずに激突し続けた理由もこれだ。ただムカつくから。理由などこれだけあれば十分だったのだ。

 

ヴァーリが俺に向かってこないのは、実力の差もそうだが求める渇望が違うからだ。歴代の渇望は勝利。ヴァーリの渇望は最強の座。俺の渇望は家族と共に過ごすこの刹那を守ること。無理に赤龍帝()に挑もうとしない。無理に白龍皇(ヴァーリ)を潰そうとしない。歴代最強であり歴代で最も変わった二天龍である事は間違いないだろう。

 

とにかく何事にも対極と呼べる存在がいるという事だ。ならば創造の反対とはなんだ?と聞かれればこう答えるしかないだろうーーーー破壊だ、と。創生と終末。生誕と死。生きとし生けるものすべてに科せられた物。やはり存在するんだろうか?破壊を司る龍が。そんな事を考えていると何かに引っ張られるような感覚がした。

 

抗う暇すらなかったそれに呑み込まれた俺は何処か真っ白な世界に立っていた。俺はこんな光景を見たことがある。この光景は……

 

『神器の中か?いや、だがどうやって……?』

 

「サーシャたちにドライグまで?これは意識というよりは魂ごと引っ張ってこられたと考えた方が妥当なのか。それにしても一体誰がこんな事をーーーー」

 

 

「あらあら、思っていたよりも客人が多いようですね……これはどうしましょうか?」

 

 

『ッ!?』

 

後ろを振り返ると、そこには深窓の令嬢と言った雰囲気の女性が立っていた。分かりやすく言うと上品という事だ。まあ、そんな事よりも問題だったのはこの場にいる誰にも気付かせずに俺の背後を取った事、だったんだが……少し考えれば分かる事だ。此処は彼女の世界(・・・・・・・・)。認識する方がはるかに難しい場所なのだ。そう理解した次の瞬間に抱いたのは疑問。何故俺たちは此処にいる?

 

「おや、今代の赤龍帝殿は相当柔軟な思考が出来るようですね。てっきりそこの方々と同様にもう少しの間は混乱しているのかと思いましたが。……まあ、その方がこちらとしても助かっていますので構いませんが」

 

「勝手に納得するのは結構だが、こちらにも事情の説明ぐらいはあるのだろうな?話もなしにこんな場所に呼びこんだのだ。何かあって然るべきじゃないのか?」

 

「あら、こちらとしては貴女方を呼ぶつもりはまったくございませんでしたが?それに貴女方が彼の神器であり臣下であるなら、勝手な言は控えるべきではありませんか?」

 

「用があるなら早急にしていただきたい。だらだらとするのも嫌いではないが、貴女がそのような用件で俺を呼びだしたのではない事は承知している。語り合いたいと言うなら幾らでも付き合いましょう。けれど、それは用事が終わってからにして戴きたい」

 

「……それもそうですね。今回、あなたをお呼びしたのは同調率を確認するためです。あなたは自らの神器の能力を引き出す事しかなされていない。それを確認するのと……まあ、軽い自己紹介のような物です。あなたの存在はこれからの世に必要となってきますからね」

 

「自己紹介、ね……それに俺が自分の神器しか引き出そうとしていない?それではまるで俺が(・・)他の神器を使える(・・・・・・・・)、と言ってるようじゃありませんか」

 

そんな事が出来る筈がない。唯一出来るとしたら、それは神器システムの管理者ーーーー聖書の神にしかできない事だろう。俺がそう言うと心底不思議そうな顔をした後考えこみ、それから数十秒黙っていると唐突に何か納得したような表情を浮かべていた。

 

「……なるほど。まだ気づいておられない、という訳ですか。よく分かりました。どうやら今回の事は時期尚早だったようですね。申し訳ありません。まだあなたに話す段階まで至っていない。また会う事もございましょうが、今回はここまでにございます。いずれ、また何時の日かあなたに話す時が来ます。それまで、暫しの別れにございます」

 

「ふぅーん……まだ時ではない、か。いつの日か必ず聞けるんだろうな?」

 

「もちろんです。とはいえ、何時になるか分からない以上はあなたにヒントをお与えいたします。ーーーーあなたの中に存在する可能性を今一度探ってみなさい。その深淵にある光景が答えとなるでしょう」

 

「なぞなぞかよ。……まあ、相分かった。ここで別れだと言うならせめて名前は教えてくれよ。構わないだろう?それぐらいは」

 

「ええ。もちろんです。私の名前はーーーー」

 

 

「フィー、フィーエルガにございます。またいずれお会い致しましょう。求道と覇道を司る世界最強の赤龍帝殿」

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