「しかし君は……」
「言いたい事があるならズバッと言ってくれて構いませんよ?」
あれから一緒に湯船につかっている訳だが、なんか二人してこっちを控えめに見てくる。何がしたいんだろう?
「なんでそんなに傷だらけなんだ?」
「え?……ああ、これの事ですか。修行の一環、ですかね。色んな人外相手にして戦ってきましたからね」
「……どうしてそこまでして力を欲しがるんだい?」
どうして力を欲しがるのか、か……。あんまり振り返った事も無かったな、そんな事は。気にするような事でも無かったから。
「そう、ですね……。少し昔話をしましょうか。
とある場所に少年がいました。その少年は何の変哲もなく、どこにでもいるような平凡な少年でした。明るい両親に仲のいい友達。そして平穏な生活。満たされていると言っても過言じゃ無かったでしょう。でも、そういう場所にいる者ほど非日常を求めたがるものですよね。
確かにその少年の望んでいる非日常は来たんですよ。その代償に……彼は両親と最愛の彼女と親友を失いました。俗にいうテロって奴ですね。それに巻き込まれたんですよ。その少年はその時から復讐を誓ったんです。月並みですよね」
「それでその少年は……どうしたんだい?」
「結果から言えば、復讐は遂げました。何年もの月日をそれだけに注ぎ込み、そして得た物は満足感と虚無感。矛盾してますよね?でも仇を討ったという満足感と、目的を失った虚無感。どちらもあって当たり前なんですよ。
そしてその少年――――いえ、その頃には青年ですね――――は次に自分が心の底から仕えたいと思えるような主を探したんです。正義の心を持ち、しかし清濁併せ呑むような者を。まあ、結局見つからずじまいだったんですけど。これが俺の知るとある少年の物語です。
俺はこの物語を知り、いえ両親を奪われた事で実感した。力。どんな者にも負けない圧倒的なまでの力、生きとしいける者全てを覇するほどの力が手に入れば、誰も失わずに済むと。力があれば何でもできるのだとね」
「そんな事、あり得る訳無い。救える時もあれば、救えない時もある。全てを救おうなんて不可能だ!!」
「ええ。その通りです。でもそう思った時の俺は、そうは思えなかったんですよ。俺の両親を奪った奴を殺し、そして力を求めた。――――話は変わりますけど、お二人とも。世界で最も強い存在は何だと思います?」
「唐突に何を」
「いいから。答えて下さい」
俺が真面目な表情をしながら尋ねると、二人とも考え始めた。
「やっぱり神様じゃないか?絶対的な存在だからこそ、神と呼ばれるんだから」
「なるほど。なら恭也さんは?」
「……龍、だと思う。忍、ああ俺の彼女なんだがから訊いた事がある。この世界にはどんな存在でも勝てない存在が二つある。一つは無限を象徴する龍『
「夢幻、夢と幻を体現する龍『
「まあ、訊いただけだからあんまり信じてなかったんだが……」
「ええ。実在しますよ。そして俺はその二体と同等の力を誇る存在で、『赤龍帝』でもあります」
「その名前は訊いた事がある。何でも『二天龍』と呼ばれる龍だったとか?」
「そう『二天龍』は『赤龍帝』ドライグと『白龍皇』アルビオンの
「危険すぎるだろう。それにどうして止めようとしないんだ?代々続いているなら、止めようと思う者もいたはずだ」
「なまじ才能があったからでしょうね。この力があるなら負けるはずがない。そういう風に思ってもしょうがないんですよ、と話が逸れ過ぎましたね。
俺はオーフィスとグレートレッドと同じ地平に立ってその瞬間に気付いたんですよ。さっき恭也さんが言った事にね。さてここで問題です。こんなに強い力を持った者を周りの者たちはどうしたでしょう?」
「周りの者たちというのは?」
「裏の世界に属する者――――俗にいう神話の神々ですね。北欧、ケルト、ギリシャ。他にも様々な者達がいますね。聖書とかもその一例です」
「そりゃあ、仲間に引き入れようとしたんじゃないか?ハッキリ言ってそんな力を持った人間が敵に回られたらと思ったら、ゾッとするしな」
「正解。でも、俺はそんな考えには従えなかった。というより、いろんな奴らがふんぞり返って俺に従えって命令してくるんでね。それを全部払いのけたんですよ。普通、いきなり来て『俺達の役に立てるんだから光栄に思え』なんて言われて従えると思います?無理ですよ。
そして敵対してくる者を払いのけている途中で、俺にはとある二つ名がつくようになったんですよ。何だと思います?」
「……少なくとも碌な物ではないだろうね」
「『世界最強の化物』ですよ。まさか人外や化け物と呼ばれる連中に俺自身が化け物と呼ばれるとは思いませんでしたよ」
あははははっ。と自嘲気味に笑っていると、二人が辛そうな表情を浮かべていた。わりとヘビーな話だしな。しょうがないか。
「そこまで気にしないでくださいよ。もう過ぎ去った過去の話なんですから」
「どうして君はそんなに平気そうなんだい?君は間違っていたが、それでもただ純粋に誰かを助けたいから力を求めていただけなんだろう?それなのに、どうして……」
「仕方ないんですよ。異端は排除したくなる。それは昔から存在する人の心理でもあるんですから。要するに人から外れた者は怖い。でもそれは当たり前の事なんですよ。誰だってみんなと一緒でありたい。そうすれば仲間外れになんかなったりはしないから。孤独は辛い物ですよ?」
士朗さん達はあまり悟りたくは無いのかもしれない。俺の様な年端もいかぬ子供がそんなに枯れてしまっていると言う事を。世界に絶望してしまっているって事を。ここにそこまで長いしてもしょうがないな。
「それじゃあ、俺はここで失礼しますね。この話は別に聞き流してもらって結構ですよ。そんなに大した話じゃありませんからね」
俺は風呂からあがり、そして着替えて部屋に戻った。操作、今更何を言ったってしょうがない。俺達は未来に向かって生きるしかないんだから。
連続投稿~。やってみればできる物だね。
唐突ですがちょっとシリアスな話にしてみました。主人公の過去もちらっと紹介。
そしてネタに詰まりつつある現状。原作の流れから逸れまくっている所為で、流れに迷ってしまう。という訳でちょっとアンケート。
プレシア戦について
①フェイトが初めて戻った時
②原作通りなのはVSフェイトが終わってから
このどちらかにしたいと思いますが、どちらが良いかアンケートを送ってお貰えると幸いです。それではまた次回。