レーディング・ゲームも大勢の観衆の想像とは違う形で終わり、匙くんも魔王自ら受賞を受けた。シトリー眷属は精進を誓い、グレモリー眷属は自らの不甲斐なさと敗北の味を味わった。これはきっと彼らが先に進む上で重要な物となるだろう。さらに夏休み明けに大きな出来事がもう一つあった。アスタロト家の次期当主であるディオドラ・アスタロトがアーシアさんに求婚してきたのだ。
もちろん相当な出来事だとは理解しているが、その時の俺の視点はそこには向いてはいなかった。ディオドラ・アスタロトのオーラに黒い何かが見えた気がした。しかも見たことがあるような物が。確たる証拠がない為、その時点では何も言わなかったのだが……調査を進めていく内に、だんだんきな臭い事になっている事に気がついた。まあ、これはまだ調査が必要だしここまでにしよう。それと今まで気がつかなかったのだが、高神くんの家が大豪邸になっていた。明らかにおかしいとはおもうが俺は何も言わない。
行事が大量に詰まっている駒王学園の二学期。体育祭、文化祭、修学旅行。まあ、いろいろと忙しいようだが楽しいならそれで良いだろう。近々体育祭があるからゼノヴィアを筆頭にして学生組は朝練に行っている。シエナもぶつくさ言いながらついて行った。学生レベルの運動量じゃないからな、俺の修行は。負けてしまうようじゃ修行のやり直しだな、と言ったらなんか必死になってた。
グレモリー眷属の方も気合が入ってるらしい。……人間の体育祭だから、ウチも同様だが本気を出さないで欲しいと切に思う。まあ、加減はちゃんと分かっているのだろうが。とはいえ、俺に出来る事もそんなにあるわけでもない。時間は着々と過ぎていき、他のチームのレーディング・ゲームを見ると言う事で誘われた。俺自身興味があったから、それは全然構わないのだが。
サイラオーグ・バアルVSゼファードル・グラシャラボラスの試合は結果から言えばサイラオーグ・バアルの勝ち。だがその内容は圧倒的だった。自分だけが強くなる事に執着するのではなく、眷属も同様に強くしている。その姿勢には正直、感動した。才能に頼りきりの悪魔の中でも凄まじい量の修行をこなしたのだと見て取れる。そして一際目を引いたのはサイラオーグの圧倒的なまでのパワー。あれなら倍加なしの状態ではあるが鎧を纏った俺とまともに打ちあえるな。する気はないが。
そしていざ、ディオドラ・アスタロトVSシーグヴァイラ・アガレスの試合を見ようとした時、ディオドラ・アスタロト本人が部室にやってきた。その内容は
「離してくれないかな。ドラゴンに触られるなんて嫌なんだよ」
「……なら、俺が殺してやろうかい?ディオドラ・アスタロトくんよ。高々、上級悪魔如きが偉そうな事を言ってくれるね?」
「……おやおや、これはこれは。赤龍帝殿じゃありませんか。気分を害してしまったのなら申し訳ない」
「いえいえ、別にこれが他の上級悪魔なら何も言わなかったよ。……でもね、君に言われるのだけは我慢ならないんだよね。テロリストと通じているディオドラ・アスタロトくん?」
「……おかしな言いがかりは辞めていただきたい物だね。そんな証拠が何処にあると言うんだい?」
「ハハハハ……あまり俺を舐めるなよ。一度見た事があれば大方は分かる。二回も見れば十分なんだよ。しかもあんな特徴的な蛇を見せられればな。しかし、まあなんだ?大層な趣味してるよな、君」
このオーラは間違いない。カテレア・レヴィアタンが飲んだ物ーーーーオーフィスの蛇と同じ波動を感じるし、何よりもあいつの魔力の気配もバッチリとある。他の奴は誤魔化せても俺は誤魔化せないさ。伊達にあいつの友達やってる訳じゃないんだからな。
そして予測だが、ディオドラ・アスタロトの眷属は全員が教会において聖女と呼ばれ、異端指定を受けて追放された者たちだった。そこから導き出せる答えはほぼ決まっている。ーーーー彼女たちが教会から異端指定を受けるような何かをした、と言う事だろう。とはいえ、これは今はどうでも良い事だろう。
「勘では証拠になりませんね。気分を害したので、これで失礼します。それじゃあアーシア、またゲームで」
そう言うと、帰って行った。笑顔で揺らぐ事のなかった端正な顔に一筋の汗を流しながら。俺はアザゼルに忠告した後、家に帰った。シーグヴァイラ・アガレスも可哀想にな。本来は勝てた試合を相手のズルによって敗北に変わってしまったんだから。……まあ、なんにせよ次のゲームでは一波乱起きる事に違いはない。まったく、かったるいものだ。